不眠症への鍼|偽鍼や認知行動療法と比べた研究は、何を示したのか

不眠症への鍼|偽鍼や認知行動療法と比べた研究は、何を示したのか 不眠症

「腰のついでに聞きたいんですけど、最近ずっと夜中に目が覚めるんです。鍼治療って、不眠にも効きますか?」

腰や膝で通っている高齢の患者さんから、こう聞かれたことはありませんか。

大学附属の鍼灸院2施設で65歳以上の方60人に聞いた調査(江川 2019)では、8割に不眠があり、いちばん多いのは中途覚醒でした。

対象の方の主な来院理由は、腰痛・膝痛・肩こりでした。2施設の自己申告の調査です。

「効きますよ」と言うのも、「分かりません」で終えるのも、どこか違う。

この記事では、不眠症への鍼の研究を「何と比べたか」で並べ直し、睡眠薬を飲んでいる患者さんへの答え方までつなげます。

結論(先に4つ)
① 2012年のコクランレビューは、不眠症への鍼を「支持するにも否定するにも、根拠が十分に厳密でない」としています。偽鍼(本物に似せた対照の処置)との比較だけを集めた2025年の系統的レビューでは、本人が答える睡眠の質の点数で鍼が上回りました。測った指標では、総睡眠時間に差が認められず、睡眠効率などは鍼が上回っています(著者は人数の少なさによる限界を記載)。主要な時点(試験が前もって決めていた判定のタイミング)で偽鍼と差がなかった試験もあります。
② がんを経験した方を対象に、認知行動療法(CBT-I:睡眠の習慣や眠りについての考え方を見直す治療)と直接比べた米国の試験では、両群とも不眠の重さが改善したうえで、CBT-I のほうがより大きく改善しました。著者は CBT-I を第一選択とすべきと結論し(劣らないかを確かめる非劣性試験ではありません)、欧米の診療ガイドラインも CBT-I を第一選択に置いています。欧州の2017年版は鍼を「推奨しない」としていますが、弱い推奨で、根拠の質は非常に低いとされています(2023年版での扱いは当サイト未確認)。
③ ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を、医療者の計画で少しずつ減らす中で鍼を足した試験は、偽鍼と比べた2本で結果が分かれています。
④ では鍼灸院は明日から何をするか。コクラン(2012年)は、不眠症に鍼を受けようとする人には、有効性の不確かさと起こりうるリスクを伝えるべきだとしています。そのうえで当サイトは次の3つを提案します。(1)腰や膝で来ている方にも眠りのことを聞き、寝ているときの呼吸の止まりやいびき、脚のむずむず、気分の落ち込みがあれば、施術より先に受診をすすめる。(2)鍼を試すなら効果が不確かなことを先に伝え、CBT-I や医療機関の治療の代わりにはしない。(3)睡眠薬を飲んでいる方には、自己判断で減らさず処方医か薬剤師に相談するよう伝える。

(目次:WordPressのプラグインで自動生成)

  1. この記事が扱う不眠症と、治療の基本はどこにあるのか
    1. 欧米の診療ガイドラインが第一選択に置くのは、認知行動療法(CBT-I)
  2. 不眠の研究を読む前に:本人の感じ方と、測った睡眠はずれやすい
  3. 不眠症の鍼について、コクランは何と書いているのか
    1. 数字を引く前に、知っておきたい3つのこと
    2. 鍼灸師の実務に直結する「診療への示唆」
  4. 偽鍼と比べると、不眠症の鍼はどう見えるのか
    1. 偽鍼だけの統合:主観の点数は上回り、総睡眠時間には差が認められない
    2. 規模の大きい試験:うつ病を伴う不眠の270名
    3. 主要な時点で、偽鍼と差がなかった試験
    4. 浅く刺す偽鍼との比較は、研究の間で割れている
  5. 待機リストや通常ケアと比べると、どう見えるのか
    1. 回数と期間は、どう組まれていたか
  6. 認知行動療法(CBT-I)と比べると、どう見えるのか
  7. 睡眠薬を飲んでいる患者さんに鍼をするとき、何に気をつけるか
    1. 併用:薬を続けたまま鍼を足した試験はある
    2. 減薬:偽鍼と比べた2つの試験で、結果が分かれている
    3. 鍼灸師が伝えるのは「自己判断で減らさないで」まで
  8. ガイドラインは、不眠症の鍼をどう扱っているか
    1. 1つ目:対象の外、または推奨文に鍼が出てこない(米国睡眠医学会・米国内科学会・日本の睡眠薬ガイドライン)
    2. 2つ目:名指しで「推奨しない」、推奨の強さは弱い(欧州ガイドライン2017年版)
    3. 3つ目:根拠を見直さずに削除(米国退役軍人省・国防総省)
    4. 4つ目:鍼を主題とする国際ガイドラインは、条件付きの提案
  9. 中途覚醒への鍼灸について、日本の研究はどこまであるのか
    1. お灸のセルフケアの小さな試験
    2. 1人の中で、期間を入れ替えて比べる試験
    3. 鍼灸院の症例の集積
  10. 不眠症の鍼の安全性と、医療機関につなぐ目安
    1. 試験で記録された有害事象
    2. 医療機関につなぐ目安
  11. 不眠症の鍼は、療養費(保険)の対象になるのか
  12. この記事で書かなかったこと・書けなかったこと
  13. まとめ|不眠症の鍼について、言えること・言えないこと
  14. 関連記事
  15. 参考文献

この記事が扱う不眠症と、治療の基本はどこにあるのか

この記事が扱うのは、一般の成人の「慢性不眠」です。

寝つけない、途中で目が覚める、早く目が覚める。こうした困難が週3晩以上あり、日中にも支障が出て、3か月を超えて続くものを指します(定義の出典はボックス①)。

更年期の睡眠は、更年期への鍼|ホットフラッシュのエビデンスを比較の相手別に読むの一節で扱っています。

欧米の診療ガイドラインが第一選択に置くのは、認知行動療法(CBT-I)

CBT-I は、床にいる時間の調整や、眠りについての考え方の見直しなどを組み合わせた治療です。

米国内科学会や欧州睡眠学会など、欧米の主な診療ガイドラインは CBT-I を第一選択に置いています(書誌はボックス①)。

日本の睡眠薬ガイドライン(2013年)も、CBT-I を推奨グレードAとしています。

ただし治療の流れでは、薬が十分に効かない場合の「セカンドライン」に置いたうえで、第一選択としても、薬との併用としても有効と書いています。「日本も欧米と同じく第一選択」とまとめると、事実とずれます。

エビデンスボックス① 慢性不眠の定義・CBT-I の位置づけ・鍼灸院の調査(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 慢性不眠の定義=The Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea Work Group. VA/DoD Clinical Practice Guideline for the Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea. Version 1.0. 2019(govinfo.gov GOVPUB-VA-PURL-gpo151619)p.6。逐語(編集長が原本 PDF で照合)=”The International Classification of Sleep Disorders, 3rd edition (ICSD-3) specifies that insomnia disorder can be either acute or chronic, can be diagnosed when a patient experiences difficulties with sleep onset, sleep maintenance, or early morning awakenings at least three nights per week, is accompanied by daytime consequences, and occurs despite adequate opportunity and circumstances for sleep. Insomnia disorder lasting more than three months in duration is considered “chronic.””(当サイトによる訳:国際睡眠障害分類第3版〈ICSD-3〉は、不眠障害は急性にも慢性にもなりうるとし、患者が週に少なくとも3晩、入眠・睡眠維持の困難または早朝覚醒を経験し、日中への影響を伴い、眠るための十分な機会と環境があるにもかかわらず起きる場合に診断できる、としている。3か月を超えて続く不眠障害は「慢性」とみなされる。)評釈:当サイトは ICSD-3 の原本を確認しておらず、VA/DoD の記載を経由した定義です。
  • Qaseem A, Kansagara D, Forciea MA, Cooke M, Denberg TD; Clinical Guidelines Committee of the ACP. Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2016;165(2):125-133.(PMID 27136449/DOI 10.7326/M15-2175)Recommendation 1(抄録の逐語)=”ACP recommends that all adult patients receive cognitive behavioral therapy for insomnia (CBT-I) as the initial treatment for chronic insomnia disorder. (Grade: strong recommendation, moderate-quality evidence).”(当サイトによる訳:ACP は、すべての成人患者が慢性不眠障害の初期治療として不眠症の認知行動療法〈CBT-I〉を受けることを推奨する〈強い推奨、中等度の質のエビデンス〉。)/Recommendation 2(逐語)=”ACP recommends that clinicians use a shared decision-making approach, including a discussion of the benefits, harms, and costs of short-term use of medications, to decide whether to add pharmacological therapy in adults with chronic insomnia disorder in whom cognitive behavioral therapy for insomnia (CBT-I) alone was unsuccessful. (Grade: weak recommendation, low-quality evidence).”(当サイトによる訳:ACP は、CBT-I 単独でうまくいかなかった慢性不眠障害の成人に薬物療法を加えるかどうかを決める際、薬の短期使用の利益・害・費用の話し合いを含む共同意思決定を用いることを推奨する〈弱い推奨、質の低いエビデンス〉。)評釈:推奨は2つとも CBT-I と薬についてのもので、鍼は推奨文に出てきません。当サイトは本文(acpjournals.org)に到達できておらず、本文で鍼に触れているかは未確認です。根拠は2004年〜2015年9月の英語の RCT の系統的レビューで、10年前の文書です。
  • Riemann D, Baglioni C, Bassetti C, ほか. European guideline for the diagnosis and treatment of insomnia. J Sleep Res. 2017;26(6):675-700.(PMID 28875581/DOI 10.1111/jsr.12594)抄録の逐語=”Cognitive behavioural therapy for insomnia is recommended as the first-line treatment for chronic insomnia in adults of any age (strong recommendation, high-quality evidence).”(当サイトによる訳:不眠症の認知行動療法は、あらゆる年齢の成人の慢性不眠に対する第一選択の治療として推奨される〈強い推奨、質の高いエビデンス〉。)鍼についての記述はボックス⑧。
  • Riemann D, ほか. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. J Sleep Res. 2023;32(6):e14035.(PMID 38016484/DOI 10.1111/jsr.14035)抄録の逐語=”Cognitive-behavioural therapy for insomnia is recommended as the first-line treatment for chronic insomnia in adults of any age (including patients with comorbidities), either applied in-person or digitally (A).”(当サイトによる訳:不眠症の認知行動療法は、対面でもデジタルでも、あらゆる年齢の成人〈併存疾患のある患者を含む〉の慢性不眠に対する第一選択の治療として推奨される〈A〉。)
  • VA/DoD 2019 の CBT-I の推奨(p.28〜29 の推奨一覧・編集長が原本 PDF で照合)=推奨19 “We recommend offering CBT-I for the treatment of chronic insomnia disorder.”(Strong for)/推奨23 “For patients diagnosed with chronic insomnia disorder, we suggest CBT-I over pharmacotherapy as first-line treatment.”(Weak for)(当サイトによる訳:慢性不眠障害の治療に CBT-I を提供することを推奨する〈強く支持〉。/慢性不眠障害と診断された患者に、第一選択の治療として薬物療法より CBT-I を提案する〈弱く支持〉。)
  • The Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea Work Group. VA/DoD Clinical Practice Guideline for the Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea. Version 3.0. January 2025.(healthquality.va.gov・根拠は2024年3月31日まで)推奨5 “For treatment of chronic insomnia disorder, we recommend treatment with CBT-I.”(Strong for)/推奨8 “For treatment of chronic insomnia disorder, we suggest CBT-I over pharmacotherapy as first-line treatment.”(Weak for)(当サイトによる訳:慢性不眠障害の治療に、CBT-I による治療を推奨する〈強く支持〉。/慢性不眠障害の治療に、第一選択として薬物療法より CBT-I を提案する〈弱く支持〉。)評釈:「CBT-I を行うこと」は強い推奨、「薬より先に CBT-I」は弱い推奨で、強さが違います。
  • 厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班」および日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン-出口を見据えた不眠医療マニュアル-. 2013年6月25日初版/2013年10月22日改訂.(https://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf ・オンライン版37ページ)当サイトの言い換え=Q30 の勧告は、不眠症に対する CBT-I の有効性は実証されており、入眠困難の改善では薬物療法より効果が高いと考えられること、長期服用者の減薬の促進や、精神疾患・身体疾患を伴う不眠症にも有効性が期待できることを述べ、推奨グレードAとしています。いっぽう治療アルゴリズムの説明(p.10)では、本ガイドラインでは CBT-I を薬物療法が十分に奏功しない場合のセカンドラインに位置づけたが、第一選択療法としても、薬物療法との併用療法としても有効であることが示されている、という趣旨が書かれています。同じガイドライン(p.2)は、成人の30%以上が何らかの不眠症状を持ち、6〜10%が不眠症にあたる、としています(原典の文献はオンライン版に掲載なし)。評釈:欧米のガイドラインの「第一選択」と、この文書の位置づけは同じではありません。Q30・p.10・p.2 の記載は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • 江川雅人, 福田晋平, 鶴浩幸. 鍼灸院に来院する高齢者の不眠と鍼灸治療の影響について. 全日本鍼灸学会雑誌. 2019;69(2):113-123.(DOI 10.3777/jjsam.69.113・報告)明治国際医療大学の附属鍼灸センターと附属京都駅前鍼灸院で、2016年7〜8月に65歳以上の60例にアンケート。当サイトの言い換え=不眠は48例(80.0%)に認められ、中途覚醒29例(60.4%)、日中の眠気23例(47.9%)、早朝覚醒19例(39.6%)の順に多かった。鍼灸治療の対象愁訴は腰痛39例(65.0%)、膝痛22例(36.7%)、肩こり18例(30.0%)。🛑 評釈:大学附属の2施設・65歳以上の自己申告の調査で、鍼灸院の来院者全体にあてはまるかは分かりません。同じ調査には「鍼灸治療を受けて不眠の改善を自覚した」回答の割合もありますが、対照がないため、当サイトは鍼の効果の数値としては扱いません。要旨の数値は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。

不眠の研究を読む前に:本人の感じ方と、測った睡眠はずれやすい

不眠の研究の物差しは、大きく2種類です。

1つは本人が答える質問票で、睡眠の質を問う PSQI や、不眠の重さを問う ISI がこれにあたります。

もう1つは機械で測る指標です。

睡眠ポリグラフ(脳波などを一晩記録する検査)や腕時計型の活動量計で、総睡眠時間や睡眠効率(床にいた時間のうち眠っていた割合)を出します。

不眠症では、この2つがずれやすいことが知られています。

国内外のガイドラインは、不眠症の人の自覚と測った睡眠がずれることがある、という趣旨を書いています(睡眠ガイド2023 は、睡眠時間を短く見積もることがあると記載)。

鍼の研究では、この「ずれ」が繰り返し出てきます。

偽鍼を受けた群だけを集めて見直した解析(Yeung 2015)では、本人が答える ISI は大きく改善した一方、総睡眠時間はほとんど動いていませんでした。治療前後の変化で、自然に良くなる分も含みます。

主観の点数には、鍼そのもの以外の要因が入りやすいということです。

偽鍼の群で何が起きているかは鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由で整理しています。

ただし「鍼は思い込みを変えるだけ」とも言えません。

測った指標で偽鍼との差を報告した試験もあり、一次資料はどちらの断定も支えていないからです。

図解:不眠症の鍼の研究4件について、本人が答える睡眠の指標と、機械で測った睡眠の指標の結果を左右に並べ、主観と客観で結果が分かれやすいことを示した図

主観と客観

本人の感じ方と、測った睡眠は同じように動かない

不眠の研究を読むときは、どちらの物差しの結果かを先に確かめます。

偽鍼だけの統合(10試験)
本人が答える指標

PSQI・ISI は鍼が偽鍼を上回る

機械で測る指標

総睡眠時間は差なし(睡眠効率・入眠後の覚醒時間は鍼が上回る。著者は人数の少なさによる限界を記載)

偽鍼を型で分けた統合(33試験・大半が中国)
本人が答える指標

睡眠の質の点数は鍼が偽鍼を上回る

機械で測る指標

測った睡眠の指標は差なし

韓国50名・待機リストと比較
本人が答える指標

ISI は電気鍼の群が待機群より改善(パイロット試験)

機械で測る指標

活動量計の指標は差なし

偽鍼を受けた群だけの前後の変化(86名)
本人が答える指標

ISI は大きく改善

機械で測る指標

総睡眠時間・睡眠効率はほとんど変化なし(自然経過や平均への回帰を含む)

逆向きの例と、ガイドライン類の記載

香港60名の試験は、睡眠効率(睡眠日誌と活動量計)で電気鍼が偽鍼を上回った/VA/DoD のガイドラインや日本の睡眠薬ガイドラインなどは、不眠症の人の自覚と測った睡眠がずれることがある、という趣旨を記載(睡眠ガイド2023 は、睡眠時間を短く見積もることがあると記載)

模式図です。左右は同じ研究の中の別の物差しの結果で、どちらが正しいという関係ではありません。本人が答える指標の改善には、鍼そのもの以外の要因も入りやすいことが知られています。ただし、この図は「鍼は思い込みを変えるだけ」と読むためのものでもありません(測った指標で偽鍼との差を報告した試験もあります)。測った指標で「差なし」は、効果が無いことの証明ではありません。4段目は偽鍼の群の中の前後比較で、群間の差ではありません。出所=Yu 2025(PMID 40371085)/Wang Y 2025(PMID 40909295)/Lim 2026(PMID 42094634)/Yeung 2015(PMID 26498238)/Yeung 2009(PMID 19725255)/VA/DoD 2019 p.6/睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(2013)p.10/健康づくりのための睡眠ガイド2023 文書 p.35。カードの構成は当サイトが組み直したもので、原典にこの図はありません。

エビデンスボックス② 主観と客観のずれ、偽鍼群の変化、「臨床的に意味のある差」の基準(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • ガイドライン類の記載=VA/DoD 2019 p.6(逐語・編集長が原本 PDF で照合):”Individuals with chronic insomnia often report more difficulty going to sleep and staying asleep than is determined using objective measures such as actigraphy or polysomnography (PSG).”(当サイトによる訳:慢性不眠の人は、活動量計や睡眠ポリグラフ〈PSG〉などの客観的な測定で判定されるより多くの、寝つきや睡眠の維持の困難を報告することが多い。)/以下は当サイトの言い換え=睡眠薬GL 2013 p.10:多くの慢性不眠症患者は、程度の違いはあっても睡眠状態を誤認していることを理解する必要がある。/厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月・同年9月一部修正・https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf )文書 p.35(PDF p.37):不眠症の人は、実際の睡眠時間(客観的睡眠時間)より自覚的な睡眠時間(主観的睡眠時間)を短く見積もることがある。評釈:睡眠ガイドの原文は「傾向がある」ではなく「ことがある」です。睡眠薬GL と睡眠ガイドの2件は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • Zhao FY, Fu QQ, Kennedy GA, ほか. Can acupuncture improve objective sleep indices in patients with primary insomnia? A systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2021;80:244-259.(PMID 33610071/DOI 10.1016/j.sleep.2021.01.053)抄録の逐語=”Sleep state misperception is common in PI and self-reports underestimate sleep duration and quality.”(当サイトによる訳:原発性不眠では睡眠状態の誤認がよくみられ、自己報告は睡眠時間と睡眠の質を過小に見積もる。)この統合の数値はボックス⑤。
  • Yeung WF, Chung KF, Yu BYM, Lao L. Response to placebo acupuncture in insomnia: a secondary analysis of three randomized controlled trials. Sleep Med. 2015;16(11):1372-1376.(PMID 26498238/DOI 10.1016/j.sleep.2015.07.027)3つの RCT の非侵襲プラセボ鍼群86名の二次解析。抄録の逐語=”The effect size of placebo acupuncture was estimated at 0.18 for total sleep time, 0.08 for sleep efficiency, and 0.92 for ISI score. Eighteen (20.9%) of the 86 participants were responders.”(当サイトによる訳:プラセボ鍼の効果量は、総睡眠時間で0.18、睡眠効率で0.08、ISI 得点で0.92と推定された。86名中18名〈20.9%〉が反応者だった。)🛑 評釈:これはプラセボ鍼群の中の前後の変化で、群間の差ではありません。自然経過や、平均への回帰(極端な値が次の測定で平均に近づく現象)も含みます。「プラセボ鍼に効果がある」とは読みません。
  • Jiang B, Wang YN, Zhang J, ほか. Placebo Effect of Sham Acupuncture for Primary Insomnia: A Meta-Analysis of Randomised Controlled Trials. J Sleep Res. 2026;35:e70280.(PMID 41692996/DOI 10.1111/jsr.70280)36 RCT の偽鍼群。抄録の逐語=”The results of the meta-analysis showed that sham acupuncture significantly reduced Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI) [weighted mean difference (WMD) = 1.38, (95% confidence interval (CI) = 0.90, 1.86), p < 0.05] and Insomnia Severity Index (ISI) [WMD = 2.58, (95% CI = 1.46-3.69), p < 0.05]. There was no significant change in polysomnography and actigraphy. Sham acupuncture had a certain placebo effect in clinical trials of primary insomnia. The placebo effect varied from different types of sham acupuncture.”(当サイトによる訳:メタ解析の結果、偽鍼は PSQI〈WMD 1.38、95%CI 0.90〜1.86〉と ISI〈WMD 2.58、1.46〜3.69〉を有意に減少させた。睡眠ポリグラフと活動量計では有意な変化はなかった。原発性不眠の臨床試験で偽鍼には一定のプラセボ効果があった。プラセボ効果は偽鍼の型によって異なった。)評釈:WMD が正の値で「減少」を表すのは抄録の表記どおりです。これも偽鍼群の中の前後比較です。
  • 逆向きの材料:Yeung 2009(ボックス④)は睡眠効率(睡眠日誌と活動量計)で電気鍼が偽鍼を上回り、Huang 2018(ボックス④)は活動量計の睡眠効率で本物の鍼が偽の刺鍼を上回ったと報告しています。
  • 「臨床的に意味のある最小の差(MID/MCID)」は文献ごとに違います=Ma 2025(コクラン・ボックス③)は ISI 4.7点・PSQI 3点/Yin 2022(ボックス④)は先行研究を引いて PSQI「3点超」/Wang Y 2025(ボックス④)は PSQI 2.5点(著者の設定)。当サイトは「基準を超えた・超えない」を書くとき、どの文献の基準かを同じ文に書いています。⚠️ ISI・PSQI の尺度の原典(点数の範囲など)は当サイトは確認しておらず、満点は書いていません。

不眠症の鍼について、コクランは何と書いているのか

コクランレビュー(決まった手順で試験を集めて評価する国際組織の報告書)の「不眠症への鍼」は、2012年の版(Cheuk 2012)が完成版です。

33試験・約2,300人を集めたもので、文献の検索から10年以上たっています。更新版の記録は PubMed に見当たりません。

2025年にも同じ題名のコクランが公開されていますが、これは計画書(プロトコル)で、結果はまだありません。

「コクランが最近評価し直した」わけではありません。

著者結論は2文です。途中で切らずに置きます。

出所:Cheuk DK, Yeung WF, Chung KF, Wong V. Acupuncture for insomnia. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(9):CD005472(PMID 22972087)Authors’ conclusions(全2文)。原文(英語)はエビデンスボックス③に置いています
当サイトによる訳
1文目|方法論の質が低く、異質性が高く、出版バイアスがあるため、現在のエビデンスは不眠症の治療に鍼を用いることを支持するにも否定するにも十分に厳密ではない。
2文目|より大規模で質の高い臨床試験が必要である。

数字を引く前に、知っておきたい3つのこと

1つ目。抄録でいちばん目立つ大きな数値は、刺す鍼ではなく指圧のものです。

しかも、途中でやめた人を「悪くなった」と仮定して計算し直すと、利益があるかは判断できなくなりました。

2つ目。刺す鍼で数値が出ているのは、薬や心理療法など両群が同じく受けた治療(睡眠薬に限りません)に「鍼を足した」比較だけで、著者の語は「わずかに増やすかもしれない」です。

偽鍼を足した群と比べた試験は1本もなく、著者は「足して効くか」には答えられなかったと書いています。

3つ目。鍼と睡眠薬などを直接比べた試験は、はじめから対象外です。

鍼灸師の実務に直結する「診療への示唆」

本文の「診療への示唆(Implications for practice)」には、鍼灸師にとって重い段落があります。

出所:同上 CD005472.pub3 本文 Implications for practice(段落全文)。原文(英語)はエビデンスボックス③
当サイトによる訳:このレビューは、本人が評価する睡眠の質を改善するために鍼を用いることについて、支持するにも否定するにも質の高いエビデンスが不十分であることを示唆している。一部の形態の鍼は一部の人で短期的に睡眠の指標を改善するかもしれないが、現在のエビデンスは、あらゆる原因・あらゆる年齢層の不眠症の治療に、追加の治療の有無を問わず、いずれかの形態の鍼を広く用いるよう推奨できるほど厳密ではない。鍼の長期的な効果は分かっておらず、起こりうる有害作用も完全には明らかでない。不眠症に鍼を受けようとする人には、その有効性の不確かさと起こりうるリスクを伝えるべきである。

肯定側と否定側が、同じ段落に並んでいます。

そして最後の文は、患者さんへの説明の土台として、そのまま使えます。

コクランのどこを先に見るかは、コクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所で整理しています。

エビデンスボックス③ コクラン3本(Cheuk 2012・Ang 2025 プロトコル・Ma 2025)の原文と確認した範囲(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Cheuk DK, Yeung WF, Chung KF, Wong V. Acupuncture for insomnia. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(9):CD005472.(PMID 22972087/DOI 10.1002/14651858.CD005472.pub3/PMC11262418)2007年版(pub2)の更新。PubMed の記録に、さらに新しい版や撤回の情報(UpdateIn・RetractionIn)はありません。⚠️ Cochrane Library 本体のページには当サイトは到達しておらず、「stable」などの表示の有無は未確認です。検索時期:抄録の記載では検索は2011年10月まで。本文の What’s new には2012年5月23日に新たな検索を行った旨の記載があります。当サイトはこの2つの関係を確認していないため、本文では「検索から10年以上」と幅を持たせて書いています。
  • 組入基準(抄録の逐語)=”Randomised controlled trials evaluating any form of acupuncture for insomnia. They compared acupuncture with/without additional treatment against placebo or sham or no treatment or same additional treatment. We excluded trials that compared different acupuncture methods or acupuncture against other treatments.”(当サイトによる訳:不眠症に対するあらゆる形態の鍼を評価したランダム化比較試験。追加の治療の有無を問わず、鍼をプラセボ・偽の処置・無治療・同じ追加の治療と比較したもの。異なる鍼の方法どうしを比べた試験や、鍼を他の治療と比べた試験は除外した。)評釈:鍼と睡眠薬などを直接比べた試験は、このレビューの対象外です。
  • Main results(抄録の逐語・全文)=”Thirty-three trials were included. They recruited 2293 participants with insomnia, aged 15 to 98 years, some with medical conditions contributing to insomnia (stroke, end-stage renal disease, perimenopause, pregnancy, psychiatric diseases). They evaluated needle acupuncture, electroacupuncture, acupressure or magnetic acupressure. Compared with no treatment (two studies, 280 participants) or sham/placebo (two studies, 112 participants), acupressure resulted in more people with improvement in sleep quality (compared to no treatment: OR 13.08, 95% confidence interval (CI) 1.79 to 95.59; compared to sham/placebo: OR 6.62, 95% CI 1.78 to 24.55). However, when assuming that dropouts had a worse outcome in sensitivity analysis the beneficial effect of acupuncture was inconclusive. Compared with other treatment alone, acupuncture as an adjunct to other treatment might marginally increase the proportion of people with improved sleep quality (13 studies, 883 participants, OR 3.08, 95% CI 1.93 to 4.90). On subgroup analysis, only needle acupuncture but not electroacupuncture showed benefits. All trials had high risk of bias and were heterogeneous in the definition of insomnia, participant characteristics, acupoints and treatment regimen. The effect sizes were generally small with wide confidence intervals. Publication bias was likely present. Adverse effects were rarely reported and they were minor.”
  • (当サイトによる訳)33試験を採用した。15〜98歳の不眠症の参加者2,293名で、不眠に関わる疾患(脳卒中、末期腎不全、周閉経期、妊娠、精神疾患)を持つ人を含む。評価された手技は刺す鍼、電気鍼、指圧、磁気指圧。無治療(2試験・280名)や偽の処置/プラセボ(2試験・112名)と比べると、指圧では睡眠の質が改善した人が多かった〈無治療比 OR 13.08、95%CI 1.79〜95.59/偽・プラセボ比 OR 6.62、1.78〜24.55〉。しかし、脱落者の転帰が悪かったと仮定する感度分析では、有益な効果は判断できなかった。他の治療のみと比べると、他の治療に鍼を足すことで睡眠の質が改善した人の割合がわずかに増えるかもしれない〈13試験・883名、OR 3.08、1.93〜4.90〉。サブグループ解析では、刺す鍼だけが利益を示し、電気鍼は示さなかった。すべての試験がバイアスのリスクが高く、不眠の定義・参加者の特性・経穴・治療の組み立てがばらばらだった。効果の大きさは概して小さく、信頼区間は広かった。出版バイアスがありそうだった。有害作用の報告はまれで、報告されたものは軽微だった。
  • 🛑 評釈(数値の読み方):OR 13.08 と OR 6.62 は指圧の数値で、直後の文で感度分析では判断できなかったとされています。当サイトはこの2つを鍼の効果として書きません。刺す鍼の数値は上乗せの OR 3.08 だけで、著者の語は “might marginally increase” です。「電気鍼は効かない」とも読みません(サブグループ解析で、全試験がバイアスのリスクが高いため)。”rarely reported” は「有害作用が少なかった」ではなく「報告した試験が少ない」の意味で読んでいます。
  • 上乗せ比較の「other treatment」の定義(本文・編集長が確認)=”‘Other treatment’ mentioned in point 3 and 4 above referred to any treatment, including medication, psychological treatment or alternative complementary treatment, provided that both the intervention and the control groups received the same treatment.”(当サイトによる訳:上記3・4に挙げた「他の治療」とは、介入群と対照群の両方が同じ治療を受けていることを条件に、薬物療法・心理療法・補完代替療法を含むあらゆる治療を指す。)🛑 評釈:当サイトは「睡眠薬への上乗せ」とは書きません。
  • 上乗せを偽鍼の上乗せと比べた試験(本文・編集長が確認)=”There were no randomised controlled trials on acupuncture as an adjunct to other treatment compared with placebo/sham acupuncture as an adjunct to other treatment. Therefore we could not answer the question of whether acupuncture is an effective adjunctive treatment for insomnia.”(当サイトによる訳:他の治療に鍼を足したものを、他の治療にプラセボ/偽鍼を足したものと比べたランダム化比較試験はなかった。そのため、鍼が不眠症の上乗せ治療として有効かという問いには答えられなかった。)
  • Authors’ conclusions(抄録の逐語・全2文)=”Due to poor methodological quality, high levels of heterogeneity and publication bias, the current evidence is not sufficiently rigorous to support or refute acupuncture for treating insomnia. Larger high-quality clinical trials are required.”(訳は本文の引用ブロック)
  • Implications for practice(本文の逐語・段落全文・編集長が確認)=”This review suggests that there is insufficient high‐quality evidence to support or refute the use of acupuncture to improve people’s self rated sleep quality. Although some forms of acupuncture might improve sleep parameters in the short term in some people, the current evidence is not rigorous enough to allow recommendation to be made about the wide application of any form of acupuncture with or without additional therapies for the treatment of insomnia of any aetiology in people of any age group. The long‐term effect of acupuncture is not known and its potential adverse effects are not entirely clear. People who seek to receive acupuncture for insomnia should be informed of the uncertainty of its effectiveness and potential risks.”(訳は本文の引用ブロック)
  • 利益相反の記載(逐語)=”One included trial was published by co‐authors of this review. They were not involved in data extraction or risk of bias assessment of their own study.”(当サイトによる訳:採用試験の1本はこのレビューの共著者が発表したものである。共著者は自身の試験のデータ抽出とバイアスのリスクの評価には関わっていない。)どの試験かは当サイトは確認していません。
  • Ang L, Lee MS, Choi TY, ほか. Acupuncture for insomnia. Cochrane Database Syst Rev. 2025;7:CD015974.(PMID 40626505/DOI 10.1002/14651858.CD015974)抄録の逐語=”This is a protocol for a Cochrane Review (intervention). The objectives are as follows: To assess the benefits and harms of acupuncture in the treatment of insomnia.”(当サイトによる訳:これはコクランレビュー〈介入〉の計画書である。目的は、不眠症の治療における鍼の利益と害を評価することである。)🛑 評釈:結果はありません(2026-09-13 時点で完成版は PubMed に見当たりません)。Cheuk 2012 の更新版にあたるかどうかは、一次資料で確認できていません。
  • Ma Q, Liu C, Zhao G, ほか. Acupuncture for insomnia in people with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2025;12:CD015177.(PMID 41347621/DOI 10.1002/14651858.CD015177.pub2)5試験・402名・主に乳がんの女性で、多くは一次治療後。検索は2024年1月まで。当サイトの確認=抄録を PubMed と Europe PMC の2経路で照合し一致(本文は未到達)。本文での扱いは H2「認知行動療法(CBT-I)と比べると」の章。
  • Ma 2025 の Authors’ conclusions(逐語・全6文)=”Based on very low-certainty evidence, acupuncture may have little to no effect on insomnia severity or sleep quality compared to sham acupuncture, though it may offer slight improvements in some sleep diary metrics. In contrast, when compared to an inactive control, acupuncture may alleviate insomnia severity and improve sleep quality and most sleep diary metrics, but adverse events should be taken into consideration. These findings are derived primarily from studies of female adults with breast cancer. Based on low- to moderate-certainty evidence, when compared with CBT-I, acupuncture is likely less effective at reducing insomnia severity, improving sleep quality, SOL and SE. Conversely, acupuncture probably improves TST. Larger, methodologically robust, long-term trials that include diverse cancer populations are required to provide definitive conclusions.”
  • (当サイトによる訳)確実性が非常に低いエビデンスに基づくと、偽鍼と比べて鍼は不眠の重症度や睡眠の質にほとんど、あるいはまったく効果がないかもしれないが、睡眠日誌の一部の指標をわずかに改善する可能性はある。一方、非活性の対照と比べると、鍼は不眠の重症度を和らげ、睡眠の質と睡眠日誌の大半の指標を改善するかもしれないが、有害事象を考慮すべきである。これらの知見は主に乳がんの成人女性の研究に由来する。確実性が低〜中等度のエビデンスに基づくと、CBT-I と比べて鍼は不眠の重症度の軽減、睡眠の質、入眠潜時、睡眠効率の改善で劣る可能性が高い。反対に、鍼は総睡眠時間を改善する可能性が高い。確定的な結論を得るには、多様ながん集団を含む、より大規模で方法論的に頑健な長期の試験が必要である。
  • Ma 2025 の数値のうち、当サイトが読み方を決めているもの(抄録の逐語)=偽鍼比について “No outcome both exceeded its MID and was statistically significant.”(当サイトによる訳:MID を超え、かつ統計的に有意だった指標はなかった。)/非活性対照比について “Only the TST improvement surpassed the MID.”(訳:MID を超えたのは総睡眠時間の改善だけだった。)/CBT-I 比の ISI=”MD 2.60, 95% CI 1.13 to 4.07; 1 study, 160 participants; moderate-certainty evidence”(高いほど悪い)。🛑 評釈:CBT-I 比は1試験160名に由来し、数値は Garland 2019(ボックス⑥)と一致しますが、コクランが採った試験名は本文未到達で当サイトは確認していません。「非活性の対照(inactive control)」が待機リストか通常ケアかも抄録に無く、当サイトは「無治療と比べて」とは書きません。非活性対照比の有害事象 RR 15.49(95%CI 2.12〜113.10・2試験76名・very low)は信頼区間が極端に広く、当サイトは「15倍」とは読みません。資金は四川大学華西医院と中国中医科学院の研究基金で、著者の利益相反は全員「なし」と記載されています。

偽鍼と比べると、不眠症の鍼はどう見えるのか

図解:不眠症への鍼の研究を、比較の相手(偽鍼・待機リストや通常ケア・認知行動療法・減薬中のプラセボ鍼)ごとに4枚のカードに分け、試験の規模と報告された結果の向きを並べた図

比較の相手別

何と比べたかで、不眠症の鍼の景色が変わる

同じ「不眠症の鍼」でも、比べる相手によって結果の向きが違います。

1|偽鍼と比べる

偽鍼だけの統合(10試験・757名)=本人が答える点数(PSQI・ISI)は鍼が上、総睡眠時間は差なし、睡眠効率などは鍼が上(試験逐次解析では人数不足の限界)
上海270名(うつ病を伴う不眠)=PSQI は偽鍼より改善、夜中に目が覚める回数は差なし(主要な指標は主観の質問票。鍼の群で自分の群を言い当てた人が多い)
香港60名・韓国150名=主要な時点の ISI で差なし(香港は睡眠効率、韓国は8週以降の ISI で差あり)
香港78名(うつ病治療中の残った不眠)=電気鍼と浅く刺す最小鍼はどちらも刺さないプラセボ鍼より主観で改善、2つの間には差なし

2|待機リスト・通常ケアと比べる

香港224名(待機リスト)=鍼の2群とも待機群より改善(著者の語は「軽度」)、群内の改善は13週後まで維持
韓国50名(薬で改善しない不眠・待機リスト・パイロット試験)=主観は改善、活動量計は差なし
韓国150名=通常ケアとは4週から差あり(同じ試験で偽鍼とは主要な時点で差なし)

3|CBT-I と比べる

米国160名(がんを経験した方)=CBT-I のほうが改善が大きかった(鍼の群も治療前後では改善。偽鍼と比べた差ではない)
スウェーデン59名=この試験で提供した形の集団の耳鍼は、集団の CBT-i に劣る

4|減薬中の鍼をプラセボ鍼と比べる

香港144名=電気鍼とプラセボ鍼で中止・減量に差なし
中国64名=鍼の群で減量・中止が多い
どちらも医療者が組んだ漸減計画の中の結果。減らすかどうか・減らし方は処方医が判断します

どのカードも、効果が確かめられたことを示すものではありません。2012年のコクランレビューは、不眠症への鍼を「支持するにも否定するにも、根拠が十分に厳密でない」としています。当サイトが研究の結果の向きを並べ直した図で、各カードは統合値ではありません。カード2・3は偽鍼を置いた比較ではありません。カード4は、医療者が組んだ漸減計画の中で、鍼とプラセボ鍼を比べた2試験です。カード4は、鍼灸師が患者に減薬を勧めたり、減らし方を助言したりする根拠ではありません。カード1の「本人が答える点数」は主観の指標で、偽鍼の群でも大きく動くことが報告されています。カード3の米国の試験の対象はがんを経験した方で、非劣性試験ではありません。「有意差なし」は差が無いことの証明ではありません。出所=Yu 2025(PMID 40371085)/Yin 2022(PMID 35797047)/Yeung 2009(PMID 19725255)/Lee 2020(PMID 33328773)/Yeung 2011(PMID 21629370)/Chung 2018(PMID 29229613)/Lim 2026(PMID 42094634)/Garland 2019(PMID 31081899)/Bergdahl 2016(PMID 27242930)/Yeung 2019(PMID 30504097)/Fan 2026(PMID 42066590)。原典にこの図はありません。

偽鍼にも、皮膚に刺さらない型や、ツボでない場所に浅く刺す型など、いくつか種類があります。型の違いは偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題にまとめています。

偽鍼だけの統合:主観の点数は上回り、総睡眠時間には差が認められない

偽鍼との比較だけを集めた2025年の系統的レビュー(Yu 2025・10試験・約760人)は、PSQI と ISI で鍼が偽鍼を上回ったと報告しています。

いっぽう総睡眠時間には有意差がなく、睡眠効率と入眠後の覚醒時間(寝ついたあと目が覚めていた時間)では鍼が上回りました。

著者は人数の少なさによる限界も認め、「主観的な睡眠の質は改善する/客観的な指標を改善するかは不確か」と結論しています。

偽鍼を型で分けた統合(Wang Y 2025・33試験・大半が中国)も、主観は偽鍼を上回り、客観の指標は差なし、という同じ形でした。

著者自身も、一般化の難しさを書いています。

規模の大きい試験:うつ病を伴う不眠の270名

この記事で取り上げた偽鍼との比較の中で、規模が大きいのは上海の3病院の試験(Yin 2022・JAMA Network Open)です。

対象はうつ病を伴う不眠の270名。電気鍼、刺さない偽鍼、標準治療のみの3群に分け、週3回を8週続けました。

8週時点の PSQI は、偽鍼群より約3.6点多く下がり、24週後の追跡でも改善が保たれていました。

著者が引く「意味のある差」(3点超)をわずかに上回る幅です(信頼区間の下限は2.8点で、3点を下回る値も含みます)。

いっぽう、夜中に目が覚める回数には群間差がありませんでした。

注意は3つあります。

一般の慢性不眠ではなく、うつ病を伴う不眠の試験であること。主要な指標が主観の質問票であること。そして鍼の群では自分の群を言い当てた人が多く、盲検(どちらの処置か分からなくする工夫)が十分とは言えないことです。

主要な時点で、偽鍼と差がなかった試験

香港の60名の試験(Yeung 2009)では、主要な指標の ISI で偽鍼との差が認められませんでした。睡眠効率(日誌と活動量計)では電気鍼が上回り、著者は「わずかな優位」と表現しています。

韓国の4施設・150名の試験(Lee 2020)でも、主要な時点の4週で、ISI に偽の電気鍼との差はありませんでした。

8週と12週では差が出ています。同じ試験の通常ケアの群とは、4週の時点から差がありました。

浅く刺す偽鍼との比較は、研究の間で割れている

うつ病の治療中に残った不眠の78名を、電気鍼、ツボでない場所に浅く刺す「最小鍼」、刺さないプラセボ鍼に分けた香港の試験(Yeung 2011)があります。

電気鍼と最小鍼は、どちらもプラセボ鍼より主観の指標が改善しました。しかし電気鍼と最小鍼の間には、どの指標にも差がありませんでした。

著者は、伝統的な理論に沿って刺すかどうかに関係なく、刺鍼の非特異的な効果(刺すことや施術を受けること全般による効果)かもしれない、と書いています。

一方、浅く刺す偽鍼にも鍼が上回ったとする統合(Wang Y 2025)と、同じツボへの偽鍼とは PSQI に差がなかったとする統合(Zhang X 2025・著者は「同じツボへの偽鍼は本当のプラセボではないかもしれない」と留保)もあります。

偽鍼との比較は、「主観の点数では上回る統合がある」「測った指標と主要な時点では差がはっきりしない」「偽鍼の型で結果が変わる」を同時に持っています。1つだけを伝えると、事実がずれます。

① 「鍼で不眠はよくなりますか?」と聞かれたとき
「正直にお伝えしますね。ニセの鍼と比べた研究をまとめると、『よく眠れた』というご本人の感じ方の点数では、本物の鍼のほうが良かったという報告があります。ただ、機械で測った睡眠時間でははっきりした差が出ていませんし、ニセの鍼と差がなかった研究もあります。国際的なレビューも、効果はまだ不確かだとしています。
それから、不眠の治療でまず勧められているのは、睡眠の習慣や考え方を見直す認知行動療法という方法です。受け方は、かかりつけの医療機関に相談してみてください。鍼にも、内出血や刺したところの痛みなどが起こることがあります。鍼を試すなら、効果がまだ不確かなことと、こうしたことを知っていただいたうえで、一緒に様子を見ながら続けるかを決めましょう。」

エビデンスボックス④ 偽鍼と比べた統合と主な試験の原文(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Yu Y, Li ほか. Acupuncture for chronic insomnia disorder: a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. Front Neurol. 2025;16:1541276.(PMID 40371085/DOI 10.3389/fneur.2025.1541276)鍼 vs 偽鍼のみ・10試験757名・慢性不眠障害。抄録の逐語=”Acupuncture demonstrated significant improvement in PSQI scores [MD = -2.60, 95% CI = (-3.24, -1.97), p < 0.00001] and ISI scores (MD = -2.04, 95% CI = [-3.18, -0.90], p = 0.0005) compared to sham acupuncture. Sequential analyses of the trials showed stable results.”/”In terms of objective sleep indices, there was no statistically significant difference in total sleep time between acupuncture and sham acupuncture [MD = 11.92, 95% CI = (-20.25, 44.09), p = 0.47]. Acupuncture was superior to sham acupuncture in terms of sleep efficiency and wake after sleep onset [MD = 3.62, 95% CI = (0.92, 6.32), p = 0.009; MD = -18.53, 95% CI = (-29.22, -7.85), p = 0.0007]. However, the sequential analysis indicated limitations due to small sample size which hindered drawing definitive conclusions.”(当サイトによる訳:鍼は偽鍼と比べて PSQI 得点〈MD −2.60、95%CI −3.24〜−1.97〉と ISI 得点〈MD −2.04、−3.18〜−0.90〉を有意に改善した。試験逐次解析の結果は安定していた。/客観的な睡眠指標では、総睡眠時間に鍼と偽鍼の統計的に有意な差はなかった〈MD 11.92、−20.25〜44.09、p=0.47〉。睡眠効率と入眠後の覚醒時間では鍼が偽鍼を上回った〈MD 3.62、0.92〜6.32/MD −18.53、−29.22〜−7.85〉。しかし試験逐次解析は、サンプルサイズが小さいことによる限界を示し、確定的な結論を妨げた。)
  • Yu 2025 の Conclusion(逐語・全2文)=”Compared with sham acupuncture, acupuncture is effective in improving subjective sleep quality in patients with CID. However, whether acupuncture improves patients’ objective sleep indices compared to sham acupuncture is uncertain and more high-quality clinical trial evidence is needed to validate this.”(当サイトによる訳:偽鍼と比べて、鍼は慢性不眠障害の患者の主観的な睡眠の質の改善に有効である。しかし、偽鍼と比べて鍼が患者の客観的な睡眠指標を改善するかは不確かであり、それを確かめるにはより質の高い臨床試験のエビデンスが必要である。)🛑 評釈:抄録の Results は「試験逐次解析は安定」と「試験逐次解析は小規模で限界」の両方を書いており、当サイトは片方だけを引きません。採用試験の国・偽鍼の型・GRADE は抄録に無く、当サイトは本文を確認していません。ISI の差(−2.04点)は、Ma 2025 が使った MID(4.7点)には届きません。ただしこの突き合わせは当サイトによるもので、原典に書かれた比較ではなく、基準の値も文献ごとに違います(ボックス②)。
  • Wang Y ほか. Is Sham Acupuncture Equally Effective for Primary Insomnia? A Bayesian Network Meta-Analysis. Nat Sci Sleep. 2025;17:1997-2012.(PMID 40909295/DOI 10.2147/NSS.S541797)33 RCT・3,004名。抄録の逐語(Results の一部)=”Specifically, at the endpoint, AT vs SA (MD: -3.66; 95% CI: -4.48 to -2.84) and AT vs NISA (MD: -4.35; 95% CI: -5.67 to -3) were significant, while differences among SA, NISA, and NAT were not.”…”No significant differences were found between AT, NISA, and SA regarding objective sleep parameters.”/Conclusion=”AT significantly improved subjective sleep quality in patients with PI, though its impact on objective sleep measures was limited. When designing RCTs of acupuncture for PI, NISA is recommended as the sham acupuncture control. However, due to geographical limitations, the study results may be difficult to generalize. Future research should focus on monitoring objective sleep parameters and conducting international, multicenter RCTs involving diverse cultural populations.”(当サイトによる訳:具体的には、終了時点で鍼 vs 浅刺の偽鍼〈MD −3.66、−4.48〜−2.84〉と鍼 vs 非侵襲の偽鍼〈MD −4.35、−5.67〜−3〉は有意だったが、浅刺の偽鍼・非侵襲の偽鍼・鍼以外の治療の間の差は有意でなかった。〈中略〉客観的な睡眠の指標では、鍼・非侵襲の偽鍼・浅刺の偽鍼の間に有意差はなかった。/鍼は原発性不眠の患者の主観的な睡眠の質を有意に改善したが、客観的な睡眠の指標への影響は限られていた。原発性不眠の鍼の RCT を設計する際には、非侵襲の偽鍼を偽鍼対照として推奨する。しかし地理的な限界のため、結果は一般化しにくいかもしれない。今後の研究は客観的な睡眠指標の測定と、多様な文化の集団を含む国際多施設の RCT に焦点を当てるべきである。)評釈:抄録は “with most studies originating from China” と書いています。MCID 2.5点は著者の設定です。SUCRA の順位は当サイトは引きません。〈中略〉には PSQI の MCID と SUCRA 順位の文があり、当サイトはここを省きました。
  • Yin X, Li W, Liang T, ほか. Effect of Electroacupuncture on Insomnia in Patients With Depression: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022;5(7):e2220563.(PMID 35797047/DOI 10.1001/jamanetworkopen.2022.20563/PMC9264041/NCT03122080)上海の三次病院3施設・DSM-5 のうつ病+不眠・270名(女性71.9%・平均50.3歳)。電気鍼+標準治療 vs 偽鍼(Streitberger 型・刺入なし・同じ経穴・通電器の表示ゼロ)+標準治療 vs 標準治療のみ。週3回×8週(計24回)+24週追跡。標準治療は、精神科医の指導、運動や食事の助言、抗うつ薬・鎮静薬・睡眠薬の通常の服用の継続(本文 Methods・薬剤名の特定なし)。
  • Yin 2022 抄録の逐語=”At week 8, the difference in PSQI score was -3.6 (95% CI, -4.4 to -2.8; P < .001) between the EA and SA groups and -5.1 (95% CI, -6.0 to -4.2; P < .001) between the EA and control groups. The efficacy of EA in treating insomnia was sustained during the 24-week postintervention follow-up.”…”No between-group differences were found in the frequency of sleep awakenings. No serious adverse events were reported.”/Conclusions=”In this randomized clinical trial of EA treatment for insomnia in patients with depression, quality of sleep improved significantly in the EA group compared with the SA or control group at week 8 and was sustained at week 32.”(当サイトによる訳:8週時点の PSQI 得点の差は、電気鍼群と偽鍼群で −3.6〈95%CI −4.4〜−2.8〉、電気鍼群と標準治療群で −5.1〈−6.0〜−4.2〉だった。不眠に対する電気鍼の有効性は、介入後24週の追跡の間も持続した。〈中略〉夜間の覚醒の頻度に群間差はなかった。重篤な有害事象は報告されなかった。/うつ病患者の不眠に対する電気鍼のこのランダム化臨床試験では、8週時点で電気鍼群の睡眠の質が偽鍼群や標準治療群と比べて有意に改善し、32週時点まで持続した。)
  • Yin 2022 本文の逐語(盲検)=”56 patients (62.2%) in the SA group guessed wrongly about their group assignment (Bang blinding index, −0.4 [95% CI, −0.6 to −0.3]), whereas 15 (16.7%) in the EA group also guessed wrongly (Bang blinding index, 0.5 [95% CI, 0.4-0.7]).”(当サイトによる訳:偽鍼群の56名〈62.2%〉が自分の割付を誤って推測した〈Bang の盲検指数 −0.4〉一方、電気鍼群で誤って推測したのは15名〈16.7%〉だった〈Bang の盲検指数 0.5〉。)/MCID(逐語・文献番号を省略)=”Previous studies … have suggested that the minimum clinically important difference is more than 3 points, …”(当サイトによる訳:先行研究は、臨床的に意味のある最小の差は3点を超えると示唆している。〈文の続きは省略〉)🛑 評釈:「…」の1つ目は原文の文献番号26・27の省略、2つ目は文の続きの省略です。電気鍼群の盲検指数0.5は、自分が本物を受けたと正しく推測した人が多い側に偏っていることを示し、当サイトは「盲検が成功した」とは書きません。本文の限界の節には、施術者が割付を知っていたこと、主要な指標が主観的で報告バイアスを受けやすいこと、活動量計の測定が1〜2晩だったことが書かれています(当サイトの言い換え)。
  • Yeung WF, Chung KF, Zhang SP, Yap TG, Law ACK. Electroacupuncture for primary insomnia: a randomized controlled study. Sleep. 2009;32(8):1039-1047.(PMID 19725255/DOI 10.1093/sleep/32.8.1039)香港・60名・DSM-IV 原発性不眠。電気鍼 vs Streitberger 偽鍼(同じ部位)・週3回×3週。抄録の逐語=”Both groups showed significant improvement compared with the pretreatment baseline. One-way analysis of covariance adjusted for baseline scores showed that there were significantly greater improvements in sleep efficiency by sleep diary and actigraphy in the electroacupuncture group. However, no significant between-group differences were observed in the Insomnia Severity Index and other outcome measures. The proportions of subjects having less than 30 minutes of wake after sleep onset and a sleep efficiency of at least 85% at the posttreatment visit were significantly higher in the electroacupuncture group. All adverse events were mild in severity.”/Conclusion(全2文)=”We found a slight advantage of electroacupuncture over placebo acupuncture in the short-term treatment of primary insomnia. Because of some limitations of the current study, further studies are necessary to verify the effectiveness of acupuncture for insomnia.”(当サイトによる訳:両群とも治療前と比べて有意に改善した。ベースラインで調整した共分散分析では、睡眠日誌と活動量計による睡眠効率の改善が電気鍼群で有意に大きかった。しかし、不眠重症度質問票とその他の指標では有意な群間差は認められなかった。治療後の来院時に入眠後の覚醒が30分未満かつ睡眠効率85%以上だった人の割合は、電気鍼群で有意に高かった。有害事象はすべて軽度だった。/原発性不眠の短期の治療で、電気鍼にプラセボ鍼をわずかに上回る優位を認めた。本研究にはいくつかの限界があるため、不眠に対する鍼の有効性を確かめるにはさらなる研究が必要である。)
  • Lee B, Kim BK, Kim HJ, ほか. Efficacy and Safety of Electroacupuncture for Insomnia Disorder: A Multicenter, Randomized, Assessor-Blinded, Controlled Trial. Nat Sci Sleep. 2020;12:1145-1159.(PMID 33328773/DOI 10.2147/NSS.S281231/PMC7735782)韓国の韓医学病院4施設・150名・DSM-5 不眠障害。電気鍼10回/4週 vs 偽の電気鍼(Park Sham Device=先端が鈍く皮膚を貫かない・非経穴・通電なし)vs 通常ケア(韓医学以外の不眠治療は許可)。3群とも睡眠衛生教育。抄録の逐語=”Compared with the usual care group, electroacupuncture group showed a greater improvement in ISI, PSQI, sleep diary-derived variables and HADS and EQ-5D scores at Week 4. The effects mostly persisted until Week 12. There were no significant differences between electroacupuncture and sham-electroacupuncture groups at Week 4 in all outcome measures, except sleep diary-derived sleep efficiency. However, the ISI score showed a significant difference between these groups at Weeks 8 and 12.”/本文の逐語=”There was no difference in the mean ISI scores at Weeks 2 and 4 between electroacupuncture and sham-electroacupuncture groups (P = 0.6404, 0.0866).”(当サイトによる訳:通常ケア群と比べて、電気鍼群は4週時点で ISI・PSQI・睡眠日誌の指標・HADS・EQ-5D の改善が大きかった。効果はおおむね12週まで持続した。4週時点では、睡眠日誌の睡眠効率を除くすべての指標で、電気鍼群と偽電気鍼群に有意差はなかった。しかし ISI 得点は8週と12週でこの2群に有意差を示した。/2週と4週の平均 ISI 得点に、電気鍼群と偽電気鍼群の差はなかった。)🛑 評釈:抄録の結論にある「効果的で安全な介入として推奨できる」という趣旨の文は、主要な時点で偽鍼と差がないため当サイトは引きません。客観指標は測っていません。資金は韓国韓医学研究院です。
  • Yeung WF, Chung KF, Tso KC, ほか. Electroacupuncture for residual insomnia associated with major depressive disorder: a randomized controlled trial. Sleep. 2011;34(6):807-815.(PMID 21629370/DOI 10.5665/SLEEP.1056)香港・78名・抗うつ薬の用量が一定の大うつ病で残った不眠。電気鍼 vs 最小鍼(非経穴への浅刺)vs 非侵襲のプラセボ鍼・週3回×3週。抄録の逐語(Results の後半)=”Post hoc pairwise comparisons revealed that electroacupuncture and minimal acupuncture were more efficacious than placebo acupuncture in ISI and PSQI at 1 week and 4 week post-treatment. Minimal acupuncture resulted in greater improvement in sleep diary-derived sleep efficiency than placebo acupuncture at 1 week post-treatment. There was no significant between-group difference in actigraphy measures, depressive symptoms, daily functioning, and hypnotic consumption, and no difference in any measures between electroacupuncture and minimal acupuncture.”/Conclusion(全2文)=”Compared with placebo acupuncture, electroacupuncture and minimal acupuncture resulted in greater improvement in subjective sleep measures at 1 week and 4 week post-treatment. No significant difference was found between electroacupuncture and minimal acupuncture, suggesting that the observed differences could be due to nonspecific effects of needling, regardless of whether it is done according to traditional Chinese medicine theory.”(当サイトによる訳:事後の対比較では、治療後1週と4週の ISI と PSQI で、電気鍼と最小鍼がプラセボ鍼より有効だった。治療後1週の睡眠日誌の睡眠効率では、最小鍼がプラセボ鍼より大きく改善した。活動量計の指標、抑うつ症状、日常の機能、睡眠薬の使用量には有意な群間差がなく、電気鍼と最小鍼の間にはどの指標にも差がなかった。/プラセボ鍼と比べて、電気鍼と最小鍼は治療後1週と4週の主観的な睡眠指標をより大きく改善した。電気鍼と最小鍼に有意差はなく、観察された差は、伝統中国医学の理論に沿って行うかどうかにかかわらず、刺鍼の非特異的な効果によるものである可能性を示唆する。)
  • Zhang X, Wang ほか. The dose-effect relationship between acupuncture and its effect on primary insomnia: a systematic review and meta-analysis. Front Psychiatry. 2025;16:1501321.(PMID 39995954/DOI 10.3389/fpsyt.2025.1501321)56研究。抄録の逐語=”In addition, there were no differences between acupuncture and SATV (sham acupuncture therapy at verum points) on the same acupuncture points in the PSQI scores. The results of GRADE assessment demonstrated that the level of evidence was very low to moderate, probably due to the poor methodological quality and the substantial heterogeneity among studies.”/Conclusions の2文目=”Although sham acupuncture needling at the same points as those in acupuncture may not be a true placebo control, this was utilized in a minority of studies.”(当サイトによる訳:さらに、同じ経穴に偽鍼を行う方法〈SATV〉と鍼の間に PSQI 得点の差はなかった。GRADE 評価ではエビデンスのレベルは非常に低い〜中等度で、方法論の質の低さと研究間の大きな異質性によると考えられる。/同じ経穴への偽鍼は真のプラセボ対照ではないかもしれないが、この方法を用いた研究は少数だった。)用量についての結論はボックス⑤。
  • ほかに偽鍼と比べた試験:Yin X, Gou M, Xu J, ほか. Sleep Med. 2017;37:193-200(PMID 28899535・上海・72名)は偽鍼より ISI などが改善したと報告していますが、抄録は F 値のみで群間の差の大きさが書かれておらず、偽鍼の型も当サイトは確認していません。Huang W, Johnson TM, Kutner NG, ほか. J Clin Psychiatry. 2018;80(1):18m12235(PMID 30549498・米国の退役軍人医療センター・60名)は、軽度の外傷性脳損傷後の睡眠障害(66.7% が PTSD)で、本物の鍼の PSQI の改善4.4点に対し偽の刺鍼2.4点(P=.04)、活動量計の睡眠効率も本物が上回ったと報告しています。対象が特殊で、偽の刺鍼の型は抄録にありません。

待機リストや通常ケアと比べると、どう見えるのか

比べる相手が「鍼を受けない群」になると、差は大きく出やすくなります。

受けていないことを本人が知っていることが、理由の1つです。仕組みは待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組みで整理しています。

香港の224名の試験(Chung 2018)は、鍼、鍼+耳鍼、待機リスト(あとから鍼を受ける群)を比べました。

鍼の2群はどちらも待機群より不眠が改善し、群内の改善は治療後13週まで保たれていました。著者の表現は「軽度の睡眠改善効果」で、耳鍼を足した上乗せは支持されませんでした。

韓国の50名の小さな試験(Lim 2026)は、3か月以上薬を飲んでも改善しない不眠の方が対象です。

電気鍼の群は待機群より ISI が下がりましたが、活動量計で測った睡眠には差がありませんでした。

測った指標の改善を報告した統合(Zhao 2021)もありますが、偽鍼と待機リストを1つの対照にまとめたもので、「偽鍼と比べた結果」としては読めません。

偽鍼だけに絞った統合(Yu 2025)では、総睡眠時間に差は認められていませんでした。

回数と期間は、どう組まれていたか

「何回くらい通えばいいですか」という質問にも触れておきます。

試験の多くは、週2〜3回を3〜8週で組んでいました。これは試験の設計で、効果が出る回数や推奨される回数を示すものではありません。回数そのものを無作為に比べた試験は、見つかった範囲で中国の1本(Zhu 2026・201名)だけです。

週3回で4週・6週・8週を比べ、6週と8週は4週より ISI の改善が約2.7〜2.8点大きく、8週と6週に差は認められませんでした。

この試験には偽鍼や無治療の群がありません。「6週で効く」ではなく、「4週より6週のほうが改善が大きかった」までです。

鍼を主題とする国際ガイドラインが示す「週3回・4週以上」は、専門家の合意で決めた値です。

エビデンスボックス⑤ 待機リスト・通常ケアと比べた試験、対照を混ぜた統合、回数と期間(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Chung KF, Yeung WF, Yu BYM, ほか. Acupuncture with or without combined auricular acupuncture for insomnia: a randomised, waitlist-controlled trial. Acupunct Med. 2018;36(1):2-13.(PMID 29229613/DOI 10.1136/acupmed-2017-011371)香港・224名・DSM-5 不眠障害。鍼単独 vs 鍼+耳鍼 vs 待機リスト(3:3:1)・週3回×3週(偽鍼なし)。抄録の逐語=”There was no significant difference between acupuncture and combination treatment in the primary outcome and most secondary outcomes at all time points. However, both treatments were better than waitlist in reducing insomnia, anxiety/depressive symptoms and fatigue, and improving function. Within-group improvements were maintained at 13 weeks after treatment. Of 260 adverse events, 243 were mild (93.5%). Discontinuation due to adverse events was 2.1% and 3.1% for acupuncture and combination treatment, respectively.”/Conclusions=”Limited by short-term treatment and follow-up, the attempt to augment acupuncture by auricular acupuncture was not supported. Acupuncture and combination treatment were safe and had mild hypnotic effects, which lasted for at least 13 weeks.”(当サイトによる訳:主要アウトカムと大半の副次アウトカムで、どの時点でも鍼と併用治療に有意差はなかった。しかし両治療とも、不眠・不安/抑うつ症状・疲労の軽減と機能の改善で待機リストより優れていた。群内の改善は治療後13週まで維持された。有害事象260件のうち243件〈93.5%〉は軽度だった。有害事象による中止は鍼で2.1%、併用で3.1%だった。/短期の治療と追跡という限界のもとで、耳鍼で鍼を増強する試みは支持されなかった。鍼と併用治療は安全で軽度の睡眠改善効果があり、それは少なくとも13週続いた。)🛑 評釈:対照は待機リストで、偽鍼と比べた根拠にはなりません。結論の「安全」は著者の語で、当サイトは地の文で「安全」とは書きません。
  • Lim JH, Park SH, Kim KO, Kang CW, Cho E, Kim BK. Effectiveness and Safety of Electroacupuncture in Patients with Treatment-Resistant Insomnia: A Randomized, Assessor-Blinded, Waitlist-Controlled Pilot Trial. Nat Sci Sleep. 2026;18:582813.(PMID 42094634/DOI 10.2147/NSS.S582813)韓国・50名・3か月以上の服薬でも改善しない不眠。電気鍼 週2回×6週 vs 待機。抄録の逐語=”In contrast, actigraphy-based sleep parameters showed no significant differences between the groups.”/Conclusion=”Electroacupuncture was associated with improvements in subjective sleep parameters but not in objective actigraphy-based sleep measures in patients with TRI, suggesting that electroacupuncture may be a potential complementary treatment option for patients with insomnia unresponsive to conventional pharmacotherapy.”(当サイトによる訳:対照的に、活動量計による睡眠の指標には群間の有意差はなかった。/治療抵抗性不眠の患者で、電気鍼は主観的な睡眠の指標の改善と関連したが、活動量計による客観的な睡眠の指標とは関連しなかった。このことは、従来の薬物療法に反応しない不眠の患者に対し、電気鍼が補完的な治療の選択肢になりうることを示唆する。)パイロット試験です。
  • Zhao 2021(書誌はボックス②)11研究775名・対照=偽鍼/プラセボ鍼または待機リスト。抄録の逐語=”The results of meta-analysis suggested that acupuncture can increase total sleep time [MD = 55.29, 95%CI (29.16, 81.42), p < 0.01], increase sleep efficiency [MD = 8.96, 95%CI (3.97, 13.95), p < 0.01], decrease wake after sleep onset [MD = -49.54, 95%CI (-82.98, -16.09), p < 0.01], and reduce number of awakening times [MD = -6.29, 95%CI (-10.75, -1.82), p < 0.01] compared with either sham-/placebo-acupuncture or waitlist control. Subsequent analysis indicated a superior effect for verum-acupuncture in comparison with sham-/placebo-acupuncture or waitlist-control when the recommended lowest threshold dosage (12 sessions) was met. Despite positive outcomes, most studies reviewed were heterogeneous and at risk of bias due to methodological issues.”(当サイトによる訳:メタ解析の結果は、偽鍼/プラセボ鍼または待機リストと比べて、鍼が総睡眠時間を増やし〈MD 55.29〉、睡眠効率を高め〈MD 8.96〉、入眠後の覚醒時間を減らし〈MD −49.54〉、覚醒回数を減らす〈MD −6.29〉ことを示唆した。続く解析では、推奨される最低限の用量〈12回〉を満たした場合に、本物の鍼が偽鍼/プラセボ鍼または待機リストより優れた効果を示した。肯定的な結果にもかかわらず、レビューした研究の大半は異質性が高く、方法論上の問題からバイアスのリスクがあった。)🛑 評釈:偽鍼と待機リストを1つにまとめた対照です。偽鍼だけの統合(Yu 2025)では総睡眠時間に差がありません。当サイトは本文にこの数値を出していません。
  • Xu HY, Wu LN, Zhang Y, Ba T, Zhao XF. Efficacy and safety of electroacupuncture for insomnia: A systematic review and meta-analysis. J Integr Med. 2024;22(4):459-472.(PMID 38871592)31試験・対照=偽鍼・無治療・通常ケア・手技の鍼の混合。有効率の統合値と「さまざまな型の不眠に適する」とする結論は、対照が4種混ざっているため当サイトは使っていません。有害事象の値はボックス⑩。
  • Zhu F, Wang Y, Liu J ほか. Comparative effectiveness of different acupuncture courses for chronic insomnia disorder: a three-arm randomized controlled trial. J Affect Disord. 2026;415:122469.(PMID 42697250/DOI 10.1016/j.jad.2026.122469/ChiCTR2300073711)201名・4週 vs 6週 vs 8週(週3回・同じ経穴・無治療/偽鍼群なし)。抄録の逐語=”Compared with the 4-week group, the 6- and 8-week groups showed greater improvements in ISI scores, with adjusted mean differences of -2.7 points (95% CI, -4.8 to -0.6; P = .008) and -2.8 points (95% CI, -4.9 to -0.6; P = .006), respectively. The additional improvement with the 8-week course versus the 6-week course was limited, with an adjusted mean difference of 0.0 points (95% CI, -2.2 to 2.1; P > .99).”…”No significant between-group differences were observed in fatigue or hypnotic medication use. No serious adverse events were reported.”(当サイトによる訳:4週群と比べ、6週群と8週群は ISI 得点の改善が大きく、調整平均差はそれぞれ −2.7点〈95%CI −4.8〜−0.6〉と −2.8点〈−4.9〜−0.6〉だった。6週と比べた8週の追加の改善は限られ、調整平均差は0.0点〈−2.2〜2.1〉だった。〈中略〉疲労と睡眠薬の使用に有意な群間差はなかった。重篤な有害事象は報告されなかった。)
  • 試験で使われた回数・期間=Yeung 2009・Yeung 2011・Chung 2018:週3回×3週/Yin 2017:週3回×4週/Lee 2020:4週で10回/Yin 2022:週3回×8週(24回)/Garland 2019:8週で10回/Lim 2026:週2回×6週。これらは試験の設計であって、効果が出る回数や推奨回数ではありません。
  • 系統的レビューの用量の記述=Zhang X 2025(書誌はボックス④)の Conclusions の3文目=”Collectively, the data suggest that at least three sessions per week for 3-4 weeks and a total of at least 12 acupuncture sessions would be the optimal clinical response.”(当サイトによる訳:総合すると、データは週3回以上を3〜4週、合計12回以上が最適な臨床反応になることを示唆する。)🛑 評釈:試験どうしを比べた非無作為の推定で、同じ結論の2文目には「同じ経穴への偽鍼は真のプラセボではないかもしれない」という留保があります(ボックス④)。
  • 鍼を主題とする国際ガイドラインの用量=Wang J 2026(書誌はボックス⑧)抄録の逐語=”…a treatment protocol involving needle retention for 30 min after obtaining “de qi”, administered three times per week for at least four weeks.”(当サイトによる訳:得気の後に30分置鍼し、週3回、少なくとも4週行う治療プロトコル。)専門家の合意で定められたもので、試験で比べた結果ではありません。

認知行動療法(CBT-I)と比べると、どう見えるのか

「鍼と CBT-I、どちらがいいんですか」。ここは直接比べた試験があります。

米国の2施設で、がんを経験した160名を鍼と CBT-I に分けた試験(Garland 2019)です。

鍼は、資格を持つ経験10年以上の鍼灸師が8週で10回行いました。

結果は、治療後の ISI で CBT-I のほうが有意に良く、差は約2.6点でした。

いっぽう鍼の群も ISI が8点あまり下がり、改善は20週まで保たれていました。治療終了時の痛みは鍼の群が良く、疲労・気分・生活の質と睡眠薬の使用の減り方は両群で同程度でした。

著者は、両治療とも意味のある持続的な改善をもたらしたが、CBT-I のほうが有効で第一選択とすべき、と結論しています。

読むときの注意も3つあります。

鍼の群の「8点あまりの低下」は治療前後の変化で、偽鍼と比べた差ではありません。この試験は非劣性試験ではないので、「鍼は CBT-I とほぼ同じ」とも言えません。そして対象はがんサバイバーです。

がんのある方に絞った2025年のコクラン(Ma 2025・5試験・約400人、主に乳がんの女性)では、比べる相手で向きが3つに分かれました。

偽鍼とは差がほとんどないかもしれない。鍼を受けない対照よりは改善するかもしれない(有害事象の考慮も必要)。CBT-I には劣る可能性が高い(総睡眠時間は鍼が上)。確実性は「非常に低い」〜「中等度」です。

スウェーデンの59名の試験(Bergdahl 2016)でも、この試験で提供した形の集団の耳鍼は、集団の CBT-I に劣っていました(体に刺す鍼ではありません)。

多数の治療を間接的に比べた統合で、電気鍼が上位、CBT-I が下位に並んだ報告(Wang S 2023)もあります。

直接比べた試験とは逆向きで、順位だけで「鍼は CBT-I より上」とは言えません。

エビデンスボックス⑥ CBT-I と比べた試験の原文と、ネットワークメタ解析の順位の扱い(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Garland SN, Xie SX, DuHamel K, Bao T, Li Q, Barg FK, Song S, Kantoff P, Gehrman P, Mao JJ. Acupuncture Versus Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia in Cancer Survivors: A Randomized Clinical Trial. J Natl Cancer Inst. 2019;111(12):1323-1331.(PMID 31081899/DOI 10.1093/jnci/djz050/PMC6910189)米国2施設(ペンシルベニア大学 Abramson がんセンター/Memorial Sloan Kettering)・160名(鍼80・CBT-I 80)・平均61.5歳・女性56.9%。
  • 抄録の逐語(Results)=”CBT-I was more effective than acupuncture posttreatment (P < .001); however, both acupuncture and CBT-I produced clinically meaningful reductions in insomnia severity (acupuncture: -8.31 points, 95% confidence interval = -9.36 to -7.26; CBT-I: -10.91 points, 95% confidence interval = -11.97 to -9.85) and maintained improvements up to 20 weeks. Acupuncture was more effective for pain at the end of treatment; both groups had similar improvements in fatigue, mood, and quality of life and reduced prescription hypnotic medication use. CBT-I was more effective for those who were male (P < .001), white (P = .003), highly educated (P < .001), and had no pain at baseline (P < .001).”(当サイトによる訳:治療後、CBT-I は鍼より有効だった〈P<.001〉。しかし鍼と CBT-I はどちらも不眠の重症度に臨床的に意味のある減少をもたらし〈鍼 −8.31点、95%CI −9.36〜−7.26/CBT-I −10.91点、−11.97〜−9.85〉、改善は20週まで維持された。治療終了時の痛みには鍼がより有効だった。疲労・気分・生活の質の改善と処方睡眠薬の使用の減少は両群で同様だった。CBT-I は男性・白人・高学歴・ベースラインで痛みのない人でより有効だった。)
  • Conclusions(逐語・全2文)=”Although both treatments produced meaningful and durable improvements, CBT-I was more effective and should be the first line of therapy. The relative differences in the comparative effectiveness between the two interventions for specific groups should be confirmed in future adequately powered trials to guide more tailored interventions for insomnia.”(当サイトによる訳:両治療とも意味のある持続的な改善をもたらしたが、CBT-I のほうが有効であり、第一選択の治療とすべきである。特定の集団における2つの介入の比較有効性の相対的な違いは、不眠へのより個別化された介入の指針とするため、今後の十分な検出力を持つ試験で確かめるべきである。)
  • 本文の逐語(試験の設計)=”Our trial was designed as a head-to-head comparative effectiveness trial rather than a noninferiority trial.”(当サイトによる訳:本試験は非劣性試験ではなく、直接比較の比較有効性試験として設計された。)本文の記載(当サイトの言い換え)=鍼は2週間は週2回、その後6週間は週1回の計10回。資格を持つ鍼灸師4名(経験11〜14年)が8〜16本を用いた。🛑 通電の記載は、当サイトが確認した本文には見当たりません。群間差は ISI 2.60点(Cohen’s d 0.32)。有害事象は鍼9名(刺鍼部位の痛み・かゆみなど)、CBT-I 5名(眠気・日中の疲労)で、いずれも軽度〜中等度。睡眠薬の使用は両群で減り、群間差はありませんでした。客観的な睡眠の指標は測っていません。
  • 🛑 評釈:鍼の群の −8.31点は治療前後の変化で、偽鍼と比べた差ではありません。コクランのがん患者レビュー(Ma 2025・ボックス③)の CBT-I 比「1試験160名・ISI MD 2.60」と数値が一致しますが、同じ試験であることは当サイトはコクラン本文で確認していません。著者の専門分野は、当サイトは一次資料で確かめておらず、記事では結論の中身だけを紹介しています。
  • Bergdahl L, Broman JE, Berman AH, Haglund K, von Knorring L, Markström A. Auricular Acupuncture and Cognitive Behavioural Therapy for Insomnia: A Randomised Controlled Study. Sleep Disord. 2016;2016:7057282.(PMID 27242930/DOI 10.1155/2016/7057282/NCT01765959)スウェーデン・59名・平均60.5歳。集団の耳鍼 vs 集団の CBT-i。抄録の逐語=”Significant between-group improvements were seen in favour of CBT-i in ISI after treatment and at the 6-month follow-up and in DBAS-16 after treatment. Both groups showed significant within-group postintervention improvements in ISI, and these changes were maintained six months later.”/Conclusions=”Compared to CBT-i, AA, as offered in this study, cannot be considered an effective stand-alone treatment for insomnia disorder.”(当サイトによる訳:治療後と6か月後の ISI、治療後の DBAS-16 で、CBT-i を支持する有意な群間の改善がみられた。両群とも介入後の ISI に有意な群内の改善を示し、その変化は6か月後も維持された。/CBT-i と比べると、本研究で提供した形の耳鍼は、不眠障害の有効な単独治療とはみなせない。)評釈:著者の限定句 “as offered in this study” を落としていません。耳鍼で、体鍼ではありません。
  • Wang S, Lan ほか. Effects of different interventions on insomnia in adults: Systematic review and network meta-analysis. J Psychiatr Res. 2023;165:140-149.(PMID 37499485/DOI 10.1016/j.jpsychires.2023.07.004)122 RCT。抄録の逐語=”For the PSQI scores, we found the sequence of intervention measures by effect to be as follows: electroacupuncture, acupuncture, repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS), essential oils, herbal medicine, traditional Western medicine, Tai Chi and Baduanjin, music, supplements, cognitive behavioral therapy for insomnia (CBT-I), and exercise.”(当サイトによる訳:PSQI 得点について、効果による介入の順位は、電気鍼、鍼、反復経頭蓋磁気刺激、精油、生薬、従来の西洋医学、太極拳と八段錦、音楽、サプリメント、CBT-I、運動の順だった。)🛑 評釈:PSQI 上の並びで、抄録に信頼区間や確実性は書かれていません。鍼と CBT-I を直接比べた試験はほとんどなく間接比較です。直接比べた Garland 2019 やコクラン(Ma 2025)とは向きが逆です。当サイトは順位を「効果の大きさの証拠」として扱いません。

睡眠薬を飲んでいる患者さんに鍼をするとき、何に気をつけるか

「鍼を始めたし、そろそろ睡眠薬を減らしてもいいですか?」

不眠の患者さんに鍼をしていると、いずれ聞かれる質問です。

併用:薬を続けたまま鍼を足した試験はある

うつ病を伴う不眠の試験(Yin 2022)は睡眠薬などの服用を続けたまま行われ、韓国の試験(Lim 2026)は薬で改善しない不眠が対象でした。

コクランの上乗せ比較(前の章)も「わずかに増やすかもしれない」までで、偽鍼を足した群と比べた試験はありません。

「鍼は睡眠薬の代わりになる」と言える材料はありません。

減薬:偽鍼と比べた2つの試験で、結果が分かれている

鍼で睡眠薬を減らせるか。偽鍼と比べた試験は、向きが逆の2本があります。

香港の144名の試験(Yeung 2019)は、ベンゾジアゼピン系の薬を長く飲んでいる人が、4週かけて少しずつ減らす計画の中で、電気鍼と刺さないプラセボ鍼を比べました。

やめられた人の割合にも、減った量にも群間差はありませんでした。両群とも使用量は約4〜5割減り、著者はその減少を鍼の非特異的な効果によるものかもしれないとしています。

中国の64名の試験(Fan 2026)は、少しずつ減らす計画に鍼を足した群で、減量の割合と中止の成功が高かったと報告しています。

2本とも、減薬は医療者が組んだ漸減(少しずつ減らす)の計画の中で行われていました。「鍼をすれば薬をやめられる」は、どちらの試験からも言えません。

鍼灸師が伝えるのは「自己判断で減らさないで」まで

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性についての資料(2017年3月・2024年5月更新)で、患者向けにこう書いています。

出所:PMDA「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」No.11「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について」(2017年3月・2024年5月更新)【患者の皆様へ】の囲み(全文)。編集長が原本PDFで照合
「【患者の皆様へ】この資材に掲載されている注意喚起は医療従事者向けの情報です。服薬中の患者さんは医師又は薬剤師にご相談ください。自己判断で服薬を中止したり、用量を減らしたりされないようお願いいたします。」

同じ資料は、長く飲み続けると承認用量の範囲内でも身体依存が生じることがあり、減量や中止のときに離脱症状が出ることがある、とも書いています。

薬の選択は鍼灸師が答える範囲ではありません。減らし方の目安を伝えることもしません。

伝えるのは「自己判断で減らさず、処方した医師か薬剤師に相談してください」まで。鍼を受けていることを主治医に伝えてもらうことも、あわせて勧めてください。

② 「鍼を始めたので、睡眠薬を減らしたい」と言われたとき
「減らしたいお気持ち、よく分かります。ただ、睡眠薬を自己判断で減らしたりやめたりすると、薬の種類によっては、かえって眠りが悪くなったり、体調を崩したりすることがあると、公的な機関も注意を呼びかけています。減らすかどうか、どう減らすかは私からはお答えできないので、処方してくださった先生か薬剤師さんに相談してください。そのとき、鍼を受けていることも伝えてくださいね。
鍼で薬を減らせるかを調べた研究は、結果が分かれていて、まだはっきりしていません。」

エビデンスボックス⑦ 併用・減薬の試験と、「自己判断で減らさない」の一次資料(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • コクランの上乗せ比較=Cheuk 2012(ボックス③)。「other treatment」は薬物療法・心理療法・補完代替療法を含み、両群が同じ治療を受けていることが条件。上乗せを偽鍼の上乗せと比べた RCT はなく、著者は上乗せ治療として有効かという問いに答えられなかった、と書いています。
  • Ma J, Peng M, Xu XJ ほか. Clinical efficacy and safety of acupuncture versus Western medicine for insomnia: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2025;16:1589535.(PMID 41328315/DOI 10.3389/fneur.2025.1589535・訂正記事 PMID 41451414 あり)25 RCT・中国語データベースを含む。鍼と薬を直接比べた統合です。🛑 評釈:PSQI の統合は I²=94% と異質性が非常に高く、比べた薬の中身を当サイトは特定できていません。非盲検が前提の比較で、訂正記事の内容も未確認のため、統合値は載せていません。
  • VA/DoD 2019 推奨28の Discussion(p.56〜57・逐語・編集長が原本 PDF で照合)=”Acupuncture was shown to be slightly superior to sham treatment. Acupuncture provided the best results when compared to pharmacotherapy, with a statistically superior effect over medication. Studies comparing acupuncture and pharmacotherapy were unable to be blinded to participants or professionals as both were able to differentiate between the two interventions allowing for a high risk of bias.”(当サイトによる訳:鍼は偽の治療をわずかに上回ることが示された。鍼は薬物療法と比べたときに最もよい結果を示し、薬に対して統計的に優れた効果があった。鍼と薬物療法を比べた研究は、参加者も専門職も2つの介入を区別できたため盲検化できず、バイアスのリスクが高かった。)同じ Discussion の結びの段落の逐語=”The Work Group’s confidence in the quality of the evidence is very low.”(訳:作業部会のエビデンスの質への確信は非常に低い。)🛑 評釈:「薬より優れていた」は、直後の「盲検化できず高いバイアスのリスク」と、結びの「確信は非常に低い」とセットで読みます。この推奨28は「推奨も反対もしない」で、2025年版で削除されています(ボックス⑧)。
  • Yeung WF, Chung KF, Zhang ZJ, ほか. Electroacupuncture for tapering off long-term benzodiazepine use: A randomized controlled trial. J Psychiatr Res. 2019;109:59-67.(PMID 30504097/DOI 10.1016/j.jpsychires.2018.11.015)香港・144名・ベンゾジアゼピン長期使用者。電気鍼 vs 非侵襲のプラセボ鍼(いずれも4週の漸減スケジュールと併用)。抄録の逐語=”The cessation rates of the electroacupuncture and placebo acupuncture groups at 12 weeks post-treatment were 9.17% and 10.83%, respectively. Both groups showed a reduction in benzodiazepine usage by a self-completed drug record at week 16 (compared to baseline: electroacupuncture group -40.23% versus placebo acupuncture group -48.76%). However, no significant between-group differences were found in the benzodiazepine cessation rate, reduction in benzodiazepine usage, and other secondary measures across all the study time points.”/Conclusions(全3文)=”Electroacupuncture showed a similar cessation rate in benzodiazepine use to that of non-invasive placebo acupuncture in long-term users during a 4-week gradual tapering schedule. The evidence did not support advantages of electroacupuncture over non-invasive placebo acupuncture on reducing insomnia, anxiety, depression, or other withdrawal symptoms during the gradual tapering schedule. Despite a 40% decrease in the benzodiazepine usage in both groups, the effects may be attributed to the non-specific effects of acupuncture.”(当サイトによる訳:治療後12週の中止率は、電気鍼群9.17%、プラセボ鍼群10.83%だった。両群とも16週時点で自己記入の服薬記録によるベンゾジアゼピンの使用量が減った〈ベースライン比 電気鍼群 −40.23%/プラセボ鍼群 −48.76%〉。しかし、中止率・使用量の減少・その他の副次指標に、すべての時点で有意な群間差はなかった。/4週の漸減スケジュールの間、長期使用者での電気鍼のベンゾジアゼピン中止率は、非侵襲のプラセボ鍼と同程度だった。漸減の間の不眠・不安・抑うつなどの離脱症状の軽減について、電気鍼が非侵襲のプラセボ鍼より優れているとするエビデンスは得られなかった。両群で使用量が40%減ったが、その効果は鍼の非特異的な効果によるものかもしれない。)
  • Fan ZQ, Gao YS, Chen YH, ほか. Acupuncture combined with gradual benzodiazepine reduction for benzodiazepine-dependent insomnia: A multicenter randomized controlled trial. Explore (NY). 2026;22:103421.(PMID 42066590/DOI 10.1016/j.explore.2026.103421)中国・64名。鍼+漸減 vs プラセボ鍼+漸減・週5回×4週。抄録の逐語=”Patients in the ARB group demonstrated significantly greater reductions in ISI scores compared with those in the PARB group (p = 0.005 for week 4-week 0 and week 12-week 0 comparisons). The DRRB was also significantly higher in the ARB group compared with the PARB group (p = 0.002 for week 4-week 1 and p < 0.001 for week 12-week 1). At week 12, the ARB group additionally demonstrated lower FS-14 scores and a higher rate of successful benzodiazepine discontinuation.”(当サイトによる訳:鍼+漸減群は、プラセボ鍼+漸減群と比べて ISI 得点が有意に大きく減少した。ベンゾジアゼピンの減量率も鍼+漸減群で有意に高かった。12週時点では、鍼+漸減群は疲労の尺度の得点も低く、ベンゾジアゼピンの中止の成功率も高かった。)評釈:プラセボ鍼の型と試験の登録番号は抄録にありません。当サイトは Yeung 2019 と並べてのみ扱います。
  • PMDA「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」No.11「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について」(2017年3月・2024年5月更新・https://www.pmda.go.jp/files/000268322.pdf ・2ページ)編集長が原本 PDF で照合。本文の逐語=「ベンゾジアゼピン受容体作動薬には、承認用量の範囲内でも漫然とした長期間服用により身体依存が生じることがあります。なお、その際には、減量や中止時に様々な離脱症状があらわれることがあります。」/医療従事者向けの3項目の3つ目は、投与を中止するときは急にやめず慎重に減薬・中止すること、患者に自己判断で中止しないよう指導することを、処方する医療従事者に求めています(具体的な方法の記載は、当サイトでは転記していません)。/留意点(逐語)=「この情報は、医療従事者の裁量を制限したり、医療従事者に義務や責任を課すものではなく、医薬品の適正使用を推進するための情報として作成したものです。」🛑 評釈:3項目の3つ目は処方する医療従事者に向けた記載で、鍼灸師が患者に減らし方を伝える根拠ではありません。当サイトがこの資料から鍼灸院の実務に持ち込むのは、患者向けの囲みにある「医師又は薬剤師に相談」「自己判断で中止・減量しない」の2点だけです。
  • 睡眠薬GL 2013(書誌はボックス①)当サイトの言い換え=患者向けの解説(Q34)は、自己判断で急に中止すると不眠が悪化することがあるため主治医と相談するよう、患者向けの解説(Q40・p.35)は、睡眠薬の減量は自己判断で行わず主治医に相談するよう書いています。治療者向けの勧告(Q39・p.35)は、長期服用後の休薬では軽度のものも含めて離脱症状が多くの患者でみられ、漸減法などを用いて慎重に行うことが重要としています。Q40 の勧告(p.35)が挙げる減量法は、漸減法・認知行動療法・補助薬物療法・心理的サポートの4つです。🛑 評釈:患者向けの解説の原文には当サイトの禁止語にあたる語が含まれるため、逐語では引いていません。Q40 の勧告が挙げる減量法に鍼は含まれていませんが、「鍼は減量に役立たない」とガイドラインが書いているわけではありません。Q34・Q39・Q40 の記載は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • Watson NF, Benca RM, Krystal AD, McCall WV, Neubauer DN. Alliance for Sleep Clinical Practice Guideline on Switching or Deprescribing Hypnotic Medications for Insomnia. J Clin Med. 2023;12(7):2493.(PMID 37048577/DOI 10.3390/jcm12072493)抄録の逐語=”When switching or discontinuing insomnia medications, we recommend benzodiazepine hypnotic drugs be tapered while additional CBT-I is provided.”(当サイトによる訳:不眠の薬を切り替える、または中止する際には、CBT-I を追加で提供しながらベンゾジアゼピン系睡眠薬を漸減することを推奨する。)評釈:米国の睡眠専門医5名によるコンセンサス型の文書で、補助的な資料として置いています。

ガイドラインは、不眠症の鍼をどう扱っているか

「学会はどう言ってるんですか」。ここは文書ごとに、扱いが4通りに分かれます。

ひとまとめに「推奨されていない」と言うと、事実とずれます。

図解:不眠症の診療ガイドラインでの鍼の扱いを、範囲の外・名指しで推奨しない(欧州の2017年版。2023年版は未確認)・見直しをせずに削除・鍼を主題とする国際ガイドラインでの条件付きの提案、の4つに分けて文書名と年を並べた図

ガイドラインでの鍼の扱い

ガイドラインでの鍼の扱いは、文書ごとに4通り

「推奨一覧に無い」と「推奨しない」は別です。欧米の診療ガイドライン(米国内科学会・欧州睡眠学会・VA/DoD)は、CBT-I を第一選択に置いています。

【範囲の外】米国睡眠医学会(2017・2021・2026)

薬物療法・行動心理療法・その併用のガイドラインで、鍼は対象外

【名指しで推奨しない(2017年版)】欧州睡眠学会(2017)

補完代替療法(例:ホメオパシー、鍼)を不眠症の治療に推奨しない
弱い推奨・根拠の質は非常に低い
改訂版(2023)での扱いは不明(抄録に鍼の語なし・本文未確認)

【見直しをせずに削除】VA/DoD(2019→2025)

2019年は耳ツボへの種子・粒の貼付を弱く支持、その他の鍼は推奨も反対もできない(根拠不十分)
2025年はどちらもエビデンスの見直しをせずに削除
削除の個別の理由は本文に記載なし。「2025年に否定された」という意味ではありません
研究の優先課題に CBT-I と鍼などの組み合わせを記載

【鍼を主題とする国際ガイドライン】(2026)

11か国26名の多職種パネル(抄録の表記・内訳は当サイト未確認)
電気鍼・手技の鍼を、とくに利用できる施設では検討してよいと条件付きで提案
確実性は中等度〜低い|抄録までの確認

ほかの文書

米国内科学会(2016)=2つの推奨は CBT-I と薬について。鍼は推奨文に出てこない(本文は当サイト未確認)
日本の睡眠薬ガイドライン(2013)=全37ページに鍼・灸の語なし(主題は睡眠薬の使い方と休薬。推奨しない、の意味ではありません)

模式図です。4つのカードは扱いの種類の違いで、強い・弱いの順番ではありません。カード1・3と、下の「ほかの文書」の米国内科学会・日本のガイドラインは「鍼を推奨しない」という意味ではありません。明示的に推奨しないと書いているのは、当サイトが確認した範囲ではカード2の2017年版だけで、強さは弱い推奨、根拠の質は非常に低いとされています。カード3の2019年の弱い支持は耳ツボに種子や粒を貼る方法で、刺す鍼ではありません。カード4は睡眠医学の学会や公的機関ではなく、鍼治療を主題として作られたガイドラインです。出所=Sateia 2017(PMID 27998379)/Edinger 2021(PMID 33164742)/Buysse 2026(PMID 41975142)/Qaseem 2016(PMID 27136449)/Riemann 2017(PMID 28875581)/Riemann 2023(PMID 38016484)/VA/DoD 2019(p.28〜29)・2025(p.15・p.94・p.129)/Wang J 2026(PMID 42030608)/睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(2013)。カードの構成は当サイトが組み直したもので、原典にこの図はありません。

1つ目:対象の外、または推奨文に鍼が出てこない(米国睡眠医学会・米国内科学会・日本の睡眠薬ガイドライン)

米国睡眠医学会(AASM)の不眠のガイドラインは、薬物療法・行動心理療法・その併用が対象で、鍼は範囲の外です。

米国内科学会(ACP、2016年)の2つの推奨文は CBT-I と薬についてのもので、鍼は出てきません(本文は当サイト未確認)。日本の睡眠薬ガイドライン(2013年・全37ページ)にも、鍼の語はありません。

どれも「推奨しない」と読むことはできません。日本睡眠学会の『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』は、当サイトは確認していません。

2つ目:名指しで「推奨しない」、推奨の強さは弱い(欧州ガイドライン2017年版)

当サイトが確認した範囲で明示的に推奨しないのは、欧州睡眠学会の2017年版だけです(例としてホメオパシーと鍼を挙げ、推奨の強さは「弱い」、根拠の質は「非常に低い」)。

2023年版は抄録に鍼の語がなく、本文を確認できていないため、今の扱いは分かりません。

3つ目:根拠を見直さずに削除(米国退役軍人省・国防総省)

VA/DoD は2019年版で、耳のツボに種子や粒を貼る方法(刺す鍼ではありません)を弱く推奨し、ほかの鍼は「推奨も反対もできるだけの根拠がない」としていました。2025年版では、2つとも「見直しをせずに削除」です。

削除の個別の理由は書かれておらず、研究の優先課題には CBT-I に鍼などを組み合わせる研究が挙がっています。「2025年に鍼が否定された」ではありません。

4つ目:鍼を主題とする国際ガイドラインは、条件付きの提案

鍼による不眠症の管理を主題とする国際ガイドライン(Wang J 2026)では、抄録によると11か国・26名の多職種のパネルが、確実性が中等度〜低いエビデンスにもとづき、慢性不眠に電気鍼か手技の鍼を、利用できる施設では検討してよいと条件付きで提案しています。

パネルの内訳と利益相反は当サイト未確認で、睡眠医学の学会や公的機関の文書とは、鍼を主題として作られた点で立場が違います。

エビデンスボックス⑧ ガイドラインの書誌と、鍼の扱いの原文(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 米国睡眠医学会(AASM)の3本と対象範囲(抄録の逐語)=Sateia MJ ほか. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults. J Clin Sleep Med. 2017;13(2):307-349(PMID 27998379):”The purpose of this guideline is to establish clinical practice recommendations for the pharmacologic treatment of chronic insomnia in adults, when such treatment is clinically indicated.”(当サイトによる訳:本ガイドラインの目的は、臨床的に適応がある場合の成人の慢性不眠に対する薬物療法の推奨を定めることである。)/Edinger JD ほか. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults. J Clin Sleep Med. 2021;17(2):255-262(PMID 33164742):”This guideline establishes clinical practice recommendations for the use of behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults.”(訳:本ガイドラインは、成人の慢性不眠障害に対する行動療法・心理療法の使用についての推奨を定める。)/Buysse DJ ほか. Combination treatment for chronic insomnia disorder in adults. J Clin Sleep Med. 2026;22(1)(PMID 41975142)=対象は CBT-I と薬物療法を同時に始める併用治療(抄録の冒頭のみ確認・当サイトの取得は要約を含む)。🛑 評釈:3本とも鍼を対象に含みません。当サイトは「AASM は鍼を推奨していない」とは書きません。
  • ACP 2016(書誌はボックス①)=2つの推奨は CBT-I と薬物療法についてのもので、鍼は推奨文に出てきません。本文での鍼の記載の有無は、当サイトは本文に到達できず未確認です。
  • ESRS 2017(書誌はボックス①)抄録の最終文(逐語)=”Complementary and alternative treatments (e.g. homeopathy, acupuncture) are not recommended for insomnia treatment (weak recommendation, very-low-quality evidence).”(当サイトによる訳:補完代替療法〈例:ホメオパシー、鍼〉は不眠症の治療に推奨されない〈弱い推奨、非常に質の低いエビデンス〉。)/根拠の範囲(逐語)=”The guideline is based on a systematic review of relevant meta-analyses published till June 2016.”(訳:本ガイドラインは、2016年6月までに出版された関連するメタ解析の系統的レビューに基づく。)🛑 評釈:推奨一覧に「無い」のではなく、明示的に「推奨されない」と書かれています。当サイトは、強さ(弱い)と根拠の質(非常に低い)を同じ文に置いて書きます。
  • ESRS 2023(書誌はボックス①)抄録の逐語(非推奨の文)=”Antihistaminergic drugs, antipsychotics, fast-release melatonin, ramelteon and phytotherapeutics are not recommended for insomnia treatment (A).”/”Light therapy and exercise interventions may be useful as adjunct therapies to cognitive-behavioural therapy for insomnia (B).”(当サイトによる訳:抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、速放性メラトニン、ラメルテオン、植物療法は不眠症の治療に推奨されない〈A〉。/光療法と運動介入は、不眠症の認知行動療法の補助療法として有用かもしれない〈B〉。)🛑 評釈:抄録に鍼の語はなく、本文(Wiley)には当サイトは到達できていません。2023年版で鍼の扱いが維持・削除・変更のどれなのかは不明です。
  • VA/DoD 2019 の推奨一覧(p.28〜29・逐語・編集長が原本 PDF で照合)=推奨27 “We suggest offering auricular acupuncture with seed and pellet for the treatment of chronic insomnia disorder.”(Weak for)/推奨28 “There is insufficient evidence to recommend for or against acupuncture other than auricular acupuncture with seed and pellet for the treatment of chronic insomnia disorder.”(Neither for nor against)/推奨40 “We suggest against the use of benzodiazepines for the treatment of chronic insomnia disorder.”(Weak against)(当サイトによる訳:慢性不眠障害の治療に、種子と粒を用いた耳鍼を提供することを提案する〈弱く支持〉。/慢性不眠障害の治療に、種子と粒を用いた耳鍼以外の鍼を推奨する、または反対するだけの根拠は不十分である〈支持も反対もしない〉。/慢性不眠障害の治療にベンゾジアゼピンを用いないことを提案する〈弱く反対〉。)
  • 推奨27の Discussion の結び(p.55〜56・逐語)=”The Work Group’s confidence in the quality of the evidence is low.”(訳:作業部会のエビデンスの質への確信は低い。)根拠の系統的レビュー(Lan 2015)について同じ Discussion の逐語=”One study was conducted in the U.S., and all others were from China, Hong Kong, and Taiwan.”(訳:1研究は米国で行われ、他はすべて中国・香港・台湾のものだった。)🛑 評釈:「auricular acupuncture with seed and pellet」は耳の経穴に種子や粒を貼る方法で、刺す鍼ではありません。当サイトは「VA/DoD が鍼を推奨した」とは書きません。推奨28の Discussion の原文はボックス⑦にあります。
  • VA/DoD 2025(Version 3.0)(書誌はボックス①)=Appendix C(p.129)で、2019年の推奨27・28はいずれも「Not reviewed, Deleted」に分類されています(編集長が原本 PDF で確認)。分類の説明(p.15・逐語)=”In addition to the new and updated recommendations, the Work Group considered, without a complete review of the relevant evidence, the current applicability of these other recommendations included in the previous 2019 VA/DOD Insomnia/OSA CPG, subject to evolving practice in today’s environment.”/”It is important to note that the recommendation strength downgrades from Weak for to Neither for nor against recommendations do not imply that providers should avoid these options, rather that the data from the current systematic evidence review is insufficient to make a recommendation when using the more rigorous methodology.”(当サイトによる訳:新規・更新の推奨に加え、作業部会は、関連するエビデンスの完全な見直しを行わずに、2019年版に含まれていた他の推奨の現在の適用可能性を、今日の診療の変化に照らして検討した。/推奨の強さが「弱く支持」から「支持も反対もしない」に下がったことは、医療者がその選択肢を避けるべきだという意味ではなく、より厳密な方法を用いたときに今回の系統的エビデンスレビューのデータが推奨を出すには不十分だという意味である点に注意が重要である。)
  • VA/DoD 2025 の研究の優先課題(p.94「X. Research Priorities」の B・逐語・編集長が原本 PDF で確認)=”Research assessing combinations of CBT-I plus adjunctive interventions (e.g., medication, acupuncture, mindfulness), including their relative efficacy in the presence of comorbid conditions.”(当サイトによる訳:CBT-I に補助的な介入〈例:薬物療法、鍼、マインドフルネス〉を組み合わせたものを評価する研究。併存疾患がある場合の相対的な有効性を含む。)🛑 評釈:推奨27・28の削除の個別の理由は本文に書かれていません(編集長の確認)。削除はエビデンスの見直しを経ていない分類で、当サイトは「2025年に否定された」「効かないと判断して撤回した」とは書きません。2025年版の推奨一覧(補完・統合療法の推奨12〜16)に鍼・耳ツボは含まれていません。
  • Wang J, Wang X, Xu X ほか. Acupuncture for insomnia management: An international evidence-based guideline that integrates multidisciplinary consensus and regional adaptability. Sleep Med Rev. 2026;88:102292.(PMID 42030608/DOI 10.1016/j.smrv.2026.102292)抄録の逐語(後半)=”A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials (RCTs) was conducted, encompassing studies published before January 2025. Evidence certainty was assessed using the GRADE approach, and recommendations were formulated through a modified Delphi process involving a multidisciplinary panel of 26 experts from 11 countries that comprehensively considered patient preferences, cost-effectiveness, and regional accessibility. Based on moderate-to low-certainty evidence, it is conditionally suggested that electroacupuncture or manual acupuncture may be considered for patients with chronic insomnia particularly in institutions where it is available. Notably, electroacupuncture is conditionally suggested for patients with comorbid insomnia or for patients with poor sleep quality. …”(当サイトによる訳:2025年1月より前に出版された研究を含む RCT の系統的レビューとメタ解析を行った。エビデンスの確実性は GRADE で評価し、推奨は、患者の希望・費用対効果・地域での利用しやすさを総合的に考慮した11か国26名の多職種パネルによる修正デルファイ法で作成した。中等度〜低い確実性のエビデンスに基づき、慢性不眠の患者に対して、特にそれが利用できる施設では、電気鍼または手技の鍼を検討してよいと条件付きで提案する。とくに、併存疾患のある不眠や睡眠の質が低い患者には電気鍼を条件付きで提案する。〈続く用量の文はボックス⑤。経穴の組み合わせの文は、施術の指示と読まれるのを避けるため省略〉)🛑 評釈:睡眠医学の学会や公的機関の診療ガイドラインではなく、鍼を主題とする国際パネルの文書です(抄録の表記は multidisciplinary panel)。パネルの内訳と利益相反の記載は、当サイトは本文で確認していません。
  • 睡眠薬GL 2013(書誌はボックス①)=「鍼」「灸」の語は、オンライン版全37ページで0件でした(編集長が原本 PDF を機械検索で確認・2026-09-14)。当サイトの言い換え=Q27 の勧告(p.28)は、不眠症に対する漢方薬の有効性は確認されておらず推奨されない、としています。鍼は Q27〜Q30 のいずれにも出てきません。Q27 の記載は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。🛑 評釈:当サイトは「日本のガイドラインは鍼を推奨していない」「否定している」とは書きません。日本睡眠学会の『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』(書籍)は当サイトは入手していません。
  • ⚠️ 当サイトが確認していない文書:英国 NICE の不眠症の資料(CKS には到達できず、診療ガイドラインの有無も未確認)、韓国の不眠症診療ガイドライン(2020年)、欧州腫瘍学会(ESMO)のがん患者の不眠のガイドライン(2023年)。これらについて、当サイトは鍼の扱いを書いていません。

中途覚醒への鍼灸について、日本の研究はどこまであるのか

「夜中に何度も目が覚めるんです」。冒頭の2施設の調査で、いちばん多かった不眠のかたちです。

中途覚醒に近い指標では、偽鍼だけを集めた統合(Yu 2025)で入眠後の覚醒時間は鍼が上回った一方、うつ病を伴う不眠の270名の試験(Yin 2022)では、夜中に目が覚める回数に偽鍼との差がありませんでした。

日本では、鍼を無作為に比べた試験は、当サイトが J-STAGE で探した範囲では見つかりませんでした(医中誌Web は未検索)。この記事で取り上げるのは次の4つです。

お灸のセルフケアの小さな試験

大学の学生と教職員19名を、寝る前に市販の台座灸を2週間すえる群と、何もしない群に分けた試験があります(鍋田 2017)。

お灸の群は2週目の夜間の覚醒の回数が何もしない群より少なく、介入の後の昼間の眠気の点数も低かった、と報告されています。

ただし対照は無治療で、どちらの群か本人に分かる設計です。19名・2週間でもあります。

「お灸で中途覚醒が改善することが確かめられた」とまでは言えません。

セルフケアとしての勧め方(熱さへの注意など)は、この記事では扱っていません。

1人の中で、期間を入れ替えて比べる試験

円皮鍼で、本物の期間と偽物の期間を入れ替えて比べた N-of-1 試験(鍋田・山下 2015)があります。

詳しく検証した1例では、本物の期間に中途覚醒の回数が少なく、活動量計で測った中途覚醒時間と睡眠効率も本物の期間のほうが良好でした。一方、睡眠時間には差がありませんでした。

著者は、円皮鍼が有効な患者が存在する可能性を考えたうえで、休止期間とマスキングが不十分だったとし、質の高い研究での再検証が必要と書いています。

鍼灸治療の期間と無治療の期間を入れ替えた4例の試験(小林 2021)では、3例で睡眠の評価の一部が改善した一方、ストレスがきっかけの1例では、すべての評価項目で改善を認めませんでした。

鍼灸院の症例の集積

女性の不眠症59名の治療前後を振り返った報告(中村 2018)では、1か月の治療で不眠の評価尺度の点数が下がっていました。

ただし対照がなく、1つの鍼灸院の記録で、出血を伴う井穴刺絡を含む治療でした。日本の一般的な毫鍼の治療とは同じではありません。

日本の資料から読めるのは、「反応に個人差がありそうだ」「対照のある試験はまだ小さい」の2点までです。

エビデンスボックス⑨ 日本の研究について確認できたこと(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 鍋田智之, 大月隆史, 辻丸泰永, 堀川奈央, 仲西宏元. 温灸を用いた灸セルフケアが夜間覚醒回数に与える影響-ランダム化比較試験-. 全日本鍼灸学会雑誌. 2017;67(1):15-22.(DOI 10.3777/jjsam.67.15)RCT・19名(森ノ宮医療大学の学生・教職員。灸群8名/無治療群11名)。医師から睡眠薬の処方を受けている人は除外(本文 p.16)。当サイトの言い換え=灸群は2週間、平日の入床前1時間以内に市販の台座灸を左右の太衝・太渓・足三里・合谷・神門(計10か所)に1〜2壮すえた。灸群では介入2週目に夜間覚醒回数が無治療群より有意に減少し(マン・ホイットニー検定 p<0.05)、昼間の眠気の尺度(JESS)は介入終了後に無治療群より有意に低かった(p<0.01)。著者は、入床前の温灸の継続で夜間覚醒が改善し、昼間の眠気も改善する可能性が示唆された、と結論しています。🛑 評釈:無治療対照・非盲検・19名・大学関係者・2週間の介入です。組入基準は、要旨では PSQI 8点以上、本文(p.16)では PSQI-J で睡眠障害に分類される6点以上と書かれており、食い違いの理由は当サイトは確認していません。睡眠計の結果は要旨になく、本文 p.17 以降は当サイトは読んでいません。要旨の数値・介入・結果・結論と、本文 p.16 の組入基準・除外基準は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • 鍋田智之, 山下仁. 不眠に対する円皮鍼治療の効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 2015;65(2):91-98.(DOI 10.3777/jjsam.65.91)N-of-1 試験(ABAC/ACAB)・4名を割り付け、詳しく検証したのは1例。偽の円皮鍼(鍼先を除いたもの)との比較。抄録の逐語(編集長が J-STAGE の抄録から抽出して照合)=【主な結果】の後半(前半は引いていません)「真の治療で中途覚醒回数の減少(Real 1.6±0.9,vs Sham 3.6±1.3)が認められた。睡眠時間(Real 426 min±49.3, vs Sham 450 min±60.0)に差は認められなかった。Actisleep でも中途覚醒時間(Real 65 min±14.7,vs Sham 129 min±39.5)、睡眠効率(Real 82.8%±3, vs Sham 68.6%±4.3)は真の治療でより改善を示した。POMS の T 得点は混乱(real 51, sham 67)で差が認められた。しかし、wash out が十分ではなく、マスキングも不十分であった。」/【結論】「円皮鍼治療が不眠を改善するうえで有効な患者が存在する可能性が考えられた。しかし、今後はバイアスの問題を再検討し、さらに質の高い研究によって再検証する必要がある。」評釈:結果・結論とも、「しかし」の前の肯定側と後ろの限界を一緒に引いています。Actisleep は活動量計です。1例の結果で、一般化はできません。偽の円皮鍼の作り方の日本語の実例でもあります。
  • 小林絵梨子, 谷口博志, 松浦悠人, 藤本英樹, 古賀義久, 安野富美子, 坂井友実. 不眠症状を有する4症例に対する鍼灸治療の効果:N-of-1試験を用いた検証. 全日本鍼灸学会雑誌. 2021;71(4):207-219.(DOI 10.3777/jjsam.71.207)N-of-1(ABAB/BABA・鍼灸期と無治療期・各4週)・4例。睡眠薬の服用者は除外。基本穴は神門・内関・足三里・照海・百会・印堂・四神総に個別の配穴を加えた(本文 p.208)。当サイトの言い換え=4例中3例で身体症状の軽減とともに、睡眠の評価票(OSA 睡眠調査票)の5因子のいずれかで有意な改善を示した一方、ストレスイベントが誘因の1例ではすべての評価項目に改善を認めなかった。著者は、訴えの軽減が重要で、症状に合わせた治療で有効性が示されると考察しています。評釈:無治療期との比較で、偽の処置はありません。改善しなかった1例も併記しています。要旨(4例中3例・改善を認めなかった1例・基本穴・週2回・睡眠薬の服用者の除外)は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • 中村真理, 高橋涼子, 坂口俊二. 女性の不眠症に対する鍼灸治療の効果. 女性心身医学. 2018;23(2):89-95.(DOI 10.18977/jspog.23.2_89)後ろ向きの症例集積・59名(1つの鍼灸院・2012年6月〜2017年8月・平均43.5±7.4歳)。当サイトの言い換え=中医の弁証による治療に、共通の配穴として厲兌・大敦の井穴刺絡を組み合わせ、1か月で平均4.1回行ったところ、アテネ不眠尺度(AIS)の8項目の各得点と合計点に有意な改善がみられた(合計点の中央値 8.0→5.0)。著者は女性の不眠症を改善させることが示唆されたと結論しています。🛑 評釈:対照のない前後比較・単一施設・後ろ向き・評価は1か月後のみです。出血を伴う井穴刺絡を含みます。同じ論文は、日本睡眠学会の『睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版』の非薬物療法に鍼灸治療は含まれていない、と書いています(p.89)。これは論文による二次情報で、当サイトはその書籍を確認していません。結語(p.94)・図4・はじめに(p.89)の記載は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。
  • 検索の範囲:J-STAGE API で「不眠 鍼」(68件)・「睡眠 鍼灸」(64件)・「温灸 夜間覚醒」(14件)を全件通覧(2026-09-13)。医中誌Web・CiNii は未検索です。石神 2006(全日本鍼灸学会雑誌 56(5))は J-STAGE がエラーを返し、到達できませんでした。「日本に RCT が無い」ではなく「この範囲で見つからなかった」です。

不眠症の鍼の安全性と、医療機関につなぐ目安

試験で記録された有害事象

不眠の試験で記録された有害事象は、皮下出血や刺した部位の痛みなど、軽いものが中心でした。

重い有害事象の報告がない試験が多い一方で、有害事象を記録していない試験も多くあります。コクラン(2012年)も、有害作用の報告はまれで、報告されたものは軽微だった、と書いています。

香港の224名の試験では、有害事象260件の9割以上が軽度で、有害事象による中止は2〜3%でした。

がん患者のコクランでは、鍼を受けない対照と比べて有害事象が増える方向の推定が出ています(非常に不確実)。「不眠の鍼は安全」と言い切る材料はありません。

医療機関につなぐ目安

不眠は、ほかの病気や別の睡眠障害のあらわれとして出ていることがあります。鍼灸師は診断を行う立場にありません。

次の場合は、施術より先に受診をすすめてください。いずれも、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の記載に対応させています。

寝ている間の呼吸の止まりやいびきを、ご家族などに指摘されている/安静にしていると脚がむずむずして動かさずにいられず、寝つけない/寝ている間に脚がぴくつくと指摘されている。同ガイドは、不眠と取り違えやすい睡眠障害として、睡眠時無呼吸やむずむず脚症候群、周期性四肢運動障害を挙げています。この場合は施術で様子を見ず、医療機関の受診をすすめます。

気分の落ち込みや強い不安が続いている。同ガイドは、不眠症はうつ病や不安症の初期症状や併存症として現れることが多く、医師の助言を求めることを勧めています。この場合も、医師への相談を先にすすめます。

睡眠の習慣を見直しても、不眠や日中の眠気、それによる生活の困りごとが続いている。同ガイドは、医師の指示を仰ぐよう書いています。この場合は受診をすすめます。

最後に大事なことを1つ。

この3つに当てはまらないからといって、別の睡眠障害や心の不調が無いとは言えません。問診で出てこないこともあります。迷ったら、受診をすすめる側に倒してください。

③ 不眠の相談を受けて、施術の前に確認するとき
「眠りのこと、話してくださってありがとうございます。いくつか確認させてください。寝ているときに息が止まっている、いびきをかいていると、ご家族に言われたことはありませんか。脚がむずむずして寝つけないことは? それから、気分の落ち込みが続いていたりしませんか。
眠りの悩みの陰に別の病気が隠れていることもあって、その判断は私にはできません。当てはまるようなら、先に医療機関で相談してみてください。鍼をどうするかは、そのあと一緒に考えましょう。」

エビデンスボックス⑩ 有害事象の記録と、受診をすすめる目安の一次資料(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Yin 2022(ボックス④)本文の逐語=”Acupuncture-related adverse events occurred in 7 patients (7.8%) in the EA group and 4 patients (4.4%) in the SA group. In 1 case (1.1%), a patient in the control group had a headache during the observation period.”(当サイトによる訳:鍼に関連する有害事象は電気鍼群の7名〈7.8%〉と偽鍼群の4名〈4.4%〉に起きた。標準治療群では1名〈1.1%〉が観察期間中に頭痛を訴えた。)主に皮下出血と局所の痛みでした。評釈:刺さない偽鍼の群にも有害事象が記録されています。
  • Chung 2018(ボックス⑤)=有害事象260件のうち243件(93.5%)が軽度、有害事象による中止は鍼2.1%・鍼+耳鍼3.1%(抄録の逐語はボックス⑤)。待機リスト対照の香港の試験です。
  • Garland 2019(ボックス⑥)=有害事象は鍼9名(刺鍼部位の痛み・かゆみなど)、CBT-I 5名(眠気・日中の疲労)で、いずれも軽度〜中等度(本文・当サイトの言い換え)。
  • Yeung 2009(ボックス④)抄録の逐語=”All adverse events were mild in severity.”(訳:有害事象はすべて軽度だった。)件数は抄録にありません。
  • Cheuk 2012(ボックス③)抄録の逐語=”Adverse effects were rarely reported and they were minor.”(訳:有害作用の報告はまれで、報告されたものは軽微だった。)🛑 評釈:「有害作用が少なかった」ではなく、「有害作用を報告した試験が少なかった」の意味で読んでいます。同じレビューの Implications for practice は、起こりうる有害作用は完全には明らかでない、と書いています。
  • Ma 2025(ボックス③)抄録の数値=非活性対照比 RR 15.49(95%CI 2.12〜113.10・2試験76名・very low)/偽鍼比 RR 2.60(0.98〜6.90・1試験138名・very low)/CBT-I 比 RR 1.68(0.59〜4.79・1試験160名・low)。🛑 評釈:信頼区間が極端に広く、当サイトは「15倍」とは読みません。有害事象の内容は本文未到達で未確認です。
  • Xu HY 2024(ボックス⑤)抄録の逐語=”There was no significant difference in the incidence of adverse events between the EA and control groups (sham acupuncture and no treatment or UC. RR = 1.48; 95% CI: [0.91, 2.40]; P = 0.117).”(当サイトによる訳:電気鍼群と対照群〈偽鍼と無治療または通常ケア〉の有害事象の発生に有意差はなかった。)評釈:「差がない」ではなく「差を検出できなかった」で、対照が混ざっています。
  • Lu Y, Zhu H, Wang Q ほか. Comparative effectiveness of multiple acupuncture therapies for primary insomnia: a systematic review and network meta-analysis of randomized trial. Sleep Med. 2022;93:39-48.(PMID 35405419)抄録の逐語=”The most common slight adverse events mainly included hematoma, pain, headache, and bleeding.”(訳:最も多い軽微な有害事象は、主に皮下血腫、痛み、頭痛、出血だった。)この論文の効果の順位は当サイトは使っていません(1位の経穴埋線は日本の鍼灸師の一般的な手技ではなく、対照の「通常治療」の中身も抄録にありません)。
  • ⚠️ 当サイトが数値を載せていないもの:Lee 2020 の来院あたりの有害事象の割合は、本文の表から取り直せていないため載せていません。鍼一般の有害事象の頻度(大規模調査)は、この記事では扱っていません。
  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月・令和6年9月18日一部修正・健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会・https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf )当サイトの言い換え=INFORMATION 4「睡眠障害について」のポイント(文書 p.34):睡眠障害が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診する。/不眠症の節の、本ガイドを用いる際のポイント(文書 p.35):本ガイドを実践しても、不眠症状や睡眠休養感の低下、日中の眠気、それらによる日常生活の困難が改善しない場合は、医師の指示を仰ぐ。/不眠症の説明(文書 p.35):不眠症は、うつ病や不安症をはじめとするさまざまな精神疾患の初期症状や併存症として現れることが多く、精神疾患が併存する場合は不眠症だけを焦点にした治療では十分に改善しないことも多いため、精神疾患の悪化を防ぐためにも医師の助言を求めることを勧める。/不眠と誤認されやすい睡眠障害として、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害、概日リズム睡眠・覚醒障害が挙げられている(文書 p.34〜36)。むずむず脚症候群は入眠困難型の不眠症と、周期性四肢運動障害は中途覚醒型の不眠症と誤認されうるとされ、周期性四肢運動障害は自覚症状に乏しいとされている(文書 p.34)。確認の範囲:受診の目安3項目の根拠(文書 p.34〜37)と、誤認されやすい睡眠障害の記載は、編集長が原本 PDF で照合(2026-09-14)。法務も文書 p.34〜37(PDF p.36〜39)で、呼吸の止まり・いびき・脚のむずむず・脚のぴくつきという本文の言い方と、同ガイドの各障害の説明との対応を確認しています(2026-09-14)。全51ページに「鍼」「灸」の語は0件です。
  • 🛑 評釈:本文の3項目は、上の一次資料に対応が取れるものだけを置いています。1項目目は、いびきが大きくない閉塞性睡眠時無呼吸や、自覚症状に乏しい周期性四肢運動障害が網から落ちないよう、「大きな」を付けず「指摘されている」の形にしています。希死念慮など、精神科の緊急の対応が要るサインは、当サイトは一次資料を取得しておらず、一覧に入れていません。一覧に無いことは、受診が不要という意味ではありません。

不眠症の鍼は、療養費(保険)の対象になるのか

鍼灸の療養費の支給対象として通知に挙げられている6疾患は、神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症で、不眠症は含まれていません。

6疾患以外には「慢性的な疼痛を主症とする類症疾患」という枠がありますが、これは痛みを主症とするものについての枠です。当サイトは、不眠を主訴に療養費を算定できるとする資料を持っていません。主訴が6疾患のいずれかで不眠を伴う場合の取扱いも、確認していません。

この段落は厚生労働省の公開資料を当サイトが整理した二次情報で、通知の番号や本文は扱っていません。支給の可否や算定の取扱いを判断するのは保険者と所管の地方厚生局で、この段落は法的・行政的な助言ではありません。手続きの全体は鍼灸の療養費(保険)完全ガイド|6疾患・同意書・受領委任の実務【鍼灸師向け】にまとめています。

この記事で書かなかったこと・書けなかったこと

正直コーナーです。理由つきで開示します。

  1. 確認できていない文書があります。欧州ガイドライン2023年版と ACP の本文、NICE の資料、Cochrane Library 本体のページ、日本睡眠学会の『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』などです。これらについて「鍼に触れていない」「推奨していない」とは書いていません。
  2. 本文で注意した、比べ方に問題のある統合の数値や順位、指圧の数値は、鍼の効果として使っていません。
  3. 選穴・手技・通電の処方は書いていません。試験や国際ガイドラインの経穴・回数の紹介は、施術の指示ではありません。
  4. 鍼灸師が患者さんに伝える睡眠薬の減らし方は書いていません。試験や資料に出てくる漸減は、医療者が組む計画についての記述です。薬の選択は鍼灸師が答える範囲ではないためです。
  5. 希死念慮など、精神科の緊急の対応が要るサインは、受診の目安に入れていません。当サイトが一次資料を取得していないためで、受診が不要という意味ではありません。
  6. 医中誌Web・CiNii・中国語のデータベース・試験登録サイトは検索していません。「見つからなかった」は、この範囲の話です。

まとめ|不眠症の鍼について、言えること・言えないこと

  • コクラン(2012年)の結論は、「支持するにも否定するにも十分に厳密ではない/より大規模で質の高い試験が必要」の2文です。刺す鍼の数値は、他の治療への上乗せの「わずかに増やすかもしれない」だけです。2025年の同名のコクランは計画書です
  • 偽鍼との比較だけを集めた統合では、本人が答える睡眠の質の点数で鍼が上回った一方、測った総睡眠時間には差が認められていません(睡眠効率と入眠後の覚醒時間は鍼が上回り、著者は人数の少なさによる限界を記載)。主要な時点で偽鍼と差がなかった試験もあります
  • がんを経験した方を対象に CBT-I と直接比べた試験では、両群とも改善したうえで、不眠の重さの改善は CBT-I のほうが大きく、著者は CBT-I を第一選択とすべきと結論しています。鍼の群の改善は治療前後の変化で、偽鍼と比べた差ではありません
  • 欧米の診療ガイドラインは CBT-I を第一選択とし、当サイトが確認した範囲で鍼を明示的に推奨しないのは欧州の2017年版だけです(弱い推奨・根拠の質は非常に低い・2023年版は未確認)。米国睡眠医学会は範囲外、VA/DoD は2025年に見直しをせず削除、鍼を主題とする国際ガイドラインは条件付きの提案(確実性は中等度〜低い)です
  • ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を、医療者の計画で少しずつ減らす中で鍼を足した試験は、偽鍼と比べた2本で結果が分かれています。服薬中の患者さんには、自己判断で減らさず処方医・薬剤師に相談するよう促し、減らし方は伝えません
  • 当サイトが J-STAGE で探した範囲では、日本の鍼の無作為化比較試験は見つからず(医中誌Web は未検索)、お灸のセルフケアの19名の試験などがあります。いびき・呼吸の止まり、脚のむずむず、気分の落ち込みなどがあれば、施術より先に受診をすすめてください

関連記事

更新履歴:本記事は初版です。コクランレビュー(CD005472・CD015974)の新しい版や結果が出た場合、欧州睡眠学会・VA/DoD・米国内科学会・米国睡眠医学会のガイドラインが改訂された場合、日本睡眠学会などが不眠症の診療ガイドラインを改訂・公表した場合、PMDA の資料が更新された場合、療養費の通知が改正された場合に追記・修正します。

参考文献

  1. Cheuk DK, Yeung WF, Chung KF, Wong V. Acupuncture for insomnia. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(9):CD005472. PMID: 22972087. DOI: 10.1002/14651858.CD005472.pub3 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11262418/
  2. Ang L, Lee MS, Choi TY, Jun JH, Song E, Lee HW, Lee B, Zhang J, Cao L, Kwon CY, Wang Q, Yao L. Acupuncture for insomnia. Cochrane Database Syst Rev. 2025;7:CD015974. PMID: 40626505. DOI: 10.1002/14651858.CD015974 ※計画書(プロトコル)。結果なし
  3. Ma Q, Liu C, Zhao G, Guo S, Li H, Zhang B, Li B, Cai Z. Acupuncture for insomnia in people with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2025;12:CD015177. PMID: 41347621. DOI: 10.1002/14651858.CD015177.pub2 ※抄録までの確認
  4. Yu Y, Li ほか. Acupuncture for chronic insomnia disorder: a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. Front Neurol. 2025;16:1541276. PMID: 40371085. DOI: 10.3389/fneur.2025.1541276 ※抄録までの確認
  5. Wang Y ほか. Is Sham Acupuncture Equally Effective for Primary Insomnia? A Bayesian Network Meta-Analysis. Nat Sci Sleep. 2025;17:1997-2012. PMID: 40909295. DOI: 10.2147/NSS.S541797 ※順位は不使用
  6. Zhang X, Wang ほか. The dose-effect relationship between acupuncture and its effect on primary insomnia: a systematic review and meta-analysis. Front Psychiatry. 2025;16:1501321. PMID: 39995954. DOI: 10.3389/fpsyt.2025.1501321
  7. Jiang B, Wang YN, Zhang J, Li HR, Xue PW, Li J, Jin RJ. Placebo Effect of Sham Acupuncture for Primary Insomnia: A Meta-Analysis of Randomised Controlled Trials. J Sleep Res. 2026;35:e70280. PMID: 41692996. DOI: 10.1111/jsr.70280
  8. Zhao FY, Fu QQ, Kennedy GA, Conduit R, Zhang WJ, Wu WZ, Zheng Z. Can acupuncture improve objective sleep indices in patients with primary insomnia? A systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2021;80:244-259. PMID: 33610071. DOI: 10.1016/j.sleep.2021.01.053 ※対照は偽鍼と待機リストの混合。数値は本文に不使用
  9. Xu HY, Wu LN, Zhang Y, Ba T, Zhao XF. Efficacy and safety of electroacupuncture for insomnia: A systematic review and meta-analysis. J Integr Med. 2024;22(4):459-472. PMID: 38871592. DOI: 10.1016/j.joim.2024.05.005 ※有害事象の値のみ使用
  10. Ma J, Peng M, Xu XJ ほか. Clinical efficacy and safety of acupuncture versus Western medicine for insomnia: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2025;16:1589535. PMID: 41328315. DOI: 10.3389/fneur.2025.1589535 ※統合値は不使用。訂正記事 PMID 41451414 あり(内容未確認)
  11. Wang S, Lan ほか. Effects of different interventions on insomnia in adults: Systematic review and network meta-analysis. J Psychiatr Res. 2023;165:140-149. PMID: 37499485. DOI: 10.1016/j.jpsychires.2023.07.004 ※順位は効果の根拠として不使用
  12. Lu Y, Zhu H, Wang Q ほか. Comparative effectiveness of multiple acupuncture therapies for primary insomnia: a systematic review and network meta-analysis of randomized trial. Sleep Med. 2022;93:39-48. PMID: 35405419. DOI: 10.1016/j.sleep.2022.03.012 ※有害事象の種類のみ使用
  13. Yeung WF, Chung KF, Zhang SP, Yap TG, Law ACK. Electroacupuncture for primary insomnia: a randomized controlled study. Sleep. 2009;32(8):1039-1047. PMID: 19725255. DOI: 10.1093/sleep/32.8.1039
  14. Yeung WF, Chung KF, Tso KC, Zhang SP, Zhang ZJ, Ho LM. Electroacupuncture for residual insomnia associated with major depressive disorder: a randomized controlled trial. Sleep. 2011;34(6):807-815. PMID: 21629370. DOI: 10.5665/SLEEP.1056
  15. Yin X, Gou M, Xu J, Dong B, Yin P, Masquelin F, Wu J, Lao L, Xu S. Efficacy and safety of acupuncture treatment on primary insomnia: a randomized controlled trial. Sleep Med. 2017;37:193-200. PMID: 28899535. DOI: 10.1016/j.sleep.2017.02.012 ※抄録までの確認
  16. Yin X, Li W, Liang T, Lu B, Yue H, Li S, Zhong VW, Zhang W, Li X, Zhou S, Mi Y, Wu H, Xu S. Effect of Electroacupuncture on Insomnia in Patients With Depression: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2022;5(7):e2220563. PMID: 35797047. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.20563
  17. Lee B, Kim BK, Kim HJ, Jung IC, Kim AR, Park HJ, Kwon OJ, Lee JH, Kim JH. Efficacy and Safety of Electroacupuncture for Insomnia Disorder: A Multicenter, Randomized, Assessor-Blinded, Controlled Trial. Nat Sci Sleep. 2020;12:1145-1159. PMID: 33328773. DOI: 10.2147/NSS.S281231
  18. Huang W, Johnson TM, Kutner NG, Halpin SN, Weiss P, Griffiths PC, Bliwise DL. Acupuncture for Treatment of Persistent Disturbed Sleep: A Randomized Clinical Trial in Veterans With Mild Traumatic Brain Injury and Posttraumatic Stress Disorder. J Clin Psychiatry. 2018;80(1):18m12235. PMID: 30549498. DOI: 10.4088/JCP.18m12235 ※抄録までの確認
  19. Chung KF, Yeung WF, Yu BYM, Leung FCY, Zhang SP, Zhang ZJ, Ng RM, Yiu GC. Acupuncture with or without combined auricular acupuncture for insomnia: a randomised, waitlist-controlled trial. Acupunct Med. 2018;36(1):2-13. PMID: 29229613. DOI: 10.1136/acupmed-2017-011371
  20. Lim JH, Park SH, Kim KO, Kang CW, Cho E, Kim BK. Effectiveness and Safety of Electroacupuncture in Patients with Treatment-Resistant Insomnia: A Randomized, Assessor-Blinded, Waitlist-Controlled Pilot Trial. Nat Sci Sleep. 2026;18:582813. PMID: 42094634. DOI: 10.2147/NSS.S582813
  21. Yeung WF, Chung KF, Yu BYM, Lao L. Response to placebo acupuncture in insomnia: a secondary analysis of three randomized controlled trials. Sleep Med. 2015;16(11):1372-1376. PMID: 26498238. DOI: 10.1016/j.sleep.2015.07.027
  22. Zhu F, Wang Y, Liu J ほか. Comparative effectiveness of different acupuncture courses for chronic insomnia disorder: a three-arm randomized controlled trial. J Affect Disord. 2026;415:122469. PMID: 42697250. DOI: 10.1016/j.jad.2026.122469
  23. Garland SN, Xie SX, DuHamel K, Bao T, Li Q, Barg FK, Song S, Kantoff P, Gehrman P, Mao JJ. Acupuncture Versus Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia in Cancer Survivors: A Randomized Clinical Trial. J Natl Cancer Inst. 2019;111(12):1323-1331. PMID: 31081899. DOI: 10.1093/jnci/djz050
  24. Bergdahl L, Broman JE, Berman AH, Haglund K, von Knorring L, Markström A. Auricular Acupuncture and Cognitive Behavioural Therapy for Insomnia: A Randomised Controlled Study. Sleep Disord. 2016;2016:7057282. PMID: 27242930. DOI: 10.1155/2016/7057282
  25. Yeung WF, Chung KF, Zhang ZJ, Zhang SP, Chan WC, Ng RM, Chan CL, Ho LM, Yu BY, Chau JC, Lau NC, Lao LX. Electroacupuncture for tapering off long-term benzodiazepine use: A randomized controlled trial. J Psychiatr Res. 2019;109:59-67. PMID: 30504097. DOI: 10.1016/j.jpsychires.2018.11.015
  26. Fan ZQ, Gao YS, Chen YH, Zhang J, Lu W, Yang D, Xiang XH, Liu J, Yu K, Chen Y. Acupuncture combined with gradual benzodiazepine reduction for benzodiazepine-dependent insomnia: A multicenter randomized controlled trial. Explore (NY). 2026;22:103421. PMID: 42066590. DOI: 10.1016/j.explore.2026.103421
  27. Qaseem A, Kansagara D, Forciea MA, Cooke M, Denberg TD; Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians. Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2016;165(2):125-133. PMID: 27136449. DOI: 10.7326/M15-2175 ※抄録までの確認
  28. Sateia MJ ほか. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(2):307-349. PMID: 27998379. DOI: 10.5664/jcsm.6470 ※対象範囲の記述のみ使用
  29. Edinger JD ほか. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17(2):255-262. PMID: 33164742. DOI: 10.5664/jcsm.8986 ※対象範囲の記述のみ使用
  30. Buysse DJ ほか. Combination treatment for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2026;22(1). PMID: 41975142 ※抄録の冒頭のみ確認。DOI は未確認のため記載していません
  31. Riemann D, Baglioni C, Bassetti C, Bjorvatn B, Dolenc Groselj L, ほか. European guideline for the diagnosis and treatment of insomnia. J Sleep Res. 2017;26(6):675-700. PMID: 28875581. DOI: 10.1111/jsr.12594 ※抄録までの確認
  32. Riemann D, ほか. The European Insomnia Guideline: An update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. J Sleep Res. 2023;32(6):e14035. PMID: 38016484. DOI: 10.1111/jsr.14035 ※抄録までの確認。本文での鍼の扱いは未確認
  33. The Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea Work Group. VA/DoD Clinical Practice Guideline for the Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea. Version 1.0. U.S. Department of Veterans Affairs / Department of Defense; 2019. GOVPUB-VA-PURL-gpo151619 ※記事で引いた記載(p.6・推奨一覧 p.28〜29・推奨27/28 の Discussion)を編集長が原本 PDF で照合
  34. The Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea Work Group. VA/DoD Clinical Practice Guideline for the Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea. Version 3.0. U.S. Department of Veterans Affairs / Department of Defense; 2025. https://www.healthquality.va.gov/HEALTHQUALITY/guidelines/CD/insomnia/I-OSA-CPG_2025-Guideline_final_20250915.pdf ※p.3〜5・14〜15・94・125〜130 と Provider Summary を確認
  35. Wang J, Wang X, Xu X ほか. Acupuncture for insomnia management: An international evidence-based guideline that integrates multidisciplinary consensus and regional adaptability. Sleep Med Rev. 2026;88:102292. PMID: 42030608. DOI: 10.1016/j.smrv.2026.102292 ※抄録までの確認
  36. Watson NF, Benca RM, Krystal AD, McCall WV, Neubauer DN. Alliance for Sleep Clinical Practice Guideline on Switching or Deprescribing Hypnotic Medications for Insomnia. J Clin Med. 2023;12(7):2493. PMID: 37048577. DOI: 10.3390/jcm12072493
  37. 厚生労働科学研究・障害者対策総合研究事業「睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班」, 日本睡眠学会・睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン-出口を見据えた不眠医療マニュアル-. 2013年6月25日初版/2013年10月22日改訂. https://jssr.jp/files/guideline/suiminyaku-guideline.pdf ※全37ページを機械検索(鍼・灸0件)。p.2・p.10・Q27・Q30・Q34・Q39・Q40 を編集長が原本照合。言い換えで紹介
  38. 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 令和6年2月(令和6年9月18日一部修正). https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf ※文書 p.34〜37 を編集長が原本照合。全51ページを機械検索(鍼・灸0件)。言い換えで紹介
  39. 医薬品医療機器総合機構(PMDA). PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.11 ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について. 2017年3月(2024年5月更新). https://www.pmda.go.jp/files/000268322.pdf
  40. 鍋田智之, 大月隆史, 辻丸泰永, 堀川奈央, 仲西宏元. 温灸を用いた灸セルフケアが夜間覚醒回数に与える影響-ランダム化比較試験-. 全日本鍼灸学会雑誌. 2017;67(1):15-22. DOI: 10.3777/jjsam.67.15 ※要旨と本文 p.16 を編集長が原本照合。言い換えで紹介
  41. 鍋田智之, 山下仁. 不眠に対する円皮鍼治療の効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 2015;65(2):91-98. DOI: 10.3777/jjsam.65.91 ※J-STAGE の抄録を編集長が照合
  42. 小林絵梨子, 谷口博志, 松浦悠人, 藤本英樹, 古賀義久, 安野富美子, 坂井友実. 不眠症状を有する4症例に対する鍼灸治療の効果:N-of-1試験を用いた検証. 全日本鍼灸学会雑誌. 2021;71(4):207-219. DOI: 10.3777/jjsam.71.207 ※要旨を編集長が原本照合。言い換えで紹介
  43. 江川雅人, 福田晋平, 鶴浩幸. 鍼灸院に来院する高齢者の不眠と鍼灸治療の影響について. 全日本鍼灸学会雑誌. 2019;69(2):113-123. DOI: 10.3777/jjsam.69.113 ※要旨の数値を編集長が原本照合。言い換えで紹介
  44. 中村真理, 高橋涼子, 坂口俊二. 女性の不眠症に対する鍼灸治療の効果. 女性心身医学. 2018;23(2):89-95. DOI: 10.18977/jspog.23.2_89 ※はじめに(p.89)・結語(p.94)・図4 を編集長が原本照合。言い換えで紹介
  45. 厚生労働省「保険医療機関及び保険医の皆様へ はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱いを改めてお知らせします」令和7年4月版 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/250401_01.pdf ※二次情報として整理。通知番号は記載していません

引用について:本記事の引用は著作権法32条にもとづく引用です。英文の日本語訳はすべて当サイトによるもので、他者の公式訳は用いていません。文の途中を省いた引用には省略記号を付けています。日本の睡眠薬ガイドライン、厚生労働省の睡眠ガイド2023、日本語の論文の一部は、逐語で引かず当サイトの言い換えで紹介しています。

本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。不眠症の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました