病歴のエビデンスに入る前に、加藤先生が、
「鍼灸師の未来」について、良い記事を書いてくださいました。
私から、簡単にコメントしておきます。
国民の受療動向という、厚労省が行っている調査があります。
それによりますと、鍼灸の受療割合は、約7%です。
この数字は、30年前とほぼ同じです。
30年前に無かった項目があります。それは、「整体」です。
この割合がなんと10%を超えています。
マッサージとほぼ同じ数字です。
加藤先生が調べられたように、鍼灸に対するイメージは上がっているようです。
また、期待値も高くなっているように感じられます。
ただ、それが行動に現れていないということになります。
後は、それにどう応え、垣根を低くし、実際に来院して頂くか、それが問題です。
マーケティングに関しまして、加藤先生にお任せしておきます。
患者さんの期待値に応えるには、確かな知識が必要になります。
その点は私の方で、少しでもお役に立つようにブログを更新していきます。
が長くなりました。本題に戻りましょう。
感度と特異度について
臨床においての病歴の科学化で、最も大切な項目は、感度、特異度になります。
若手鍼灸師の先生方、学校で習われたかと思いますが、
もう一度、詳しく復習していきましょう。
感度(sensitivity)特異度(specificity)は、
診断に関するEBM実践の第一歩ともいえます。
ある症状に対する、身体徴候の識別力といえます。
教科書的な解説は、以下のようになります。
ある症状を持っていることを前提に
感度→病気を持った人のうち、その所見がある人の割合(真陽性率)
特異度→病気を持たない人のうち、その所見がない人の割合(真陰性率)
もう少し、簡単に見ていきましょう。
○感度
感度の特徴は、認められた所見により、
ある疾患の可能性を確定できるものではありません。
疾患Xの感度として、所見Aがあったとします。
この場合、所見Aがあれば、疾患Xであるかもしれないし、
病気でないかもしれないとなります。
たとえば、カツオ漁において、投網を投げてカツオを取ろうとしますと、
網の中に、カツオをほぼ取り込めますが、鯛やブリなども、
多く入っているということと同じです。
感度とは、見落としが少ないが、検査結果の陽性者の中には、
本当は病気でない人が多く含まれています。
別の言い方をしますと、感度における陽性は、
間違いが多く含まれているといえます。
これを逆から見ますと、疾患Xには、
必ず、所見Aが含まれていることになります。
ここから、所見Aが否定されますと、
疾患Xではないと言えることになります。
疾患Xに必ず含まれているはずの、所見Aが認められないからですね。
まとめますと。
感度→見落としが少ない、
陽性者のなかに本当は病気でない人が多く含まれている
・検査結果
陽性 → 間違いが多く含まれている
陰性 → 病気の人が含まれていない、病気の可能性が低い
○特異度
特異度の特徴は、認められた所見により、
ある疾患であると、ほぼ、確定できる点です。
疾患Yの特異度として、所見Bがあったとします。
この場合、所見Bがあれば、疾患Yであると確定できます。
先ほどのカツオ漁で言えば、特異度は、カツオの一本釣りになります。
釣り上げた魚はカツオだけになるからです。
しかし、一本釣りは、投網に比べて、カツオを多く逃がしてしまいます。
特異度も同じように、疾患Yを見落とす可能性が高くなります。
すなわち、特異度は、見落としは多くなりますが、
検査結果の陽性者は、その病気であると判断できます。
また、この場合は、疾患Yには、
所見Bが含まれていない、可能性があるとなります。
ここから、所見Bが否定されても、疾患Yの可能性は否定できない、
疾患Yかもしれないということになります。
すなわち、所見Bが否定されても、再検討する必要があります。
まとめますと。
特異度 → 見落としがある、
陰性者のなかに病気を持っている人が多く含まれる
・検査結果
陽性 → 確定診断につながる
陰性 → 見落としがないか検討する必要
次回は、実際にこれを、臨床でどのように運用していくのかです。
鍼灸院天空 夘野裕樹
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