「生理前になると、家族にきつく当たってしまうんです」
腰や肩の施術中に、ぽつりとこう打ち明けられたこと、ありませんか。
続けて「鍼灸で少しは楽になりますか?」と聞かれる。答えに迷う場面ですよね。
PMS(月経前症候群:月経の前に続く心と体の不調で、月経が始まると軽くなるもの)にも、コクランレビューがあります。
しかも生理痛のコクランと違って、結論は肯定側に傾いています。
この記事では、その数字の出どころを1本ずつ確かめ、最後に患者さんへの答え方と、医療機関へつなぐ目安をまとめます。
結論(先に3つだけ)
① 2018年のコクランレビューの結論の1文目は「得られた限られたエビデンスは、鍼と指圧が偽の対照と比べてPMSの身体症状と精神症状の両方を改善しうることを示唆している」です。ただし結論は4文あり、有害事象の差は判断できない、薬と比べたエビデンスは無い、さらに研究が必要、と続きます。
② 鍼と偽鍼を比べて差が出た数値(症状のスコアと生活の質)は、1試験67名(刺さない偽鍼・確実性は低い)だけから来ています。浅く刺す偽鍼を使った2試験は、反応率という別の物差しで測っていました。個々には鍼の群に利益を報告していますが、コクランは結果のばらつきを「反応」の定義と施術内容の違いによると推定し、エビデンスの確実性が非常に低いため、この項目は差がほとんど、あるいはまったく無いかもしれないと結論しています。本物の耳穴の群と偽の耳穴の群の両方で、症状のスコアが有意に低かった試験もあります。
③ SSRIや低用量ピルと直接比べた試験は、当サイトの検索では見つかっていません(医中誌Web・中国語データベースは未検索)。PMDD(PMSのうち、気分の症状が主で生活への支障が強い型)については、根拠はさらに限られています。
生理痛そのものへの鍼のエビデンスは生理痛への鍼|月経困難症のエビデンスを対照別に読む総合ガイドにまとめています。この記事が扱うのは、月経の「前」の不調だけです。
PMSへの鍼について、コクランは何と書いているのか
PMSと生理痛は別の疾患で、コクランレビュー(決まった手順で試験を集めて評価する国際組織の報告書)も別々です。
生理痛(原発性月経困難症)のコクラン(2016年)は、結論の1文目で「鍼または指圧が有効かどうかを示すには、エビデンスが不十分」としていました。PMSのコクラン(2018年・5試験277名)は、向きが違います。
結論は4文です。1文目だけを切り出さないよう、まとめて置きます。
出所:Armour M, et al. Acupuncture and acupressure for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2018;8:CD005290(PMID 30105749)Authors’ conclusions(全4文)。原文(英語)の全文はエビデンスボックス①に置いています
当サイトによる訳:得られた限られたエビデンスは、鍼と指圧が偽の対照と比べてPMSの身体症状と精神症状の両方を改善しうることを示唆している。有害事象の発生率に群間差があるかを判断するにはエビデンスが不十分だった。鍼や指圧を、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など現在 ISPMD(国際月経前障害学会)が推奨するPMSの治療と比較したエビデンスは無い。PMSについて妥当性の確認された評価尺度、十分な盲検化、現在の最善の診療を反映した比較群を用いた、さらなる研究が必要である。
読むときの要点は3つです。
1文目は limited(限られた)と may(しうる)の2語で、自分の主張を弱めています。エビデンスの確実性(どこまで信じてよいか)は「低い」から「非常に低い」と評価されました。
そして2〜4文目は、安全性・薬との比較・研究の作り方について「まだ分からない」と書いています。
なお PubMed の記録では、著者6名のうち4名が鍼の施術者であることなどを開示しています(ボックス①)。読み方はコクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所で整理しています。
図解:PMSへの鍼と指圧に関するコクランレビュー(CD005290.pub2・2018年)の著者結論4文を、「示唆していること」と「まだ分からないこと」の2列に分けて並べた図
1文目だけを切り出すと、残りの3文が消えます。
限られたエビデンスは、鍼と指圧が偽の対照と比べて、身体と精神の症状を改善しうることを示唆
2文目|有害事象の発生率に差があるかは、判断するにはエビデンスが不十分
3文目|SSRIなど、現在ISPMDが勧めている治療と比べたエビデンスは無い
4文目|妥当な評価尺度・十分な盲検・現在の診療を反映した比較群での研究が必要
5試験・277名(このうち鍼と偽鍼で症状スコアを比べたのは1試験67名=次の図)/エビデンスの確実性は低い〜非常に低い/検索は2017年10月まで
模式図です。各カードは当サイトによる訳を短くしたもので、原文の全文はエビデンスボックス①にあります。1文目の「改善しうる」は原文の may(可能性)で、エビデンスの確実性は低い〜非常に低いと評価されています。1文目の「偽の対照」には偽鍼と偽指圧の両方が含まれます。4文は同じ節に並んでおり、どちらか一方の列だけを切り出して引用しないでください。出所=CD005290.pub2(PMID 30105749)。カードの構成は当サイトが組み直したもので、原典にこの図はありません。
エビデンスボックス① CD005290 の書誌・版・対象・利益相反(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Armour M, Ee CC, Hao J, Wilson TM, Yao SS, Smith CA. Acupuncture and acupressure for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Aug 14;8(8):CD005290.(PMID 30105749/DOI 10.1002/14651858.CD005290.pub2/PMC6513602)当サイトの確認=Main results と Authors’ conclusions を Europe PMC と PubMed XML の独立した2経路で取得し、一字一句一致。
- 版:pub2(2018年8月14日)が最新。What’s new は「2018年8月23日 Amended:Abstract text corrected.」のみ(PMC本文・1パス)。pub3・撤回の記録は見当たりませんでした。
- 検索の締め(抄録の逐語)=”… CINAHL (from inception to 21 September 2017), two clinical trial databases (from their inception to 21 September 2017), and four electronic databases in China (from their inception to 15 October 2017) …”
- 対象と対照(Selection criteria の逐語)=”We included studies if they randomised women with PMS and associated disorders (PMDD and late luteal phase dysphoric disorder/LPDD) to receive acupuncture or acupressure versus sham, usual care/waiting-list control or pharmaceutical interventions mentioned by the International Society for Premenstrual Disorders (ISPMD).”(当サイトによる訳:PMSおよび関連障害〈PMDD、黄体後期不快気分障害/LPDD〉の女性を、鍼または指圧と、偽の介入・通常ケア/待機リスト対照・ISPMDが挙げる薬物療法のいずれかに無作為に割り付けた研究を組み入れた。)🛑 薬の対照は「ISPMDが挙げる薬」に限られています。
- 規模(逐語)=”Five trials (277 women) were included in this review. No trials compared acupuncture or acupressure versus other active treatments. The number of treatment sessions ranged from seven to 28. The quality of the evidence ranged from low to very low quality, the main limitations being imprecision due to small sample sizes and risk of bias related to detection bias and selective reporting.”(当サイトによる訳:5試験〈277名〉を組み入れた。鍼や指圧をほかの実治療と比べた試験はなかった。施術回数は7〜28回だった。エビデンスの質は低い〜非常に低いで、主な限界は標本の小ささによる不精確さと、検出バイアス・選択的報告に関わるバイアスのリスクだった。)
- Authors’ conclusions の原文(全4文・2経路一致)=”The limited evidence available suggests that acupuncture and acupressure may improve both physical and psychological symptoms of PMS when compared to a sham control. There was insufficient evidence to determine whether there was a difference between the groups in rates of adverse events. There is no evidence comparing acupuncture or acupressure versus current ISPMD recommended treatments for PMS such as selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs). Further research is required, using validated outcome measures for PMS, adequate blinding and suitable comparator groups reflecting current best practice.”(当サイトによる訳は本文の引用ブロックに置いています)
- 評釈:著者結論は4文です。当サイトは1文目だけを「結論」として引きません。1文目は鍼と指圧をまとめた記述で、「偽の対照」には偽鍼と偽指圧の両方が入っています。1文目の肯定と、4文目の「妥当な尺度・十分な盲検・適切な比較群での研究が必要」は、同じ著者が同じ節に並べて書いたものです。
- 利益相反:PubMed の記録(CoiStatement・1パス)に、MA(施術者・鍼灸院の元院長)、CE(施術者・統合医療センターの院長)、JH(中医師・鍼灸師)、TW(心理師と鍼灸師の二重登録)の開示があります。当サイトはこれを「結論が信用できない」理由としては扱いません。⚠️ PMC 本文の取得では独立した利益相反の節が見当たらなかったため、節の所在は書いていません。
- 生理痛のコクランとの違い:Smith CA, et al. Acupuncture for dysmenorrhoea. CD007854.pub3(2016・PMID 27087494)の結論の1文目は「有効かどうかを示すにはエビデンスが不十分」。詳しい読み方は親記事(生理痛ピラー)の担当です。
- ⚠️ cochrane.org の平易な要約ページの言語一覧に日本語版は見当たりませんでした(1パス)。本記事の訳はすべて当サイトによるものです。
偽鍼との差は、どの試験から来ているのか
ここがこの記事の中心です。「改善しうる」の根拠を、試験ごとに分けます。
症状スコアと生活の質の差は、1試験67名から
鍼と偽鍼を比べた試験は3本。そのうち症状のスコアと生活の質を報告したのは、中国の1試験(Zhang 2017)だけです。
この1試験67名(刺さない偽鍼・確実性は低い)で、気分と身体の症状のスコアが偽鍼より低く、生活の質は高かったと報告されています。症状と生活の質の数値は、ここからしか来ていません。
偽鍼の種類による違いは偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題にまとめています。
浅く刺す偽鍼の2試験は、別の物差しで測っていた
残りの2本(Habek 2002・Yu 2006)は、経絡から外れた場所に浅く刺す偽鍼を使い、「反応率」(試験ごとに決めた基準で「反応あり」とされた人の割合)を見ています。
2本とも、個々には鍼の群に利益を報告しています。ただ試験間のばらつきが大きく、コクランがばらつきを見込んだ計算で2本をまとめた結果は差があるかどうか判断できない(2試験100名・確実性は非常に低い)でした。コクランは、ばらつきの原因を2試験で「反応」の定義と施術内容が違ったためと推定し、この項目は差がほとんど、あるいはまったく無いかもしれないと結論しています。
この2試験が測ったのは「反応率」、67名の試験が測ったのは「症状のスコア」で、ものさしが違います。ですから「刺す偽鍼を使ったら差が消えた」とは比べられません。書けるのは「偽鍼との差の数値の出どころが1試験に偏っている」までです。
無治療と比べた試験、偽指圧と比べた試験
無治療と比べた試験は韓国の1本(解析14名)で、コクラン自身が「不確か」と書いています。
指圧と偽指圧の比較も1本(90名・確実性は低い)で、中等度〜重度の症状が残る人が少なかったと報告されています。ただし本人が押すセルフ指圧を含むので、鍼灸師の施術の根拠には置き換えられません。
なお、盲検がうまくいったかを確かめた試験はありませんでした(詳細はボックス②)。
対照の違いで結論が変わる仕組みは鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比が土台になります。
図解:PMSのコクランレビューの比較を対照ごとに5枚のカードに分け、測ったもの・試験数・人数・確実性・報告された結果を並べた図
比べた相手によって、試験の数も測ったものも違います。
1試験・67名(Zhang 2017)|確実性は低い
気分・身体の症状スコアと生活の質で差が報告された
2試験・100名(Habek 2002・Yu 2006)|確実性は非常に低い
個々の試験は鍼の群に利益を報告
ただし結果のばらつきが大きく(コクランは「反応」の定義と施術内容の違いによると推定)、この項目の結論は「差はほとんど、あるいはまったく無いかもしれない」(要約表のコメントは「差があるか判断できない」)
1試験・解析14名(Shin 2009)|確実性は非常に低い
コクラン自身が「不確か」と記載
1試験・90名(Bazarganipour 2017)|確実性は低い
試験終了時に中等度〜重度の症状がある人が少なかった(本人が押すセルフ指圧を含む)
当サイトの検索でも、SSRI・低用量ピルと直接比べた試験は見つかっていません(医中誌Web・中国語データベースなどは未検索)。薬の種類が特定できない比較や、別の薬と比べた試験を含むレビューはあります(ボックス④)
模式図です。カードごとに測ったものが違います(各カードの「測ったもの」)。カードをまたいで結果を比べず、「刺す偽鍼では差が消えた」とも読まないでください。反対に、浅く刺す偽鍼のカードの「個々の試験は利益を報告」だけを取り出して「刺す偽鍼にも差が出た」と読むこともできません。コクランはその2試験について、差はほとんど、あるいはまったく無いかもしれないと結論しています。「差はほとんど無いかもしれない」「判断できない」「不確か」は、差が無いことの証明ではありません。指圧の試験は本人が押すセルフ指圧を含み、鍼灸師の施術の根拠とは別です。薬のカードの0試験はコクランの採用5試験の中での数です。数値はエビデンスボックス②にあります。出所=CD005290.pub2(PMID 30105749)。カードの構成は当サイトが組み直したものです。
エビデンスボックス② CD005290 の比較ごとの数値と、試験ごとの対照(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- 出所はすべて CD005290.pub2(PMID 30105749)。抄録の逐語は2経路一致。試験の割り当て・対照・盲検・Summary of findings の記述も、PMC 本文を2つの経路で取得して一致を確認しています。
- 鍼 vs 偽鍼・症状(逐語)=”Acupuncture may provide a greater reduction in mood-related PMS symptoms (mean difference (MD) -9.03, 95% confidence interval (CI) -10.71 to -7.35, one randomised controlled trial (RCT), n = 67, low-quality evidence) and in physical PMS symptoms (MD -9.11, 95% CI -10.82 to -7.40, one RCT, n = 67, low-quality evidence) than sham acupuncture, as measured by the Daily Record of Severity of Problems scale (DRSP).”(当サイトによる訳:DRSP で測ると、鍼は偽鍼より、気分に関わるPMS症状〈平均差 −9.03、95%信頼区間 −10.71〜−7.35、1試験、67名、質は低い〉と身体のPMS症状〈平均差 −9.11、95%CI −10.82〜−7.40、1試験、67名、質は低い〉を大きく減らしうる。)
- 鍼 vs 偽鍼・生活の質(逐語)=”Acupuncture may improve quality of life (measured by the WHOQOL-BREF) compared to sham (MD 2.85, 95% CI 1.47 to 4.23, one RCT, n = 67, low-quality evidence).”(当サイトによる訳:鍼は偽鍼と比べて生活の質〈WHOQOL-BREF〉を改善しうる〈平均差 2.85、95%CI 1.47〜4.23、1試験、67名、質は低い〉。)
- 🛑 上の3つの数値の出どころ(本文 Effects of interventions の逐語)=”One trial (Zhang 2017) reported on this outcome.”/”One trial reported quality of life outcomes using the WHOQOL‐BREF (Zhang 2017).” 対照は “a non-penetrative sham”(刺入しない偽鍼)。Zhang 2017 の原著の書誌は、当サイトは取得できていません。⚠️ 数値の大きさは DRSP の尺度の中での値で、当サイトは臨床的な大きさの解釈をしていません。
- 鍼 vs 偽鍼・反応率(抄録の逐語)=”There may be little or no difference between the groups in response rates. Use of a fixed-effect model suggested a higher response rate in the acupuncture group than in the sham group (…), but owing to the high heterogeneity we tested the effect of using a random-effects model, which provided no clear evidence of benefit for acupuncture (RR 4.22, 95% CI 0.45 to 39.88, two RCTs, n = 100, I2 = 82%, very low-quality evidence).”(当サイトによる訳:反応率には群間でほとんど、あるいはまったく差がないかもしれない。固定効果モデルを用いると鍼群の反応率が偽鍼群より高いことが示唆されたが〈…〉、異質性が高いためランダム効果モデルを用いた影響を検討したところ、鍼の利益を示す明確なエビデンスは得られなかった〈RR 4.22、95%CI 0.45〜39.88、2試験、100名、I²=82%、質は非常に低い〉。)🛑 括弧内で省いたのは固定効果モデルの値です。著者は異質性の高さを理由にこの値を採らず、Summary of findings にはランダム効果の値を載せています。当サイトは著者が採らなかった値を載せていません。本文の「判断できない」は、Summary of findings 表のこの行のコメント “There was insufficient evidence to determine whether there was any difference in response rate between the groups.” によります。
- 2試験それぞれの結果と、この項目の著者の結論(本文 Effects of interventions「1.4 Response rate」の段落の逐語・2経路一致)=”Individually, both studies found a benefit in the intervention group, and pooling of their data supported this finding (…). However, due to the high heterogeneity we tested the effect of using a random‐effects model, which provided no clear evidence of benefit for acupuncture (…). The high heterogeneity is most likely due to very heterogenous definitions of what was defined as a ‘response rate’ between the two studies as well as clinical heterogeneity in the intervention delivered. We concluded that owing to the very low quality of the evidence, there may be little or no difference between the groups for this outcome.”(当サイトによる訳:個々には、両試験とも介入群に利益を認めており、データを統合してもこの所見が支持された〈…〉。しかし異質性が高いためランダム効果モデルを用いた影響を検討したところ、鍼の利益を示す明確なエビデンスは得られなかった〈…〉。この高い異質性は、2試験のあいだで「反応率」として定義されたものが大きく異なっていたことと、施術内容の臨床的な違いによる可能性が最も高い。エビデンスの質が非常に低いため、この項目については群間に差がほとんど、あるいはまったく無いかもしれないと結論した。)評釈:段落は「個々には利益」で始まり「差はほとんど無いかもしれない」で終わります。当サイトはどちらか片方だけを取り出しません。冒頭の「統合」は著者が採らなかった固定効果モデルの計算で、括弧内の値は省いています。
- 反応率の2試験の対照(本文・1パス)=Habek 2002:経絡上にない大腿外側・上腕の点に、得気を起こさない浅刺(”sham‐superficial acupuncture without the de qi effect”)/Yu 2006:「非経絡」「非経穴」への浅刺(”superficial needling on ‘non‐meridian’ or ‘non‐acupuncture’ points”)。⚠️ Yu 2006 の原著書誌は取得できていません。PubMed にある Yu JN 2005(中国語の系統的レビュー)とは別物です。
- 鍼 vs 無治療(逐語)=”Due to the very low quality of the evidence, we are uncertain whether acupuncture reduces PMS symptoms compared to a no treatment control (MD -13.60, 95% CI -15.70 to -11.50, one RCT, n = 14).”(当サイトによる訳:エビデンスの質が非常に低いため、鍼が無治療対照と比べてPMS症状を減らすかどうかは不確かである。)出どころ=Shin 2009(韓国・手鍼療法と手灸療法。PubMed の分類は controlled clinical trial。当サイトは抄録未取得)。
- 指圧 vs 偽指圧(逐語)=”We found low-quality evidence that acupressure may reduce the number of women with moderate to severe PMS symptoms at the end of the trial compared to sham acupressure (RR 0.64 95% CI 0.52 to 0.79, one RCT, n = 90, low-quality evidence).”(当サイトによる訳:指圧は偽指圧と比べて、試験終了時に中等度〜重度のPMS症状がある女性の数を減らしうるという、質の低いエビデンスが得られた。)出どころ=Bazarganipour 2017(大学生・訓練後にセルフ指圧を含む)。🛑 国名は原著抄録ではイラン、コクラン本文では Iraq と記載されており食い違っています。当サイトは原著に従います。同試験の生活の質の数値は、尺度の満点を確認できていないため載せていません。
- 有害事象(逐語)=”There was insufficient evidence to determine whether there was any difference between the groups in the rate of adverse events (risk ratio (RR) 1.74, 95% CI 0.39 to 7.76, three RCTs, n = 167, I2 = 0%, very low-quality evidence).”(当サイトによる訳:有害事象の発生率に群間差があるかを判断するにはエビデンスが不十分だった。)Habek 2002 の抄録には、鍼群の1名に気海(Ren 6)の刺鍼後に小さな皮下出血があったと書かれています。
- 盲検と質(本文 Quality of the evidence の逐語)=”Blinding of participants was at low risk of bias in three studies, however none of these reported assessments of blinding success between groups.”/”Only one trial was at a low risk of bias across all domains.”(当サイトによる訳:参加者の盲検は3研究でバイアスのリスクが低かったが、いずれも群間で盲検の成否を評価していなかった。/すべての領域でバイアスのリスクが低かったのは1試験のみだった。)⚠️ その1試験がどれかは、当サイトは確認できていません。
コクラン以降の3試験は、偽の処置や別の方法と比べて何を示したか
コクランの検索が止まったあとにも試験は出ています。肯定側だけを並べると、次の3本が消えます。
本物の耳穴と偽の耳穴
1本目はブラジルの91名の試験です(Korelo 2022)。耳の経穴にマイクロニードルを用いる群と、PMSと関係のない耳穴に同じ処置をする偽の群などを比べました。
抄録の結果には、本物の群と偽の群の両方で、PMS症状・筋骨格系の痛み・不安のスコアが有意に低かったと書かれています。生活の質と追跡の解析で有意差が認められたのは、偽の群だけでした。それでも同じ抄録の結論は、耳介療法はPMSの身体症状と気分の症状を減らす補助療法として使える、としています。
ただし抄録からは、「有意に低い」が施術前と比べた値なのか、3つ目の群と比べた値なのかが分かりません。本物と偽物を直接比べた数値もなく、当サイトは本文を読めていません。
ヨガ、ストレス対処の教育と比べた指圧
2本目は155名の学生を、ヨガ・指圧・対照に分けた試験です(Simsek 2021)。ヨガの群がほかの群より良かったと報告されています。
3本目はイランの大学生の試験です(Mirghafourvand 2025)。ストレスへの対処法を学ぶ教育とセルフ指圧は、どちらも対照より月経前ストレスの得点が低く、両者のあいだに差は認められませんでした。
3本から読めること
3本とも耳や指圧の試験で、体に刺す鍼の試験ではなく、「鍼は効かない」の証明でもありません。読めるのは、偽の処置でも症状のスコアが低く出たり、別の方法が並んだり上回ったりしているということです。
RCOG(英国王立産婦人科医協会)の2017年の指針も、PMSではプラセボ反応が36〜43%あるため、エビデンスを慎重に評価すべきだと書いています。
偽の側で何が起きているのかは鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由に、盲検がなぜ難しいのかは鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読むにまとめています。
図解:PMSに対する耳介療法と指圧の3つの試験について、偽の処置や別の方法と比べた結果を並べた比較カード
3つとも耳介療法か指圧の試験で、体幹や手足に刺す鍼(体鍼)の試験ではありません。
本物の群と偽の耳穴の群の両方で症状スコアが有意に低い(何と比べた値かは抄録から分からず、本物と偽物を直接比べた数値も無い)
生活の質と追跡で有意なのは偽の群だけ
それでも抄録の結論は「PMSの身体と気分の症状を減らす補助療法として使える」
PMS尺度の事後の平均得点は、ヨガの群が指圧を含むほかの群より低かった(生活の質の一部の下位尺度も高い)。盲検の記載は抄録に無し
セルフ指圧とストレス対処の教育に差は認められず(どちらも対照より月経前ストレスの得点が低い)
模式図です。3試験とも耳介療法または指圧の試験で、体に刺す鍼の試験ではありません。カードの「」内は当サイトによる訳を短くしたもので、逐語はエビデンスボックス③にあります。Korelo 2022 の抄録には本物と偽物を直接比べた数値がなく、「有意に低い」が何と比べた値かも抄録からは特定できません。Simsek 2021 と Mirghafourvand 2025 の対照群の内容は抄録に記載がありません。「差は認められず」は同等であることの証明ではなく、これらは「鍼は効かない」ことの証明でもありません。当サイトはいずれも抄録まで(Mirghafourvand 2025 は指圧の実施者の記述のみ本文)の確認です。出所=Korelo 2022(PMID 35167949)/Simsek 2021(PMID 33310053)/Mirghafourvand 2025(PMID 40063193)。カードの構成は当サイトが組み直したものです。
エビデンスボックス③ 否定側・中立側の3試験の逐語と限界(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Korelo RIG, Moreira NB, Miguel BAC, Cruz CGD, Souza NSP, Macedo RMB, Gallo RBS. Effects of Auriculotherapy on treatment of women with premenstrual syndrome symptoms: A randomized, placebo-controlled clinical trial. Complement Ther Med. 2022;66:102816.(PMID 35167949/DOI 10.1016/j.ctim.2022.102816)単盲検・3群・91名・週1回×8週。当サイトの確認=抄録の逐語(1パス)。本文は未読。
- 偽の群(PG)=PMSと無関係な7つの耳穴(扁桃・声帯・歯・目・アレルギー・口・外鼻)にマイクロニードル。3つ目の群(CG)の内容は抄録に記載がありません。
- Results(2文)と Conclusion(1文)を並べて引きます=”The AG and PG showed significantly lower scores of PMS symptoms, musculoskeletal pain, and anxiety. On the quality of life and follow-up analysis, the significance was observed only in PG.”/”Auriculotherapy can be used as adjunctive therapy to reduce the physical and mood PMS symptoms.”(当サイトによる訳:本物の耳介療法群〈AG〉と偽の群〈PG〉は、PMS症状・筋骨格系の痛み・不安で有意に低いスコアを示した。生活の質と追跡の解析では、有意差は PG でのみ認められた。/耳介療法は、PMSの身体症状と気分の症状を軽減するための補助療法として使用できる。)
- 🛑 評釈:「有意に低い」が何と比べた値か(開始時か、CG か)は、抄録からは特定できません。AG と PG を直接比べた数値も抄録にありません。したがって当サイトは「本物と偽物に差が無いことが示された」とは書かず、「両方で有意に低いスコアが報告され、生活の質と追跡では PG だけが有意だった。それでも結論は肯定的」という並びを示すところまでにとどめます。CG を「無治療」とも書いていません。
- Simsek Kucukkelepce D, Unver H, Nacar G, Tashan ST. The effects of acupressure and yoga for coping with premenstrual syndromes on premenstrual symptoms and quality of life. Complement Ther Clin Pract. 2021;42:101282.(PMID 33310053/DOI 10.1016/j.ctcp.2020.101282)無作為化・事前事後・155名(ヨガ50/指圧51/対照54)・12週・学生。当サイトの確認=抄録の逐語(1パス)。
- 逐語=”It was found that the Premenstrual Syndrome Scale posttest mean score of the students was lower, and the physical health, psychological health, and environment sub-scale mean scores of the World Health Organization Quality of Life Questionnaire were higher in the yoga group in comparison to the other groups (p < 0.05).”/”Yoga was found to be a more effective non-pharmacological method for coping with premenstrual symptoms.”(当サイトによる訳:ヨガ群では、ほかの群と比べて、PMS尺度の事後平均得点が低く、WHOの生活の質質問票の身体的健康・心理的健康・環境の下位尺度の平均得点が高かった〈p<0.05〉。/ヨガは、月経前症状に対処するためのより有効な非薬物療法であることがわかった。)
- 評釈:盲検の有無と対照群の内容は、抄録に記載がありません。国は抄録に書かれていません。指圧の手順は本記事では紹介しません。
- Mirghafourvand M, Abdolalipour S, Mohamadi Bolbanabad A, Manouchehri B. Comparison of the effect of teaching coping skills and acupressure on premenstrual stress: a randomized controlled trial. Discov Ment Health. 2025;5(1):31.(PMID 40063193/DOI 10.1007/s44192-025-00153-1/PMC11893933)イラン・大学生・3群(コーピングスキル教育/セルフ指圧/対照)。アウトカムは月経前ストレスの質問票。当サイトの確認=抄録の逐語(1パス)と、本文 Intervention 節の指圧の実施者の記述(本人が自宅または寮で行う)。
- 数値(抄録)=対照と比べて、指圧群 AMD −20.6(95%CI −23.1〜−17.1、P<0.001)、コーピング群 AMD −20.5(95%CI −23.4〜−16.7)。指圧 vs コーピング AMD −0.1(95%CI −3.5〜2.9、P=0.995)。(AMD=調整済み平均差)
- 評釈:偽の対照はなく、対照群の内容は抄録に記載がありません。総人数は取得した抄録の逐語で確認できていないため書いていません。指圧群の数値は、コーピング教育との比較とセットでのみ示します。セルフ指圧を含む試験なので、鍼灸師の施術の根拠としては読めません。
- RCOG Green-top Guideline No.48(2017)§6.1 本文の逐語(1パス)=”Although there is limited evidence to support the use of complementary therapies, some women with PMS may benefit from a holistic approach. This is particularly important for women in whom hormonal therapy is contraindicated. It is important to evaluate evidence carefully for PMS as there is a 36–43% placebo response.”(当サイトによる訳:補完療法の使用を支持するエビデンスは限られているが、PMSの女性の中には全人的なアプローチから利益を得る人もいるかもしれない。これはホルモン療法が禁忌の女性でとくに重要である。PMSではプラセボ反応が36〜43%あるため、エビデンスを慎重に評価することが重要である。)書誌はボックス⑤。
SSRIや低用量ピルと直接比べた試験はあるのか
PMSの患者さんは、低用量ピルやSSRI(気分の症状に使われる抗うつ薬の一種)を処方されていることがあります。
コクランは、採用5試験に薬と比べた試験は1本もなかったと書いています。当サイトも論文データベース(Europe PMC)で、SSRI・低用量ピルと直接比べた試験を探しましたが、見つかりませんでした(医中誌Web・中国語データベースは未検索)。
「薬と比べた」試験を集めたレビューもありますが、比べた薬は「薬」とだけ書かれていたり、プロゲスチンや抗不安薬だったりして、SSRIや低用量ピルとの比較とは言えないうえ、効果を「有効率」(決めた基準で有効と判定された人の割合)で数えているため、数値は使っていません。
ですから「鍼が薬の代わりになる」「薬を減らせる」と読める説明には根拠がありません。薬の判断は、処方した医師へ戻してください。
エビデンスボックス④ 薬との比較について確認できたこと(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- CD005290(PMID 30105749)抄録の逐語=”No trials compared acupuncture or acupressure versus other active treatments.”(当サイトによる訳:鍼や指圧をほかの実治療と比べた試験はなかった。)本文(1パス)=”All trials compared acupuncture with either sham or with no‐treatment. No trial compared acupuncture or acupressure with the current International Society for Premenstrual Disorders (ISPMD) recommended treatments.”
- 当サイトの検索(2026年9月11日):Europe PMC で PMS/PMDD × 鍼/指圧 × fluoxetine/SSRI/sertraline/paroxetine/oral contraceptive/drospirenone/progestin → 3件。いずれも直接比較の試験ではありませんでした(総説2件と下記 Kim 2011)。医中誌Web・CiNii・CENTRAL・中国語データベースは未検索です。「存在しない」ではなく「当サイトの範囲で見つからなかった」です。
- Zhang J, Cao L, Wang Y, Jin Y, Xiao X, Zhang Q. Acupuncture for Premenstrual Syndrome at Different Intervention Time: A Systemic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2019;2019:6246285.(PMID 31341497/PMC6614973)15試験・1,103名。薬と比べた試験を含みますが、主要アウトカムは有効率で、採用試験の一覧表(Table 1)では薬の対照が「Medicine」とだけ記載され、薬の種類は特定できません(当サイトがページを開いて確認・1回の取得)。GRADE は使われていません。著者自身が限界の節(4.5 Limitations of Study)で “The methodological quality of the literature included in this study is poor” と書いています。当サイトはこのレビューの統合値を載せていません。
- Kim SY, et al. Acupuncture for premenstrual syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BJOG. 2011;118(8):899-915.(PMID 21609380)の薬との比較は、プロゲスチンや抗不安薬を相手にした有効率または反応率の比較で、SSRI・低用量ピルとの比較ではありません(当サイトは抄録までの確認)。著者自身が組み入れ試験の多くでバイアスのリスクが高いと書いています。統合値は載せていません。
海外のガイドラインと日本の指針は、PMSの鍼治療をどう扱っているのか
本文を読めた3つの文書(ISPMD・RCOG・日本の指針)は、いずれも鍼に触れた箇所で、エビデンスの限界にも触れています。片方だけを切り出さないでください。
国際月経前障害学会の合意文書(2013)
国際月経前障害学会(ISPMD)の合意文書は、鍼を「初期に肯定的な報告があり、さらに研究する価値があるかもしれない手段」のひとつに挙げています。同じ節は、非薬物療法で効果のエビデンスがいちばん強いのはカルシウム・チェストベリー・認知行動療法だと書いています。
英国王立産婦人科医協会の指針(2017)
RCOGの指針は、補完療法全体について「一部の補完療法を支持するエビデンスは相反している、と伝えるべき」としています。
鍼は補完療法の表で「一定の便益(Some benefit)」と整理されています。ただし同じ行の注記は「バイアスのリスクが高い。推奨の前にさらなるデータが必要」です。
当サイトは2つをセットで示します。この指針は2017年版で、現在は改訂作業中と表示されています。
日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の指針(2025年3月発行)
『月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針』は、『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編』とは別の文書です。
補完代替医療をどう用いるかを問う項目(CQ107)で、回答(Answer)のひとつに鍼治療が挙がっています。
ただしその Answer には、推奨度の記号が付いていません。同じ項目は、標準治療のような確かなエビデンスは無いと理解したうえで選ぶことも挙げています。解説では補完代替医療全体について、効果が見られなければ標準治療への切り替えを患者さんに説明する、という趣旨も述べています。解説の中では、2018年のコクランレビューとACOGの指針に触れています。
米国産科婦人科学会(ACOG)の指針について、当サイトが確認できている範囲
日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の指針は、CQ107 の解説で、米国産科婦人科学会(ACOG)の診療ガイドライン(2023)では鍼治療が「条件付き推奨」になっていると紹介しています。
当サイトは ACOG の本文を確認できておらず、推奨の対象となる症状や条件、根拠のエビデンスの質は確かめられていません。
そのため、患者さんへの説明や自院の案内で「推奨されている」と縮めて伝えないでください。
エビデンスボックス⑤ ガイドライン・指針の書誌と、確認できた範囲(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Nevatte T, O’Brien PM, Bäckström T, Brown C, Dennerstein L, Endicott J, et al. ISPMD consensus on the management of premenstrual disorders. Arch Womens Ment Health. 2013;16(4):279-291.(PMID 23624686/DOI 10.1007/s00737-013-0346-y/PMC3955202)当サイトの確認=PMC本文の「Alternative therapies」節の2文を同一経路で2回取得し一致(Tier B)。
- 逐語(Alternative therapies 節)=”Modalities with positive initial reports that may deserve further study for women with PMDs include acupuncture, Qi therapy, relaxation, reflexology, massage, krill oil, lavender oil, Chinese herbs and transmagnetic stimulation.”/”The strongest evidence for efficacy of non-pharmacological treatments for PMDs exists for calcium, chasteberry and cognitive-behaviour therapy.”(当サイトによる訳:月経前障害の女性について、初期に肯定的な報告があり、さらなる研究に値するかもしれない手段には、鍼、気功、リラクゼーション、リフレクソロジー、マッサージ、オキアミ油、ラベンダー油、中国の生薬、経頭蓋磁気刺激が含まれる。/月経前障害に対する非薬物療法の有効性のエビデンスが最も強いのは、カルシウム、チェストベリー、認知行動療法である。)
- 評釈:鍼は「さらなる研究に値するかもしれない」手段の列挙の中にあり、治療として勧められた列ではありません。2013年の文書で、CD005290(2018)より前です。
- Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Management of Premenstrual Syndrome: Green-top Guideline No. 48. BJOG. 2017;124(3):e73-e105.(PMID 27900828/DOI 10.1111/1471-0528.14260)当サイトの確認=Wiley の全文ページをブラウザで開いて取得(§6.1 と Table 1。同じページからの2通りの抽出で一致・Tier B)。
- §6.1 の推奨(逐語)=”Women with PMS should be informed that there is conflicting evidence to support the use of some complementary medicines.”(Grade of recommendation: C)(当サイトによる訳:PMSの女性には、一部の補完療法の使用を支持するエビデンスは相反していると伝えるべきである。)
- Table 1 “Summary of evidence for selected complementary therapies” の鍼の行(5セルの逐語)=Complementary therapy: Acupuncture/Benefit: Some benefit/Types of studies: Case–control/Numbers in the study: 235 (10 published studies)/Note: High risk of bias. Further data before recommendation.(当サイトによる訳:便益=一定の便益/研究の型=Case–control(表記のまま)/研究の人数=235名(10件の出版研究)/注記=バイアスのリスクが高い。推奨の前にさらなるデータが必要。)表の鍼の文献は、学位論文と中国語・韓国語誌が中心です。
- 評釈:「Benefit」列と「Note」列はセットでのみ引きます。当サイトが確認した §6.1・Table 1・執行要約(Executive summary)には、鍼単独の推奨文はありません。RCOG の公式ページには “This edition was reviewed by Guidelines Committee in May 2023 and an update of the guideline is now under development.” と表示されています(2026年9月11日時点)。版が変わる前提で「2017年版では」と読んでください。
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会(2023–2024年度). 月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針. 2025年3月発行(奥付の発行日は3月31日). https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/PMS_PMDDshishin.pdf 当サイトの確認=PDF 本文をテキスト化して確認(Tier B)。本記事では逐語を引かず、言い換えで紹介しています。Answer の各項目・解説の文章・図表は再現していません。
- 評釈:本記事がこの指針について書いているのは、①CQ107(補完代替医療)の Answer のひとつに鍼治療が挙がっている ②その Answer に推奨度の記号は付いていない ③同じ CQ は、標準治療のような確かなエビデンスは無いと理解したうえで選ぶことも挙げている ④解説でコクランレビュー(2018)と ACOG の指針に触れている、⑤解説で補完代替医療全体について、効果が見られなければ標準治療への移行を患者に説明する趣旨を述べている、の5点です。コクランの数値は、この指針を経由せず CD005290 から直接示しています。
- ACOG Clinical Practice Guideline No. 7: Management of Premenstrual Disorders. Obstet Gynecol. 2023;142(6):1516-1533.(PMID 37973069/DOI 10.1097/AOG.0000000000005426)🛑 本文は当サイトの経路では読めませんでした(出版社サイト・ACOG サイトとも抄録のみ)。抄録の RECOMMENDATIONS 節の逐語(4文中はじめの3文)=”This Clinical Practice Guideline includes recommendations on the following evidence-based treatment options for premenstrual disorders, with an acknowledgement that many patients may benefit from a multimodal approach that combines several interventions: pharmacologic agents (hormonal and nonhormonal), psychological counseling, complementary and alternative treatments, exercise and nutritional therapies, patient education and self-help strategies, and surgical management. Recommendations are classified by strength and evidence quality. Ungraded Good Practice Points are included to provide guidance when a formal recommendation could not be made because of inadequate or nonexistent evidence.”(当サイトによる訳:本診療ガイドラインは、多くの患者が複数の介入を組み合わせた多面的なアプローチから利益を得うることを認めたうえで、月経前障害に対するエビデンスに基づく次の治療選択肢について推奨を含む=薬物療法〈ホルモン性・非ホルモン性〉、心理カウンセリング、補完代替療法、運動・栄養療法、患者教育とセルフヘルプ、外科的管理。推奨は強さとエビデンスの質で分類されている。エビデンスが不十分または存在しないため正式な推奨を出せなかった場合の指針として、等級の付かない Good Practice Point を含めている。)省いた4文目は、一部の例外を除き推奨が思春期にも当てはまるとする文です。抄録に acupuncture の語はなく、補完代替療法のどれが等級付きの推奨で、どれが Good Practice Point なのかも、抄録からは分かりません。「ACOG は鍼に触れていない」とも「ACOG が鍼を推奨している」とも、当サイトの地の文では書きません。
- 『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023』(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会)=Minds の目次で CQ405「月経前症候群の診断・管理は?」が実在することまで確認。🛑 解説本文は当サイト未確認のため、鍼灸への言及の有無は書けません。
- NICE CKS(Premenstrual syndrome)=HTTP 403 で到達できず、未確認です。
PMDDとは何が違い、鍼治療の研究はどこまであるのか
PMSのうち、気分の症状が主で、生活への支障が強い型はPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれます。
精神医学の診断名で、抑うつ障害のひとつとして扱われています(日本の指針の記載によります。当サイトは米国精神医学会の診断マニュアル本体を確認していません)。
診断は医師が行います。2024年のメタ解析(複数の研究を統計的にまとめた分析)は、確定診断には2周期にわたる症状の前向きな記録が必要で、そうでなければ暫定的な診断になると書いています。有病率はこの数え方で大きく変わり、確定診断と暫定診断で倍以上違いました(数値はボックス⑥)。
では鍼の研究はどうか。コクランは対象にPMDDを含めていますが、どの試験がPMDDの人を組み入れたかは確認できず、「PMDDにも効果を示した」とは読めません。
PMDDだけを対象にした報告は3つでした。ブラジルの30名の試験は、抄録の方法の文で自らを「ランダム化臨床試験」と呼びながら、同じ文で参加者を交互に振り分けたと書いています(この方法だと、次の人がどちらの群に入るか前もって分かります)。ランダム化比較試験としては扱えません。日本の1症例の報告(明治鍼灸大学〈当時〉)は、鍼を受けた期間に症状が軽くなったと報告しつつ、効果を評価する難しさにも触れています。中国の試験計画は、まだ結果がありません。
当サイトの検索では、PMDDだけを対象に無作為化した鍼の試験の結果は見つかりませんでした(医中誌Web・中国語データベースは未検索)。
エビデンスボックス⑥ PMDD の定義・有病率と、PMDD 単独の鍼の報告(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Epperson CN, Steiner M, Hartlage SA, Eriksson E, Schmidt PJ, Jones I, Yonkers KA. Premenstrual dysphoric disorder: evidence for a new category for DSM-5. Am J Psychiatry. 2012;169(5):465-475.(PMID 22764360/PMC3462360)抄録の逐語(1パス)=”Premenstrual dysphoric disorder, which affects 2%–5% of premenopausal women, was included in Appendix B of DSMIV, ‘Criterion Sets and Axes Provided for Further Study.'”(当サイトによる訳:閉経前女性の2〜5%が罹患する月経前不快気分障害は、DSM-IV の付録B「今後の研究のための基準案と軸」に含まれていた。)評釈:DSM-5 の作業部会側が正式な診断カテゴリーにすることを提案した論文で、DSM-5-TR 本体ではありません。当サイトは DSM-5-TR 本体を確認していないため、診断基準の項目は書いていません。
- Reilly TJ, Patel S, Unachukwu IC, Knox CL, Wilson CA, Craig MC, Schmalenberger KM, Eisenlohr-Moul TA, Cullen AE. The prevalence of premenstrual dysphoric disorder: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2024;349:534-540.(PMID 38199397/DOI 10.1016/j.jad.2024.01.066)抄録の逐語(1パス)=”Confirmed diagnosis requires prospective monitoring of symptoms over two cycles, otherwise the diagnosis is provisional.”(当サイトによる訳:確定診断には2周期にわたる症状の前向きな記録が必要であり、そうでなければ診断は暫定的なものとなる。)
- Reilly 2024 の数値=44研究・48の独立サンプル・50,659名。統合有病率は確定診断 3.2%(95%CI 1.7〜5.9%)/暫定診断 7.7%(95%CI 5.3〜11.0%)、I²=99%。地域サンプル×確定診断に限ると 1.6%(95%CI 1.0〜2.5%)、I²=26%。著者の結論(2文)=”The point prevalence of premenstrual dysphoric disorder using confirmed diagnosis is lower compared with provisional diagnosis. Studies relying on provisional diagnosis are likely to produce artificially high prevalence rates.”(当サイトによる訳:確定診断を用いた月経前不快気分障害の時点有病率は、暫定診断より低い。暫定診断に頼る研究は、人為的に高い有病率を生みやすい。)🛑 3.2%・7.7% は研究間のばらつき(I²=99%)が極めて大きいため、単独の「有病率」としては使わず、1.6% とセットで示します。
- Takeda T, Tasaka K, Sakata M, Murata Y. Prevalence of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder in Japanese women. Arch Womens Ment Health. 2006;9(4):209-212.(PMID 16761114)子宮がん検診を受けた20〜49歳の日本人女性1,187名。抄録の逐語(一部・1パス)=”The rates of prevalence of moderate to severe PMS and PMDD in Japanese women were 5.3 and 1.2%, respectively, which are lower than those in Western women. Only 5.3% of women with moderate to severe PMS and PMDD were treated.”(当サイトによる訳:日本人女性における中等度〜重度のPMSとPMDDの有病率はそれぞれ5.3%と1.2%で、欧米の女性より低かった。中等度〜重度のPMSとPMDDの女性のうち、治療を受けていたのは5.3%にとどまった。)限界:検診受診者の集団で、前向きの2周期記録ではなく質問票(PSQ)による評価、20年前のデータです。
- Carvalho F, Weires K, Ebling M, Padilha Mde S, Ferrão YA, Vercelino R. Effects of acupuncture on the symptoms of anxiety and depression caused by premenstrual dysphoric disorder. Acupunct Med. 2013;31(4):358-363.(PMID 24029029/DOI 10.1136/acupmed-2013-010394)ブラジル・PMDD 30名・週2回×2周期(計16回)・対照は偽鍼(型は抄録に記載なし)。🛑 方法の逐語(Europe PMC で2経路一致)=”In a single-blind randomised clinical trial, 30 volunteers with PMDD were assigned alternately to group 1 (acupuncture) or group 2 (sham acupuncture), …”(当サイトによる訳:単盲検ランダム化臨床試験において、PMDDの30名のボランティアを1群〈鍼〉と2群〈偽鍼〉に交互に割り付け、…。省いた部分は評価尺度〈HAM-A・HAM-D〉の名前です)著者の結論=”The results suggest that acupuncture could be another treatment option for PMDD patients.”(当サイトによる訳:結果は、鍼がPMDD患者にとってもう一つの治療選択肢になりうることを示唆している。)評釈:抄録は同じ文の中で randomised と称していますが(表題にこの語はありません)、交互割付は次の割付が予測できる方法で、無作為化ではありません。減少率の数値は載せていません。「もう一つの選択肢」は薬と比べた結果ではありません。
- Taguchi R, Matsubara S, Yoshimoto S, Imai K, Ohkuchi A, Kitakoji H. Acupuncture for premenstrual dysphoric disorder. Arch Gynecol Obstet. 2009;280(6):877-881.(PMID 19326136)症例報告+文献レビュー(1例)。抄録の3文を並べて引きます(Europe PMC で2経路一致)=”Symptoms ameliorated during the acupuncture (+) period, but deteriorated during the acupuncture (-) period.”/”The difficulties in evaluating the effectiveness of acupuncture for PMS/PMDD are addressed.”/”It is suggested that acupuncture may be a treatment option for PMDD.”(当サイトによる訳:症状は鍼〈+〉期間に改善し、鍼〈−〉期間に悪化した。/PMS/PMDDに対する鍼の有効性を評価することの難しさを論じる。/鍼はPMDDの治療選択肢の一つとなりうることが示唆される。)(1文目の前には鍼を用いた旨の1文が、1文目と2文目のあいだには、本報告が症例の経過・PMDDの診断と治療・PMSへの鍼の先行報告をまとめるという構成を説明する2文があります。2文目と3文目は連続しています)評釈:1例の報告で、効果の根拠にはなりません。当サイトは「評価の難しさ」を述べた文を落とさずに引いています。
- Zeng YM, Liu SY, Qiu JH, Shi JY, Tong JT, Zhang QY, Wang JX. Auricular Acupressure for Depressive and Anxiety Symptoms in Women with Premenstrual Dysphoric Disorder: Protocol for a Pilot Randomized Sham-Controlled Trial. Neuropsychiatr Dis Treat. 2026;22:620599.(PMID 42483521/PMC13387379)試験計画(計画66名・偽の耳穴圧が対照)。結果はまだありません。
施術を続けず医療機関へつなぐのは、どんな訴えがあったときか
鍼灸師は診断を行う立場にありませんが、「いつ医療機関へつなぐか」は毎日の判断です。
日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の指針には、医師が精神科・心療内科への紹介を検討するタイミングを扱う項目(CQ201)があります。
精神症状が重く治療が難しい場合や、症状による行動や生活への支障が大きい場合などを、紹介の目安に挙げています。解説では、死にたい気持ちの高まりや自分・他人を傷つける行動にも触れ、月経前の時期は自殺の危険が高い期間だという報告にも言及しています。
これは医師向けの目安で、鍼灸師の判断基準として作られたものではありません。
ですから鍼灸院では、程度を見積もろうとしないでください。患者さんから次のような話が出た時点で、施術を続ける判断をせず、医療機関へつなぎます。
- 生理前の気分の症状で、仕事や家庭の生活が回らないと話すとき
- 人に手を上げてしまいそう、自分を傷つけたい、死にたい気持ちが強くなる、と話すとき
- 心の病気で治療中で、それが生理前に悪くなると話すとき
2つ目の話が出たときは、程度を見積もらず、その日のうちに医療機関にかかるようお伝えください。すでに通っている心療内科・精神科や婦人科があれば、まずそこへ連絡してもらうよう伝えてください。これは所見にもとづく医学的な基準ではなく、当サイトの運用上の目安です。
電話やSNSで相談できる公的な窓口は、厚生労働省ホームページの「まもろうよ こころ」に一覧があります。医療機関へつなぐことの代わりではなく、あわせてご本人に伝えてください。
処方されている薬の増減の相談は、処方した医師へ戻します。
そして大事な留保です。どれにも当てはまらなくても、医療機関での評価が要らないという意味にはなりません。迷ったときは、施術より受診を先に置いてください。
この章について、当サイトが確認できている範囲
紹介の目安は、日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の指針(2025年3月発行)の CQ201 を当サイトが言い換えたもので、Answer と解説の文章は再現していません。
上の3つの箇条は、医師向けのこの目安を鍼灸院の場面に置き換えた当サイトの整理で、鍼灸師が重症度を評価するための基準ではありません。
明日から使える|PMSの説明トーク例と自院サイトの書き方
ここまでを、そのまま患者さんに話せる形にします。
① 「PMSに鍼って効きますか?」と聞かれたとき
「正直にお伝えしますね。PMSへの鍼や指圧については、研究をまとめた報告で『本物に似せたニセの施術と比べて、症状がやわらぐ可能性がある』とされています。
ただ、ニセの鍼と比べて差が出た数字は、ひとつの小さな研究から来ていて、確かなことはまだ言えない段階なんです。
試してみるなら、何回・何周期で様子を見るかを最初に決めて、一緒に振り返りましょう。変わらないときや、つらさが増すときは、婦人科でほかの方法を相談してください。まだ婦人科で診てもらったことがなければ、一度相談してみてください。」
② 「ピルや薬をやめて、鍼にしたいんです」と言われたとき
「お薬をやめるかどうかは、処方している先生と相談していただく話です。私からやめましょうとは言えません。
鍼と、ピルや気分の症状のお薬を直接比べた研究は、調べられている範囲では見つかっていないんです。なので『鍼がお薬の代わりになる』とはお伝えできません。
お薬はそのまま続けていただくのが前提です。鍼を足すと効果が上乗せされる、とお伝えできる材料もありません。それを承知のうえで受けていただけるなら、鍼を受けていることを処方の先生にも伝えていただいて、経過を一緒に見ていきましょう。」
③ 「生理前は気持ちが沈んで、仕事に行けない日がある」と言われたとき
「それはつらいですね。話してくださってありがとうございます。
生理前の気分の波がそこまで強いときは、婦人科や心療内科で一度相談していただきたいんです。PMSなのか、ほかの原因があるのかを判断するのはお医者さんのお仕事で、私には判断できません。
今日は施術より先に、どこに相談するか、受診の段取りを一緒に考えさせてください。」
自院サイトでPMSを扱うときの、リスクの低い書き方・避けたい書き方
以下は「この書き方なら適法」と保証するものではなく、相対的にリスクが低い/高い書き方の整理です。実際の記載は最新のガイドライン本文と、所管保健所の指導をご確認ください。
リスクの低い書き方
- 「PMS(月経前症候群)について、2018年のコクランレビューは『限られたエビデンスは、鍼と指圧が偽の対照と比べて症状を改善しうることを示唆する』としています。エビデンスの質は低い〜非常に低いと評価され、鍼と偽鍼の差を示した数値は1つの小規模な試験によるもので、薬と比べた研究は見つかっていません」(出典を示し、限界を同じ場所に置く)
- 「気分の落ち込みが強い方や、生活に大きな支障がある方には、医療機関へのご相談をおすすめしています」(受診をすすめる文を先に置く)
避けたい書き方
- 避けたい:「PMSが治る」「ピルや薬が要らなくなる」(効果の断定・服薬の中止を促す表現につながる)
- 避けたい:「産婦人科の学会も鍼を推奨しています」「米国の学会も鍼を推奨しています」(日本の指針の CQ107 の Answer には推奨度の記号が付いておらず、ACOG の指針は本文を確認できていない。「推奨」と言い換えると原典より強くなり、優良誤認のおそれ)
- 避けたい:「コクランで効果が証明されています」(原典は「示唆」で、偽鍼との差の数値は1試験から)
- 避けたい:「イライラが強い方はPMDDかもしれません」(診断を含意する)
施術所のウェブサイトは、あはき師法・柔整師法の広告規制については原則として対象外とされています。ただし医療法・薬機法・景品表示法などの他の法令は及びます。この線引きは鍼灸院のホームページは広告規制の対象?|原則対象外と4つの例外で整理しました。
この記事で書かなかったこと・書けなかったこと
正直コーナーです。理由つきで開示します。
- 日本の臨床報告は独立して扱っていません。J-STAGEで、鍼を受けた人と受けなかった人を比べた報告と、鍼灸院の初診患者の前後比較が見つかりましたが、抄録に無作為化の記載がなく本文も読めていないため、数値も引用も出していません。日本発のランダム化比較試験は見つかりませんでした(医中誌Web未検索)。
- 選穴・手技・セルフ指圧のやり方は書いていません。
- 「有効率」「成功率」で比べた数値、ネットワークメタ解析の順位、著者が採らなかった計算方法の値は使っていません。
- 「安全」とは書いていません。下腹部への刺鍼と妊娠の可能性について、一次資料を集めていません。
- ACOGの指針本文、婦人科外来編の CQ405 の解説、米国精神医学会の診断マニュアル本体は確認できていません。「記載が無い」ではなく「確認していない」です。
- 更年期(更年期障害)の症状は扱っていません。PMSは月経周期にともなう症状、更年期の症状は閉経前後の時期のもので、別のコクランレビューがあります。更年期への鍼は更年期への鍼|ホットフラッシュのエビデンスを比較の相手別に読むで扱っています。
FAQ|PMSへの鍼で鍼灸師によくある質問
Q. PMSの鍼は安全だと患者さんに説明してよいですか?
A. 言い切る根拠はありません。コクランでは有害事象に群間差があるかを判断できませんでした(確実性は非常に低い)。報告された例には小さな皮下出血がありますが、「報告が無い」は「起きない」と同じではありません。
Q. PMSには、月経の何日前から鍼をするとよいですか?
A. 決まった答えはありません。施術の時期を主題にしたPMSのレビュー(2019年・有効率で比較)でも、時期による差は報告されていません。生理痛での時期の議論は生理痛への鍼治療のタイミング|「月経前がよい」はどこまで言えるかでまとめています。
Q. PMDDと診断されている患者さんに、鍼治療をしてもよいですか?
A. 医療機関での治療を続けてもらうことが前提です。PMDDだけを対象にした鍼の報告で結果が出ているのは、当サイトの検索では、交互に振り分けた30名の試験と1症例だけで(医中誌Web・中国語データベースは未検索)、効果の根拠とは言えません。生活が回らない、自分を傷つけたいといった訴えがあれば、施術を続ける判断をせず医療機関へつないでください。電話やSNSの公的な相談窓口は、厚生労働省ホームページの「まもろうよ こころ」にまとまっています。
まとめ|PMSへの鍼について、言えること・言えないこと
- 2018年のコクランレビューの結論は4文です。1文目の「限られたエビデンスは、鍼と指圧が偽の対照と比べて症状を改善しうることを示唆」に続けて、有害事象の差は判断できない、薬と比べたエビデンスは無い、研究が必要、と書かれています
- 鍼と偽鍼を比べて差が出た症状スコアと生活の質は、1試験67名(刺さない偽鍼・確実性は低い)から来ています。浅く刺す偽鍼を使った2試験(100名)は反応率という別の物差しで測っており、個々には利益を報告していますが、コクランは確実性が非常に低いことから、この項目を差がほとんど、あるいはまったく無いかもしれないと結論しています
- 否定側・中立側の試験もあります。本物と偽の耳穴の群の両方で症状のスコアが有意に低く(何と比べた値かは抄録から分からない)、ヨガの群が指圧を上回り、指圧と教育には差が認められませんでした
- SSRIや低用量ピルと直接比べた試験は、当サイトの検索では見つかっていません(医中誌Web・中国語データベースは未検索)。本文を確認できたガイドラインや指針(ISPMD・RCOG・日本の指針)も、鍼に触れた箇所で限界を併記しています
- PMDDへの鍼の根拠は、さらに限られています。気分の症状で生活が回らない、自分を傷つけたいといった訴えが出たら、施術を続ける判断をせず医療機関へつなぎます
関連記事
更新履歴:本記事は初版です。「この記事で書かなかったこと・書けなかったこと」⑤の資料や、採用試験の原著・日本の臨床報告の本文を確認できた場合、RCOGの改訂版が公表された場合に追記・修正します。
引用について:本記事の引用は著作権法32条にもとづく引用です。英文の日本語訳はすべて当サイトによるもので、他者の公式訳は用いていません。日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の指針は、文章をそのまま引かず、当サイトの言い換えで紹介しています(Answer の各項目・解説・図表は再現していません)。文の途中を省いた英文の引用には省略記号を付けています。省いた部分が結論の向きや数値の読み方に関わる場合は、その内容を同じ箇所に書いています。
参考文献
- Armour M, Ee CC, Hao J, Wilson TM, Yao SS, Smith CA. Acupuncture and acupressure for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2018;8(8):CD005290. PMID: 30105749. DOI: 10.1002/14651858.CD005290.pub2 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6513602/
- Smith CA, Armour M, Zhu X, Li X, Lu ZY, Song J. Acupuncture for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4(4):CD007854. PMID: 27087494. DOI: 10.1002/14651858.CD007854.pub3 ※本記事では結論の向きの対比にのみ使用
- Korelo RIG, Moreira NB, Miguel BAC, Cruz CGD, Souza NSP, Macedo RMB, Gallo RBS. Effects of Auriculotherapy on treatment of women with premenstrual syndrome symptoms: A randomized, placebo-controlled clinical trial. Complement Ther Med. 2022;66:102816. PMID: 35167949. DOI: 10.1016/j.ctim.2022.102816 ※本文未読。抄録の逐語のみ使用
- Simsek Kucukkelepce D, Unver H, Nacar G, Tashan ST. The effects of acupressure and yoga for coping with premenstrual syndromes on premenstrual symptoms and quality of life. Complement Ther Clin Pract. 2021;42:101282. PMID: 33310053. DOI: 10.1016/j.ctcp.2020.101282 ※抄録の逐語のみ使用
- Mirghafourvand M, Abdolalipour S, Mohamadi Bolbanabad A, Manouchehri B. Comparison of the effect of teaching coping skills and acupressure on premenstrual stress: a randomized controlled trial. Discov Ment Health. 2025;5(1):31. PMID: 40063193. DOI: 10.1007/s44192-025-00153-1 ※抄録の逐語と、本文 Intervention 節(指圧の実施者)の確認まで
- Bazarganipour F, Taghavi SA, Allan H, Beheshti F, Khalili A, Miri F, Rezaei M, Mojgori M, Imaninasab F, Irani F, Salari S. The effect of applying pressure to the LIV3 and LI4 on the symptoms of premenstrual syndrome: A randomized clinical trial. Complement Ther Med. 2017;31:65-70. PMID: 28434473. DOI: 10.1016/j.ctim.2017.02.003 ※抄録までの確認。コクラン本文の国名表記(Iraq)は原著(イラン)と食い違う
- Habek D, Habek JC, Barbir A. Using acupuncture to treat premenstrual syndrome. Arch Gynecol Obstet. 2002;267(1):23-26. PMID: 12410369. DOI: 10.1007/s00404-001-0270-7 ※抄録までの確認
- Shin KR, Ha JY, Park HJ, Heitkemper M. The effect of hand acupuncture therapy and hand moxibustion therapy on premenstrual syndrome among Korean women. West J Nurs Res. 2009;31(2):171-186. PMID: 18829443. DOI: 10.1177/0193945908323650 ※書誌のみ確認
- Zhang J, Cao L, Wang Y, Jin Y, Xiao X, Zhang Q. Acupuncture for Premenstrual Syndrome at Different Intervention Time: A Systemic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2019;2019:6246285. PMID: 31341497. DOI: 10.1155/2019/6246285 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6614973/ ※統合値は不使用
- Kim SY, Park HJ, Lee H, Lee H. Acupuncture for premenstrual syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BJOG. 2011;118(8):899-915. PMID: 21609380. DOI: 10.1111/j.1471-0528.2011.02994.x ※統合値は不使用
- Xie Y, Zhao J, Fan S, Yang N, Liu H, Guo Y, Feng X, Wang Z, Zhang M, Wang F. Efficacy comparison of different external traditional Chinese medicine therapies as monotherapy or in combination for premenstrual syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Front Psychiatry. 2026;17:1720232. PMID: 41717558. DOI: 10.3389/fpsyt.2026.1720232 ※順位・有効率は不使用
- Nevatte T, O’Brien PM, Bäckström T, Brown C, Dennerstein L, Endicott J, et al. ISPMD consensus on the management of premenstrual disorders. Arch Womens Ment Health. 2013;16(4):279-291. PMID: 23624686. DOI: 10.1007/s00737-013-0346-y https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3955202/
- Royal College of Obstetricians and Gynaecologists. Management of Premenstrual Syndrome: Green-top Guideline No. 48. BJOG. 2017;124(3):e73-e105. PMID: 27900828. DOI: 10.1111/1471-0528.14260 ※2023年に見直し・改訂作業中と表示(2026年9月11日確認)
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会. 月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針. 2025年3月発行. https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/PMS_PMDDshishin.pdf ※本記事では言い換えで紹介
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders: ACOG Clinical Practice Guideline No. 7. Obstet Gynecol. 2023;142(6):1516-1533. PMID: 37973069. DOI: 10.1097/AOG.0000000000005426 ※当サイトは抄録までの確認で、本文には到達できていません
- 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023作成委員会 編『産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023』日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会, 2023. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00802/ ※当サイトが確認できたのは目次(CQ405 の存在)まで
- Epperson CN, Steiner M, Hartlage SA, Eriksson E, Schmidt PJ, Jones I, Yonkers KA. Premenstrual dysphoric disorder: evidence for a new category for DSM-5. Am J Psychiatry. 2012;169(5):465-475. PMID: 22764360. DOI: 10.1176/appi.ajp.2012.11081302
- Reilly TJ, Patel S, Unachukwu IC, Knox CL, Wilson CA, Craig MC, Schmalenberger KM, Eisenlohr-Moul TA, Cullen AE. The prevalence of premenstrual dysphoric disorder: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord. 2024;349:534-540. PMID: 38199397. DOI: 10.1016/j.jad.2024.01.066
- Takeda T, Tasaka K, Sakata M, Murata Y. Prevalence of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder in Japanese women. Arch Womens Ment Health. 2006;9(4):209-212. PMID: 16761114. DOI: 10.1007/s00737-006-0137-9
- Carvalho F, Weires K, Ebling M, Padilha Mde S, Ferrão YA, Vercelino R. Effects of acupuncture on the symptoms of anxiety and depression caused by premenstrual dysphoric disorder. Acupunct Med. 2013;31(4):358-363. PMID: 24029029. DOI: 10.1136/acupmed-2013-010394 ※方法は交互割付
- Taguchi R, Matsubara S, Yoshimoto S, Imai K, Ohkuchi A, Kitakoji H. Acupuncture for premenstrual dysphoric disorder. Arch Gynecol Obstet. 2009;280(6):877-881. PMID: 19326136. DOI: 10.1007/s00404-009-1034-z
- Zeng YM, Liu SY, Qiu JH, Shi JY, Tong JT, Zhang QY, Wang JX. Auricular Acupressure for Depressive and Anxiety Symptoms in Women with Premenstrual Dysphoric Disorder: Protocol for a Pilot Randomized Sham-Controlled Trial. Neuropsychiatr Dis Treat. 2026;22:620599. PMID: 42483521. DOI: 10.2147/NDT.S620599 ※試験計画(結果なし)
- 磯部哲也. 月経前症候群の精神症状に対する鍼治療効果の比較試験. 日本東洋医学雑誌. 2016;67(3):264-273. DOI: 10.3937/kampomed.67.264 ※当サイトが確認したのは抄録まで
- 中村真理, 長崎絵美, 米山奏, 坂口俊二. 月経随伴症状に対する鍼灸治療の効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 2013;63(4):252-259. DOI: 10.3777/jjsam.63.252 ※当サイトが確認したのは抄録の一部まで
本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。
【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

