上乗せ試験(add-onデザイン)は何を測るか|通常ケア+鍼

上乗せ試験(add-onデザイン)は何を測るか|通常ケア+鍼 研究の読み方

「通常ケアと比べて有意差あり」と書かれた抄録を、そのまま「鍼が効いた」と受け取っていませんか。

上乗せ(add-on)デザインとは、「いまの治療に鍼を足すと、足さない場合とどう違うか」を測る臨床試験の組み方です。答えているのは「鍼を足す価値があるか」であって、「鍼そのものにどれだけの力があるか」ではありません。

この違いが読めると、同じ領域の論文から「鍼は2.5倍」とも「上積みはゼロ」とも書けてしまう理由が分かります。
上乗せ試験の数字を見たら、確認するのは3つ。①足した先に何が入っていたか ②誰も盲検化されていないか ③測ったのは患者自身か。
そして、いちばん自分事になるのは「日本の臨床は上乗せなのか」という問いです。ここは、自費か療養費かで景色が変わります。

上乗せ試験って、どういう組み方?

上乗せ(add-on)デザインは、片方の群に「いまのケア+鍼」を、もう片方に「いまのケアだけ」を割り当てる組み方です。医薬品開発では上乗せ試験(アドオン試験)と呼ばれます。

対照の種類の話ではありません。試験の骨組みの話です。比較対照の型そのもの(無治療・待機リスト・通常ケア・偽鍼・実薬・他の非薬物療法)は鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比に整理してあります。

ただし、鍼の上乗せ試験は、対照が「通常ケアのみ」という非盲検型が多いという特徴があります。この点は、あとで効いてきます。

引き算の式で書くと分かりやすいかもしれません。(通常ケア+鍼)−(通常ケア) です。残るのは「足したこと全部」の分であって、「鍼という刺激そのもの」の分ではありません。

「足したこと全部」には、鍼という刺激に加えて、施術者と過ごす時間、通院という行動、期待、そして「自分は治療を受けている」という感覚が入ります。引き算では分離されません。

ここで大事なのは、これが手抜きの設計ではないということです。医薬品開発の国際的な統計ガイドライン(ICH E9(R1))は、試験が答えるべき問いの枠組みを定めており、そこには「標準治療への上乗せ」が治療条件の一例として明記されています

同じ文書は、「他にどんな治療が使われたかにかかわらず効果はどうか」という問いと、「追加の薬剤が使えなかったとしたら効果はどうか」という問いは別の問いだとも書いています。上乗せ試験は前者、偽鍼対照の試験は後者に近い問いを選んでいます。どちらが正しいという話ではありません。

読むときの一文: 上乗せ試験の「差」は、鍼という刺激の取り分ではなく、足したこと全部の取り分です。

日本の臨床は「上乗せ」に近いのでしょうか

ここは、書き方を誤ると制度の誤解を広めるところなので、慎重に整理します。

上乗せ試験は「他の治療を続けながら鍼を受ける」という状況を測っています。自費の施術では、病院の治療や服薬を続けたまま来院される方は珍しくないはずです。その意味では、現場に近い設計だと言えます。

ただし、療養費(保険)の枠では話が変わります。

複数の健康保険組合が公開している解説(当サイトが確認したのは健康保険組合2件の解説ページです)では、同一の疾病について保険医療機関で治療や投薬を受けている場合は、はり・きゅうの療養費の支給対象外となるという運用が共通して示されています。あわせて、療養費の支給には保険医の同意書が求められ、6か月を超えて継続する場合は再同意が必要とされています。
この運用にもとづくかぎり、保険の枠内では「医科の治療+鍼灸」という上乗せの形は前提にされていない、と読めます。ここは当サイトの整理であり、制度の趣旨そのものを当サイトが断定するものではありません。
※以上は保険者が公開している解説にもとづく整理です。当サイトは根拠となる通知の本体を一次確認していないため、通知番号は記載しません。また、本記事の記述は法的・行政的な助言ではありません。実際の取扱いは、所管の保険者・地方厚生局にご確認ください。療養費の実務は鍼灸の療養費(保険)実務ガイド|6疾患・同意書・受領委任にまとめています。

したがって「日本の臨床は併用が前提だから、上乗せ試験の結果がそのまま当てはまる」という論の立て方はできません。自費の文脈に限れば成立の余地はありますが、それを示す国内の受療実態データを当サイトは確認できていません。

では、上乗せ試験は現場にとって無価値でしょうか。逆です。慢性頭痛の英国の試験(401名)は、頭痛スコアだけでなく、鎮痛薬の使用量・GP受診回数・病欠日数まで測りました。有意差に至ったのは鎮痛薬の使用量だけでしたが、測ろうとしたこと自体に意味があります。

こうした医療資源のアウトカムは、偽鍼対照の試験ではまず測られません。そして費用対効果の評価には、これらの数字が要ります。

読むときの一文: 設計に優劣はなく、問いが違うだけ。臨床判断で要るのは、多くの場合「足す価値があるか」のほうです。

同じ「上乗せ」でも、結果は両極に振れます

上乗せ試験というと「鍼に有利な設計でしょう」と思われがちです。実際の試験を並べると、そう単純ではありません。

鍼を足す群と足さない群を比べたランダム化比較試験4本の、足す先と主な結果の一覧

上乗せ試験の実際

同じ「上乗せ」でも、結果はここまで振れる

鍼を足す群と足さない群を比べた4試験を、差が大きく出たものから順に並べました。疾患も評価尺度もばらばらです。だからこそ、いちばん下の試験が効いてきます。

Witt 2006(ARC)|膝・股OA
足す先=通常の医療(継続可)/712名+非ランダム化2,921名

WOMACの改善は鍼群17.6、対照群0.9(P<0.001)。ただしこれは各群の変化量で、群間差ではありません

Vickers 2004|慢性頭痛
足す先=通常ケア/401名・最大12回

頭痛スコアの群間差4.6(95%CI 2.2〜7.0)。鎮痛薬の使用は15%少ない(P=0.02)

Thomas 2006|慢性腰痛
足す先=通常ケア/241名・最大10回

SF-36の痛みは12か月で5.6(95%CI −0.2〜11.4)=0をまたぎます。24か月は8.0(2.8〜13.2)

Foster 2007(APEX)|膝OA
足す先=理学療法士による助言と運動/352名・3群

6か月の痛みの群間差0.08(95%CI −1.0〜0.9)。著者の結論は「痛みスコアの追加的な改善はもたらさなかった」

アウトカム・評価尺度・評価時点・足す先の中身が試験ごとに異なるため、この図は試験間の優劣を示すものではありません。上乗せ試験でも結果が両極に振れることを示す目的の一覧です。Witt 2006 の17.6と0.9は各群の変化量であり、群間差として示された下3つとは意味が違います。疾患も膝OA・頭痛・腰痛とばらばらで、疾患横断の設計論として並べたものです。特定の疾患への効果の主張として読まないでください。各試験の経穴・通電の有無・置鍼時間は、いずれも当サイトでは原著未確認です。

いちばん上のドイツの試験では、WOMACの改善が鍼群17.6に対して対照群0.9でした。ただしこれは各群がベースラインからどれだけ変わったかという値で、群間差ではありません。この試験の対照群は、自分が鍼を受けないことを知っています。

いちばん下の英国の試験は、逆でした。理学療法士による助言と運動を受けている膝OAの患者に鍼を足しても、6か月時点の痛みの群間差は0.08で、信頼区間は0をまたいでいます。著者の結論は「膝OAに対する助言と運動のコースに鍼を加えても、痛みスコアの追加的な改善はもたらさなかった」でした。

読むときの一文: 上乗せ試験は鍼に有利とはかぎりません。上下の落差を作ったのは鍼のやり方ではなく、対照群が何を受けていたかです。

「足す先」に何が入っていたかで、上積みは変わります

上乗せ試験の結果を左右するのは、鍼のやり方だけではありません。対照群が何を受けていたかです。

約2万人の個別患者データをまとめた解析(39試験・20,827名)の著者は、鍼を行わない対照群を3段階に分類しています。この分類が、さきほどの落差をきれいに説明してくれます。

個別患者データメタ解析の著者による、鍼を行わない対照群の3段階分類と各段階の内容

足す先の濃さ

同じ「対照群」でも、受けているケアの量が違う

39試験・20,827名の個別患者データをまとめた解析(Vickers 2018)の著者は、鍼を行わない対照群を3段階に分けています。左ほど対照群が手厚いケアを受けています。

① 手厚い対照(high intensity)
対照群がプロトコルに沿った治療コースを受ける

著者が例に挙げたのは個別化・監督つきの理学療法。上の図でいちばん下だった Foster 2007(APEX)が、まさにこの例として名指しされています

② 通常ケア(usual care)
対照群は試験の外で受けうるケアに自由にアクセスできる

何を受けるかは患者と医療者に委ねられます。だから中身は試験ごとに違い、しばしば記述もされていません

③ 制限された対照(low intensity)
対照群が受けられる治療が制限されている

著者が例に挙げたのは痛みの治療を経口NSAIDsのみに限定し、他の治療を除外した試験です

この3分類は Vickers 2018 の著者による分類で、日本語は当サイトの訳です。公式な分類体系ではありません。著者は「手厚い対照群を用いた試験では、制限された対照群の試験と比べて鍼の効果量が小さかった」と報告していますが、当サイトはその数値を執筆時点で再照合できていないため、この図には数値を載せていません。また、この解析は個々の試験の非盲検性そのものを解消するものではなく、鍼を行わない対照との比較はいずれも非盲検です。模式図です。

対照群が手厚いケアを受けている試験ほど、鍼の上積みは小さく出る。当たり前のようですが、これは実データで報告されている傾向です。

そう考えると、Foster 2007 の0.08という数字は「鍼が効かなかった」というより、「理学療法士の助言と運動が、すでに相当のことをしていた」とも読めます。断定はできませんが、両方の読み方が残ります。

問題は、真ん中の②です。プライマリケア領域の実際的な試験73件を調べたレビューでは、大半の試験で医療者は対照群の患者を自らの判断で自由に治療できたと報告されています。対照群に何が伝えられ、何が指示されたかの記載も不十分でした。

これは鍼の試験を対象にしたレビューではありません。ただ、鍼でも事情は同じです。片頭痛予防のコクランレビューは、鍼を行わない対照との比較にあたる試験群を、「臨床的に非常に異質である」と評しています。

だから、上乗せ試験の数字を試験間で並べて優劣を語ることはできません。分母にあたる「足す先」が、試験ごとに別物だからです。鍼の報告規範STRICTA 2010 も項目6aで、対照の選択理由とその根拠を書くよう求めています。

読むときの一文: 「通常ケア」は定義された介入ではありません。中身が書かれていない対照は、比較の分母が分からない対照です。

同じ試験で、比べる相手を「薬だけ」に変えると?

ここまでは別々の試験を比べてきました。「試験が違うから差が出ただけでは?」という疑問は当然です。

それに答えられる、めずらしい試験があります。同じ試験の中に、偽鍼との比較と、薬だけの群との比較が同居している設計です。

季節性アレルギー性鼻炎の3群試験で、比較相手を偽鍼にした場合と薬のみにした場合の群間差の違い

対照の入れ替え

比べる相手を変えるだけで、差は大きくなる

季節性アレルギー性鼻炎の患者422名を3群(鍼+レスキュー薬212/偽鍼+レスキュー薬102/レスキュー薬のみ108)に分けた8週・12回の試験。同じ鍼群を、2つの相手と比べています。スケールは0〜2.0ポイントです。

QOL|対 偽鍼+薬盲検あり・特異的効果に近い問い
0.597.5%CI 0.2〜0.8
QOL|対 薬のみ非盲検・上乗せの価値の問い
0.797.5%CI 0.4〜1.0
↓ここから下は別の指標(レスキュー薬の使用量)です
薬の使用量|対 偽鍼+薬盲検あり
1.197.5%CI 0.4〜1.9
薬の使用量|対 薬のみ非盲検
1.597.5%CI 0.8〜2.2

これは季節性アレルギー性鼻炎の試験であり、当サイトが扱ってきた腰痛・膝OA・頭痛のデータではありません。上2本と下2本は別の指標で、同じスケールに置いていますが相互に比べられません。著者自身が、この改善は臨床的に意味があるとは言えない可能性があると明記しています(ベースライン値が低かったこと、16週の時点では有意差が出なかったことを理由に挙げています)。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認です。出典:Brinkhaus 2013 Ann Intern Med

同じ鍼群です。比べる相手が偽鍼なら0.5、薬だけなら0.7。薬の使用量でも1.1と1.5。非盲検の比較のほうが、いずれも差が大きく出ています。

この落差の読み方は2通りあります。「偽鍼にも効果があるから差が縮む」と読むこともできますし、「非盲検だから差が膨らむ」と読むこともできます。おそらく両方でしょう。

ただし、この試験だけで結論は出ません。差はどちらの比較でも統計的には有意でしたが、著者自身が臨床的な意味づけに留保をつけています。16週の時点では有意差が出ていません。

読むときの一文: 同じ介入・同じ患者でも、比べる相手を変えれば差の大きさは動きます。

患者が知っているぶん、効果はどれくらい大きく見えるの?

上乗せ試験には、構造上の宿命があります。患者は自分が鍼を受けたかどうかを知っています。対照群も、自分が受けていないことを知っています。

そして鍼の試験の主要アウトカムは、ほぼすべて患者自身が答えるものです。痛みのVAS、頭痛日数、QOL質問票。評価する人と、盲検化されていない人が、同一人物なのです。

この組み合わせについては、鍼の外側で調べられています。医学研究全般を横断的に調べたメタ疫学研究(研究方法の違いが結果に与える影響を、多数の試験を集めて調べる研究)は、主観的なアウトカムでは、盲検化がないと効果が平均して1〜3割ほど大きく見積もられると報告しています。ただしこれらは鍼の試験を対象にした研究ではなく、鍼の効果量から一定の水増し率を差し引ける、という意味でもありません。個々の研究の数値と、盲検の層(患者・施術者・評価者・解析者)の話は鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読むにあります。

読むときの一文:「非盲検だから信用できない」も「非盲検でも患者が良くなったなら十分」も、どちらも極端です。分かっているのは「1〜3割ほど大きく見えやすい」という程度の話です。

「上乗せ」という言葉は、2つの意味で使われています

ここで、この記事でいちばん誤解が起きやすいところに触れます。日本語の「上乗せ」は、鍼のエビデンスの話のなかで2つの別の意味で使われています。

日本語の「上乗せ」が試験の組み方と増分の2つの意味で使われていることを対比したカード

同じ言葉、別の意味

「上乗せ」は2つの使われ方をしている

読んでいる文章がどちらの意味かを見分ける手がかりは、「何と比べているか」です。

意味A|試験の組み方
add-on design

「通常ケア+鍼」対「通常ケアのみ」という設計そのものを指します。この記事が扱っているのはこちらです。当サイトでは費用対効果の記事・緊張型頭痛の記事・膝OAの3記事などで使っています

意味B|上積み・増分
incremental

「偽鍼と比べたときの上積みが小さい」という意味。当サイトの膝OAエビデンス記事にある「偽鍼に対する明確な上乗せ効果が乏しい」はこちらの意味で、設計の話ではありません

この2つの分離は当サイトの整理であり、公式な用語区分ではありません。英語では add-on と incremental で語が分かれますが、日本語ではどちらも「上乗せ」と訳されることがあります。意味Bの用例は、対照が偽鍼であることが手がかりになります。意味Aの用例では、対照は通常ケアなど「鍼を受けない群」です。

意味Bのほうは、英国NICEのガイドライン(NG226)が膝OAへの鍼を推奨しなかった根拠のひとつとして、当サイトの膝OAエビデンス記事に出てきます。そこでの「上乗せ効果が乏しい」は、偽鍼と比べたときの上積みが小さいという意味です。

これは add-on design の否定ではありません。むしろ偽鍼対照という、上乗せとは別の設計から出てきた話です。

もう一つ混同されやすいのが、adjunctive(補助療法として)という書き方です。膝OAの大規模試験(Berman 2004・570名)は、タイトルに “as adjunctive therapy” と掲げています。ところが、この試験がランダム化した3群は本鍼/偽鍼/患者教育で、「通常ケア」対「通常ケア+鍼」という群間比較は持っていません。

つまり、「adjunctive と書いてある=上乗せ試験」ではありません。位置づけ(補助療法として使う想定か)と、比較対照の型は別のことです。

読むときの一文: その「上乗せ」が何と比べた話なのか。偽鍼なら意味B、鍼を受けない群なら意味Aです。

当サイトの記事に出てくる「上乗せ」の実例

抽象論だけでは使えません。当サイトが公開してきた記事のどこに、上乗せ試験由来の数字が入っているのかを開示します。

実例1|費用対効果|当サイトが紹介したICERは、上乗せ・非盲検の試験から出ています

当サイトの費用対効果の記事は、ドイツの研究のICER(増分費用効果比)10,526ユーロ/QALYと、英国の研究の£4,241/QALYを紹介しています。前者には「鍼を通常ケアに上乗せした群と通常ケア単独の群を比べたもの」と明記してあります。後者も今回のリサーチで、その臨床本体が通常ケア対照のオープン試験(Thomas 2006・241名)であることを確認しました。

その試験の主要評価は、12か月時点では差がはっきりせず(信頼区間が0をまたいでいます)、24か月でようやく小さな差が出た、というものでした。著者の結論も「12か月では弱いエビデンス、24か月ではより強い小さな利益のエビデンス」です。数値はエビデンスボックス②に置きます。

ここは正直に書きます。当サイトが紹介している費用対効果の数字は、この記事で説明してきた条件をすべて備えた試験から出ています。

鍼灸の費用対効果|海外ICERとNICEの評価が割れる理由【鍼灸師向け】腰痛への鍼のエビデンス|ACP推奨・NICE非推奨をどう説明するか

実例2|緊張型頭痛|48%対19%という当サイトで最も目立つ数字

緊張型頭痛のコクランレビューには、鍼を受けない群と比べた試験があります。当サイトの緊張型頭痛の記事は、そのうち大きいほうをレスポンダー率48%対19%(RR 2.5)として紹介しています。

同じ記事の図解には、すでに注記が入っています。「上乗せデザインで、盲検化されていません。過大評価の可能性がレビュー著者自身により指摘されています」と。

その注記の中身を補足します。当サイトはこの試験を同定できていません。コクランライブラリの全文が取得できず、試験名も、対照群が具体的に何を受けていたかも確認できていないためです。そしてレビュー著者自身が、通常ケアに鍼を加えた研究について「これらの比較の結果は不確実である」と書いています。

同じ構図は片頭痛予防のレビューにもあります。ただしコクランはこの比較を「鍼なし(急性期治療のみ、または通常診療)との比較」と呼んでおり、「add-on」「上乗せ」という語は使っていません。「上乗せ」は当サイトの整理です。

緊張型頭痛に鍼は効くのか|NICEの回数目安と偽鍼問題を整理頭痛への鍼|タイプ別エビデンスと受診をすすめる判断の総合ガイド

実例3|膝OA|「adjunctive」を上乗せデザインと読んだところ

当サイトの膝OAの2記事は、Berman 2004 を「通常ケアへの上乗せデザイン」と紹介し、「鍼単独の効果とは読み替えられない」と注意を添えています。この注意そのものは正しい方向です。

ただし前のH2で書いたとおり、この試験の群間比較は本鍼対偽鍼本鍼対患者教育でした。上乗せという位置づけと、実際の比較対照の型は別です。

同じ膝OAエビデンス記事の中には、意味Bの「上乗せ」も出てきます。1本の記事の中に2つの意味が同居しているわけです。読むときは、その文がどの対照と比べているかを見てください。

なお、鍼を受けない対照群の値がなぜ低く出るのか(待機リストと通常ケアはどう違うのか)は待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組みで扱います。

膝OAに鍼は効く?ACR推奨とNICE非推奨が分かれる理由【論文解説】膝OAの鍼の頻度・回数|運動療法併用と受診の見極め

よくある誤解

誤解1|「上乗せ試験は鍼の効果を測っている」

測っているのは「通常ケアに鍼を足すこと」の効果です。治療条件が「同時に行われる介入の組み合わせ」であって、鍼単独ではありません。一文でまとめるなら、上乗せ試験の答えは「足す価値」であって「鍼の力」ではありません。

誤解2|「上乗せ試験は鍼に有利な設計だ」

足す先が手厚いほど、上積みは出にくくなります。理学療法士による助言と運動に鍼を足した試験では、6か月時点の痛みの群間差は0.08(95%CI −1.0〜0.9)でした。

約2万人の個別患者データをまとめた解析も、対照群が手厚いケアを受けている試験では鍼の効果量が小さかったと報告しています。上乗せは有利にも不利にも働きます。

誤解3|「上乗せの数字と偽鍼比の数字は、同じ土俵で比べられる」

比べられません。緊張型頭痛のコクランレビューにあるRR 2.5(鍼を受けない対照・上乗せ・非盲検)とRR 1.3(偽鍼比・患者の盲検を意図した比較)は、測っているものが違います。

さらに、上乗せ比較の「足す先」は試験ごとに定義がばらばらです。コクラン自身も、片頭痛の該当する比較群を「臨床的に非常に異質である」と評しています。対照の型の整理は鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比へ。

この記事は「上乗せ試験と偽鍼対照のどちらが正しいか」を決めるものではありません。問いが違うという整理までが、この記事の役割です。どちらの数字を臨床判断に使うかは、症状ごとの記事と鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比に返します。
また、盲検化に関して引用したメタ疫学研究はいずれも鍼の試験を対象にしたものではありません。鍼の上乗せ試験の効果量から特定の割合を差し引ける、という意味ではありません。盲検化そのものの層別(患者・施術者・評価者・解析者)は鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読むで扱います。

エビデンスボックス① 用語と設計の出典(飛ばして読んでもOK)
  • 上乗せが「推定対象(estimand)」の枠組みに位置づくこと:ICH Harmonised Guideline. Addendum on Estimands and Sensitivity Analysis in Clinical Trials, to the Guideline on Statistical Principles for Clinical Trials. E9(R1). Final version, adopted on 20 November 2019. Copyright © ICH.PDF本体/当サイトは表紙・A.3・A.3.3・A.3.4・GLOSSARY を目視確認)。GLOSSARY の定義=”Estimand: A precise description of the treatment effect reflecting the clinical question posed by the trial objective. It summarises at a population-level what the outcomes would be in the same patients under different treatment conditions being compared.”/A.3.3 の treatment 属性=”These might be individual interventions, combinations of interventions administered concurrently, e.g. as add-on to standard of care, or might consist of an overall regimen involving a complex sequence of interventions.”(=上乗せは治療条件の一例として例示されているものであり、「上乗せ試験が推奨されている」という意味ではありません)/A.3.4=”For example, a clinical question on the treatment effect on clinical outcome regardless of which other therapies are to be used before that outcome is experienced differs to a clinical question on the treatment effect had no additional medication been available.” 本文書は医薬品開発の統計原則に関する文書であり、鍼の臨床試験のためのガイドラインではありません。日本語訳は当サイトの訳です。文書冒頭の Legal notice により、ICHの著作権を明示することを条件に複製・翻訳が認められています。
  • 「上乗せ試験(アドオン試験)」という日本語の用語:日本薬学会「薬学用語解説」に「上乗せ試験」と「アドオン試験」の両方が見出し語として存在することを、当サイトで確認しています(上乗せ試験アドオン試験)。ただし、当該サーバがHTTPエラーを返すため項目の本文は読めていません。当サイトはこの用語集を「その語が用語として存在すること」の典拠としてのみ用いており、定義の紹介・逐語引用は行っていません。本文中の「鍼の上乗せ試験は対照が通常ケアのみの非盲検型が多い」は当サイトの整理であり、この用語集の記載ではありません。
  • 説明的/実際的という区別の原典:Schwartz D, Lellouch J. Explanatory and pragmatic attitudes in therapeutical trials. J Chronic Dis. 1967;20(8):637-48. PMID:4860352 / DOI:10.1016/0021-9681(67)90041-0(再録=J Clin Epidemiol. 2009;62(5):499-505. PMID:19348976)。当サイトは書誌と抄録のみを確認しており、本文を読んでいません。したがって内容の紹介・逐語引用を行わず、本文でもこの区別を解説していません。本記事の「上乗せ試験=実際的な問い/偽鍼対照=説明的な問い」という対応づけを行うならそれは当サイトの整理であり、原著の記述ではありません。
  • 説明的か実際的かは二択ではないこと:Loudon K, Treweek S, Sullivan F, Donnan P, Thorpe KE, Zwarenstein M. The PRECIS-2 tool: designing trials that are fit for purpose. BMJ. 2015;350:h2147. PMID:25956159 / DOI:10.1136/bmj.h2147。当サイトは書誌のみを確認しており、本文も抄録も読んでいません。存在の言及にとどめています。説明的か実際的かを複数の観点から連続的に評価する道具が提案されており、「上乗せか偽鍼対照か」という二分法は単純化した整理です。
  • 「通常ケア」の中身が定義されていないこと:Smelt AF, van der Weele GM, Blom JW, Gussekloo J, Assendelft WJ. How usual is usual care in pragmatic intervention studies in primary care? An overview of recent trials. Br J Gen Pract. 2010;60(576):e305-18. PMID:20594432 / DOI:10.3399/bjgp10X514819。2005〜2009年にプライマリケア領域の主要3誌に掲載された実際的試験73件(個別ランダム化38/クラスターランダム化35)のレビュー。逐語=”in most trials, caregivers had the freedom to treat control patients according to their own insight.”。対照群に何が伝えられ何が指示されたかの記載が不十分で評価が困難であったとし、通常ケア対照の設計を慎重に検討すべきこと、CONSORT の拡張で詳細記載を求めることを提言。鍼の試験を対象にしたレビューではありません。プライマリケア一般です。
  • 対照の選択理由を書かせる報告規範:MacPherson H, Altman DG, Hammerschlag R, et al. Revised STRICTA: extending the CONSORT statement. PLoS Med. 2010;7(6):e1000261. PMID:20543992 / DOI:10.1371/journal.pmed.1000261 / PMC2882429。項目6a=”Rationale for the control or comparator in the context of the research question, with sources that justify the choice(s).” 対照の型そのものの一覧は鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比に置いています。
  • 療養費(保険)の運用:本文の記述は、三菱電機健康保険組合およびパナソニック健康保険組合が公開している解説ページで一致して確認できた内容にもとづく二次情報です(当サイトが確認したのはこの2件です)。「同一の疾病について保険医療機関で治療・投薬を受けている場合は支給対象外」「保険医の同意書が必要」「6か月を超える継続には再同意」という運用が共通して示されています。根拠となる通知の本体を当サイトは一次確認していないため、通知番号は記載しません。厚生労働省の該当ページは文字コードの問題で本文を取得できませんでした。本記事の記述は法的・行政的な助言ではありません。実際の取扱いは所管の保険者・地方厚生局にご確認ください。
エビデンスボックス② 図と本文で使った試験・研究の詳細(飛ばして読んでもOK)
  • 対照の強度による違い(図2の出典):Vickers AJ, Vertosick EA, Lewith G, MacPherson H, Foster NE, Sherman KJ, Irnich D, Witt CM, Linde K; Acupuncture Trialists’ Collaboration. Acupuncture for Chronic Pain: Update of an Individual Patient Data Meta-Analysis. J Pain. 2018;19(5):455-474. PMID:29198932 / DOI:10.1016/j.jpain.2017.11.005 / PMC5927830。個別患者データメタ解析(レベル1)。39試験・20,827名(非特異的筋骨格系疼痛・変形性関節症・慢性頭痛・肩痛)。著者による対照群の3分類(逐語)=”In a ‘high intensity’ control group, patients received a specified course of protocol-guided treatment. For instance, the UK APEX trial by Foster et al. is considered a high intensity control because patients were randomized to receive a course of individualized, supervised physical therapy plus acupuncture vs. physical therapy alone.”/”In a trial with ‘usual care’ control, patients are able to access whatever care they might reasonably receive outside of the study.”/”A control group was defined as ‘low intensity’ if patients were not allowed to receive certain treatments that might otherwise be available. For instance, the Acupuncture Randomized Trials for low back pain and osteoarthritis limited treatment of pain in the control group to oral nonsteroidal anti-inflammatory drugs, excluding other types of treatment.” 著者は「手厚い対照群を用いた試験では効果量が小さかった」と報告していますが、当サイトはその数値を執筆時点で再照合できていないため、本文・図解のいずれにも数値を記載していません。既に複数記事で使用している値=鍼を行わない対照との差 約0.5 SD/偽鍼との差 約0.2 SD、1年で約15%減衰。著者結論(両論併記)=”acupuncture is effective for the treatment of chronic pain, with treatment effects persisting over time.” と “While factors in addition to the specific effects of needling at correct acupuncture point locations are important contributors to the treatment effect, decreases in pain following acupuncture cannot be explained solely in terms of placebo effects.” 限界=個別患者データメタ解析は個々の試験の非盲検性を解消しません。鍼を行わない対照との比較はいずれも非盲検です。
  • 上積みが出なかった試験(図1の最下段):Foster NE, Thomas E, Barlas P, Hill JC, Young J, Mason E, Hay EM. Acupuncture as an adjunct to exercise based physiotherapy for osteoarthritis of the knee: randomised controlled trial. BMJ. 2007;335(7617):436. PMID:17699546 / DOI:10.1136/bmj.39280.509803.BE。RCT・3群、n=352(助言と運動のみ116/+本鍼117/+非貫通型偽鍼119)。6か月時点で3群とも痛みは同程度に低下(低下幅2.28〜2.53ポイント)。群間差=助言と運動のみ対+本鍼 0.08(95%CI −1.0〜0.9)/対+偽鍼 0.25(95%CI −0.8〜1.3)。著者結論(逐語)=”The addition of acupuncture to a course of advice and exercise for osteoarthritis of the knee delivered by physiotherapists provided no additional improvement in pain scores.” Vickers 2018 が “high intensity control” の例として名指しした試験(APEX)です。限界=6か月時点の主要評価であり他の時点・他のアウトカムは当サイト未確認。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • 差が最も大きかった試験(図1の最上段):Witt CM, Jena S, Brinkhaus B, Liecker B, Wegscheider K, Willich SN. Acupuncture in patients with osteoarthritis of the knee or hip: a randomized, controlled trial with an additional nonrandomized arm. Arthritis Rheum. 2006;54(11):3485-93. PMID:17075849 / DOI:10.1002/art.22154。ランダム化712名(鍼357/対照355)+非ランダム化2,921名。3か月で最大15回。全群が通常の医療を継続できる設計。3か月時点のWOMACの改善=鍼群17.6±1.0(平均±標準誤差)/対照群0.9±1.0(P<0.001)。QOLも鍼群で良好(P<0.001)、6か月まで維持。非ランダム化群の成績はランダム化鍼群と同等。17.6と0.9は各群の変化量であり、群間差ではありません。「鍼でWOMACが17.6点良くなる」という単独提示は誤読を生みます。限界=対照群は鍼を受けないことを知っており完全に非盲検。対照群の改善が0.9とほぼゼロである点は待機リストに近い挙動とも読めます。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。なお、当サイトの費用対効果記事で引用しているICER 10,526ユーロ/QALY の出典(Witt CM, et al. Am J Epidemiol. 2006;164(5):487-496. PMID:16798792)は、これとは別の論文(腰痛)です。取り違えにご注意ください。
  • 同一試験内で対照だけを変えた比較(図3の出典):Brinkhaus B, Ortiz M, Witt CM, Roll S, Linde K, Pfab F, Niggemann B, Hummelsberger J, Treszl A, Ring J, Zuberbier T, Wegscheider K, Willich SN. Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013;158(4):225-34. PMID:23420231 / DOI:10.7326/0003-4819-158-4-201302190-00002。RCT・3群・46施設、n=422(鍼+レスキュー薬212/偽鍼+レスキュー薬102/レスキュー薬のみ108)。8週で12回。8週時点のQOL指標の群間差=対偽鍼 0.5ポイント(97.5%CI 0.2〜0.8、P<0.001)/対レスキュー薬のみ 0.7ポイント(97.5%CI 0.4〜1.0、P<0.001)。レスキュー薬使用量=対偽鍼 1.1ポイント(97.5%CI 0.4〜1.9)/対薬のみ 1.5ポイント(97.5%CI 0.8〜2.2)。著者自身の留保=改善は “may not be clinically significant”(臨床的に意味があるとは言えない可能性がある)。ベースライン値が低かったこと、16週時点では有意差が出なかったことを著者が明記しています。限界=季節性アレルギー性鼻炎の試験であり、当サイトの腰痛・膝OA・頭痛クラスターとは疾患が異なります。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • adjunctive と対照の型の違い:Berman BM, Lao L, Langenberg P, Lee WL, Gilpin AMK, Hochberg MC. Effectiveness of acupuncture as adjunctive therapy in osteoarthritis of the knee: a randomized, controlled trial. Ann Intern Med. 2004;141(12):901-910. PMID:15611487 / DOI:10.7326/0003-4819-141-12-200412210-00006。RCT・3群・多施設、n=570(平均年齢65.5±8.4歳)。本鍼23回/26週/偽鍼23回/26週/患者教育対照2時間×6回/12週。8週=機能で本鍼が偽鍼より優位(平均差 −2.9、P=0.01)、痛みは有意差なし。26週=機能 P=0.01/痛み P=0.003/患者全般評価 P=0.02。著者結論(逐語)=”Acupuncture seems to provide improvement in function and pain relief as an adjunctive therapy for osteoarthritis of the knee when compared with credible sham acupuncture and education control groups.” ランダム化された3群は本鍼/偽鍼/患者教育であり、「通常ケア」対「通常ケア+鍼」という群間比較は持っていません。adjunctive という位置づけと比較対照の型は別のことです。著者が明記した限界(逐語)=”At 26 weeks, 43% of the participants in the education group and 25% in each of the true and sham acupuncture groups were not available for analysis.”(26週時点で教育群の43%、本鍼群・偽鍼群の各25%が解析対象外) 経穴・電気鍼の有無・置鍼時間は原著未確認(原著がペイウォールのため)。
  • 英国の費用対効果研究の臨床本体(実例1・図1の3段目):Thomas KJ, MacPherson H, Thorpe L, Brazier J, Fitter M, Campbell MJ, Roman M, Walters SJ, Nicholl J. Randomised controlled trial of a short course of traditional acupuncture compared with usual care for persistent non-specific low back pain. BMJ. 2006;333(7569):623. PMID:16980316 / DOI:10.1136/bmj.38878.907361.7C。実際的・オープンRCT・2群、n=241(個別化鍼 最大10回160/通常ケア81)。SF-36の痛みスコアは12か月で鍼群33.2→64.0、対照群27.9→58.3。介入効果=12か月 5.6(95%CI −0.2〜11.4、n=213)=0をまたぐ24か月 8.0(95%CI 2.8〜13.2、n=182)。著者結論(逐語)=”Weak evidence was found of an effect of acupuncture on persistent non-specific low back pain at 12 months, but stronger evidence of a small benefit at 24 months.” 当サイトの費用対効果記事が引用している £4,241/QALY(Ratcliffe J, et al. BMJ. 2006;333(7569):626. PMID:16980315)は、この試験の経済評価です。限界=オープン(非盲検)。対照群の「通常ケア」の中身は抄録から特定できません。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • 医療資源のアウトカムを測った試験(図1の2段目):Vickers AJ, Rees RW, Zollman CE, McCarney R, Smith CM, Ellis N, Fisher P, Van Haselen R. Acupuncture for chronic headache in primary care: large, pragmatic, randomised trial. BMJ. 2004;328(7442):744. PMID:15023828 / DOI:10.1136/bmj.38029.421863.EB。実際的RCT・2群、n=401(最大12回の鍼 対 通常ケア)。12か月時点の頭痛スコア=鍼群16.2(SD 13.7、n=161、ベースラインから34%減)/対照群22.3(SD 17.0、n=140、16%減)。調整済み平均差 4.6(95%CI 2.2〜7.0、P=0.0002)。年間の頭痛日数に換算して22日少ない(8〜38)。医療資源のアウトカム=鎮痛薬使用15%少ない(P=0.02)/GP受診25%少ない(P=0.10)/病欠15%少ない(P=0.2)。有意差に至ったのは鎮痛薬使用のみです。「34%減 対 16%減」は各群の変化率であり、群間差は4.6ポイントです。限界=非盲検。主要評価は患者記録の頭痛日誌=患者報告アウトカム。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • 大規模な上乗せ型の試験:Jena S, Witt CM, Brinkhaus B, Wegscheider K, Willich SN. Acupuncture in patients with headache. Cephalalgia. 2008;28(9):969-79. PMID:18624803 / DOI:10.1111/j.1468-2982.2008.01640.x。RCT+非ランダム化コホート、総計15,056名(ランダム化=鍼1,613/対照1,569、非ランダム化の鍼11,874)。3か月時点の頭痛日数=鍼群8.4→4.7日/対照群8.1→7.5日(P<0.001)。6か月まで維持。これも各群の変化量です。限界=非盲検。対照群が3か月間に何を受けていたか(待機か通常ケアか)を当サイトは原著で確認できていないため、「通常ケアへの上乗せ」と断定していません。この理由から、本記事の図1からは外しています。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • 待機リスト対照の例:Melchart D, Streng A, Hoppe A, Brinkhaus B, Witt C, Wagenpfeil S, Pfaffenrath V, Hammes M, Hummelsberger J, Irnich D, Weidenhammer W, Willich SN, Linde K. Acupuncture in patients with tension-type headache: randomised controlled trial. BMJ. 2005;331(7513):376-82. PMID:16055451 / DOI:10.1136/bmj.38512.405440.8F。RCT・3群・28施設、n=270(女性74%・平均43歳)。8週で12回。3群=鍼/ミニマル鍼(非経穴への浅刺)/待機リスト。頭痛日数の減少=鍼7.2日(SD 6.5)/ミニマル鍼6.6日(SD 6.0)/待機リスト1.5日(SD 3.7)。著者は、無治療より優れる一方でミニマル鍼に対する有意な優越は示されなかったとしています。この試験の対照は待機リストであり「通常ケア」ではありません。「無治療(待機)」「通常ケア」「上乗せ」は近いようで別物です。待機リスト対照そのものは待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組みで扱います。経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認。
  • 緊張型頭痛のコクランレビュー:Linde K, Allais G, Brinkhaus B, Fei Y, Mehring M, Shin BC, Vickers A, White AR. Acupuncture for the prevention of tension-type headache. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4(4):CD007587. PMID:27092807 / DOI:10.1002/14651858.CD007587.pub2。鍼を受けない群との比較の1試験=レスポンダー302/629(48%)対121/636(19%)、RR 2.5、GRADE中等度。偽鍼比較=205/391(51%)対133/312(43%)、RR 1.3(1.09〜1.5)、4試験。当サイトはコクランライブラリの全文を取得できておらず(403)、この比較に含まれる試験を同定できていません。対照群が具体的に何を受けていたかも未確認です。要約論文(PMC5091651)に記載されているのは、通常ケアに鍼を加えた研究も探したが“the results of these comparisons were uncertain”(これらの比較の結果は不確実)で、さらに試験が必要である、という趣旨のみで、詳細な数値は載っていません。
  • 片頭痛予防のコクランレビュー:Linde K, Allais G, Brinkhaus B, Fei Y, Mehring M, Vertosick EA, Vickers A, White AR. Acupuncture for the prevention of episodic migraine. Cochrane Database Syst Rev. 2016;2016(6):CD001218. PMID:27351677 / DOI:10.1002/14651858.CD001218.pub3 / PMC4977344。該当比較の見出し(逐語)=“Comparisons with no acupuncture (acute treatment only or routine care)”。すなわちコクランは「add-on」「上乗せ」という語を使っていません。「上乗せ」は当サイトの整理です。著者の記述(逐語)=”The five trials comparing acupuncture with a control group receiving either treatment of acute migraine attacks only or routine care are clinically very heterogeneous.” 数値=レスポンダー 鍼41%対対照17%/RR 2.40(95%CI 2.08〜2.76)/NNTB 4(3〜6)、頭痛頻度 SMD −0.56(−0.65〜−0.48)、GRADE中等度。この比較に含まれる試験数は取得のたびに異なる数字が返ったため、本記事では試験数を記載していません。また、確実性が「中等度」であること(=「高」ではないこと)のみを記載し、格下げ理由は断定していません。
  • 盲検化がないことの代償(本文「1〜3割ほど大きく見積もられる」の出典):Wood L, Egger M, Gluud LL, Schulz KF, Jüni P, Altman DG, Gluud C, Martin RM, Wood AJ, Sterne JA. Empirical evidence of bias in treatment effect estimates in controlled trials with different interventions and outcomes: meta-epidemiological study. BMJ. 2008;336(7644):601-5. PMID:18316340 / DOI:10.1136/bmj.39465.451748.AD(146メタ解析・1,346試験。主観的アウトカム=盲検化なし ROR 0.75[95%CI 0.61〜0.93]=約25%誇張/割付の隠蔽が不十分 0.69[0.59〜0.82]。客観的アウトカム=それぞれ 1.01[0.92〜1.10]/0.91[0.80〜1.03]=偏りはほとんど観察されていません。著者結論=”the average bias associated with defects in the conduct of randomised trials varies with the type of outcome.”)/Savović J, Jones HE, Altman DG, et al. Influence of reported study design characteristics on intervention effect estimates from randomized, controlled trials. Ann Intern Med. 2012;157(6):429-38. PMID:22945832 / DOI:10.7326/0003-4819-157-6-201209180-00537(7研究を統合、234メタ解析・1,973試験。二重盲検でないこと=平均13%の誇張、ROR 0.87[95%信用区間 0.79〜0.96]。偏りは主観的アウトカムの試験に集中し、客観的アウトカム・死亡アウトカムではほとんど見られませんでした)/Hróbjartsson A, Thomsen AS, Emanuelsson F, Tendal B, Hilden J, Boutron I, Ravaud P, Brorson S. Observer bias in randomised clinical trials with binary outcomes. BMJ. 2012;344:e1119. PMID:22371859 / DOI:10.1136/bmj.e1119(同じアウトカムを盲検評価者と非盲検評価者の両方が測った21試験・4,391名。逐語=”The pooled ratio of odds ratios was 0.64 (95% confidence interval 0.43 to 0.96), indicating an average exaggeration of the non-blinded odds ratio by 36%.”/”The exaggeration of treatment effects associated with non-blinded assessors was induced by the misclassification of a median of 3% of the assessed patients per trial (1-7%).” 盲検評価者と非盲検評価者の判定は中央値78%[四分位範囲64〜90%]で一致=誰かが不誠実だから生じる誇張ではありません)。いずれも鍼の臨床試験を対象にした研究ではありません。これらの数値と盲検の層別の詳細は鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読むで扱います。
  • 尺度アウトカムでの誇張:Hróbjartsson A, Thomsen AS, Emanuelsson F, Tendal B, Hilden J, Boutron I, Ravaud P, Brorson S. Observer bias in randomized clinical trials with measurement scale outcomes: a systematic review of trials with both blinded and nonblinded assessors. CMAJ. 2013;185(4):E201-11. PMID:23359047 / DOI:10.1503/cmaj.120744。24試験を組み入れ、主解析は主観的アウトカムの16試験・2,854名。逐語=”The estimated treatment effect was more beneficial when based on nonblinded assessors (pooled difference in effect size −0.23 [95% confidence interval (CI) −0.40 to −0.06]).”/”In relative terms, nonblinded assessors exaggerated the pooled effect size by 68% (95% CI 14% to 230%).” 異質性は中等度(I²=46%、p=0.02)でメタ回帰では説明できず。著者結論=”A failure to blind assessors of outcomes in such trials results in a high risk of substantial bias.” 68%という値は95%信頼区間が14%〜230%と極端に広いため、当サイトは本文・図解・アイキャッチのいずれにも出していません。また、これは「評価者」の非盲検を調べた研究であり、上乗せ試験で問題になる「患者自身が評価者である」状況とは完全には一致しません。患者報告アウトカムのほうがより厳しい条件だろうという推論は、当サイトの推論であって実証された比較ではありません。
  • 患者報告のプラセボ効果と報告の偏り:Hróbjartsson A, Gøtzsche PC. Placebo interventions for all clinical conditions. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(1):CD003974. PMID:20091554 / DOI:10.1002/14651858.CD003974.pub3。著者の但し書き=患者報告のプラセボ効果と、報告バイアスとを区別するのは難しい。詳細は鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由
  • この記事全体の限界:(1) ICH E9(R1) は医薬品開発の文書であり鍼の試験のガイドラインではありません。上乗せは治療条件の例示であって推奨ではありません。(2) 盲検化に関する4研究はいずれも鍼の試験を対象にしていません。鍼の効果量から特定の割合を差し引けるという意味ではありません。(3) Smelt 2010 はプライマリケア領域の実際的試験のレビューです。(4) Vickers 2018 の「対照の強度」に関する数値は執筆時点で再照合できず、数値を記載していません。(5) CD007587 の該当比較の試験は同定できていません。(6) CD001218 の該当比較の試験数は記載していません。(7) 本記事で扱った全試験について、経穴・通電の有無・置鍼時間は原著未確認です。(8) 療養費の記述は二次情報(健康保険組合2件の公開解説)にもとづき、法的・行政的な助言ではありません。(9) 疾患は膝OA・頭痛・腰痛・季節性アレルギー性鼻炎と横断しており、疾患横断の設計論として扱っています。特定の疾患への効果の主張ではありません。(10) 本記事は上乗せ試験と偽鍼対照のどちらが正しいかを決めるものではありません。

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本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。症状の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

更新履歴

本記事は初版です。原典の改訂(コクランレビューの更新、ICH E9(R1) の改訂など)に応じて追記します。
本記事には、当サイトが執筆時点で一次確認できていない事項が複数あります。Vickers 2018 の「対照の強度」に関する数値、CD007587 の該当比較に含まれる試験の同定、各試験の経穴・通電条件、療養費の根拠通知の本文です。これらを確認できた時点で本文を見直し、この欄に追記します。当サイトの一次確認の範囲(全文/抄録のみ等)が変わった場合も同様です。

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