機能性ディスペプシアへの鍼|偽鍼・薬・上乗せの研究を鍼灸師向けに整理

機能性ディスペプシアへの鍼|偽鍼・薬・上乗せの研究を鍼灸師向けに整理 機能性ディスペプシア

「胃カメラをのんだけど、どこも悪くないと言われたんです。でも、食べたあとがずっと重くて」

肩や腰で通っている患者さんから、こう相談されたことはありませんか。

機能性ディスペプシア(FD)です。「検査で説明がつかない」ことが、定義そのものに入っています。

鍼の研究は、この症状でも出ています。23試験・2,454名をまとめた統合もあります。ただし、読み方がむずかしい。

この記事では、研究を「何と比べたか」で並べ直します。学会の扱い、上腹部に刺すときの注意、患者さんへの伝え方までつなげます。

  1. 結論:機能性ディスペプシアへの鍼は、何がどこまで分かっているか
  2. そもそも機能性ディスペプシアとは何か——「検査で説明がつかない」が定義に入っている
    1. PDS と EPS——大きな試験の対象は、ほとんど PDS だけ
  3. コクランは「結論できない」と書いた。12年後、同じ研究グループが別の雑誌で更新した
    1. 薬と比べた4試験では、差が出ていない
    2. 2026年の更新——ただし「コクランが結論を変えた」のではない
    3. 同じ論文の中で、評価が食い違っている
    4. 「研究の数」と「エビデンスの質」は別のもの
  4. 偽鍼と比べた最大の試験——ただし対象は「食後愁訴症候群」だった
    1. 著者自身が挙げた限界は、3つ
    2. 偽鍼は「刺さない型」ではなかった
    3. 先行するパイロット試験2本は、主要アウトカムで有意ではない
  5. 偽鍼を受けた群でも、症状の点数は良くなっている——FD で測られたプラセボ反応
    1. 「胃の動きが良くなるから効く」とは書けない
    2. どちらの群も改善したが、手厚いケアの群のほうが改善は小さかった
    3. 「期待が大きいほど効く」も、決着していない
  6. 薬に上乗せするとどうなるか——対象は「薬が効かなかった方」だった
    1. 22試験をまとめたレビューの結論は、3文あります
  7. ガイドラインは、機能性ディスペプシアの鍼灸を「今後の研究課題」に置いている
    1. 回答は2行。推奨の強さも、エビデンスレベルも付いていません
    2. 日本語版の解説は、英語版より否定側が厚い
    3. 二次資料の要約と、一次資料の原文が食い違っている箇所があります
    4. 他の国のガイドラインは、どうか
  8. 現場でどこまで言えるか——受診をすすめる目安と、上腹部に刺すことの注意
    1. 施術より先に、受診をすすめる場面
    2. 上腹部に刺すことの注意——「危険」でも「安全」でもなく、深さと部位の管理
    3. 「有害事象の報告なし」は、「起きなかった」ではありません
  9. 機能性ディスペプシアの鍼灸について、日本の研究はどこまであるのか
    1. 機能性ディスペプシアの鍼治療を、日本の鍼灸師が記録する意味
    2. 療養費(保険)の扱いはどうなるのか
  10. この記事で書かなかったこと・書けなかったこと
  11. まとめ|機能性ディスペプシアへの鍼について、言えること・言えないこと
  12. 関連記事
  13. 参考文献

結論:機能性ディスペプシアへの鍼は、何がどこまで分かっているか

結論(先に5つ)

① 偽鍼(本物に似せた対照の処置)と比べた研究は、近年の大きな試験と統合では鍼のほうが良いという結果が続いています。(2014年のコクランが集めた3試験は統合されておらず、1本は差がありませんでした。)そして大きな試験の対象は、ほぼ食後愁訴症候群(PDS)です。食事をきっかけに症状が出る FD の亜型で、FD 全体の話としては読めません。

② 2014年のコクランレビューは「依然として分かっていない」の1文で閉じています。薬と比べた4試験では、症状の程度も頻度も差が出ていません。12年後、同じ研究グループが「おそらく改善する」と報告しましたが、発表先は別の雑誌で、コクラン・ライブラリの版は2014年のままです。

③ 偽鍼を受けた群でも、症状の点数は良くなっています。偽鍼群の変化だけを集めた統合では、症状も生活の質も有意に良くなっていました。いっぽうで客観的な指標は動いていません。韓国の試験では、どちらの群も改善したものの、手厚いケアを添えた群のほうが改善は小さいという結果でした。

④ 日本消化器病学会のガイドライン(2021年・改訂第2版)は、鍼灸を「今後の研究課題」に置いています。回答は「鍼(はり)治療は有用であるとの報告がある.」「灸治療については,検討が不十分であり,その効果は不明である.」の2行で、推奨の強さもエビデンスレベルも付いていません。解説は「エビデンスレベルの高い検討とは言い難い.」と書いています。

⑤ では鍼灸院は明日から何をするか。提案は4つです。

(1)大きな試験で使われた施術量は1回20分・週3回・4週の12回で、効果は治療後12週の追跡でも維持されたと報告されています。試験で使われた設定で、推奨の施術量ではありません。

(2)体重が減っている・嘔吐をくり返す・出血がある・飲み込みにくいなどがある方や、まだ医療機関で相談していない方には、施術より先に受診をすすめる。

(3)FD で使う経穴には中脘(上腹部)が入ります。上腹部の刺鍼による合併症の報告はまれですがあるため、深さと部位の管理を前提にする。

(4)処方薬は自己判断でやめず、主治医に相談するよう伝える。

図解:機能性ディスペプシアへの鍼の研究を、鍼を何と比べたか(偽鍼・薬・無治療または通常のケア・薬への上乗せ)の4枚と、同じ鍼のなかで条件を変えた試験(施術者の関わり方・施術の頻度)の2枚に分け、言えることと言えないことを並べた図

比較の相手と、試験の条件

何と比べたかで、機能性ディスペプシアの鍼の景色が変わる

同じ「FD の鍼」でも、比べる相手で言えることが変わります。カードの番号は並べた順で、確かさの順位ではありません。カード5・6は、どちらの群も鍼を受けた試験です。

鍼を、何と比べたか
1|偽鍼と比べる

言えること
2026年の更新(23試験2,454名)=
症状の指標 −14.46点(195点満点)/
生活の質 +10.39点(100点満点)。
確実性の評価は高い〜中等度
ただし同じ論文が、多くの試験は盲検と
割り付けの隠蔽の点でバイアスのリスクが
高いと書いています
23試験はすべてアジアで実施
(中国21・韓国2)
この記事で扱う中でいちばん人数が多い
RCT(PDS 278名)=反応率 83.0% 対 51.6%
(差 31.4ポイント)
同じ試験のもう1つの主要アウトカム=
3つの主症状すべての消失 27.8% 対 17.3%
(差 10.5ポイント・信頼区間の下限 0.08)
言えないこと
2014年のコクランは偽鍼3試験を統合して
おらず、1本は差なし
対象はほぼ PDS(食後愁訴症候群)
更新は2014年のコクランと同じ研究グループ。
発表先は別の雑誌で、コクランの版は2014年のまま

2|薬と比べる

言えること
2014年のコクラン=シサプリド・
ドンペリドン・イトプリドと比べた
4試験で有意差なし
2026年の更新(別の雑誌)=イトプリド・
モサプリド・ドンペリドンをまとめた群と
比べて、生活の質は「おそらく改善する」、
症状は「改善するかもしれない」
(3剤を個別に比べたものではありません)
(「おそらく」「かもしれない」は確実性の
表示で、「かもしれない」のほうが1段低い
評価です)
言えないこと
薬より優れているとは言えません
(コクランは差なし、更新は「かもしれない」、
別のオーバービューは「わずかに強い」)
薬の選び方・順序は鍼灸師が語る範囲では
ありません

3|無治療または通常のケアと比べる

言えること
2026年の更新で症状の指標 −20.19点
(195点満点・確実性は中等度)
言えないこと
「無治療」と「通常のケア」が分けられて
いない統合。「通常のケアに上乗せして」
とは書けない
鍼を受けない群と比べた数値は大きく
出やすく、偽鍼比・薬比の数値と大小を
比べられません

4|症状に応じて飲む薬に上乗せする

言えること
香港132名(他の薬に抵抗性の PDS 型)。
両群とも症状に応じて制酸薬を服用し、
治療群にだけ電気鍼20回を追加
12週の時点で症状の緩和を達成した人が、
上乗せ群のほうが多かったと報告
(必要治療数の値と条件は本文)
西洋薬への上乗せを集めた別のレビュー
(22試験)は、症状スコアの改善を報告
(1試験を除く)
言えないこと
偽鍼なし・患者は非盲検。
反応率の実数は抄録になし
エビデンスの質は非常に低い〜中等度

同じ鍼のなかで、条件を変えた試験(どちらの群も鍼を受けています)
5|施術者の関わり方を変える(両群とも鍼)

言えること
韓国73名。両群とも症状(NDI-K)は改善した
そのうえで、患者中心の手厚いケアを添えた
群のほうが改善が小さかった
(P=0.008・P=0.037)。
共感の尺度は手厚い群が高い
言えないこと
「日本でも同じ」とは書けない
(著者は文化的要因を指摘)

6|施術の頻度を変える(両群とも鍼)

言えること
PDS 60名の試験で、4週の主要アウトカムは
有意でない(P=.095)。
有意になったのは8週以降
言えないこと
頻度と総回数が分離できていない
(12回と4回)

模式図です。カードは当サイトが比較の相手ごとに並べ直したもので、原典にこの図はありません。カード3・4は偽鍼を置いた比較ではありません。カード5・6は「鍼を受けない対照」を置いた比較ではなく、どちらの群も同じ鍼を受けています。カード1の 278名の試験は食後愁訴症候群(PDS)だけが対象で、反応率は統計モデルによる推定値です。カード1の更新は2014年のコクランを書いた研究グループ自身によるもので、コクラン・ライブラリの版ではありません。点数の差が臨床的に意味のある大きさかどうかは、当サイトは判断していません(尺度の最小変化量を確認できていないため)。「有意差なし」は差が無いことの証明ではありません。出所=Lan 2014(PMID 25306866)/Li XX 2026(PMID 41737400)/Yang JW 2020(PMID 32422066)/Ho 2017(PMID 28871092)/Chung 2019(PMID 31117149)/Kwon 2021(PMID 34381798)/Ko 2024(PMID 38199174)/Wang Y 2020(PMID 32048788)。

そもそも機能性ディスペプシアとは何か——「検査で説明がつかない」が定義に入っている

図解:機能性ディスペプシアの4つの症状と、2つの亜型(食後愁訴症候群・心窩部痛症候群)の関係を示し、両者が重なりうることと、この記事で扱う主な試験の対象を当サイトが並べて添えた図

定義と亜型

「FD」と「PDS」は、同じ大きさではない

試験の対象が FD 全体だったのか、亜型だったのかで、読み方が変わります。

機能性ディスペプシア(FD)=外枠

4つの症状のうち1つ以上
食後の膨満感/早期飽満感/
心窩部痛/心窩部の灼熱感
共通の条件
通常の臨床評価で説明がつかない
=医療機関での評価が前提
まだ医療機関で相談していない方には、
施術より先に受診をすすめてください
どちらの亜型に当たるかを判断するのも医師です
この下の2つは、どちらも FD の内側の分類です
出所=Rome IV(2016年)

PDS(食後愁訴症候群)=FD の内側

食事によって誘発される症状が特徴
EPS と重なることがあります
(Rome IV・当サイトによる訳)

EPS(心窩部痛症候群)=FD の内側

食後に限って起こるのではない
PDS と重なることがあります
(Rome IV・当サイトによる訳)

この記事で扱う主な試験の対象(当サイトの整理)
どの集団を見た試験か

PDS 278名(偽鍼比)
PDS 42名・60名(パイロット)
薬に抵抗性の PDS 型 132名(上乗せ)
FD 73名(関わり方)
FD 24名(上乗せ・実行可能性)

模式図で、面積や割合を表すものではありません。分類は Rome IV(PMID 27147122)の抄録の記述にもとづいて当サイトが図にしたもので、原典にこの図はありません。Rome IV の抄録には "the 2 subgroups can overlap" とあります(当サイトによる訳=2つの下位群は重なることがある)。外枠(FD)は2つの亜型で埋め切られるものではありません。いちばん下の「どの集団を見た試験か」の枠は、当サイトが本記事で扱う試験を並べたもので、Rome IV の記述ではありません(出所=Yang JW 2020/Tu JF 2020/Wang Y 2020/Chung VC 2019/Ko SJ 2024/Lee B 2022)。このうち Lee B 2022 の診断基準は Rome III です。同じ領域の改訂版が2026年に出ていますが、当サイトは書誌のみの確認です。EPS だけを対象にした鍼の試験は、当サイトの検索範囲では見つかりませんでした。診断は医師が行うもので、この図は患者さんの型を判断するためのものではありません。

FD の定義は、国際的な分類(Rome IV・2016年。2026年に改訂版が出ています)が示しています。

食後の膨満感・早期飽満感(すぐ満腹になる)・心窩部痛・心窩部の灼熱感のうち、1つ以上があることです。

もう1つ条件が付きます。それらが通常の臨床評価で説明がつかないこと。

医療機関での評価が前提に置かれた病気です。ですから鍼灸師が「FD だろう」と判断する場面はありません。まだ医療機関で相談していない方には、先に受診をすすめてください。

PDS と EPS——大きな試験の対象は、ほとんど PDS だけ

Rome IV は FD を2つの亜型に分けています。

食事によって誘発される症状が特徴の食後愁訴症候群(PDS)と、食後に限って起こるのではない心窩部痛症候群(EPS)です。

ここが、この記事の前提です。

偽鍼と比べた大きな試験も、薬に上乗せした試験も、対象は PDS でした。EPS だけの試験は、当サイトの検索範囲にありません。

しかも Rome IV は、2つの亜型が重なることがあると明記しています。

「別物」と切り分けて読むのも正確ではありません。

胃もたれと下腹部の症状が一緒に出る方もいます。

腸の側は過敏性腸症候群への鍼|偽鍼・通常ケア・薬と比べた研究は、何を示したのかで扱いました。別の病気として研究されているので、数値は行き来させません。

比べる相手で結論が動く仕組みそのものは、鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比で整理しています。

エビデンスボックス① FD の定義と分類、姉妹症状を切り分けた理由(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Stanghellini V, Chan FK, Hasler WL, Malagelada JR, Suzuki H, Tack J, Talley NJ. Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology. 2016;150(6):1380-1392.(PMID 27147122/DOI 10.1053/j.gastro.2016.02.011=Rome IV)抄録の逐語(該当部分)=”(1) functional dyspepsia, characterized by 1 or more of the following: postprandial fullness, early satiation, epigastric pain, and epigastric burning, which are unexplained after a routine clinical evaluation; and includes 2 subcategories: postprandial distress syndrome that is characterized by meal-induced dyspeptic symptoms and epigastric pain syndrome that does not occur exclusively postprandially; the 2 subgroups can overlap”(当サイトによる訳:(1) 機能性ディスペプシア。次のうち1つ以上を特徴とする——食後の膨満感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部の灼熱感。これらは通常の臨床評価のあとも説明がつかないものである。そして2つの下位分類を含む——食事によって誘発されるディスペプシア症状を特徴とする食後愁訴症候群と、食後に限って起こるのではない心窩部痛症候群。この2つの下位群は重なることがある。)確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。文の途中から引いているため、原文の文頭は分類の前置きです。
  • 🛑 評釈:Rome IV は FD の定義と分類の文書で、治療の推奨を出す文書ではありません。当サイトは「Rome IV は鍼に触れていない」という書き方をしません。⚠️ また、同じ領域の改訂版が2026年に出ています(Törnblom H, Carbone F, Hasler WL, Smout A, Suzuki H, Tack J, Talley NJ, Stanghellini V. Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology. 2026;170(6):1240-1260./PMID 41713705/DOI 10.1053/j.gastro.2026.01.038)。当サイトは書誌のみの確認で本文を読んでいないため、内容には触れず、「Rome IV が最新」とも書きません。
  • この記事で取り上げる試験の対象:Yang JW 2020(278名)・Tu JF 2020(42名)・Wang Y 2020(60名)・Chung VC 2019(132名)はいずれも PDS(各試験の抄録の方法の文による)。Lee B 2022(24名)は Rome III の FD、Ko SJ 2024(73名)は FD です。2014年のコクランが集めた7試験の診断基準はRome II または Rome IIIで、PDS/EPS に分ける枠組みより前のものです。🛑 評釈:当サイトは PDS を対象にした試験の結果を「FD に効く」と書きません。
  • 姉妹症状を持ち込まない理由:過敏性腸症候群(IBS)は Rome IV では腸の障害、FD は胃十二指腸領域の障害で、診断基準もコクランレビューも別です(IBS=CD005111・Manheimer 2012/FD=CD008487・Lan 2014)。慢性の機能性便秘にも別の大規模試験があります。🛑 評釈:3疾患をまとめて統合したレビューも存在しますが、当サイトは FD 単独の根拠として使いません。

コクランは「結論できない」と書いた。12年後、同じ研究グループが別の雑誌で更新した

FD の鍼のコクランレビュー(決まった手順で試験を集めて評価する国際組織の報告書)は、2014年の版です。

7試験・542名。著者結論は、たった1文でした。

出所:Lan L, Zeng F, Liu GJ, ほか. Acupuncture for functional dyspepsia. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(10):CD008487(PMID 25306866)Authors’ conclusions(全1文)。原文(英語)はエビデンスボックス②に置いています
当サイトによる訳:手技鍼または電気鍼が、FD の患者にとって他の治療より有効か、あるいは安全かは、依然として分かっていない。

本文の「臨床への意味」の節も、同じ向きです。こちらは「結論できない」と書かれています(逐語はボックス②)。

薬と比べた4試験では、差が出ていない

薬(シサプリド・ドンペリドン・イトプリド)と比べた4試験では、FD 症状の程度も発作の頻度も、統計的な有意差がありませんでした。

偽鍼と比べた試験は3つありましたが、統合されていません。

本文を読むと、3つのうち1本は、症状の指標の低下について偽鍼と有意差がなかったと書かれています。

読み方はコクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所にまとめました。

2026年の更新——ただし「コクランが結論を変えた」のではない

2026年、FD の鍼のメタ解析(複数の研究をまとめて分析したもの)が新しく出ました。

23試験・2,454名。検索は2025年3月までです。

この論文の本文には「我々が2014年に最初に発表したコクランレビューを更新した」と書かれています(当サイトによる訳)。

2014年のコクランの筆頭著者が共著に入り、所属も同じ大学です。

つまり同じ研究グループの、前後の版です。

発表先はコクラン・ライブラリではなく別の医学雑誌で、コクラン側の版は2014年のまま。「コクランが結論を変えた」とも「独立した再評価が違う結論に達した」とも書けません。

数値は、比べた相手ごとに分かれています。

症状は195点満点、生活の質は100点満点の尺度で測られています。

偽鍼と比べて、症状の指標が14.46点低く、生活の質が10.39点高い。有害事象は増えていません。

無治療または通常のケアと比べると、症状の指標が20.19点低い。

消化管運動改善薬と比べると、生活の質は「おそらく改善する」、症状は「改善するかもしれない」と書かれています。

この「おそらく」「かもしれない」は、書き手のためらいではありません。

確実性を表す決まった言い回しで、「かもしれない」のほうが1段低い評価です。

ただし2014年のコクランは、薬との4試験で差を認めていません。「鍼が薬より上」とは書けません。

なお「無治療または通常のケア」は、2つがまとめて統合されています。

鍼を受けない群と比べたときに起きることは待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組みで整理しました。

同じ論文の中で、評価が食い違っている

抄録は偽鍼との比較を「確実性は高い〜中等度」と書いています。

いっぽう本文の限界には、こう書かれています。

多くの組み入れ試験が、盲検や割り付けの隠蔽の点でバイアスのリスクが高い。

組み入れた23試験はすべてアジアで行われた(中国21・韓国2)ので、他の集団への一般化には限界がある。活性治療と比べた試験が少ない。

片方だけを引くと、まるで違う記事になります。

当サイトは、確実性の表示と限界の3点を同じ段落に置きます。

「研究の数」と「エビデンスの質」は別のもの

FD の鍼のメタ解析は何本も出ていますが、同じような試験群を統合し直したものです。本数が増えたことは、質が上がったことを意味しません。

2022年には、レビュー10本の質を評価した研究(アンブレラレビュー)が出ています。その結果の最後の2文が、この記事で外せません。

出所:Huang J, ほか. Reliability of the Evidence to Guide Decision-Making in Acupuncture for Functional Dyspepsia. Front Public Health. 2022;10:842096(PMID 35433619)Results の最後の2文。原文(英語)はエビデンスボックス④
当サイトによる訳:FD への鍼の効果を支持する高品質のエビデンスは見つからなかった。質的なデータの統合は、サンプルサイズの小さい低品質の試験に依拠しており、それがエビデンスの格下げの主な要因であった。

ただし同じ抄録の結論の1文目は「鍼は FD の治療において有望な有効性をもつようにみえる」です(当サイトによる訳。原文はボックス④)。

結果は否定側、結論は肯定側で、抄録の中で割れています。片方だけを引かないでください。この2022年の評価に、2026年の更新は入っていません。

複数のレビューが、採用した試験の質の低さを同じように書いています(2015年・2016年の統合の逐語はボックス④)。

エビデンスボックス② 2014年コクラン(Lan 2014)の原文と、読み方(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Lan L, Zeng F, Liu GJ, Ying L, Wu X, Liu M, Liang FR. Acupuncture for functional dyspepsia. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(10):CD008487.(PMID 25306866/DOI 10.1002/14651858.CD008487.pub2/PMC10558101)7試験・542名(男性212・女性330)。採用基準はRome II または Rome IIIで診断された FD の患者を対象に、手技鍼または電気鍼を薬・無処置(blank control)・偽鍼と比べた RCT。確認の範囲=抄録は逐語(1経路)、本文は PMC の HTML を1パス。PubMed の記録に、より新しい版や撤回の情報(UpdateIn・RetractionIn)はありません。⚠️ Cochrane Library 本体のページには当サイトは到達できておらず(403)、「stable」などの版の表示は未確認です。
  • Authors’ conclusions(抄録の逐語・全1文)=”It remains unknown whether manual acupuncture or electroacupuncture is more effective or safer than other treatments for patients with FD.”(訳は本文の引用ブロック)
  • Implications for practice(本文の逐語・1パス)=”Given the low or very low quality of evidence obtained, it cannot be concluded whether acupuncture is more effective or safer than other treatments in the treatment of FD.”(当サイトによる訳:得られたエビデンスの質が低い、または非常に低いことを踏まえると、FD の治療において鍼が他の治療より有効か、あるいは安全かは結論できない。)🛑 評釈:抄録の結論(全1文)と同じ向きで、本文側も否定に寄っています。当サイトは本文の見出しで「結論できない」という語を使い、その出所はこの Implications for practice です。
  • 薬との比較(抄録の逐語)=”Four RCTs of acupuncture versus medications (cisapride, domperidone, and itopride) were included in the review. No statistically significant difference was noted in the reduction in FD symptom scores and the frequency of FD attack by manual acupuncture, manual-electroacupuncture, or electroacupuncture compared with medications.”(当サイトによる訳:鍼と薬(シサプリド、ドンペリドン、イトプリド)を比べた4つの RCT を採用した。手技鍼、手技鍼+電気鍼、または電気鍼と薬を比べて、FD 症状スコアの低下と FD の発作の頻度に、統計的に有意な差は認められなかった。)
  • 有害事象(抄録の逐語)=”With regard to adverse effects, acupuncture was superior to cisapride treatment (one study; all minor events), but no statistically significant difference was reported between acupuncture and sham acupuncture.” / “No adverse effects data were reported in studies examining manual acupuncture versus domperidone, manual-electroacupuncture versus domperidone, or electroacupuncture versus itopride.”(当サイトによる訳:有害な影響については、鍼はシサプリドによる治療より優れていた(1試験、すべて軽度の事象)が、鍼と偽鍼のあいだには統計的に有意な差は報告されなかった。/手技鍼とドンペリドン、手技鍼+電気鍼とドンペリドン、電気鍼とイトプリドを検討した試験では、有害な影響のデータは報告されなかった。)🛑 評釈:7試験のうち3つの比較で、有害事象のデータがそもそも報告されていません。この読み方は本文の H2⑧「『有害事象の報告なし』は、『起きなかった』ではありません」に集約しました(v3 では本文 H2③ から重複を削り、こちらに残しています)。
  • エビデンスの質(抄録の逐語)=”Nevertheless, all evidence was of low or very low quality. The body of evidence identified cannot yet permit a robust conclusion regarding the efficacy and safety of acupuncture for FD.”(当サイトによる訳:とはいえ、すべてのエビデンスは質が低い、または非常に低いものだった。同定されたエビデンスの全体は、FD への鍼の有効性と安全性について、まだ頑健な結論を許すものではない。)
  • 🛑 評釈(偽鍼との比較について):偽鍼と比べた3試験は統合されていません。本文(Effects of interventions・1パス)では、1本は偽鍼群と比べて有意差あり、1本は治療前と追跡時の群内の変化が有意で対照群は有意でなく、1本(Park 2009)は症状指標の低下について鍼と偽鍼で有意差なしと読めます。抄録の1文からはこの内訳が読み取れないため、当サイトは「コクランが偽鍼との比較で鍼を支持した」とは書きません。⚠️ 個々の数値・p 値は本文から取得できていません。
  • 🛑 評釈(引用しない一文があります):抄録の偽鍼比較の一文には Neck Disability Index (NDI) という展開形が出てきますが、本文の NDI は Nepean Dyspepsia Index(FD の代表的な尺度)で、抄録の展開形が本文と食い違っています(編集長が PMC 全文で独立に確認)。FD と無関係な尺度が測られたのではなく、抄録側の表記の問題です。当サイトはこの一文を引用しません。
エビデンスボックス③ 2026年の更新(Li XX 2026)の数値・確実性・限界(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Li XX, Hu ZY, Li ZC, Tang J, Liu YY, Zeng DH, Zhou QQ, Ma WB, Lan L, Wang L. Efficacy and safety of acupuncture for functional dyspepsia: an updated meta-analysis of randomized controlled trials. Front Med (Lausanne). 2026;13:1718632.(PMID 41737400/DOI 10.3389/fmed.2026.1718632/PMC12926150)23 RCT・2,454名。検索は6データベース+2試験登録で2025年3月13日まで。確認の範囲=抄録は逐語(1経路)、本文は1パス。
  • コクランとの関係(本文の逐語・1パス)=”we updated our previous Cochrane review first published in 2014″(当サイトによる訳:我々が2014年に最初に発表したコクランレビューを更新した。)⚠️ 原文はこの前に “The review protocol was registered with the Cochrane Database of Systematic Reviews,” が付き、そのあとに脚注番号が入ります。当サイトは脚注番号を含まない部分だけを引いています。
  • Results(抄録の逐語・全文)=”We included 23 RCTs (2,454 participants). Compared to sham acupuncture, high to moderate certainty evidence shows that acupuncture probably improves FD symptoms (weighted mean difference [WMD] -14.46 points on the 195-point NDSI, 95% CI -16.31 to -12.62) and quality of life (WMD 10.39 points on the 100-point NDLQI, 95% CI 7.06 to 13.73) without an increase in adverse events (relative risk 1.15, 95% CI 0.63, 2.09). Compared to no treatment or usual care, moderate certainty evidence shows that acupuncture probably improves FD symptoms (WMD -20.19 points on the 195-point NDSI, 95% CI -30.22 to -10.15). When compared with prokinetics (itopride, mosapride, and domperidone), acupuncture probably improves quality of life (WMD 5.69 points on the 100-point NDLQI, 95% CI 4.36 to 7.02) and may improve FD symptoms (WMD -17.40 points on the 195-point NDSI, 95% CI -29.08 to -5.72).”
  • (当サイトによる訳)23の RCT(2,454名)を採用した。偽鍼と比べて、確実性が高い〜中等度のエビデンスは、鍼が FD 症状をおそらく改善すること〈195点満点の NDSI で加重平均差 −14.46点、95%CI −16.31〜−12.62〉と、生活の質をおそらく改善すること〈100点満点の NDLQI で +10.39点、7.06〜13.73〉を、有害事象の増加なしに示している〈相対危険 1.15、0.63〜2.09〉。無治療または通常のケアと比べて、中等度の確実性のエビデンスは、鍼が FD 症状をおそらく改善することを示している〈NDSI −20.19点、−30.22〜−10.15〉。消化管運動改善薬(イトプリド、モサプリド、ドンペリドン)と比べると、鍼は生活の質をおそらく改善し〈NDLQI +5.69点、4.36〜7.02〉、FD 症状を改善するかもしれない〈NDSI −17.40点、−29.08〜−5.72〉。
  • 本文の限界(逐語・1パス・段落の冒頭から)=”However, there are several limitations in this review. First, many included studies are at high risk of bias due to inadequate blinding of patients, health care providers, or outcome assessor, as well as allocation concealment. Second, all included trials were conducted in Asia, which may limit the generalizability of the findings to other populations. Third, few trials compared acupuncture with active treatments.”(当サイトによる訳:ただし、本レビューにはいくつかの限界がある。第一に、多くの組み入れ試験は、患者・医療提供者・アウトカム評価者の盲検が不十分であることと、割り付けの隠蔽のため、バイアスのリスクが高い。第二に、組み入れた試験はすべてアジアで実施されており、他の集団への知見の一般化が限られる可能性がある。第三に、鍼を活性治療と比べた試験は少ない。)
  • 🛑 評釈(この論文の扱い方):①発表先は Frontiers in Medicine で、コクラン・ライブラリの CD008487 は2014年の版(pub2)のままです。当サイトは「コクランが結論を変えた」と書きません。②2014年のコクランの筆頭著者 Lan L が共著に入り、所属も同じ成都中医薬大学です。独立した再評価ではありません。③probably improves/may improve は確実性を表す決まった言い回しで、「おそらく改善する」「改善するかもしれない」と訳しています。④NDSI・NDLQI の臨床的に意味のある最小変化量(MCID)は当サイトで未確認のため、点数の差を「臨床的に意味のある大きさ」とは書きません(v3 では本文からこの留保の説明を削り、「この記事で書かなかったこと」4番とこの項目に残しています)。⑤有害事象は「増えていない」までで、点推定は鍼群のほうが多い方向です。「鍼のほうが有害事象が少ない」とは書けません。⑥「無治療または通常のケア」は2つが分けられていないため、「通常のケアに上乗せして」とは書きません。⑦組み入れ試験の国は中国21・韓国2です。⑧消化管運動改善薬の3種(イトプリド・モサプリド・ドンペリドン)はまとめて1つの群として比較されています。個別の薬と比べたとは書きません。またこの3種にシサプリドは入っていません(シサプリドは2014年のコクランの比較相手です)。v3 では本文からこの3種の薬名を落とし、「消化管運動改善薬」と書いています。
  • 資金・利益相反(本文の逐語・1パス)=”This work was supported by the Chengdu University of Traditional Chinese Medicine University-Institute Joint Innovation Fund (Grant No. LH202402049).” /商業的・財務的な利益相反はないと申告されています。
エビデンスボックス④ レビューの質を評価した研究と、薬との比較の言い方(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Huang J, Liu J, Liu Z, Ma J, Ma J, Lv M, Wang F, Tang X. Reliability of the Evidence to Guide Decision-Making in Acupuncture for Functional Dyspepsia. Front Public Health. 2022;10:842096.(PMID 35433619/DOI 10.3389/fpubh.2022.842096/PMC9010971)FD への鍼の系統的レビュー/メタ解析10本を、方法の質(AMSTAR-2)・報告の質(PRISMA)・エビデンスの質(GRADE)で評価したアンブレラレビュー。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。Results(節の全文の逐語)=”Ten SRs/MAs were analyzed for this study. The methodological quality, reporting quality, and evidence quality of the included SRs/MAs were generally unsatisfactory. Lack of protocol registration, no list of excluded trials, or lack of a comprehensive search strategy were the main limitations. No high-quality evidence was found to support the effects of acupuncture for FD; the qualitative data synthesis relied on low quality trials with small sample sizes and was the main factor for evidence degradation.”/Conclusions(節の全文・3文の逐語)=”Acupuncture seems to have a promising efficacy in the treatment of FD. It provides a new and prospective therapeutic method for FD. Although the quality of the included SRs/MAs was generally low and defects were frequent, this umbrella review highlights areas where improvement in methodology is required.”(当サイトによる訳・結論:鍼は FD の治療において有望な有効性をもつようにみえる。FD に対する新しく将来性のある治療法を提供する。組み入れた系統的レビュー/メタ解析の質は全般に低く、欠陥も頻繁であったが、このアンブレラレビューは方法論の改善が必要な領域を明らかにしている。)🛑 評釈:結果は否定側、結論は肯定側で、抄録の中で割れています。当サイトは片方だけを引きません。評価対象の10本の内訳は抄録に無く、2022年の論文なので2026年の更新は評価対象に入っていません。
  • 🛑 本文の「複数のレビューが、採用した試験の質の低さを同じように書いています」の逐語(2件)=下の Kim 2015 と Pang 2016 です。v2 で本文の分量を落とすため、逐語をここに移しました。否定側の内容は失っていません。
  • Kim KN, Chung SY, Cho SH. Efficacy of acupuncture treatment for functional dyspepsia: A systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med. 2015;23(6):759-766.(PMID 26645513/DOI 10.1016/j.ctim.2015.07.007)20研究・1,423例・2012年11月まで。Results の2文目の逐語=”The risk of bias was high.”(当サイトによる訳:バイアスのリスクは高かった。)🛑 評釈:この統合の効果量は指標名(RR か OR か SMD か)が抄録に書かれておらず、1つは点推定と信頼区間上限の釣り合いが不自然なため、当サイトは数値を引用しません。有害事象を報告したのは20研究中2試験だけです。
  • Pang B, Jiang T, Du YH, Li J, Li B, Hu YC, Cai QH. Acupuncture for Functional Dyspepsia: What Strength Does It Have? A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Evid Based Complement Alternat Med. 2016;2016:3862916.(PMID 28119758/DOI 10.1155/2016/3862916/PMC5227170)16 RCT・1,436名。Results の2文目の逐語=”The majority of the trials were determined to be of low quality.”(当サイトによる訳:試験の大半は低品質と判断された。)結論は2文で、2文目は”Nonetheless, despite stringent methodological analyses, the conclusion of our review still needs to be strengthened by additional RCTs of higher quality.”(当サイトによる訳:とはいえ、厳密な方法論的分析を行ったにもかかわらず、本レビューの結論は、より質の高い追加の RCT によって補強される必要がなおある。)🛑 評釈:効果量が抄録に1つも書かれていないため、数値は引けません。結論の1文目だけを引きません。
  • Ho RST, Chung VCH, Wong CHL, Wu JCY, Wong SYS, Wu IXY. Acupuncture and related therapies used as add-on or alternative to prokinetics for functional dyspepsia: overview of systematic reviews and network meta-analysis. Sci Rep. 2017;7(1):10320.(PMID 28871092/DOI 10.1038/s41598-017-09856-0/PMC5583250)5つの系統的レビューから22 RCT。抄録の逐語(該当部分)=”Two pairwise meta-analyses showed manual acupuncture has marginally stronger effect in alleviating global FD symptoms, compared to domperidone or itopride.”(当サイトによる訳:2つの対比較のメタ解析は、ドンペリドンまたはイトプリドと比べて、手技鍼が FD の全般的症状の緩和においてわずかに強い効果をもつことを示した。)🛑 評釈:著者自身が marginally(わずかに)と書いています。当サイトはこれを「鍼が薬より優れている」と強めません。ネットワークメタ解析の順位(どの組み合わせが1位か)は引用しません。抄録の “No serious adverse events were reported.” は、22試験のうち何試験が有害事象を記録したかが書かれていません。
  • 🛑 この記事で数値を使わなかった統合:効果量が極端に大きく、有害事象の記述が同じ抄録の中で整合しないもの、順位だけを示すネットワークメタ解析、対照が何かが抄録に書かれていないもの、組み入れ試験すべてを低リスクと主張して他のレビューの評価と正面から食い違うものは、存在の確認だけを行い、数値を引用していません。

偽鍼と比べた最大の試験——ただし対象は「食後愁訴症候群」だった

FD の鍼で、当サイトの検索範囲ではいちばん大きな偽鍼比較の試験は2020年の報告です。

中国の5つの三次医療機関で、Rome IV の PDS の患者278名を、鍼と偽鍼に分けました。

施術は1回20分、週3回を4週間。合計12回です。

主要なアウトカムは2つあり、どちらも4週の時点で測られました。

1つは、全般的な治療効果にもとづく反応率。

鍼で83.0%、偽鍼で51.6%。差は31.4ポイントでした。

もう1つは、3つの主症状(食後の膨満感・上腹部の膨満・早期飽満感)がすべて消えた割合です。

鍼で27.8%、偽鍼で17.3%。差は10.5ポイントで、信頼区間の下限は 0.08 でした。

31.4ポイントだけを見ると、大きな差に見えます。

ただ、もう1つの主要アウトカムでは差の下限がほぼ0です。2つを並べて読んでください。

どちらの割合も統計モデルによる推定値で、「278名のうち何人が反応した」という実測の割合ではありません。

著者自身が挙げた限界は、3つ

この試験の抄録には、限界が1文で書かれています。

客観的なアウトカムと毎日の測定がないこと、脱落率が高いこと、施術者を盲検化できないことです。

脱落については、数字が出ています。

16週の時点で測定を完了したのは278名中228名。18%が抜けています。

施術者を盲検化できないのは、鍼の試験に共通する構造の問題です。

どの層を盲検にできるかは鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読むで分けています。

偽鍼は「刺さない型」ではなかった

この試験の偽鍼の型は、同じ試験の二次解析の論文に書かれていました。

経絡上でも経穴でもない6か所に浅く刺す型で、刺さない偽鍼ではありません。鍼群の経穴には中脘が入っています(一覧はボックス⑤)。

中脘は上腹部です(安全性は後半の章で扱います)。

偽鍼の型ごとの違いは偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題にまとめています。

先行するパイロット試験2本は、主要アウトカムで有意ではない

この278名の試験の前に、同じ研究グループが小さな試験を2本出しています。独立した再現ではありません。

42名のパイロットは、主要アウトカムの反応率が 61.9% 対 33.3% で p=0.06。有意ではありません。

60名の試験は、週3回と週1回を比べたものです。

4週の主要アウトカム(症状の完全な消失)は 26.7% 対 10.0% で P=0.095。こちらも有意ではなく、有意になったのは8週以降です。

しかも週3回群は総回数も多くなります(12回と4回)。

頻度と回数を切り分けられていません。施術量の話は肩こりへの鍼の頻度|「週何回」の根拠を一次資料までたどるで扱っています。

エビデンスボックス⑤ 偽鍼と比べた試験の原文と、施術の詳細の出所(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Yang JW, Wang LQ, Zou X, Yan SY, Wang Y, Zhao JJ, Tu JF, Wang J, Shi GX, Hu H, Zhou W, Du Y, Liu CZ. Effect of Acupuncture for Postprandial Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial. Ann Intern Med. 2020;172(12):777-785.(PMID 32422066/DOI 10.7326/M19-2880)中国の三次医療機関5施設・18〜65歳・Rome IV の PDS・2群無作為化・ISRCTN12511434。主要アウトカムは2つ(4週時点の反応率と、3主症状すべての消失率)。資金=北京市科学技術委員会。確認の範囲=抄録まで(2経路一致=Europe PMC core JSON と PubMed efetch XML)。本文は未取得。
  • Results(抄録の逐語・全文)=”Among the 278 randomly assigned participants, 228 (82%) completed outcome measurements at week 16. The estimated response rate from generalized linear mixed models at week 4 was 83.0% in the acupuncture group versus 51.6% in the sham acupuncture group (difference, 31.4 percentage points [95% CI, 20.3 to 42.5 percentage points]; P < 0.001). The estimated elimination rate of all 3 cardinal symptoms was 27.8% in the acupuncture group versus 17.3% in the sham acupuncture group (difference, 10.5 percentage points [CI, 0.08 to 20.9 percentage points]; P = 0.034). The efficacy of acupuncture was maintained during the 12-week posttreatment follow-up. There were no serious adverse events."(当サイトによる訳:無作為に割り付けられた278名のうち、228名〈82%〉が16週時点のアウトカム測定を完了した。一般化線形混合モデルによる4週時点の推定反応率は、鍼群83.0%、偽鍼群51.6%だった〈差 31.4パーセントポイント、95%CI 20.3〜42.5、P<0.001〉。3つの主症状すべての推定消失率は、鍼群27.8%、偽鍼群17.3%だった〈差 10.5パーセントポイント、CI 0.08〜20.9、P=0.034〉。鍼の有効性は治療後12週の追跡期間中も維持された。重篤な有害事象はなかった。)
  • Limitation(抄録の逐語・全1文)=”Lack of objective outcomes and daily measurement, high dropout rate, and inability to blind acupuncturists.”(当サイトによる訳:客観的アウトカムと毎日の測定の欠如、高い脱落率、そして鍼施術者を盲検化できないこと。)
  • 🛑 評釈:①対象はPDS だけで、EPS には広げられません。②反応率・消失率はいずれも混合モデルによる推定値で、実測の人数の割合ではありません。当サイトは「278名中○名が反応」と書きません。③2つの主要アウトカムは、つねに両方を並べます(3主症状の消失率の差は10.5ポイントで、信頼区間の下限は 0.08)。④”no serious adverse events” は重篤なものだけで、軽度の有害事象の件数・内容は未取得です。⑤4週時点の脱落数は未取得です。⑥結論ボックスの「1回20分・週3回・4週の12回」はこの試験で使われた設定で、当サイトが推奨する施術量ではありません。
  • 施術の詳細と群の人数の出所=同じ試験の二次解析論文(🛑 v2 で本文から経穴の一覧をここへ移しました):Wang Y, Yang JW, Hu H, ほか〔中国語〕. Improvement in dyspepsia related symptoms treated with acupuncture in 278 patients with postprandial distress syndrome: a secondary analysis of a multi-center randomized controlled trial. Zhongguo Zhen Jiu. 2021;41(6):583-587.(PMID 34085471/DOI 10.13703/j.0255-2930.20200527-k0001)英文抄録の逐語=”278 patients with postprandial distress syndrome were randomized into an acupuncture group (138 cases) and a sham-acupuncture group (140 cases)… In the acupuncture group, acupuncture was applied to Baihui (GV 20), Danzhong (CV 17), Zhongwan (CV 12), Qihai (CV 6), Neiguan (PC 6), Zusanli (ST 36), etc. In the sham-acupuncture group, 6 sites, neither located on meridians nor belonged to meridian acupoints, were selected and punctured shallowly. The duration of treatment was 20 min each time, 3 times a week, for 4 weeks totally in the two groups. The follow-up visit lasted for 12 weeks.”(当サイトによる訳:食後愁訴症候群の患者278名が、鍼群〈138例〉と偽鍼群〈140例〉に無作為化された。…鍼群では、百会〈GV 20〉、膻中〈CV 17〉、中脘〈CV 12〉、気海〈CV 6〉、内関〈PC 6〉、足三里〈ST 36〉などに鍼を行った。偽鍼群では、経絡上にも経穴にも当たらない6か所を選び、浅く刺した。治療時間は両群とも1回20分、週3回、合計4週間であった。追跡は12週間続いた。)🛑 評釈:これは本試験の抄録ではなく、二次解析の論文の記述です。原文に etc. があるため「この6穴だった」とは書けません。偽鍼は刺入する型です。この二次解析の症状別の結果(Results 節)は取得できていないため、症状別の効果は本文に書いていません。
  • Tu JF, Yang JW, Wang LQ, ほか. Acupuncture for postprandial distress syndrome: a randomized controlled pilot trial. Acupunct Med. 2020;38(5):301-309.(PMID 32028783/DOI 10.1177/0964528419900911)42名を1:1で真の鍼と偽鍼に割り付け、4週で12回。抄録の逐語(該当部分)=”Thirteen patients receiving verum acupuncture and seven patients receiving sham acupuncture were classified as responders according to OTE (61.9% vs 33.3%; rate difference 28.6%; p = 0.06).”/結論は3文で、1文目=”Four weeks of acupuncture may represent a potential treatment for postprandial distress syndrome.”、3文目=”Since this was a pilot study, the efficacy of acupuncture still needs to be determined by a larger, adequately powered trial.”(当サイトによる訳:4週間の鍼は、食後愁訴症候群に対する潜在的な治療となりうるかもしれない。/これはパイロット研究であったため、鍼の有効性は、より大規模で十分な検出力をもつ試験によってなお決定される必要がある。)🛑 評釈:主要アウトカムは p=0.06 で有意ではありません。当サイトは「パイロットでも効いた」と書きません。抄録にある完了率の数値は、42名を1:1に割り付けた場合の分母と合わないため引用していません。症状の重症度の数値も、何の尺度の何を表すのかが抄録から分からないため引用していません。
  • Wang Y, Hou YQ, Yang JW, ほか. Acupuncture of different treatment frequency in postprandial distress syndrome: A pilot randomized clinical trial. Neurogastroenterol Motil. 2020;32(6):e13812.(PMID 32048788/DOI 10.1111/nmo.13812)PDS の60名を週3回群と週1回群に無作為化(いずれも4週間=総回数は12回と4回)。抄録の逐語(該当部分)=”The complete elimination rate of core symptoms was 26.7% (95% CI 12.3%-45.9%) in group H and 10.0% (95% CI 2.1%-26.5%) in group L at week 4 (P = .095). There was a significant difference between H and group L at weeks 8, 12, and 16 (P = .038, .02, and .02).”/結論の1文目=”This trial showed that acupuncture, at 3 sessions per week, tended to improve symptoms and the quality of life among patients with PDS as compared to once a week.”(当サイトによる訳:本試験は、週3回の鍼が、週1回と比べて PDS 患者の症状と生活の質を改善する傾向にあったことを示した。)🛑 評釈:4週時点の主要アウトカムは有意ではありません(P=.095)。著者結論も tended to(傾向にあった)です。頻度と総回数が分離できていないため、当サイトは「週3回のほうが効く」と書きません。この試験は当サイトの ID350(肩こりへの鍼の頻度)でも同じ読み方で扱っています。
  • あわせて:FD では、施術の頻度そのものを無作為に割り付けた試験がもう1本あります(Tang KY, Sun BY, Yan Y, Wang X, He X, Liu ZS〔中国語〕. Functional dyspepsia treated with acupuncture of different frequencies: a randomized controlled trial. Zhongguo Zhen Jiu. 2023;43(6):622-626./PMID 37313554/DOI 10.13703/j.0255-2930.20220530-k0004)。90名を週3回・週1回・対照の3群に分けた試験で、結論の2文目の逐語は”This efficacy is persistent for 8 weeks after treatment completion.”です。🛑 評釈:こちらも頻度と総回数を分離できていません。治療終了時(4週)に週3回群と週1回群の差が有意だったかは、抄録の結果の節に書かれていません。第3群は無治療で追跡後に治療を受ける設計(待機リスト型)です。中国語誌で、当サイトは本文を読んでいません。
  • 🛑 研究グループについて(書誌上の事実のみ):上の278名の試験と2本のパイロット、および二次解析は、いずれも同じ大学の系列の著者によるものです(著者所属を機械取得して確認)。当サイトはこれらを独立した再現として並べません。2014年のコクランは別の大学のグループです。

偽鍼を受けた群でも、症状の点数は良くなっている——FD で測られたプラセボ反応

ここからが、FD のいちばん面白いところです。

偽鍼を受けた群だけを集めて変化量を統合した研究があります。13試験のうち8試験を統合し、偽の手技鍼でも偽の電気鍼でも、症状と生活の質は有意に良くなっていました。

いっぽうで、胃電図(胃の電気的な活動を体表から測る検査)の指標は動いていません。

患者さんが答えるアウトカムは動き、機械で測る指標は動かない。この対比が、FD の一次資料で示されています。

ただし「偽鍼でも同じだけ効く」という意味ではありません。

集めたのは偽鍼群の群内の前後変化で、鍼との群間比較ではありません。ここを混ぜないでください。

「胃の動きが良くなるから効く」とは書けない

では機序はどうか。2016年の統合は、症状と生活の質は改善したと報告しつつ、血液中のモチリン(胃腸の運動に関わるホルモン)は増えなかったと書いています。

薬への上乗せのレビューでも、グレリンやガストリンの指標は一貫していません。当サイトは「胃の動きが良くなるから効く」という説明を、患者さんにも使いません。

偽鍼の群でも改善が起きる仕組みは、鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由に譲ります。

どちらの群も改善したが、手厚いケアの群のほうが改善は小さかった

韓国の多施設試験で、FD の73名を2群に分けました。鍼の内容は同じで、違うのは施術者の関わり方だけです。

患者中心の手厚いケアを添える群と、疾患中心の限定的なケアにとどめる群です。

結果は、まず両群とも症状の指標(NDI-K)が改善しました。

そのうえで、手厚いケアの群のほうが症状の改善が小さかったと報告されています(症状の指標の合計と頻度で P=0.008・P=0.037)。共感の尺度は手厚い群のほうが高く、関わり方の違いは意図どおり作れていました。

著者は結論の2文目に「西洋諸国で行われた類似の研究とは逆であり、文化的な要因が、鍼治療の最適なスタイルを大きく形づくりうる」と書いています(当サイトによる訳。結論3文の原文と評釈はボックス⑦)。

書かれているのは「文化的な要因が関わりうる」までです。

「日本では手厚いケアが逆効果」とは読み替えません。ただ、「共感的に接するほど効果が上がる」という一般論は、この試験では成り立ちませんでした。

「期待が大きいほど効く」も、決着していない

期待度で事後に分け直した解析もありますが、著者は期待と効果の関連について決定的な証拠は得られなかったと書いています(数値と、この比較の作法はボックス⑦)。

① 「鍼で、胃の重さは良くなりますか?」と聞かれたとき

「正直にお伝えしますね。本物の鍼と、見た目をそっくり似せただけの鍼を比べた研究では、本物のほうが良かったという報告が続いています。ただ、その研究の多くは、食後に症状が出るタイプの方が対象です。

それに、見た目を似せただけの鍼でも、症状の点数は良くなるんです。だから『鍼だから効いた』と言い切れないところがあります。

鍼を受けて楽になったと話される方はいらっしゃいます。ただ『鍼のおかげでこうなる』と言い切れるところまでは分かっていません。病院の治療は続けたまま、試すかどうかを一緒に決めていきましょう。」

トーク例の使い方:トーク例は、目の前の患者さんへの口頭の説明を想定したものです。自院のウェブサイトやチラシにそのまま転記すると、広告関連法令(医療法・薬機法・景品表示法など)の対象になる表現に変わることがあります。

エビデンスボックス⑥ 偽鍼群の変化と、機序の材料(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Liu J, Song G, Huang Y, Lv C, Wang Y, Wu D, Sun C, Jing M, Yu Y. Placebo Response Rates in Acupuncture Therapy Trials for Functional Dyspepsia: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Gastroenterol. 2022;56(4):299-310.(PMID 35180148/DOI 10.1097/MCG.0000000000001679/PMC8900996)偽鍼群だけを集め、偽鍼を受けた FD 患者の変化量を統合した系統的レビュー。13 RCT を採用し、8試験をメタ解析(PROSPERO CRD42021233858)。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。Results(抄録の逐語・該当部分)=”Regarding subjective outcomes, the combined effect of sham MA on FD symptoms was [SMD=-0.42, 95% CI (-0.72, -0.12); P=0.005], whereas sham EA treatment was [SMD=-0.54, 95% CI (-0.81, -0.27); P<0.001]. The combined effect on FD quality of life of post-sham MA group was [SMD=-0.32, 95% CI (-0.52, -0.12); P=0.002]."(当サイトによる訳:主観的なアウトカムについて、偽の手技鍼の FD 症状への統合効果は〈SMD −0.42、95%CI −0.72〜−0.12、P=0.005〉、偽の電気鍼では〈SMD −0.54、−0.81〜−0.27、P<0.001〉だった。偽の手技鍼を受けた群の FD の生活の質への統合効果は〈SMD −0.32、−0.52〜−0.12、P=0.002〉だった。)Conclusions(節の全文・1文の逐語)=”Sham MA and sham EA remarkably improve symptoms and quality of life scores of FD without influencing objective outcomes, highlighting the significance of sham controls in acupuncture therapy clinical trials.”(当サイトによる訳:偽の手技鍼と偽の電気鍼は、客観的アウトカムに影響を与えることなく、FD の症状と生活の質のスコアを著しく改善し、鍼治療の臨床試験における偽の対照の重要性を浮き彫りにしている。)
  • 🛑 評釈:①これは偽鍼群の群内の前後変化の統合で、鍼との群間比較ではありません。「偽鍼でも同じだけ効く」とは書けません。v3 では、この点が見出しだけを読んだ人にも伝わるよう、H2⑤の見出しを「偽鍼を受けた群でも、症状の点数は良くなっている」に変えています。②客観的アウトカムは胃電図の指標(dominant frequency・dominant power)で、いずれも有意ではありませんでした。⚠️ ただし dominant frequency の数値は、信頼区間と P 値の釣り合いが原文の表記では合わないため、当サイトは数値を引用していません。③13試験のうちメタ解析に入ったのは8試験で、除いた5試験の理由は抄録にありません。
  • Zhou W, Su J, Zhang H. Efficacy and Safety of Acupuncture for the Treatment of Functional Dyspepsia: Meta-Analysis. J Altern Complement Med. 2016;22(5):380-389.(PMID 27028618/DOI 10.1089/acm.2014.0400)24論文・3,097名・2014年4月まで。抄録の逐語(該当部分)=”However, acupuncture failed to increase plasma motilin concentration (SMD, 0.67; 95% CI, -0.07 to 1.42; p = 0.08).”(当サイトによる訳:しかし、鍼は血漿モチリン濃度を増加させなかった〈SMD 0.67、95%CI −0.07〜1.42、p=0.08〉。)結論は1文で”Acupuncture appears to be efficacious in relieving FD symptoms and improving quality of life.”(当サイトによる訳:鍼は FD の症状を緩和し、生活の質を改善するのに有効であるようにみえる。)🛑 評釈:症状は改善したが、血中のモチリンは増えなかったという組み合わせです。当サイトは機序(胃の動きが良くなるから効く)を断定しません。この統合は表題に placebo-controlled とありますが、対照の内実は抄録から確定できないため「24試験すべてが偽鍼対照」とは書きません。異質性(I²)も抄録にないため、症状・生活の質の効果量は単独で出していません。
エビデンスボックス⑦ 施術者の関わり方と期待度の一次資料(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Ko SJ, Kim K, Kaptchuk TJ, Napadow V, Kuo B, Gerber J, Ha NY, Lee J, Kelley JM, Park JW, Kim J. Influence of patient-clinician relationship style on acupuncture outcomes in functional dyspepsia: A multi-site randomized controlled trial in Korea. Patient Educ Couns. 2024;121:108133.(PMID 38199174/DOI 10.1016/j.pec.2023.108133)韓国・多施設。FD の73名を「同一の鍼治療+患者中心の手厚いケア」と「同一の鍼治療+疾患中心の限定的なケア」に無作為化。主要アウトカムは韓国語版 Nepean Dyspepsia Index(NDI-K)、副次に CARE(共感)尺度。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。追跡期間は抄録にありません。
  • Results(抄録の逐語・全文)=”Both groups showed improvement in NDI-K. Patient-centered augmented acupuncture produced less effective symptom improvement compared to disease-centered limited acupuncture (NDI-K sum score and frequency; P = 0.008 and P = 0.037 respectively). CARE scores were higher for the augmented versus limited group (P = 0.001), supporting the fidelity of the experimentally controlled patient/clinician relationship. There were no significant differences between the groups in any of other secondary outcomes.”(当サイトによる訳:両群とも NDI-K の改善を示した。患者中心の手厚い鍼は、疾患中心の限定的な鍼と比べて、症状の改善において効果が小さかった〈NDI-K の合計スコアと頻度。それぞれ P=0.008 と P=0.037〉。CARE のスコアは限定的な群より手厚い群で高く〈P=0.001〉、実験的に統制された患者・施術者関係の忠実性を裏づけていた。他のいずれの副次アウトカムにも、群間の有意差はなかった。)🛑 v3 での是正:Results の1文目「両群とも NDI-K の改善を示した」を、本文と H3 の見出しにも戻しました。v2 は2文目だけを本文と見出しに置いており、肯定側が落ちていました(図解ゲート 必-5)。
  • Conclusion(節の全文・3文の逐語)=”Patients demonstrated greater improvement following acupuncture conducted with a more neutral, “disease-centered” style of relationship. This result is counter to similar research conducted in Western countries and suggests that cultural factors can significantly shape optimum styles of acupuncture therapy.”/Practice implications(1文)=”Clinicians should consider cultural differences when applying acupuncture therapy.”(当サイトによる訳・結論の3文:患者は、より中立的な「疾患中心」のスタイルの関係のもとで行われた鍼のあとに、より大きな改善を示した。/この結果は、西洋諸国で行われた類似の研究とは逆であり、文化的な要因が、鍼治療の最適なスタイルを大きく形づくりうることを示唆している。/〔Practice implications〕臨床家は、鍼治療を行う際に文化的な差異を考慮すべきである。)🛑 v2 で本文の分量を落とすため、逐語と訳の全文をここに置いています(本文には2文目の訳を短く引いています)。
  • 🛑 評釈:①「共感的に接するほど効果が上がる」という一般論は、この試験では成り立ちませんでした。当サイトはこの一般論を書きません。②同時に、著者が書いたのは「文化的な要因が関わりうる」までです。「日本では手厚いケアが逆効果」と読み替えません。韓国で行われた試験です。③73名・主要アウトカム1つの試験で、追跡期間は抄録にありません。④CARE 尺度で介入の忠実性が確認されている点は、この試験の強みです。⑤著者には、当サイトが文脈効果の記事で扱った研究者(Kaptchuk TJ・Kelley JM)が含まれます(書誌上の事実のみ。立場や意図は書きません)。
  • Qi LY, Yan SY, Yang JW, Liu CZ. The impact of expectancy on the efficacy of acupuncture treatment for postprandial distress syndrome: Secondary analysis of a randomized clinical trial. Neurogastroenterol Motil. 2022;34(12):e14447.(PMID 35946062/DOI 10.1111/nmo.14447)278名の試験の事後の二次解析。期待度の評価によって高期待群(HE)と低期待群(LE)に分けた。抄録の逐語(該当部分)=”For the acupuncture group, the response rate was 84.5% in the HE group and 78.8% in the LE group (p = 0.458), and the elimination rate was 32.1% in the HE group and 21.2% in the LE group (p = 0.241). For the sham acupuncture group, the response rate at week 4 was 52.3% in the HE group and 53.1% in the LE group (p = 0.936), and the elimination rate at week 4 was 23.1% in the HE group and 10.6% in the LE group (p = 0.090).”/Conclusion(全1文)=”In this study, the response rate and elimination rate were higher in the high-expectancy group, but no conclusive evidence was found for an association between expectancy and the efficacy of acupuncture and sham acupuncture.”(当サイトによる訳:本研究では、反応率と消失率は高期待群のほうが高かったが、期待度と、鍼および偽鍼の有効性との関連について、決定的な証拠は見いだされなかった。)🛑 評釈:無作為化した群ではなく、期待度の評価で事後に分け直した比較です。当サイトは「鍼の効果は期待では説明できない」とも「期待で説明できる」とも書きません。結論の前半(高期待群のほうが数値が高い)と後半(決定的な証拠はない)を、両方書いています。偽鍼群の消失率の p=0.090 は境界的な値です。🛑 v2 で本文の分量を落とすため、数値と「事後に分け直した比較である」という作法をここに集約しました。v3 では本文をさらに1文に圧縮していますが、「事後の分け直し」と「決定的な証拠はない」は本文に残しています。

薬に上乗せするとどうなるか——対象は「薬が効かなかった方」だった

鍼灸院に来る FD の患者さんは、すでに薬を飲んでいる方が多いですよね。

その状況に近い試験がいくつかあります。中心になるのは香港の132名の試験で、対象はプロトンポンプ阻害薬・消化管運動改善薬・H2拮抗薬に抵抗性の PDS 型 FDでした。

両群とも症状に応じて制酸薬を服用し、治療群だけに10週間で20回の電気鍼を追加しました。

12週の時点で「十分な症状の緩和」を達成した人の割合は、治療群のほうが高いと報告されています。

必要治療数(NNT)は 2.36。約2.4人に鍼を足すと1人が利益を得る計算になる指標です。

数字だけ見ると強い結果に見えます。ただし読み方に条件が3つ付きます。

1つ目。対象は薬が効かなかった方です。初診の患者さん全般には広げられません。

2つ目。偽鍼を置いていないので、患者さんはどちらの群かを知っています。施術の時間と注目が統制されていません。「通常のケアに足す」形の比較が何を測るかは上乗せ試験(add-onデザイン)は何を測るか|通常ケア+鍼に譲ります。

3つ目。両群の反応率の実数が抄録になく、NNT だけが出ています。NNT を単独で大きく見せない、というのが当サイトの扱いです。

22試験をまとめたレビューの結論は、3文あります

韓国のグループが、西洋薬への上乗せの試験22本をまとめています。

症状スコアは、1試験を除いて上乗せ群のほうが有意に改善していました。3〜6か月の追跡での再発率も、上乗せ群のほうが低いと報告されています。

いっぽうで、グレリンやガストリンといった指標は結果が一貫していません。

組み入れた試験の方法論の質は全般に低く、主要な所見のエビデンスの質も非常に低い〜中等度です。有害事象の発生に、両群の差はありませんでした。

結論は3文あります。1文目は「限られたエビデンスは、鍼が、従来の西洋医学的治療と組み合わせて FD の治療を改善する可能性をもつことを示唆している」(当サイトによる訳)。

第2・第3文は、組み入れた研究の方法論的な質と主要な所見のエビデンスの質が全般に低かったこと、厳密な方法論による RCT が必要であることを書いています。1文目だけを引くと意味が変わります(3文の原文と訳はボックス⑧)。

もう1本、韓国の24名の実行可能性試験があります。通常のケアに鍼(舎岩鍼)を足した設計です。

4週の時点では主要な症状指標に群間差がなく、差が出たのは8週と12週の追跡時でした。なお舎岩鍼は韓国の特定の流派で、日本で一般に行われている鍼と同じものとして読まないでください(詳細はボックス⑧)。

② 「病院のお薬と、鍼を一緒にやっても大丈夫ですか?」と聞かれたとき

「お薬は続けてください。やめるかどうかは、私ではなく主治医に相談してくださいね。

お薬に鍼を足した研究はいくつかあります。香港の研究では、薬が効きにくかった方に電気鍼を足すと、症状の緩和が得られた方が多かったと報告されています。ただ、見た目を似せただけの鍼を置いた比較ではないので、鍼そのものの働きと、通う時間や関わりの影響を分けられていません。

韓国の小さな研究では、4週の時点では差が出ず、そのあとの時点で差が出ていました。効き方も人によって違います。様子を見ながら進めましょう。」

エビデンスボックス⑧ 薬・通常のケアへの上乗せの原文と限界(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Chung VC, Wong CH, Wu IX, Ching JY, Cheung WK, Yip BH, Chan KL, Cheong PK, Wu JC. Electroacupuncture plus on-demand gastrocaine for refractory functional dyspepsia: Pragmatic randomized trial. J Gastroenterol Hepatol. 2019;34(12):2077-2085.(PMID 31117149/DOI 10.1111/jgh.14737・香港中文大学)単施設・評価者盲検・2群の実践的 RCT。対象=H. pylori 陰性で、プロトンポンプ阻害薬・消化管運動改善薬・H2拮抗薬に抵抗性の PDS 型 FD。両群とも12週間、症状に応じて gastrocaine(制酸薬)を服用し、治療群にだけ10週で20回の電気鍼を追加。主要アウトカム=12週時点で「十分な症状の緩和」を達成した患者の割合の群間差(ChiCTR-IPC-15007109)。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。Results(抄録の逐語・該当部分)=”Of 132 participants randomly assigned to EA plus on-demand gastrocaine (n = 66) or on-demand gastrocaine alone (n = 66), 125 (94.7%) completed all follow-up at 12 weeks. The EA group had a compliance rate 97.7%. They had a significantly higher likelihood in achieving adequate symptom relief at 12 weeks, with a clinically relevant number needed to treat (NNT) value of 2.36 (95% CI: 1.74, 3.64).”/Conclusion(全1文)=”For refractory FD, EA provides significant, clinically relevant symptom relief when added to on-demand gastrocaine (ChiCTR-IPC-15007109).”(当サイトによる訳:電気鍼+オンデマンドの gastrocaine〈66名〉またはオンデマンドの gastrocaine 単独〈66名〉に無作為に割り付けられた132名のうち、125名〈94.7%〉が12週時点の追跡をすべて完了した。電気鍼群の遵守率は97.7%だった。同群は12週時点で十分な症状の緩和を達成する可能性が有意に高く、臨床的に意味のある必要治療数〈NNT〉は 2.36〈95%CI 1.74〜3.64〉だった。/難治性の FD において、電気鍼はオンデマンドの gastrocaine に追加されたとき、有意かつ臨床的に意味のある症状の緩和をもたらす。)
  • 🛑 評釈:①対象は薬に抵抗性の PDS 型です。初診の患者さんや FD 全般に広げられません。②偽鍼はなく、患者は非盲検(評価者盲検のみ)で、施術の時間と注目が統制されていません。③両群の反応率の実数が抄録になく、NNT だけが示されています。当サイトは NNT を単独で強調しません。④gastrocaine は香港で使われる制酸薬の商品名で、日本の薬と対応づけません。薬の名前や治療の順序は、鍼灸師が語る範囲ではありません(v3 では本文の「4つ目」の条件を削り、この評釈と「書かなかったこと」に残しています)。⑤上乗せの相手は両群が症状に応じて飲む制酸薬で、抵抗性だった薬に鍼を足した設計ではありません。⑥”Adverse events were minimal and nonsignificant.” とありますが、件数が書かれていません。⑦追跡完了94.7%・遵守率97.7%は、この試験の強い点です。
  • Kwon CY, Ko SJ, Lee B, Cha JM, Yoon JY, Park JW. Acupuncture as an Add-On Treatment for Functional Dyspepsia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Med (Lausanne). 2021;8:682783.(PMID 34381798/DOI 10.3389/fmed.2021.682783/PMC8350114)22 RCT・2020年12月18日まで・12言語のデータベース。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。Results(節の全文の逐語)=”A total of 22 RCTs were included. The total and individual FD symptom scores were significantly improved in the acupuncture combined with WM groups compared with the WM alone groups, except for in one study. The Nepean dyspepsia index score and total effective rate mostly improved significantly in the acupuncture group, regardless of the WM used and acupuncture type. FD-related biomarkers, such as ghrelin and gastrin levels, showed mixed results. The acupuncture group showed a significantly lower recurrence rate after 3-6 months of follow-up than the WM alone group. There were no differences in the incidence of adverse events between the two groups. The included studies generally had low methodological quality. The QoE for the main findings was generally very low to moderate.”(当サイトによる訳=22の RCT を採用した。FD 症状スコアの合計と個別の項目は、1つの研究を除いて、鍼+西洋薬の群で西洋薬単独の群より有意に改善した。Nepean ディスペプシア指数のスコアと総有効率は、用いられた西洋薬や鍼の種類にかかわらず、鍼群で多くが有意に改善した。グレリンやガストリンの値といった FD 関連のバイオマーカーは、結果がまちまちだった。鍼群は3〜6か月の追跡後の再発率が、西洋薬単独の群より有意に低かった。両群のあいだで有害事象の発生率に差はなかった。組み入れた研究は、全般に方法論的な質が低かった。主要な所見のエビデンスの質は、全般に非常に低い〜中等度だった。)
  • Conclusion(節の全文・3文の逐語)=”Limited evidence suggests that acupuncture has the potential to improve FD treatment in combination with conventional WM. Furthermore, the methodological quality of the included studies and QoE of the main findings were generally low. Therefore, RCTs with a rigorous methodology, including sham acupuncture and multiethnic subjects, should be performed.”(当サイトによる訳・3文:限られたエビデンスは、鍼が、従来の西洋医学的治療と組み合わせて FD の治療を改善する可能性をもつことを示唆している。/さらに、組み入れた研究の方法論的な質と、主要な所見のエビデンスの質は、全般に低かった。/したがって、偽鍼と多民族の対象を含む、厳密な方法論による RCT が行われるべきである。)🛑 v2 で本文の分量を落とすため、3文の逐語と訳をここに置いています(本文には1文目の訳を引き、第2・第3文の内容を要約しました)。
  • 🛑 評釈:①結論は3文です。1文目の「限られたエビデンス」「可能性をもつ」を弱めず、2文目・3文目とセットで読みます。②「1つの研究を除いて」という例外を落としません。③バイオマーカーの結果が一貫していないことは、機序を断定しないための材料です。④上乗せの相手は conventional Western medication で、薬の中身は抄録から確定できません。⑤当サイトは「薬に鍼を足すと効果が上がる」と断定しません。
  • Lee B, Kwon OJ, Kim JH, Kang JW, Kim TH, Lee S, Kim J, Kim AR, Jung SY, Park HJ, Choi SM. Saam Acupuncture for Treating Functional Dyspepsia: A Feasibility Randomized Controlled Trial. Evid Based Complement Alternat Med. 2022;2022:2581041.(PMID 35815291/DOI 10.1155/2022/2581041/PMC9259230・韓国韓医学研究院)Rome III の FD の24名を「舎岩鍼+通常ケア」と「通常ケア」に無作為化(週3回×4週・評価者盲検・CRIS-KCT0000164)。確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。抄録の逐語(該当部分)=”Although there was no significant difference between the two groups in the dyspepsia symptoms as measured by GIS, VAS, and PGA at Week 4, significant differences were found between the two groups at the follow-up assessments (Weeks 8 and 12).” / “The quality of life measured by FD-QoL and EQ-5D improved only in the Saam acupuncture group, although there were no significant differences between the two groups.”(当サイトによる訳:4週時点で GIS・VAS・PGA で測ったディスペプシア症状に両群の有意差はなかったが、追跡評価〈8週と12週〉では両群に有意差が認められた。/FD-QoL と EQ-5D で測った生活の質は舎岩鍼群でのみ改善したが、両群のあいだに有意差はなかった。)結論の1文目=”Saam acupuncture can be a feasible, preliminarily effective, and safe treatment for FD.”、2文目=”Further confirmatory trials with a larger sample size are needed to confirm its effectiveness and safety.”🛑 評釈:24名の実行可能性試験で、効果の根拠にはなりません。著者自身が preliminarily effective(予備的に有効)と書き、確認のための試験が必要だとしています。募集率60%・完了率79.2%。舎岩鍼は韓国の特定の流派で、日本の一般的な鍼と同一視しません。”No adverse events related to Saam acupuncture were reported.” は、記録の方法が抄録に書かれていません。生活の質が鍼群の中でだけ改善し群間差がなかったことも、v2 では本文からここへ移しています。

ガイドラインは、機能性ディスペプシアの鍼灸を「今後の研究課題」に置いている

日本には、日本消化器病学会の『機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)』があります。

鍼灸の設問はあります。ただし推奨を出す設問(CQ)ではなく、「今後の研究課題(FRQ)」の枠に置かれています。

設問文は「FD の治療として,鍼灸療法は有用か?」(FRQ 4-2)です。

FRQ は、ガイドライン自身が「CQ として取り上げるにはデータが不足しているものの今後の重要課題」と定義している分類です(定義の逐語はボックス⑨)。

回答は2行。推奨の強さも、エビデンスレベルも付いていません

回答の囲みは次の2行です。日本語で書かれた原文をそのまま引きます(当サイトの訳ではありません)。

出所:機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)(日本消化器病学会 編集・発行、2021)FRQ 4-2 の回答(全文)。書誌の全体はエビデンスボックス⑨。原文が日本語のため、当サイトによる訳ではありません

鍼(はり)治療は有用であるとの報告がある.

灸治療については,検討が不十分であり,その効果は不明である.

大事なのは、ここに推奨の強さ・エビデンスレベル・合意率の表記が付いていないことです(同じガイドラインの CQ の回答には付きます)。

ですから「日本消化器病学会のガイドラインが鍼灸を推奨している」とは書けません。逆に「日本のガイドラインは鍼灸に触れていない」も誤りです。

そして、鍼と灸をまとめて「鍼灸」と書かないでください。

灸は別の行で「検討が不十分であり,その効果は不明である」と書かれています。

日本語版の解説は、英語版より否定側が厚い

このガイドラインは英語版も出ていますが、解説は日本語版のほうが詳しく、否定側の記述が厚いです。

薬剤との比較は、当サイトが読んだコクランの原文と同じ向きです。

偽鍼との比較についても、症状は改善したと認めたうえで、患者ごとの症状のばらつきの大きさを理由に、エビデンスの質は低いという評価にとどめています(当サイトによる要約)。

メタ解析全体への評価はこう続きます。

出所:同ガイドライン FRQ 4-2 の解説(該当箇所)。原文が日本語のため、当サイトによる訳ではありません

メタアナリシスで検討された RCT のほとんどが,各群数十例の患者数にとどまる中国からの報告であり,英文での報告がなされていないものも多く,詳細な内容の検討は困難であった.したがって,エビデンスレベルの高い検討とは言い難い.

灸はさらに込み入っています。

ドンペリドンと比べたメタ解析では効果を示さず、ネットワークメタ解析では有意に効果を示したと報告されている。2つのメタ解析で結果が逆です。

どちらの RCT も中国からの報告で、英文での報告がなく詳細な検討は困難だった、とも書かれています。

二次資料の要約と、一次資料の原文が食い違っている箇所があります

英語版の解説は、2014年のコクランについて、鍼が FD の治療として「ある程度の有効性」をもつことを見いだしたが、レビューに含まれた臨床研究のエビデンスレベルは大部分が低かった、と書いています。

コクラン自身の結論は「依然として分かっていない」でした。

つまり二次資料の要約のほうが、原文より踏み込んでいます。当サイトは片方に寄せず、両方を並べます。

他の国のガイドラインは、どうか

ここは確認状況をそのまま開示します。「推奨していない」と「確認できていない」は別のものです。

日本以外は、当サイトが本文を確認できていないか(米国・カナダの共同ガイドライン2017年・英国 NICE の CG184)、そもそも治療の推奨を出す文書ではありません(Rome IV)。

ですから「欧米のガイドラインは鍼を推奨していない」とは書けません(内訳はボックス⑩)。

日本のガイドラインは、設問はあるけれども、推奨ではなく研究課題。これが FD の現在地です。

エビデンスボックス⑨ 日本消化器病学会 FD ガイドライン2021(日本語版・英語版)の該当箇所(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 機能性消化管疾患診療ガイドライン-機能性ディスペプシア(FD)委員会 編. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版). 日本消化器病学会 編集・発行(制作 南江堂); 2021年4月30日改訂第2版発行.(学会公開 PDF=https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/fd2021r_.pdf )確認の範囲=編集長が学会公開 PDF を取得し、FRQ 4-2 のページ・作成方法の章・内視鏡の CQ のページ・奥付を確認(2026-09-21)。本文中のアラビア数字は取得時に脱落するため、この文書から数値は読み取っていません。試験数・人数・年の数値は、すべて原著論文と英語版から取っています。
  • 設問(逐語)=「FD の治療として,鍼灸療法は有用か?」(FRQ 4-2)。FRQ の定義(作成方法の章の逐語)=「ガイドラインの構成を臨床疑問(clinical question:CQ),および背景疑問(background question:BQ),CQ として取り上げるにはデータが不足しているものの今後の重要課題と考えられる future research question(FRQ)に分類し,このうち CQ および FRQ ついてはキーワードを抽出して学術論文を収集した.」(⚠️「CQ および FRQ ついては」は原文のままです)🛑 v2 で本文の分量を落とすため、この逐語をここに置き、本文は要約の1文にしています。
  • 回答(囲み・逐語・全文)=「鍼(はり)治療は有用であるとの報告がある.」「灸治療については,検討が不十分であり,その効果は不明である.」🛑 この回答に、推奨の強さ・エビデンスレベル・合意率の表記は付いていません。同じ文書の CQ の回答には付きます。
  • 解説(薬物治療との比較・当サイトによる要約)=解説は、薬物治療(シサプリド・イトプリド・ドンペリドン)と比べた RCT の解析で、FD 症状の程度・頻度のいずれにも有意な効果を認めなかったと書いています。⚠️ 逐語ではなく当サイトの要約です(著作権法32条の範囲を必要最小限にするため。v3 で逐語から言い換えに落としました)。当サイトが読んだ2014年のコクランの原文と同じ向きです。
  • 解説(偽鍼との比較・当サイトによる要約)=解説は、sham 治療と比べた RCT の解析について、FD 症状の改善は認めたうえで、患者ごとの症状のばらつきが大きいことを理由に、質の低いエビデンスにとどまると評価しています。🛑 肯定側(症状の改善を認めた)と否定側(質は低い)の両方が1文に入っているので、要約でも両方を残しています。⚠️ v3 で逐語から言い換えに落としました。
  • 解説(メタ解析全体への評価・逐語・2文)=「メタアナリシスで検討された RCT のほとんどが,各群数十例の患者数にとどまる中国からの報告であり,英文での報告がなされていないものも多く,詳細な内容の検討は困難であった.したがって,エビデンスレベルの高い検討とは言い難い.」🛑 この2文は、理由の節(中国からの小規模試験・英文報告なし)と結論を切り離すと当サイトの評価が裏づけを失うため、まとめて逐語で残しています。
  • 日本の研究についての記述(逐語)=「国内から,鍼治療の有効性を示した RCT 研究は認めなかった.」続く1文は、国内で一定数以上の症例を対象とした前向き研究による確認が必要だという内容です(当サイトによる要約)。灸についての記述(当サイトによる要約)=解説は、ドンペリドンと比べたメタ解析では灸は効果を示さず、ネットワークメタ解析では有意に効果を示したと報告されている、と2つの結果を並べて書いています。あわせて、どちらの RCT も中国からの報告で英文の報告がなく、詳細な検討は困難だったとも書いています。🛑 評釈:2つのメタ解析で結果が逆です。当サイトは片方だけを書きません。⚠️ v3 で灸の3文を逐語から言い換えに落としました(内容は落としていません)。
  • この節が挙げている参考文献は3件で、いずれも当サイトが一次資料を確認しているもの(2014年のコクラン/Zhou W 2016/Ho RST 2017)です。⚠️ 本文の参照記号は3件より多く、取得時に番号が脱落しているため対応づけができません。当サイトは「ガイドラインが○○を引用している」と個別に書きません。
  • 奥付と利用条件(当サイトによる要約)=発行は一般財団法人日本消化器病学会、制作は株式会社南江堂です。奥付には転載・複写の際にあらかじめ許諾を求めるよう求める1文があります。🛑 評釈(扱い):当サイトは表・図・フローチャート・回答の一式を再現していません。引用は著作権法32条の範囲で、設問文・回答の2行・解説の該当文に限り、それ以外は言い換えで紹介しています。なお AI の利用制限に関する記載は、この文書の全文検索では見つかりませんでした。
  • 英語版:Miwa H, Nagahara A, Asakawa A, ほか. Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021. J Gastroenterol. 2022;57(2):47-61.(PMID 35061057/DOI 10.1007/s00535-021-01843-7/PMC8831363・CC BY 4.0)Future research themes の節のステートメント(逐語)=”Some studies have found acupuncture to be an effective treatment for FD.” / “The efficacy of moxibustion as a treatment for FD is unknown because of little evidence.”(当サイトによる訳:鍼が FD の有効な治療であることを見いだした研究がいくつかある。/FD の治療としての灸の有効性は、エビデンスが少ないため不明である。)🛑 この2行にも、推奨の強さ・エビデンスレベルの角括弧は付いていません。同じ論文の他の節のステートメントには付きます。日本語版の回答2行と内容は一致しています。
  • 英語版の解説(段落の逐語・全文)=”The Cochrane Database Systematic Review in 2014 found that acupuncture had some efficacy as a treatment for FD, but the evidence level of the clinical studies in the review was mostly low (Table 3) [83]. However, in 2020, a randomized, controlled trial in over 200 patients with FD found that acupuncture showed therapeutic efficacy compared with sham acupuncture [84]. Although acupuncture and moxibustion are both widely practiced in Japan, no clinical studies with a high evidence level of either of them as a treatment for FD have been reported from Japan.”(当サイトによる訳:2014年のコクラン・データベース・システマティックレビューは、鍼が FD の治療としてある程度の有効性をもつことを見いだしたが、そのレビューに含まれた臨床研究のエビデンスレベルは大部分が低かった〈表3〉[83]。しかし2020年には、FD の患者200名超を対象とした無作為化比較試験が、鍼が偽鍼と比べて治療的な有効性を示すことを見いだした[84]。鍼と灸はいずれも日本で広く行われているが、FD の治療としての、どちらについても高いエビデンスレベルの臨床研究は日本から報告されていない。)🛑 評釈:had some efficacy(ある程度の有効性があった)は、コクラン自身の結論(It remains unknown=依然として分かっていない)より踏み込んだ要約です。当サイトは二次資料の要約と一次資料の原文を並べて書きます。文献83・84の書誌は取得できていないため、当サイトは「ガイドラインが特定の論文を引いている」と断定していません。
エビデンスボックス⑩ 他の国のガイドラインと分類の文書、当サイトの確認状況(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Moayyedi P, Lacy BE, Andrews CN, Enns RA, Howden CW, Vakil N. ACG and CAG Clinical Guideline: Management of Dyspepsia. Am J Gastroenterol. 2017;112(7):988-1013.(PMID 28631728/DOI 10.1038/ajg.2017.154/訂正=PMID 28762378)確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。本文は出版社サイトが有料(402)で到達できていません。🛑 抄録に acupuncture の語はありません。当サイトは「このガイドラインは鍼を扱っていない/推奨していない」とは書きません。書けるのは「抄録には鍼への言及がなく、本文は当サイトでは確認できていない」までです。⚠️ この文書は内視鏡・ピロリ菌・薬物治療の順序について推奨を出していますが、治療の順序は医師の判断であり、当サイトは本文で扱いません。
  • National Institute for Health and Care Excellence. Gastro-oesophageal reflux disease and dyspepsia in adults: investigation and management. Clinical guideline [CG184].(NCBI Bookshelf NBK552570/2019年のサーベイランス=NBK550919)確認の範囲=到達できず(3回試して、いずれも認証画面)。🛑 鍼の記載の有無を確認できていません。当サイトは「NICE はディスペプシアで鍼に触れていない」とは書きません。⚠️ 当サイトの過敏性腸症候群の記事で扱った NICE CG61(IBS)とは別の文書です。IBS の記述を FD に持ち込みません。
  • Rome IV/その改訂版:書誌はエビデンスボックス①。🛑 いずれもFD の定義と分類の文書で、治療の推奨を出す文書ではありません。当サイトは「鍼に触れていない」という書き方をしません。
  • 🛑 評釈(4通りに分けた整理):①設問として立っているが推奨ではない(日本消化器病学会 2021=FRQ)②抄録の範囲では扱いが確認できない(2017年の米国・カナダの共同ガイドライン)③本文に到達できず不明(NICE CG184)④そもそも治療の推奨を出す文書ではない(Rome IV とその改訂版)。②と③は「推奨していない」という意味ではありません。当サイトは「欧米のガイドラインは鍼を推奨していない」とまとめません。⚠️ v3 では本文の分量を落とすため、本文をこの4通りの要約2文にとどめ、内訳をここに残しました。

現場でどこまで言えるか——受診をすすめる目安と、上腹部に刺すことの注意

鍼灸師は診断を行う立場にありません。FD の定義そのものが「通常の臨床評価で説明がつかない」ことを条件にしています。

ですからこの章は「FD かどうかを判断する」話ではなく、施術より先に、受診をすすめる場面の整理です。

施術より先に、受診をすすめる場面

日本消化器病学会のガイドライン(2021年)は、器質的疾患(検査で形の異常が見つかる病気)を疑うべき徴候を1文で列挙しています。この9項目が、ガイドラインでアラームサイン(警告徴候)と呼ばれるものです。

以下はその9項目を、当サイトが「受診をすすめる場面」に置き換えたものです。医師が検査の要否を判断する基準ではありません。

高齢になってから、新しく症状が出てきた。(「高齢での新規症状発現」)施術より先に、受診をすすめます。

思い当たる理由のない体重の減少がある/嘔吐をくり返している/出血がある。(「体重減少」「再発性の嘔吐」「出血」)施術せず、受診をすすめます。

飲み込みにくい/飲み込むときに痛みがある。(「嚥下障害」「嚥下痛」)施術せず、受診をすすめます。

お腹にしこりのようなものがある(ご本人が気づいた場合も、施術中に気づいた場合も)/発熱がある。(「腹部腫瘤」「発熱」)施術を続けず、受診をすすめます。

ご家族に、食道がんや胃がんの方がいる。(「食道癌や胃癌の家族歴」)まだ医療機関で相談していなければ、先に受診をすすめます。

すでに FD と言われている方でも、これらが新しく出てきたら主治医への相談をすすめてください。

ただし、単純化はしないでください。

米国・カナダの共同ガイドライン(2017年)は、若年者では警告徴候があっても自動的に内視鏡に進むべきではなく、症例ごとに検討すべきだと書いています。検査の要否は医師が判断します。鍼灸師の側の線引きは「受診をすすめる」で閉じてください。

そして、この章でいちばん大事な1文です。ガイドライン自身がこう書いています。

出所:同ガイドライン、上部消化管内視鏡検査の CQ の解説(該当箇所)。原文が日本語のため、当サイトによる訳ではありません

FD 患者の多くがアラームサインを呈しているが,それぞれのアラームサインに関しては FD 患者と器質的疾患を有する患者との存在率に差がないという報告もあるため,あくまでも器質的疾患を考慮する場合の目安と考えるべきである.

読み方は両側です。警告徴候があっても器質的疾患とは限らず、当てはまらないからといって器質的疾患が無いとも言えません。

迷ったら、受診をすすめる側に倒してください。

③ 胃の不調の相談を受けて、施術の前に確認するとき

「お腹のこと、話してくださってありがとうございます。いくつか確認させてください。体重が、思い当たる理由なく減っていませんか。」

(答えを待ってから)「吐くことがくり返しありませんか。」

(飲み込みにくさ・飲み込むときの痛み・お腹のしこり・発熱・ご家族の食道や胃のご病気も、同じように1つずつ確認します)

「胃の症状の陰に別の病気が隠れていることもあって、その判断は私にはできません。まだ病院で相談していなければ、先に医療機関で相談してみてください。鍼をどうするかは、そのあと一緒に考えましょう。

逆に、いま挙げたものが当てはまらなくても、それで安心と決まるわけではありません。気になることが出てきたら、そのつど教えてください。」

上腹部に刺すことの注意——「危険」でも「安全」でもなく、深さと部位の管理

FD で使われる経穴には、中脘が入ります。

278名の試験の二次解析にも、日本語の文献レビューが挙げる頻用経穴にも出てきます。上腹部に刺すことが前提の疾患です。

そのうえで、報告されている合併症を見ておきます。

いちばん具体的な症例報告は、2023年の肝損傷による急性腹腔内出血です。著者自身が「鍼による経皮的な肝損傷の最初の報告例」と書いています。きわめてまれだという意味でもあります。

そのほかに、2025年に肝破裂の報告があります。学術誌の Letter として出た症例報告で、抄録がなく、当サイトは中身を確認していません。

肝の損傷のほかに、感染性の合併症や血管の損傷の報告もありますが、こちらも当サイトは本文を確認できていません。

部位は違いますが、気胸の報告もあります。単一施設の症例集積(14例)と文献レビューがあり、受診した症例を集めたものなので分母がなく、発生率としては使えません(数値と、死亡例が別の11例の話であることはボックス⑫)。肩まわりの刺鍼と気胸は五十肩への鍼|肩関節周囲炎は自然に良くなるのか、鍼で何が変わるのかで扱っています。

これらをどう読むか。

「腹部への刺鍼は危険」とも「安全」とも書けません。まれだが報告があり、深さと部位の管理が要る——ここで閉じるのが正確です。

なお当サイトは、刺鍼深度や手技の処方を書きません。深さの基準は、ご自身が依拠している資料でご確認ください(『鍼灸安全対策ガイドライン2025』に上腹部・季肋部の記述があるかは、当サイトでは未確認です)。

「有害事象の報告なし」は、「起きなかった」ではありません

FD の領域では、この読み方がとくに効きます。

2014年のコクランは、7試験のうち3つの比較で有害事象のデータがそもそも報告されていないと書いています。

2015年の統合では、有害事象を報告したのは20研究のうち2試験だけでした。

香港の132名の試験、韓国の24名の試験、香港のオーバービューは、いずれも件数を書いていません。

数値として使えるのは、2026年の更新の1つだけです。

偽鍼と比べて有害事象の相対危険は 1.15(0.63〜2.09)。「増えていない」までで、「鍼のほうが少ない」とは書けません。点推定は鍼群のほうが多い方向です。

エビデンスボックス⑪ 受診をすすめる目安の一次資料と、扱いの限界(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 日本消化器病学会 FD ガイドライン2021(改訂第2版)の上部消化管内視鏡検査の CQ(書誌はエビデンスボックス⑨)解説の列挙(逐語)=「高齢での新規症状発現,体重減少,再発性の嘔吐,出血,嚥下障害,嚥下痛,腹部腫瘤,発熱,食道癌や胃癌の家族歴といったことが器質的疾患の存在を疑うべき徴候となる.」限界の1文(逐語)=「FD 患者の多くがアラームサインを呈しているが,それぞれのアラームサインに関しては FD 患者と器質的疾患を有する患者との存在率に差がないという報告もあるため,あくまでも器質的疾患を考慮する場合の目安と考えるべきである.」(いずれも原文が日本語で、当サイトによる訳ではありません)
  • 回答(当サイトによる要約)=回答は、上部消化管内視鏡検査は FD の診断に必須ではなく、症状・年齢・病歴・H. pylori 感染の有無・検査歴などの総合的な判断で FD と診断して治療を開始するとしつつ、アラームサイン陽性を含め器質的疾患が疑われた場合には内視鏡検査などの精査を積極的に行うと書いています。🛑 これは医師が検査の要否を判断する文で、鍼灸師の判断基準ではありません。⚠️ v3 では、この回答を逐語から言い換えに落としました(32条の範囲を必要最小限にするため。列挙の1文と限界の1文は逐語のまま残しています)。
  • ✅ 英語版との対応:英語版(PMID 35061057・CC BY 4.0)の Diagnosis の節にも同じ9項目があります(逐語=”New onset of symptoms at an advanced age, weight loss, recurrent vomiting, bleeding, dysphagia, painful swallowing, abdominal mass, fever, and family history of esophageal or gastric cancer should be considered alarm signs for the presence of organic disease.”)。内視鏡についての文(逐語)=”Upper gastrointestinal endoscopy is not required to diagnose FD.” / “However, endoscopy or other investigations should be performed when organic disease is suspected because of a positive alarm sign.”(当サイトによる訳:FD の診断に上部消化管内視鏡検査は必要ではない。/ただし、アラームサインが陽性であることによって器質的疾患が疑われる場合には、内視鏡検査または他の検査を行うべきである。)日英で内容が対応しています。
  • 🛑 評釈(この目安の限界):①この列挙は医師が器質的疾患を考慮するための徴候で、鍼灸師が病名を推定するための道具ではありません。本文では各項目を「受診をすすめる」という行動で閉じています。②貧血を足していません。日本語版・英語版のどちらの列挙にも貧血は入っておらず、入っているのは「出血」です。③年齢の数値は書かれていません(「高齢での新規症状発現」まで)。当サイトは「日本のガイドラインは○歳以上で内視鏡」とは書きません。④「内視鏡は必須ではない」は医師が検査の要否を判断する文です。鍼灸師の判断基準に転用していません。⑤ピロリ菌の検査・除菌には踏み込んでいません。鍼灸師が語る領域ではありません。⑥9項目そのもの・各項目とガイドラインの語の対応・各項目を「受診をすすめる」で閉じる形・章末の「あくまでも目安」の引用は、v3 でも残しています。⑦この9項目に、当サイトは重症度の序列を付けていません。ガイドライン自身が「それぞれのアラームサインに関しては存在率に差がないという報告もある」と書いているためです(この理由で、受診の目安を図解にしていません)。
  • 米国・カナダの共同ガイドライン(2017年)の該当文(書誌はエビデンスボックス⑩)逐語=”Alarm features should not automatically precipitate endoscopy in younger patients but this should be considered on a case-by-case basis.”/”We suggest that patients ≥60 years of age presenting with dyspepsia are investigated with upper gastrointestinal endoscopy to exclude organic pathology. This is a conditional recommendation…”(当サイトによる訳:警告徴候は、より若年の患者において自動的に内視鏡を促すべきではなく、症例ごとに検討すべきである。/ディスペプシアを呈する60歳以上の患者には、器質的な病理を除外するために上部消化管内視鏡検査を行うことを提案する。これは条件付きの推奨である…)🛑 評釈:当サイトは「警告徴候があれば内視鏡が必要」と書きません。年齢の閾値は条件付きの推奨で、しかも医師が検査を判断する話です。鍼灸師の行動は「受診をすすめる」で閉じています。
  • ⚠️ レッドフラッグ一般についての参考文献は、v2 で落としました(編集長判断=鍼以外の領域の資料で、今回のリサーチノートの範囲外)。ただし当サイトは「標準的な警告徴候リスト」が存在するかのようには書きません。本記事が扱っているのは日本消化器病学会のガイドラインが挙げる9項目だけで、網羅的な一覧ではありません。
エビデンスボックス⑫ 上腹部の刺鍼・気胸の報告と、有害事象の記録のされ方(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • Seah EZ. Traditional Chinese Acupuncture Causing Acute Hemoperitoneum from Direct Liver Injury. J Radiol Case Rep. 2023;17(8):15-20.(PMID 37654899/DOI 10.3941/jrcr.v17i8.5100/PMC10435255)抄録の逐語=”We present the first reported case of percutaneous liver injury secondary to acupuncture. We aim to familiarize readers with this rare and as-yet unreported case of intra-abdominal injury related to acupuncture, which is commonly practiced in many countries in Eastern and Southeast Asia.”(当サイトによる訳:我々は、鍼に続発した経皮的な肝損傷の最初の報告例を提示する。東アジア・東南アジアの多くの国で広く行われている鍼に関連した、このまれな、これまで報告のなかった腹腔内損傷について、読者に知っていただくことを目的とする。)確認の範囲=抄録まで(逐語・1経路)。刺鍼部位・深さ・患者背景・転帰は抄録になく、本文は未取得。🛑 評釈:著者自身が「最初の報告例」「まれな」と書いています。当サイトは「腹部への刺鍼は危険」と一般化しません。
  • Zhai H, ほか. Rupture of the liver secondary to acupuncture: a case report. Acupunct Med. 2025;43(5):299-301.(PMID 41045144/DOI 10.1177/09645284251379494・publication type=Letter)PubMed に抄録がありません。🛑 当サイトは存在の事実だけを記録し、症例の中身を書きません。本文では「学術誌の Letter として出た症例報告で、抄録がなく、中身を確認していない」と書いています(⚠️ v2 で「短報」という呼び方をやめました。和文誌の投稿区分名で、Letter と1対1に対応しないためです)。
  • ⚠️ 名前を出していない報告があります:肝の損傷のほかに、鍼・灸に関連した感染性の合併症と血管の損傷の症例報告も存在しますが、当サイトは本文も抄録も取得していません。読んでいない文献の名前を挙げないという当サイトの方針にしたがい、v2 では書誌を落とし、本文では「報告もあるが本文を確認できていない」という形に1文でまとめています(v1 では書誌を挙げていました)。
  • Kameda Y, Yamamoto T, Yoshizawa S, Tanaka S, Arai T, Urata N, Maehara T, Saito A. Acupuncture-related pneumothorax: a 14-case single-center series and a review of the literature. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2026(オンライン先行・2026年9月9日/巻号ページ未確定).(PMID 42714775/DOI 10.1007/s11748-026-02397-2)RESULTS の逐語=”Fourteen patients were identified (median age, 48 years; range 30-73; 10 females). Pneumothorax occurred on the right side in 5 patients, on the left in 7, and bilaterally in 2. Most cases were classified as small pneumothorax according to the British Thoracic Society criteria. Six patients were managed conservatively, six underwent ambulatory drainage, and two required chest tube drainage with hospitalization. One patient presented with hemothorax. No recurrence was observed during follow-up. A literature review identified 11 previously reported cases, including severe and fatal presentations.”(当サイトによる訳:14名が同定された〈年齢中央値48歳、範囲30〜73、女性10名〉。気胸は右5名、左7名、両側2名に生じた。多くは英国胸部学会の基準で小気胸に分類された。6名は保存的に管理され、6名は外来でのドレナージを受け、2名は入院して胸腔ドレーンを必要とした。1名は血胸を呈した。追跡期間中に再発は観察されなかった。文献レビューでは、重症例と死亡例を含む既報の11例が同定された。)🛑 評釈:①単一施設に受診した症例の集積で、分母がありません。発生率としては使えません。②死亡例は文献レビューで同定された11例の話で、この14例ではありません。③抄録の背景にある「鍼は広く行われ、一般に安全と考えられている」という文は著者の前提の記述で、当サイトの結論として引きません。④オンライン先行のため巻号ページは未確定です。⑤気胸は上腹部ではなく胸部の合併症です。v3 では本文を2文に圧縮し、肩まわりの刺鍼と気胸の本体は ID368(五十肩)へ送っています。数値と、分母がないこと・死亡例が別の11例であることは、この項目に残しています。
  • FD で使われる経穴に上腹部が入ることの出所:278名の試験の二次解析(PMID 34085471)の逐語に「中脘(CV 12)」があり、日本語の文献レビュー(藤倉ほか 2024)は頻用経穴として足三里・内関・中脘・公孫を挙げています。🛑 評釈:当サイトは選穴・手技・刺鍼深度の処方を書きません。「上腹部に刺すことが前提の疾患である」という事実だけを、安全性の話につないでいます。⚠️ 『鍼灸安全対策ガイドライン2025』に上腹部・季肋部の刺鍼深度の記述があるかは、本記事の作成時点で当サイトが確認できていません。「記載がない」という意味ではありません。
  • 有害事象の記録のされ方(一覧):2014年のコクラン=3つの比較でデータの報告がない/2015年の統合=20研究中2試験のみが報告/香港の132名の試験=”Adverse events were minimal and nonsignificant.”(件数なし)/韓国の24名の試験=”No adverse events related to Saam acupuncture were reported.”(記録方法が不明)/香港のオーバービュー=”No serious adverse events were reported.”(報告した試験数が不明)/278名の試験と2本のパイロット=重篤な有害事象はなし(軽度の件数は未取得)/2026年の更新=相対危険 1.15(0.63〜2.09)。🛑 評釈:「報告がなかった」は「起きなかった」ではありません。当サイトは「FD への鍼は安全」「副作用はない」と書きません。また、同じ抄録の中で「有害事象の報告はほとんどない」と「薬より安全で副作用が少ない」が同居している統合が1本あり、この論文の数値と結論は引用していません。

機能性ディスペプシアの鍼灸について、日本の研究はどこまであるのか

ここは、はっきりした答えがあります。

2024年の文献レビューが、FD に対する鍼治療の臨床研究を、2006年1月1日〜2022年12月31日に発表された原著論文の範囲で、国内は医中誌Web、海外は PubMed で探しました。結果は国内0編・海外26編でした。

そして、海外26編のうち25編で有効性が示されていたと報告されています。

26本のうち25本が肯定。これは「だから効く」と読む数字ではなく、出版バイアス(肯定的な結果のほうが論文になりやすい偏り)を疑う目で見るべき数字です——これは当サイトの読み方で、著者がそう書いているわけではありません。

日本消化器病学会のガイドライン(2021年)の FRQ 4-2 の解説も同じ方向です(原文は日本語。当サイトの訳ではありません)。

「国内から,鍼治療の有効性を示した RCT 研究は認めなかった.」

続けて、国内で一定数以上の症例を対象とした前向き研究による確認が必要だ、とも書かれています。

なお、レビューの「0編」は2006〜2022年の原著論文という範囲の話で、ガイドラインの「有効性を示した RCT 研究を認めなかった」とは範囲が違います(混ぜないでください)。

機能性ディスペプシアの鍼治療を、日本の鍼灸師が記録する意味

海外の試験は増えましたが、日本のガイドラインは「国内での前向き研究による確認が必要」と書いています。

その穴を埋められるのは、現場にいる人だけです。学会発表でも症例報告でも、記録は残ります。腸の側は過敏性腸症候群への鍼|偽鍼・通常ケア・薬と比べた研究は、何を示したのかで同じ形の整理をしています。

療養費(保険)の扱いはどうなるのか

短く書きます。FD は療養費の対象6疾患に含まれません。

FD を療養費の対象とする資料も、当サイトでは確認していません。判断するのは保険者と地方厚生局です。

療養費についての注記:この段落の整理は、厚生労働省が公開している案内にもとづく二次情報としての整理で、通知番号は記載していません。支給の可否や算定の取扱いを判断するのは、保険者および地方厚生局です。本記事の記載は法的・行政的な助言ではありません。個別の取扱いは、加入されている保険者・所管の地方厚生局へご確認ください。手続きの全体像は鍼灸の療養費(保険)完全ガイド|6疾患・同意書・受領委任の実務【鍼灸師向け】で整理しています。

エビデンスボックス⑬ 日本の研究の一次資料(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
  • 藤倉光慈, 井畑真太朗, 山口智, 屋嘉比康治. 機能性ディスペプシアに対する鍼治療-課題の探索を目的とした文献レビュー-. 日本東洋医学系物理療法学会誌. 2024;49(2):97-106.(DOI 10.32255/jjsop.49.2_97)包含基準=FD に対する鍼治療の臨床研究で、2006年1月1日〜2022年12月31日に発表された原著論文。国内文献は医中誌Web、海外文献は PubMed で検索。結果=包含基準を満たす論文は国内0編・海外26編(FD 患者全体の研究16編/サブタイプ別10編。後者のうち9編が PDS のみ、1編が PDS と EPS)。海外26編中25編で鍼治療の有効性が示されていた。頻用経穴は、FD 全体の研究・PDS のみの研究の別を問わず、足三里・内関・中脘・公孫。確認の範囲=J-STAGE の和文抄録まで(1パス)。英文抄録は掲載されていません。当サイトはこの論文を逐語では引かず、言い換えで紹介しています。⚠️ v2 では本文の分量を落とすため、26編の内訳(FD 全体16編/サブタイプ別10編/うち PDS のみ9編)を本文から落とし、ここに残しました。
  • 🛑 評釈:①「26編中25編が肯定」は、出版バイアスを疑う目で読む数字です(これは当サイトの読み方で、著者の記述ではありません)。②「国内0編」は2006〜2022年の原著論文という範囲での結果です。当サイトは「日本に FD の鍼の臨床研究は存在しない」とは書きません。③包含基準は「鍼治療の臨床研究」で、灸は対象ではありません。「鍼灸について国内0編」とは書けません(v3 で本文にこの範囲を明示しました)。④この論文が引用している有病率の数値は、原典を当サイトで確認していないため記事に出していません。⑤考察にある「併用療法が最も実臨床に即した治療法である」は著者の見解で、当サイトの推奨としては書きません。⑥同じ著者グループは過敏性腸症候群の症例報告も出しています(書誌上の事実のみ。FD の根拠にはしません)。
  • 日本消化器病学会 FD ガイドライン2021(改訂第2版)の記述(書誌はエビデンスボックス⑨)逐語=「国内から,鍼治療の有効性を示した RCT 研究は認めなかった.」/続く1文は、国内で一定数以上の症例を対象とした前向き研究による結果の確認が必要だという内容です(当サイトによる要約)。/英語版の逐語=”Although acupuncture and moxibustion are both widely practiced in Japan, no clinical studies with a high evidence level of either of them as a treatment for FD have been reported from Japan.”(当サイトによる訳:鍼と灸はいずれも日本で広く行われているが、FD の治療としての、どちらについても高いエビデンスレベルの臨床研究は日本から報告されていない。)🛑 評釈:文献レビューの「臨床研究0編」(鍼のみ)と、ガイドラインの「有効性を示した RCT 研究を認めなかった」は、言っている範囲が違います。当サイトは2つを混ぜません。灸についても日本から高いエビデンスレベルの研究の報告がないと書いているのは、ガイドラインの側(英語版)です。
  • ⚠️ 当サイトが検索していないもの:医中誌Web・CiNii・中国語のデータベース・J-STAGE の内部検索。日本の臨床試験登録(jRCT)では FD の登録1件に到達しましたが、鍼灸ではなく漢方の試験でした。「鍼」「灸」での網羅的な検索はしていないため、「日本に FD の鍼の登録試験は無い」とは書きません。
  • 療養費について:厚生労働省「保険医療機関及び保険医の皆様へ はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱いを改めてお知らせします」令和7年4月版(https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/250401_01.pdf )確認の範囲=二次情報としての整理で、通知番号は記載していません。🛑 評釈:FD は対象6疾患に含まれず、FD を対象とする資料は当サイトでは確認していません。支給の可否と算定の取扱いを判断するのは保険者および地方厚生局です。

この記事で書かなかったこと・書けなかったこと

正直コーナーです。理由つきで開示します。

  1. 2014年のコクランの本文は1パスの確認にとどまります。7試験の一覧、偽鍼比較の個別の数値、Cochrane Library 本体の版の表示は取得できていません。
  2. 2026年の更新と278名の試験の本文は確認できていません。偽鍼の型と経穴は、同じ試験の二次解析論文の抄録から取っています。
  3. 米国・カナダの共同ガイドラインと NICE のガイドラインの本文は確認できていません。確認していない文書について「鍼を推奨していない」とは書いていません。
  4. 症状・生活の質の尺度の、臨床的に意味のある最小変化量は確認していません。だから点数の差を「臨床的に意味のある大きさ」とは書いていません。
  5. 効果量の指標名が不明な統合、対照が書かれていない統合、順位だけのネットワークメタ解析、数値の整合が取れない統合は、存在の確認だけにとどめ、数値を引用していません。
  6. 不安や抑うつを主要アウトカムにした統合はありますが、扱っていません。確実性がいずれも低い〜非常に低く、用いた尺度によって結果が違うためです。
  7. 機序(脳画像・自律神経・ホルモン)の章は作っていません。症状が改善した統合でも血中のモチリンは増えず、バイオマーカーの結果が一貫しないためです。
  8. 選穴・手技・通電・刺鍼深度の処方と、薬の選び方・順序・減らし方は書いていません。後者は鍼灸師が語る範囲ではありません。試験で使われた薬の商品名も、日本の薬と対応づけていません。

まとめ|機能性ディスペプシアへの鍼について、言えること・言えないこと

  • 言えること=近年の大きな試験と統合では、偽鍼と比べて鍼のほうが良いという結果が続いています(2014年のコクランは3試験を統合せず、1本は差なし)。言えないこと=「FD に効く」。大きな試験の対象はほぼ PDS で、EPS だけの試験は当サイトの検索範囲にありません
  • 言えること=2014年のコクランは「依然として分かっていない」の1文で閉じ、薬との4試験では有意差なし。12年後の更新は確実性を「高い〜中等度」と書いています。言えないこと=「コクランが結論を変えた」。更新は同じ研究グループで発表先は別の雑誌、しかも限界に「多くの試験がバイアスのリスクが高い」「全23試験がアジア」とあります
  • 言えること=偽鍼群でも症状と生活の質は有意に改善しています。言えないこと=「胃の動きが良くなるから効く」。胃電図もモチリンも動いていません
  • 言えること=韓国の試験では、どちらの群も改善したうえで、手厚いケアを添えた群のほうが改善は小さかった。言えないこと=「日本でも同じ」。著者は文化的な要因を指摘しています
  • 言えること=日本消化器病学会のガイドラインは鍼灸を「今後の研究課題」に置き、灸は「検討が不十分で効果は不明」。日本の鍼治療の研究は2006〜2022年の原著論文の範囲で国内0編で、現場の記録に意味がある領域です。言えないこと=「推奨している」も「触れていない」も
  • 言えること=上腹部に刺すことが前提の疾患で、合併症の報告はきわめてまれですが、あります。体重減少・くり返す嘔吐・出血・飲み込みにくさなどがあれば、施術より先に受診をすすめてください。言えないこと=「危険」も「安全」も、そして「当てはまらないから大丈夫」も

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更新履歴:本記事は初版です。FD のコクランレビュー(CD008487)に新しい版が出た場合、日本消化器病学会のガイドラインが改訂された場合、米国・カナダの共同ガイドラインや NICE の本文を確認できた場合、本文を確認できていない試験や統合の本文を確認できた場合、療養費の通知が改正された場合に追記・修正します。

引用について:本記事の引用は著作権法32条にもとづく引用です。英語の文献の日本語は、すべて当サイトによる訳です(他者の公式訳は用いていません)。日本消化器病学会のガイドラインの引用は、日本語で書かれた原文をそのまま引いたもので、当サイトの訳ではありません。同ガイドラインの表・図・フローチャート・回答の一式は再現せず、引用は設問文・回答の2行・解説の該当文に限り、それ以外は「当サイトによる要約」と明示して言い換えで紹介しています。日本語の論文は逐語では引かず、言い換えで紹介しています。文の途中を省いた引用には、その旨を明記しています。

参考文献

  1. 機能性消化管疾患診療ガイドライン-機能性ディスペプシア(FD)委員会 編. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版). 日本消化器病学会 編集・発行(制作 南江堂); 2021年4月30日改訂第2版発行. https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/fd2021r_.pdf ※FRQ 4-2・作成方法の章・上部消化管内視鏡検査の CQ・奥付を確認。表と図は再現していません
  2. Miwa H, Nagahara A, Asakawa A, Arai M, Oshima T, Kasugai K, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021. J Gastroenterol. 2022;57(2):47-61. PMID: 35061057. DOI: 10.1007/s00535-021-01843-7 ※上記の英語版・CC BY 4.0・PMC8831363。本文1パス
  3. Lan L, Zeng F, Liu GJ, Ying L, Wu X, Liu M, et al. Acupuncture for functional dyspepsia. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(10):CD008487. PMID: 25306866. DOI: 10.1002/14651858.CD008487.pub2 ※抄録は逐語、本文は1パス
  4. Li XX, Hu ZY, Li ZC, Tang J, Liu YY, Zeng DH, et al. Efficacy and safety of acupuncture for functional dyspepsia: an updated meta-analysis of randomized controlled trials. Front Med (Lausanne). 2026;13:1718632. PMID: 41737400. DOI: 10.3389/fmed.2026.1718632 ※2014年のコクランと同じ研究グループによる更新。コクラン・ライブラリの版ではありません
  5. Yang JW, Wang LQ, Zou X, Yan SY, Wang Y, Zhao JJ, et al. Effect of Acupuncture for Postprandial Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial. Ann Intern Med. 2020;172(12):777-785. PMID: 32422066. DOI: 10.7326/M19-2880 ※抄録は2経路一致。本文は未取得
  6. Wang Y, Yang JW, Hu H, Wang J, Zhao JJ, Zhou W, et al.〔中国語〕Improvement in dyspepsia related symptoms treated with acupuncture in 278 patients with postprandial distress syndrome: a secondary analysis of a multi-center randomized controlled trial. Zhongguo Zhen Jiu. 2021;41(6):583-587. PMID: 34085471. DOI: 10.13703/j.0255-2930.20200527-k0001 ※上記5の二次解析。偽鍼の型・経穴・施術量の出所
  7. Tu JF, Yang JW, Wang LQ, Zheng Y, Zhang LW, Li YT, et al. Acupuncture for postprandial distress syndrome: a randomized controlled pilot trial. Acupunct Med. 2020;38(5):301-309. PMID: 32028783. DOI: 10.1177/0964528419900911 ※主要アウトカムは有意でない(p=0.06)
  8. Wang Y, Hou YQ, Yang JW, Wang LQ, Shao JK, Zou X, et al. Acupuncture of different treatment frequency in postprandial distress syndrome: A pilot randomized clinical trial. Neurogastroenterol Motil. 2020;32(6):e13812. PMID: 32048788. DOI: 10.1111/nmo.13812 ※4週の主要アウトカムは有意でない(P=.095)
  9. Tang KY, Sun BY, Yan Y, Wang X, He X, Liu ZS.〔中国語〕Functional dyspepsia treated with acupuncture of different frequencies: a randomized controlled trial. Zhongguo Zhen Jiu. 2023;43(6):622-626. PMID: 37313554. DOI: 10.13703/j.0255-2930.20220530-k0004 ※抄録まで。本文は未読
  10. Qi LY, Yan SY, Yang JW, Liu CZ. The impact of expectancy on the efficacy of acupuncture treatment for postprandial distress syndrome: Secondary analysis of a randomized clinical trial. Neurogastroenterol Motil. 2022;34(12):e14447. PMID: 35946062. DOI: 10.1111/nmo.14447 ※事後の二次解析
  11. Liu J, Song G, Huang Y, Lv C, Wang Y, Wu D, et al. Placebo Response Rates in Acupuncture Therapy Trials for Functional Dyspepsia: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Gastroenterol. 2022;56(4):299-310. PMID: 35180148. DOI: 10.1097/MCG.0000000000001679 ※偽鍼群の群内変化の統合。群間比較ではありません
  12. Zhou W, Su J, Zhang H. Efficacy and Safety of Acupuncture for the Treatment of Functional Dyspepsia: Meta-Analysis. J Altern Complement Med. 2016;22(5):380-389. PMID: 27028618. DOI: 10.1089/acm.2014.0400 ※血中モチリンは増えなかったという記述を使用
  13. Huang J, Liu J, Liu Z, Ma J, Ma J, Lv M, et al. Reliability of the Evidence to Guide Decision-Making in Acupuncture for Functional Dyspepsia. Front Public Health. 2022;10:842096. PMID: 35433619. DOI: 10.3389/fpubh.2022.842096 ※SR/MA 10本の質を評価したアンブレラレビュー
  14. Kim KN, Chung SY, Cho SH. Efficacy of acupuncture treatment for functional dyspepsia: A systematic review and meta-analysis. Complement Ther Med. 2015;23(6):759-766. PMID: 26645513. DOI: 10.1016/j.ctim.2015.07.007 ※効果量の指標名が不明のため数値は引用していません。逐語はエビデンスボックス④
  15. Pang B, Jiang T, Du YH, Li J, Li B, Hu YC, et al. Acupuncture for Functional Dyspepsia: What Strength Does It Have? A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Evid Based Complement Alternat Med. 2016;2016:3862916. PMID: 28119758. DOI: 10.1155/2016/3862916 ※効果量が抄録にありません。逐語はエビデンスボックス④
  16. Kwon CY, Ko SJ, Lee B, Cha JM, Yoon JY, Park JW. Acupuncture as an Add-On Treatment for Functional Dyspepsia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Med (Lausanne). 2021;8:682783. PMID: 34381798. DOI: 10.3389/fmed.2021.682783 ※結論は3文。3文の逐語はエビデンスボックス⑧
  17. Ho RST, Chung VCH, Wong CHL, Wu JCY, Wong SYS, Wu IXY. Acupuncture and related therapies used as add-on or alternative to prokinetics for functional dyspepsia: overview of systematic reviews and network meta-analysis. Sci Rep. 2017;7(1):10320. PMID: 28871092. DOI: 10.1038/s41598-017-09856-0 ※対比較の記述のみ使用。順位は不使用
  18. Chung VC, Wong CH, Wu IX, Ching JY, Cheung WK, Yip BH, et al. Electroacupuncture plus on-demand gastrocaine for refractory functional dyspepsia: Pragmatic randomized trial. J Gastroenterol Hepatol. 2019;34(12):2077-2085. PMID: 31117149. DOI: 10.1111/jgh.14737 ※薬に抵抗性の PDS 型。偽鍼なし・患者は非盲検
  19. Lee B, Kwon OJ, Kim JH, Kang JW, Kim TH, Lee S, et al. Saam Acupuncture for Treating Functional Dyspepsia: A Feasibility Randomized Controlled Trial. Evid Based Complement Alternat Med. 2022;2022:2581041. PMID: 35815291. DOI: 10.1155/2022/2581041 ※24名の実行可能性試験。4週は群間差なし
  20. Ko SJ, Kim K, Kaptchuk TJ, Napadow V, Kuo B, Gerber J, et al. Influence of patient-clinician relationship style on acupuncture outcomes in functional dyspepsia: A multi-site randomized controlled trial in Korea. Patient Educ Couns. 2024;121:108133. PMID: 38199174. DOI: 10.1016/j.pec.2023.108133 ※結論3文の逐語と訳はエビデンスボックス⑦。Results の1文目「両群とも改善」を本文にも残しています
  21. Xu Z, Zhang X, Shi H, et al. Efficacy of acupuncture for anxiety and depression in functional dyspepsia: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2024;19(3):e0298438. PMID: 38452033. DOI: 10.1371/journal.pone.0298438 ※本文では扱っていません(確実性が低い・尺度によって結果が違う)。⚠️ 著者名は3名目までしか取得できていません(🛑 投入前に取り直してください)
  22. Moayyedi P, Lacy BE, Andrews CN, Enns RA, Howden CW, Vakil N. ACG and CAG Clinical Guideline: Management of Dyspepsia. Am J Gastroenterol. 2017;112(7):988-1013. PMID: 28631728. DOI: 10.1038/ajg.2017.154 ※抄録まで(本文は有料で未確認)。訂正=PMID 28762378
  23. National Institute for Health and Care Excellence. Gastro-oesophageal reflux disease and dyspepsia in adults: investigation and management. Clinical guideline CG184. NCBI Bookshelf NBK552570(2019年のサーベイランス=NBK550919) ※本文に到達できていません
  24. Stanghellini V, Chan FK, Hasler WL, Malagelada JR, Suzuki H, Tack J, et al. Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology. 2016;150(6):1380-1392. PMID: 27147122. DOI: 10.1053/j.gastro.2016.02.011 ※Rome IV。抄録まで
  25. Törnblom H, Carbone F, Hasler WL, Smout A, Suzuki H, Tack J, et al. Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology. 2026;170(6):1240-1260. PMID: 41713705. DOI: 10.1053/j.gastro.2026.01.038 ※書誌のみ。内容は扱っていません
  26. 藤倉 光慈, 井畑 真太朗, 山口 智, 屋嘉比 康治. 機能性ディスペプシアに対する鍼治療-課題の探索を目的とした文献レビュー-. 日本東洋医学系物理療法学会誌. 2024;49(2):97-106. DOI: 10.32255/jjsop.49.2_97 ※和文抄録まで。言い換えで紹介。包含基準は「鍼治療の臨床研究」で灸は対象外
  27. 藤倉 光慈, 井畑 真太朗, 山口 智, 屋嘉比 康治. 過敏性腸症候群に鍼治療が有効であった1症例. 日本東洋医学系物理療法学会誌. 2025;50(2):197-201. DOI: 10.32255/jjsop.50.2_197 ※書誌上の事実としてのみ言及
  28. Seah EZ. Traditional Chinese Acupuncture Causing Acute Hemoperitoneum from Direct Liver Injury. J Radiol Case Rep. 2023;17(8):15-20. PMID: 37654899. DOI: 10.3941/jrcr.v17i8.5100
  29. Zhai H, et al. Rupture of the liver secondary to acupuncture: a case report. Acupunct Med. 2025;43(5):299-301. PMID: 41045144. DOI: 10.1177/09645284251379494 ※学術誌の Letter として出た症例報告。抄録なし・存在のみ
  30. Kameda Y, Yamamoto T, Yoshizawa S, Tanaka S, Arai T, Urata N, et al. Acupuncture-related pneumothorax: a 14-case single-center series and a review of the literature. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2026(オンライン先行). PMID: 42714775. DOI: 10.1007/s11748-026-02397-2 ※巻号ページは未確定
  31. 厚生労働省「保険医療機関及び保険医の皆様へ はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱いを改めてお知らせします」令和7年4月版 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/250401_01.pdf ※二次情報として整理。通知番号は記載していません

本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。機能性ディスペプシアの型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

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