顎関節症への鍼|BMJの慢性痛ガイドラインと偽鍼比較を鍼灸師向けに整理

顎関節症への鍼|BMJの慢性痛ガイドラインと偽鍼比較を鍼灸師向けに整理 顎関節症

「歯医者さんでマウスピースを作ったんですけど、顎の痛みがまだ続いていて。鍼って効きますか?」

肩こりや頭痛で通っている患者さんから、こう聞かれたことはありませんか。

顎関節症は歯科の領域の病気です。それでも、顎や首まわりのこわばりの相談として、鍼灸院にもやってきます。

2023年、医学誌 BMJ に、慢性の顎関節症の痛みについての国際的な診療ガイドラインが出ました。そこに鍼が載っています。

ただし「条件付き」で、根拠の中身には読み方のコツがあります。この記事では、研究を「何と比べたか」で並べ直し、日本の学会の扱い、受診をすすめる目安、保険まで、明日の説明に使える形にします。

  1. 結論:顎関節症への鍼(鍼灸)の効果は、どこまで分かっているか
  2. BMJ の国際ガイドラインは、慢性の顎関節症の鍼を「条件付き推奨」にしている
    1. 「条件付き」とは、どういう意味か
    2. 中等度の根拠があったのは「痛み」ではなく「身体機能」の点数
    3. スプリントと低出力レーザーは「条件付きで反対」の側
  3. 偽鍼と比べるとどうなるか——結果は「偽鍼の型」で分かれている
    1. 刺さない偽鍼とは差、刺す偽鍼とは差が出ていない
    2. 否定側の統合:「効果の大部分はプラセボ効果」
    3. 2024年の偽鍼対照の試験は「刺さない偽鍼」だった
    4. 18名の試験では、経穴でない場所に刺しても痛みは同じように下がった
  4. スプリントと比べるとどうなるか——「差があるとは言えない」まで
  5. 日本顎関節学会のガイドラインに、鍼の記載は見当たらない——「推奨しない」とは違う
    1. そもそも、日本の文書とBMJでは対象の段階が違う
    2. スプリントと低出力レーザーは、日本とBMJで評価が逆
  6. 現場で押さえること——病態の型、経過、受診をすすめる目安、歯科との連携
    1. 顎関節症は「4つの型」をまとめた診断名
    2. 時間とともに改善することが多い病気——だから前後比較は読みにくい
    3. 施術より先に、歯科・医科の受診をすすめる場面
    4. 歯科と、どうつながるか
  7. 顎関節症の鍼で使われた経穴——経穴でない点と比べた試験から言えること
    1. 証(東洋医学の診断)で対象を選んだ試験
  8. 施術の頻度は?——週1・2・3回を比べた小さな試験から言えること
  9. 顎関節症の鍼治療は保険適用になるのか——療養費の6疾病と「6疾病以外の類症疾患」
  10. 顎関節症と頭痛——緊張型頭痛と重なりやすいという報告
  11. 顔・顎に刺すときの安全性——報告されているもの、記録されていないもの
  12. 患者さんにどう話すか——効果を約束しない説明の例
  13. この記事で書かなかったこと・書けなかったこと
  14. まとめ|顎関節症への鍼について、言えること・言えないこと
  15. 関連記事
  16. 参考文献

結論:顎関節症への鍼(鍼灸)の効果は、どこまで分かっているか

ひとことで言うと:鍼は海外のガイドラインで「条件付き推奨」(患者さんの価値観や好みで選ぶかどうかが分かれる選択肢)に入りましたが、一番手ではなく、痛みへの根拠はまだ弱い段階です。歯科の治療はやめさせず、危ないサインがあれば施術より先に受診へ。

① BMJ の国際ガイドライン(2023年)は、3か月以上続く顎関節症の痛みに、偽の処置などと比べて鍼を「条件付き推奨」とし、運動や認知行動療法などの「強い推奨」の一段下に置いています。
② 鍼で根拠が中等度だったのは全身の健康状態の質問票(SF-36)の身体面の点数で、痛みへの根拠は低い〜非常に低いとされています。
③ 偽鍼(本物に似せた対照の処置)と比べた結果は、偽鍼が刺さない型か刺す型かで分かれています。
④ 日本顎関節学会のガイドラインと指針に鍼の記載は見当たりませんが、否定ではなく、検討の対象に入っていないという意味です。
⑤ 急性(3か月未満)の顎の痛みには BMJ の推奨は当てはまらず、腫れ・発熱・強い開口制限などがあれば施術より先に受診をすすめてください。

明日の臨床でやること(5つ)
1. 施術の前に、腫れ・熱・じっとしていても痛むか、口がほとんど開かず硬く止まるか、胸やみぞおちの痛みはないか、ここ1〜2日で急に開かなくなっていないかを確かめる。ほかにも受診をすすめる目安があるので、一覧で確認する(→受診をすすめる場面)
2. 歯科で「どの型」と言われているかを聞く
3. マウスピースや開口訓練は、自己判断でやめないよう伝える
4. 経過が思わしくなければ、歯科に戻ってもらう(歯科の側の目安は、長くとも3か月程度)
5. 顔に刺す前に、糖尿病など感染しやすい背景がないかを確かめる

図解:顎関節症への鍼の研究を、鍼を何と比べたか(刺さない偽鍼・刺す偽鍼や経穴でない点・スプリント・プラセボや偽の処置を相手にしたガイドラインの評価)の4枚に分け、言えることと言えないことを並べた図

比較の相手別

何と比べたかで、顎関節症の鍼の景色が変わる

同じ「顎関節症の鍼」でも、比べる相手で言えることが変わります。カードの番号は並べた順で、確かさの順位ではありません。

1|刺さない偽鍼と比べる

言えること
北京の60名の試験:4週の痛みの点数
(VAS・週平均)が鍼群で 1.49 低い
(刺さない偽鍼)
2017年の統合:刺さない偽鍼を
対照にすると有意差あり
言えないこと
客観的な指標(圧痛計・筋電図)でも
差がある、とは言えない
独立に再現された、とは言えない
(単施設・同じ研究グループ)

2|刺す偽鍼・経穴でない点と比べる

言えること
2017年の統合:刺す偽鍼を対照に
すると有意差なし(1試験の可能性)
経穴 vs 経穴でない点(49名):
両群とも約3割低下、群間差なし
言えないこと
「刺す偽鍼には勝てない」とは
証明されていない
「どちらの点でも効いた」とは
言えない(鍼をしない群なし)

3|スプリントと比べる

言えること
コクラン:1試験40名で差があるとは
言えない(確実性は非常に低い)
1992年の試験:直後の自覚的な評価は
鍼群が良好、1年後は差なし
言えないこと
「スプリントと同等」とは言えない
(差がないことの証明ではない)
「スプリントより上」とも言えない
(1年後は差なし)

4|ガイドライン(プラセボ・偽の処置を相手にした評価)

言えること
BMJ 2023:3か月以上の痛みに
「条件付き推奨」
中等度の根拠は身体機能(SF-36・
全身の質問票)。痛みは低い〜非常に低い
言えないこと
急性(3か月未満)にも当てはまる、
とは言えない
日本の学会が鍼を否定した、とは
言えない(検討の対象外)

模式図です。カードは当サイトが比較の相手ごとに並べ直したもので、原典にこの図はありません。カード1・2の数値は、比べた相手も対象も違う研究のもので、大小を比べられません。「有意差なし」は差が無いことの証明ではありません。カード1の試験では、開口と顎の動きでも鍼群が有意に改善し、差がなかったのは圧痛計と筋電図の2つです。カード4の「身体機能」は SF-36(全身の健康状態の質問票)の身体面の要約点で、顎の機能の指標ではありません。「痛みは低い〜非常に低い」は、ガイドライン本文が条件付き推奨の理由として書いているもので、鍼の痛みの効果量そのものは当サイトは取得できていません。出所=Liu L 2024(PMID 38710498)/Wu JY 2017(PMID 28248862)/Şen 2020(PMID 32077514)/Singh 2024(PMID 39282765)/List 1992(PMID 1455324・1476055)/Busse 2023(PMID 38101929)/Yao 2023(PMID 38101924)。

BMJ の国際ガイドラインは、慢性の顎関節症の鍼を「条件付き推奨」にしている

図解:BMJ の顎関節症の慢性痛の診療ガイドライン(2023年)の推奨を4段で示し、鍼が上から2段目の「条件付きで推奨」に入っていること、スプリントと低出力レーザーが3段目の「条件付きで反対」に入っていることを示した図

BMJ 2023

鍼は「強い推奨」の一段下

対象は3か月以上の痛み。比べた相手はプラセボ・偽の処置です。ガイドラインは、上の段から順に検討するよう書いています。

1段目|強く推奨

CBT/療法士による顎の可動化/
指導下の運動・通常ケア など

2段目|条件付きで推奨

鍼/マニピュレーション など
鍼の中等度の根拠は「身体機能」
(SF-36・全身の質問票)。
痛みの根拠は低い〜非常に低い

3段目|条件付きで反対

取り外し可能な口腔内装置(スプリント)/
低出力レーザー など

4段目|強く反対

元に戻せない口腔内装置 など

抄録の推奨文から当サイトが一部だけを抜き出して組み直した模式図で、ガイドラインのインフォグラフィックの再現ではありません。各段には図に書いていない項目があります。この推奨は3か月以上の慢性痛に限られ、急性の顎関節症には当てはまりません。「身体機能」は SF-36(全身の健康状態の質問票)の身体面の要約点で、顎の機能の指標ではありません。痛みの根拠が低い〜非常に低いことは、ガイドライン本文が条件付き推奨の理由として書いています。「条件付き」は、情報を得た人の多くは選ぶが少なくない人は選ばない、という意味で、患者の価値観に合わせて決めるものとされています。スプリントと低出力レーザーの評価は、日本顎関節学会のガイドラインとは逆です。出所=Busse 2023(PMID 38101929)/Yao 2023(PMID 38101924)。

対象は、3か月以上続く顎関節症の痛みです。

そして、どの治療もプラセボや偽の処置と比べて評価されています。

推奨は4つの段に分かれています。

「強く推奨」「条件付きで推奨」「条件付きで反対」「強く反対」です。鍼は、上から2段目に入りました。

出所:Busse JW, ほか. Management of chronic pain associated with temporomandibular disorders: a clinical practice guideline. BMJ. 2023;383:e076227(PMID 38101929)抄録の RECOMMENDATIONS(全1文のうち (2) の部分)。原文(英語)の全文はエビデンスボックス①
当サイトによる訳:(3か月以上の顎関節症の慢性痛をもつ患者について、プラセボまたは偽の処置と比べて)…条件付きで推奨する――マニピュレーション、指導下での顎の運動と可動化の併用、CBT と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用、マニピュレーションと姿勢の運動の併用、そして鍼。…

「条件付き」とは、どういう意味か

ここを読み飛ばすと、話がずれます。

ガイドライン自身の定義では、十分な情報を得た人の多くは選ぶが、少なくない人は選ばない。だから臨床家は、患者の価値観に合った決定を手伝うべきだ、とされています(逐語はボックス①)。

つまり、情報を得たうえで選ぶ人も選ばない人もいて、患者さんの価値観や好みに合わせて決める選択肢であり、全員に勧めるものではない、という意味です。

さらにガイドラインは、まず強い推奨を考え、次に条件付きの推奨、その次に条件付きの反対、という順番で検討するよう書いています。

一段上の「強い推奨」には、認知行動療法(CBT)、療法士による顎の可動化、徒手のトリガーポイント療法、指導下の姿勢の運動や顎の運動とストレッチ、通常ケア(自宅での運動・ストレッチ・安心させる説明・教育)が並びます。

「BMJ が鍼を推奨した」とだけ伝えると、この順番が抜け落ちます。

中等度の根拠があったのは「痛み」ではなく「身体機能」の点数

このガイドラインの土台になった大きな統合(複数の治療を同時に比べるネットワークメタ解析)の抄録を見ると、鍼の名前が出てくるのは身体機能の文だけです。

中等度の確実性で、身体機能を「おそらく改善した」4つの介入の1つに入っています。

ここでいう身体機能は、SF-36 という全身の健康状態の質問票の「身体面の要約点」です。

意味のある変化とされる5点の改善に届いた人の割合が、偽の処置などより多かった、という指標です。顎の開き方や顎の機能を測ったものではありません。

では、痛みはどうか。

ガイドライン本文は、強い推奨と強い反対の「あいだ」に置いた条件付きの推奨(鍼もここに入ります)について、痛みの軽減の根拠が低い〜非常に低い確実性にとどまったことを理由の1つに挙げています。

出所:Busse JW, ほか. BMJ. 2023;383:e076227 本文 p.4(該当する1文)。原文(英語)はエビデンスボックス①
当サイトによる訳:この2つの区分〔直前の段落で説明されている強い推奨と強い反対〕のあいだについては、痛みの軽減のエビデンスが低い、または非常に低い確実性にとどまり、かつパネルは残りの介入が重大な害と関連するとの確信をもてなかったため(“Absolute benefits and harms” の節を参照)、パネルは他の46の介入または介入の組み合わせについて条件付きの推奨を出した。

※鍼の痛みの効果量そのものは、統合の本文を取得できていないため、数字を持っていません。

スプリントと低出力レーザーは「条件付きで反対」の側

対比として覚えておきたいのが3段目です。

取り外しのできる口腔内装置(スプリント)と低出力レーザー療法は、条件付きで反対の側に入っています。

顎関節症では、歯科でスプリントを作った患者さんが多いですよね。

ただしこの評価は、日本の学会とは逆です(後の章で扱います)。「スプリントは効かない」と患者さんに言う話ではありません。

エビデンスボックス① BMJ ガイドライン(Busse 2023)の原文(飛ばしてOK)
  • Busse JW, Casassus R, Carrasco-Labra A, Durham J, Mock D, Zakrzewska JM, ほか. Management of chronic pain associated with temporomandibular disorders: a clinical practice guideline. BMJ. 2023;383:e076227.(PMID 38101929/DOI 10.1136/bmj-2023-076227)BMJ Rapid Recommendations。確認の範囲=抄録は逐語(PubMed XML・編集長が機械照合)。本文は出版社の PDF(第三者のウェブサイトに置かれたもの)を全9ページ確認し、p.4 の条件付き推奨の理由の文は編集長が PDF のテキストで照合。bmj.com 本体には当サイトは到達できていません。
  • RECOMMENDATIONS(抄録の逐語・全1文)=”For patients living with chronic pain (≥3 months) associated with TMD, and compared with placebo or sham procedures, the guideline panel issued: (1) strong recommendations in favour of cognitive behavioural therapy (CBT) with or without biofeedback or relaxation therapy, therapist-assisted mobilisation, manual trigger point therapy, supervised postural exercise, supervised jaw exercise and stretching with or without manual trigger point therapy, and usual care (such as home exercises, stretching, reassurance, and education); (2) conditional recommendations in favour of manipulation, supervised jaw exercise with mobilisation, CBT with non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDS), manipulation with postural exercise, and acupuncture; (3) conditional recommendations against reversible occlusal splints (alone or in combination with other interventions), arthrocentesis (alone or in combination with other interventions), cartilage supplement with or without hyaluronic acid injection, low level laser therapy (alone or in combination with other interventions), transcutaneous electrical nerve stimulation, gabapentin, botulinum toxin injection, hyaluronic acid injection, relaxation therapy, trigger point injection, acetaminophen (with or without muscle relaxants or NSAIDS), topical capsaicin, biofeedback, corticosteroid injection (with or without NSAIDS), benzodiazepines, and β blockers; and (4) strong recommendations against irreversible oral splints, discectomy, and NSAIDS with opioids.”(本文の引用ブロックに (2) の部分の訳。当サイトによる訳・(3) の要点:取り外し可能な口腔内装置〈単独または他の介入との併用〉、低出力レーザー療法〈単独または併用〉などに、条件付きで反対する。)
  • UNDERSTANDING THE RECOMMENDATION(抄録の逐語・2文)=”These recommendations apply to patients living with chronic pain (≥3 months duration) associated with TMD as a group of conditions, and do not apply to the management of acute TMD pain.”/”When considering management options, clinicians and patients should first consider strongly recommended interventions, then those conditionally recommended in favour, then conditionally against.”(当サイトによる訳:これらの推奨は、一群の病態としての顎関節症にともなう慢性痛〈3か月以上〉をもつ患者に適用され、急性の顎関節症の痛みの管理には適用されない。/治療の選択肢を考えるとき、臨床家と患者はまず強く推奨された介入を検討し、次に条件付きで推奨された介入、次に条件付きで反対された介入を検討すべきである。)
  • 条件付き推奨の定義(本文 p.4 の囲み・逐語)=”For conditional recommendations, most informed individuals would choose the suggested course of action, but an appreciable minority would not, and clinicians should assist patients to arrive at a management decision consistent with their values and preferences.”(当サイトによる訳:条件付き推奨では、十分な情報を得た人の大半は提案された方針を選ぶが、少なからぬ人は選ばない。臨床家は、患者が自分の価値観と好みに合った管理の決定にたどり着けるよう支援すべきである。)
  • 条件付き推奨の理由(本文 p.4・逐語・全1文)=”Between these two categories, because the evidence for pain relief was only of low or very low certainty and the panel was not confident that remaining interventions were associated with serious harms (see “Absolute benefits and harms”), the panel made conditional recommendations for 46 other interventions or combinations of interventions.”(訳は本文の引用ブロック)🛑 評釈:この文は、条件付きの推奨を出した46の介入(または組み合わせ)全体の理由を述べたもので、鍼だけを取り出した文ではありません。鍼は条件付き推奨の1つなので、この文の対象に含まれると当サイトは読んでいます。理由は2つ(痛みの根拠が低い〜非常に低い/重大な害の確信がない)で、当サイトは前者だけを「鍼は害がない」と組み合わせて書きません。
  • 根拠の限界(本文 p.4・逐語)=”Studies typically enrolled small numbers of patients with short follow-up, and predominantly included women aged 30-39 years with longstanding chronic TMD pain of moderate severity.”(当サイトによる訳:試験は典型的には少人数を短期間追跡したもので、長く続く中等度の慢性の顎関節症の痛みをもつ30〜39歳の女性が主に組み入れられていた。)/”Most trials (134/153; 88%) that informed the evidence for this guideline were conducted in high- or middle-income countries.”(当サイトによる訳:本ガイドラインの根拠となった試験の大半〈153試験中134試験、88%〉は、高所得国または中所得国で行われた。)
  • 🛑 評釈:①比較の相手はプラセボ・偽の処置、対象は3か月以上の慢性痛です。当サイトは、この2つを落として「BMJ が顎関節症に鍼を推奨」とは書きません。②鍼は強い推奨の一段下で、ガイドラインは強い推奨から先に検討するよう書いています。③スプリントと低出力レーザーへの「条件付きで反対」は、日本顎関節学会のガイドラインの評価と逆です(エビデンスボックス⑦)。④本文の PDF には著作権の表示があるため、推奨の表とインフォグラフィックは再現していません。記事の図解②は、抄録の文から当サイトが一部だけを組み直した模式図です。⑤出典のリンクは DOI にしています。
エビデンスボックス② BMJ の土台になった統合(Yao 2023)と「身体機能」の中身(飛ばしてOK)
  • Yao L, Sadeghirad B, Li M, Li J, Wang Q, Crandon HN, ほか. Management of chronic pain secondary to temporomandibular disorders: a systematic review and network meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2023;383:e076226.(PMID 38101924/DOI 10.1136/bmj-2023-076226・PROSPERO CRD42021258567)確認の範囲=抄録まで(逐語・PubMed XML・編集長が機械照合)。本文は取得できていません(bmj.com が 403)。
  • Results(抄録の逐語・1〜3文目)=”233 trials proved eligible for review, of which 153-enrolling 8713 participants and exploring 59 interventions or combinations of interventions-were included in network meta-analyses. All subsequent effects refer to comparisons with placebo or sham procedures. Effects on pain for eight interventions were supported by high to moderate certainty evidence.”(当サイトによる訳:233試験が適格と判断され、そのうち153試験〈8,713名、59の介入または介入の組み合わせ〉がネットワークメタ解析に含まれた。以下の効果はすべて、プラセボまたは偽の処置との比較である。8つの介入の痛みへの効果は、確実性が高い〜中等度のエビデンスで支持された。)
  • Results(6文目・逐語)=”Moderate certainty evidence showed four interventions probably improved physical functioning: supervised jaw exercise and stretching (RD for achieving the MID of 5 points on the short form-36 physical component summary score: 43% (95% CI 33 to 51)), manipulation (RD 43% (25 to 56)), acupuncture (RD 42% (33 to 50)), and supervised jaw exercise and mobilisation (RD 36% (19 to 51)).”(当サイトによる訳:中等度の確実性のエビデンスは、4つの介入が身体機能をおそらく改善したことを示した――指導下の顎の運動とストレッチ〈SF-36 の身体的側面の要約点で最小重要差5点を達成する割合のリスク差 43%、95%CI 33〜51〉、マニピュレーション〈43%、25〜56〉、鍼〈42%、33〜50〉、指導下の顎の運動と可動化〈36%、19〜51〉。)
  • Results(7文目・逐語)=”The evidence for pain relief or physical functioning among other interventions, and all evidence for adverse events, was low or very low certainty.”(当サイトによる訳:それ以外の介入についての痛みの軽減または身体機能のエビデンスと、有害事象についてのすべてのエビデンスは、確実性が低い、または非常に低いものだった。)
  • Conclusion(逐語)=”When restricted to moderate or high certainty evidence, interventions that promote coping and encourage movement and activity were found to be most effective for reducing chronic TMD pain.”(当サイトによる訳:中等度または高い確実性のエビデンスに限ると、対処を促し、動くことと活動を勧める介入が、慢性の顎関節症の痛みを減らすのに最も有効であることが分かった。)
  • 🛑 評釈:①鍼が「おそらく改善した」のは身体機能で、その指標は SF-36(全身の健康状態の質問票)の身体的側面の要約点(physical component summary)です。顎の開口や顎の機能の指標ではありません。②痛みで確実性が高い〜中等度だった8介入(4・5文目に列挙)に鍼は入っていません。痛みの根拠が低い〜非常に低いことは、ガイドライン本文 p.4 が条件付き推奨の理由として書いています(ボックス①)。③鍼の痛みの効果量と確実性の個別の値は、本文未取得のため当サイトは持っていません。④「RD 42%」は「42%の人が改善した」ではありません。偽の処置などと比べて、SF-36 の身体的側面の要約点で5点の改善〈最小重要差〉に届く人の割合が、42ポイント多いという推定です。対照群の達成割合は抄録にありません。⑤「233」は適格と判断された数で、ガイドライン本文は同じものを「210 studies (in 233 publications)」と書いています。当サイトは統合に入った「153試験・8,713名」を使います。⑥有害事象の根拠は、すべて確実性が低い〜非常に低いと書かれています。

偽鍼と比べるとどうなるか——結果は「偽鍼の型」で分かれている

先に、この章のまとめです。

この章のまとめ(3行)
刺さない偽鍼と比べると、鍼のほうが痛みが下がったという報告があります。
刺す偽鍼や、経穴でない場所への鍼と比べると、差が出ていない研究があります。
能動・受動の偽鍼と比べて痛みで差を示せなかった統合(ネットワークメタ解析)もあり、差が鍼のどの要素から来るのかは、まだ分かっていません。

偽鍼の型の違いは偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題で整理しています。

比べる相手で結論が動く仕組みそのものは、鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比で扱っています。

刺さない偽鍼とは差、刺す偽鍼とは差が出ていない

2017年の統合(9研究・231名)は、偽鍼の型で結果を分けています。

刺さない偽鍼と比べると痛みは鍼のほうが有意に低く、刺す偽鍼とは有意な差がありませんでした。ただ、刺す偽鍼の比較は1試験だけの可能性が高く、「刺す偽鍼には勝てない」とも言えません。

同じ統合では、スプリントと比べても差がなく、筋性に限定していない顎関節症の試験をまとめた群でも差がありませんでした。

結論の1文は肯定的ですが、中身はこういう形です(逐語はボックス③)。

否定側の統合:「効果の大部分はプラセボ効果」

2023年の統合は、咀嚼筋の痛みで、鍼とドライニードリング(筋のトリガーポイントに刺す手技)を偽の処置と比べました。

痛みにも圧痛の閾値にも、差は示せませんでした。

「治療効果の大部分はプラセボ効果」というのは、著者の解釈です。

なお、この統合の検索は2019年9月までで、次の2024年の試験は入っていません。

2024年の偽鍼対照の試験は「刺さない偽鍼」だった

2024年、北京の単施設で60名の試験が報告されました。

偽鍼は、先が丸く皮膚に刺さらない針を、同じ経穴に当てる型です。4週の痛みの点数は鍼群のほうが 1.49 低く、8週でも差が残っていました。

開口と顎の動きでも、鍼群のほうが有意に改善していました。

いっぽう、圧痛計と表面筋電図という機器で測る2つの指標では、差が出ませんでした。

著者も、単施設なので結果の一般化には限りがあると書いています。

また、後で紹介する頻度の試験と同じ研究チームのものなので、「2本あるから確か」とは数えません。

18名の試験では、経穴でない場所に刺しても痛みは同じように下がった

2002年の米国の試験(18名)は、経穴に刺す鍼と、経穴でない皮膚に刺す鍼を比べました。

どちらの群も痛みは有意に下がり、群間差はありませんでした。1回の施術で誘発した痛みを測った小さな試験で、これだけで一般化はできません。

ここで押さえたいのは、偽鍼を受けた群でも痛みが下がるということです。

顎関節症は、偽の処置を受けた群の痛みが下がること(治療によっては大きく)が、統合研究で報告されている領域です(ボックス④)。

偽鍼群で何が起きているのかは鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由で詳しく扱っています。

エビデンスボックス③ 偽鍼と比べた統合と試験の原文(飛ばしてOK)
  • Wu JY, Zhang C, Xu YP, Yu YY, Peng L, Leng WD, ほか. Acupuncture therapy in the management of the clinical outcomes for temporomandibular disorders: A PRISMA-compliant meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2017;96(9):e6064.(PMID 28248862/DOI 10.1097/MD.0000000000006064/PMC5340435)2016年3月までの9研究(8論文)・231名。確認の範囲=抄録は逐語(PubMed XML・編集長が機械照合)、本文は試験一覧を1パス。
  • Results(抄録の逐語・該当する4文)=”A comparison of the main outcome of visual analog scale (VAS) values of pain between the acupuncture group and control group showed a significant decrease (MD = -0.98, 95% CI [-1.62, -0.34], I=54%, P = 0.003) in the VAS following acupuncture treatment.”/”However, there was no significant difference when the splint treatment group was used as the control group (MD = -0.09, 95% CI [-0.69, 0.50], I = 0%, P = 0.76).”/”Subgroup analyses of VAS for pain by the classification of diseases indicated that the myogenous TMD subgroup demonstrated a significant difference (MD = -1.49, 95% CI [-2.45, -0.53], I = 47%, P = 0.002), and TMD showed no statistically significant difference (MD = -0.42, 95% CI [-1.14, 0.30], I = 46%, P = 0.25).”/”Subgroup analysis according to whether the subgroup penetrated the skin showed that nonpenetrating sham acupuncture as the control group showed a significant difference (MD = -1.56, 95% CI [-2.70, -0.41], I = 58%, P = 0.008) compared with the conventional acupuncture as the treatment modality, while penetrating sham acupuncture as the control group showed no significant difference (MD = -1.29, 95% CI [-3.40, 0.82], I = not applicable, P = 0.23).”
  • (当サイトによる訳)主要アウトカムである痛みの VAS を鍼群と対照群で比べると、鍼治療の後に有意な低下を示した〈MD −0.98、95%CI −1.62〜−0.34〉。しかし、スプリント治療群を対照とした場合は有意差がなかった〈MD −0.09、−0.69〜0.50〉。疾患の分類による痛みの VAS のサブグループ解析では、筋性の TMD のサブグループは有意差を示し〈MD −1.49、−2.45〜−0.53〉、〔筋性に限定しない〕TMD は統計的に有意な差を示さなかった〈MD −0.42、−1.14〜0.30〉。皮膚に刺入するかどうかによるサブグループ解析では、刺入しない偽鍼を対照とすると従来の鍼と比べて有意差を示し〈MD −1.56、−2.70〜−0.41〉、刺入する偽鍼を対照とすると有意差を示さなかった〈MD −1.29、−3.40〜0.82、I² は該当なし〉。
  • Conclusions(抄録の逐語・全1文)=”Our results indicate that conventional acupuncture therapy is effective in reducing the degree of pain in patients with TMD, especially those with myofascial pain symptoms.”(当サイトによる訳:我々の結果は、従来の鍼治療が TMD 患者の痛みの程度を減らすのに有効であること、とくに筋膜痛の症状をもつ患者で有効であることを示している。)🛑 評釈:結論は肯定的ですが、同じ抄録に「スプリントとは差なし」「筋性に限定しない群では差なし」「刺す偽鍼とは差なし」があります。当サイトは結論の1文だけを引きません。病型のサブグループ名は、原文では単に “TMD” です。筋性以外に限った群なのか、病型を限定しない群なのかは抄録から確定できないため、「筋性以外では差がなかった」とは書きません。刺す偽鍼の比較は I² が該当なし=1試験の可能性が高いです。⚠️ 本文の試験一覧には、ドライニードリングの試験と、同じ試験(List 1992)の本報と1年追跡の報告が並んでいるように読める箇所があり、当サイトは本文で確定できていません。VAS の範囲も未確認です。
  • Al-Moraissi EA, Goddard G, Christidis N. Are acupuncture and dry needling effective in the management of masticatory muscle pain: A network meta-analysis of randomised clinical trials. J Oral Rehabil. 2023;50(1):87-97.(PMID 36314254/DOI 10.1111/joor.13382・訂正=PMID 37489012)2019年9月までの RCT。確認の範囲=抄録まで(逐語)。訂正の中身と、鍼の試験数・人数は取得できていません。Results(逐語・2文)=”Both NMA and direct pairwise meta-analysis have shown that there was no difference between active treatment with either acupuncture or dry-needling when compared to active and inactive placebo in patients with TMD-M with respect to pain intensity, and PPT (p > .05).”/”However, there was a significant increase in MMO following dry-needling when compared to the placebo (very low-quality evidence).”/Conclusion(逐語・2文)=”Despite the short-term positive effect of MMO by dry-needling, this NMA could not show any pain-reducing effect in patients with TMD-M by acupuncture or dry-needling when compared to an active or inactive placebo.”/”Taken together, this NMA indicates that it is the placebo effect that accounts for the majority of the treatment effect of TMD-M, rather than a real therapeutic effect of acupuncture/dry-needling.”(当サイトによる訳:ネットワークメタ解析でも直接比較のメタ解析でも、咀嚼筋痛の患者において、鍼またはドライニードリングの実治療と、能動・受動のプラセボとのあいだに、痛みの強さと圧痛閾値の差はなかった。/ただし、ドライニードリングの後にはプラセボと比べて最大開口量の有意な増加があった〈非常に質の低いエビデンス〉。/ドライニードリングによる最大開口量への短期の好ましい効果はあるものの、本ネットワークメタ解析は、能動・受動のプラセボと比べて、鍼またはドライニードリングによる痛みの軽減効果を示すことができなかった。/総合すると、本ネットワークメタ解析は、咀嚼筋痛の治療効果の大部分を説明するのは、鍼/ドライニードリングの真の治療効果ではなく、プラセボ効果であることを示している。)🛑 評釈:最終文は著者の解釈です。開口量で差が出たのはドライニードリングで、鍼ではありません。
  • Liu L, Chen Q, Lyu T, Zhao L, Miao Q, Liu Y, ほか. Effect of acupuncture for temporomandibular disorders: a randomized clinical trial. QJM. 2024;117(9):647-656.(PMID 38710498/DOI 10.1093/qjmed/hcae094/PMC11537310/NCT04210921)北京中医医院・首都医科大学の単施設。DC/TMD で診断された60名を1:1。週3回×4週。偽鍼=Park sham device(先が丸く、柄の中に引っ込む針を、粘着パッドで皮膚に固定する非刺入の型)。確認の範囲=抄録は逐語、本文は1パス(編集長が機械照合。PPT・sEMG の群間差なしの文は編集長が PMC 全文で確認)。抄録の RESULTS AND CONCLUSION 節(逐語・全5文)=”The acupuncture group showed significantly reduced pain intensity compared to the sham group at week 4 (-1.49, 95% confidence interval [CI]: -2.32 to -0.65; P < 0.001) and week 8 (-1.23, 95% CI: -2.11 to -0.54; P = 0.001)."/"Acupuncture's effectiveness surpassed sham's at 4 weeks and lasted 8 weeks."/"Participants in the acupuncture group experienced significantly greater improvements in the 30% and 50% response rate, jaw opening and movement, GCPS, JFLS-20, DASS-21 and PSQI than those in the sham acupuncture group."/"There were no significant between-group differences in PPT and sEMG."/"In summary, acupuncture provided marked pain relief and improvement in physical and emotional function for patients with TMD compared with sham acupuncture."(当サイトによる訳:鍼群は偽鍼群と比べて、4週〈−1.49、95%CI −2.32〜−0.65〉と8週〈−1.23、95%CI −2.11〜−0.54〉で痛みの強さが有意に低かった。/鍼の有効性は4週で偽鍼を上回り、8週まで続いた。/鍼群は、30%・50%の反応率、開口と顎の動き、GCPS、JFLS-20、DASS-21、PSQI で、偽鍼群より有意に大きな改善を示した。/圧痛閾値〈PPT〉と表面筋電図〈sEMG〉には有意な群間差がなかった。/まとめると、鍼は偽鍼と比べて、TMD 患者に顕著な痛みの軽減と、身体的・情緒的な機能の改善をもたらした。)本文の限界(逐語)=”The external validity of this single-center trial is limited.”(当サイトによる訳:この単施設試験の外的妥当性は限られている。)
  • 🛑 評釈(Liu L 2024):①偽鍼は刺さない型です。②群間差がなかったのは PPT と sEMG の2つで、開口と顎の動き(jaw opening and movement)は鍼群が有意に改善しています。当サイトは「機器で測る指標は動かなかった」と一般化しません。③VAS の範囲は当サイトで確定できていません(値からは10段階と推定)。最小重要差と並べて「臨床的に意味がある」とは書きません。信頼区間の下限は −0.65 です。④`marked`(顕著な)は著者の語で、当サイトは強めも弱めもせずに訳しています。⑤著者は盲検の評価指標も報告していますが、当サイトは「盲検が成功した」とは書きません。⑥有害事象は鍼群30名中2名(皮下血腫と施術後の刺鍼痛)、偽鍼群は0名でした(逐語は安全性の章のボックス)。⑦施術の頻度の試験(Li S 2025)と同じ研究グループ(Li S・Wang W・Lin Y・Li B が両方の著者)です。
  • Goddard G, Karibe H, McNeill C, Villafuerte E. Acupuncture and sham acupuncture reduce muscle pain in myofascial pain patients. J Orofac Pain. 2002;16(1):71-76.(PMID 11889662)18名(鍼10・偽鍼8)。偽鍼=経穴でない皮膚への刺鍼。抄録の逐語(該当部分)=”Both groups showed a statistically significant reduction in VAS pain scores (P = .001).”/”There was no significant difference between the 2 groups.”/結論の該当文=”However, this reduction in pain was not dependent on whether the needling was performed in standard acupuncture points or in other areas of the skin.”(当サイトによる訳:両群とも VAS の痛みの点数が統計的に有意に低下した。/2群のあいだに有意差はなかった。/しかし、この痛みの軽減は、刺鍼が標準的な経穴に行われたか、皮膚の他の部位に行われたかによらなかった。)🛑 評釈:結論の文は “However” で始まり、直前の文は「鍼も偽鍼も痛みを減らした」という趣旨です(表題も同じ)。18名・1回の施術・機械的に誘発した痛みの試験で、一般化はできません。
  • その他の肯定側・否定側の統合(数値の扱いつき):La Touche R, ほか. Clin J Pain. 2010;26(6):541-550.(PMID 20551730)=8本の RCT のうち質が許容できたのは4本、統合 n=96 で偽鍼・プラセボより痛みの軽減が大きい〈SMD 0.83、95%CI 0.41〜1.25〉と報告し、同じ抄録で逐語 “Although the results described are positive, the relevance of these results was limited by the fact that substantial bias was present.”(当サイトによる訳:記述した結果は肯定的だが、大きなバイアスが存在したことによって、これらの結果の意義は限られた。)と書いています。著者の位置づけは「短期の鎮痛のための補助的な治療」です。/Jung A, ほか. J Dent. 2011;39(5):341-350.(PMID 21354460)=偽鍼対照の RCT 7本に絞った統合で、結論の逐語は “In conclusion, our systematic review and meta-analysis demonstrate that the evidence for acupuncture as a symptomatic treatment of TMD is limited.”(当サイトによる訳:結論として、我々の系統的レビューとメタ解析は、TMD の対症療法としての鍼のエビデンスは限られていることを示している。)抄録に数値はありません。/Smith P, ほか. J Dent. 2007;35(3):259-267.(PMID 17095133・英国・27名)は、結論で顔面の経穴の試験で Park sham device が信頼できる対照だったと書いています。
  • 日本の研究者による試験:明治国際医療大学のグループが、顎関節症の学生16名をトリガーポイント鍼と偽鍼に分けた小規模な試験を、英文(Itoh K, ほか. J Acupunct Meridian Stud. 2012;5(2):57-62./PMID 22483183)と和文(浅井紗世, ほか. 全日本鍼灸学会雑誌. 2010;60(4):728-736./DOI 10.3777/jjsam.60.728)で報告しています。🛑 評釈:著者の重複・16名・5回・群間比較の p 値(0.0152)が一致するため、同じ試験の報告である可能性が高く、当サイトは2本の試験として数えません。英文の抄録では、偽鍼群でも痛みが有意に下がっていました(p<0.050)。和文の論文は逐語で引かず、言い換えで紹介しています。
  • ⚠️ ドライニードリングを「鍼」と同じ棚に置かない理由:刺入部位の考え方・施術者・手技が異なります。ドライニードリングの統合(Kuzdzal A, Ernst E, Posadzki P, Wronski Z. Pain Rep. 2024;9(6):e1208./PMID 39574485)は、顎顔面痛の24 RCT・1,318名で、通常ケアへの上乗せは痛みに効果なし〈SMD −1.89、95%CI −5.81〜2.02、確実性は非常に低い〉と報告しています(顎関節症に限らない・信頼区間が非常に広い)。当サイトはこれを鍼の根拠には使いません。
エビデンスボックス④ 偽の処置を受けた群の痛みの変化を統合した研究(飛ばしてOK)
  • Porporatti AL, Costa YM, Réus JC, Stuginski-Barbosa J, Conti PCR, Velly AM, ほか. Placebo and nocebo response magnitude on temporomandibular disorder-related pain: A systematic review and meta-analysis. J Oral Rehabil. 2019;46(9):862-882.(PMID 31155735)RDC/TMD または DC/TMD で診断された痛みのある TMD の、プラセボ対照 RCT のプラセボ群の変化量を統合(量的統合26本)。確認の範囲=抄録まで(逐語)。Results の逐語(該当部分)=”Meta-analysis indicated mean variation on pain intensity for placebo therapy was higher on laser acupuncture with 45.5 mm point reduction, followed by avocado soya bean extract with 36 mm and amitriptyline 25 mg with 25.2 mm.”/Conclusions の1文目(逐語)=”Based on the available data, the placebo response could play a major effect on TMD pain management and may be responsible from 10% to 75% of pain relief.”(当サイトによる訳:メタ解析では、プラセボ治療の痛みの強さの平均変化は、レーザー鍼で最も大きく 45.5 mm の低下、次いでアボカド・大豆抽出物で 36 mm、アミトリプチリン 25 mg で 25.2 mm だった。/利用可能なデータにもとづけば、プラセボ反応は顎関節症の痛みの管理に大きな影響を及ぼしうるもので、痛みの軽減の10%から75%を担っている可能性がある。)
  • 🛑 評釈:①これはプラセボ群の群内の前後変化の統合で、鍼との群間比較ではありません。当サイトはこれを「鍼は効かない」の根拠にしません。②45.5 mm は「偽のレーザー鍼」を受けた群の値で、刺す鍼の偽鍼の値ではありません。本文の「治療によっては大きく」はこの幅を指しています。③日本顎関節学会の2023年のガイドラインも、付録でプラセボ群(未治療を含む)の1か月の痛みの変化を示していますが、定義が違うため2つの数値を並べて比べません。

スプリントと比べるとどうなるか——「差があるとは言えない」まで

歯科で作るスプリント(マウスピース型の口腔内装置)と、鍼を比べた研究もあります。

ここで言えるのは、差があるとは言えない、までです。

まず、コクランレビュー(決まった手順で試験を集めて評価する国際組織の報告書)です。

当サイトが調べた範囲では、顎関節症への鍼そのものを主題にしたコクランレビューは見当たりませんでした。

コクランが鍼に触れているのは、スプリントなどの「咬合への介入」を扱った2024年のレビューの中の、1つの比較だけです。

スプリントと鍼を比べた1試験・40名で、咀嚼時の筋肉の痛みに差があるとは言えず、確実性は「非常に低い」でした。

出所:Singh BP, ほか. Occlusal interventions for managing temporomandibular disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2024;9(9):CD012850(PMID 39282765)抄録の Main results(該当する1文のうち鍼の部分)。原文(英語)の全文はエビデンスボックス⑤
当サイトによる訳:スプリントは…鍼(針を用いるもの)と比べると、筋膜痛型 TMD の人の咀嚼時の筋痛に、ほとんど、または全く差がないかもしれない(MD 0.10、95%CI −0.80〜1.00、1試験40名)。ただしエビデンスは非常に不確実である。

2017年の統合でも、スプリントと比べた比較では差がありませんでした。

1992年のスウェーデンの試験は、治療直後の自覚的な評価では鍼群のほうが良好で、1年後の追跡では差がありませんでした。短期と1年を並べて見てください。

注意したいのは、比べる相手のスプリント自体の根拠も弱いことです。

同じコクランは57試験を集めても「結論が出ない」と書いています。だから「スプリントと同じくらい効く」とも「スプリントの代わりに鍼を」とも言えません。

エビデンスボックス⑤ スプリントと比べた研究の原文(飛ばしてOK)
  • Singh BP, Singh N, Jayaraman S, Kirubakaran R, Joseph S, Muthu MS, ほか. Occlusal interventions for managing temporomandibular disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2024;9(9):CD012850.(PMID 39282765/DOI 10.1002/14651858.CD012850.pub2/PMC11403706)57試験・2,846名。確認の範囲=抄録まで(逐語・編集長が機械照合)。
  • Main results の該当文(逐語・全1文)=”Occlusal splint (FHSS) may reduce muscle pain when chewing compared to no treatment (MD -1.97, 95% CI -2.37 to -1.57; 1 study, 84 participants with disc displacement without reduction), but may have little to no effect when compared to physical therapy (low-level laser) (RR 0.17, 95% CI 0.02 to 1.26; 1 study, 40 participants) or acupuncture (with needles) (MD 0.10, 95% CI -0.80 to 1.00, 1 study, 40 participants) in people with myofascial pain TMD, but the evidence is very uncertain.”(当サイトによる訳:全歯列を覆う硬いスタビリゼーションスプリントは、無治療と比べて咀嚼時の筋痛を減らすかもしれない〈MD −1.97、95%CI −2.37〜−1.57、1試験、非復位性円板転位の84名〉が、筋膜痛型 TMD の人では、理学療法〈低出力レーザー〉と比べても〈RR 0.17、95%CI 0.02〜1.26、1試験40名〉、鍼〈針を用いるもの〉と比べても〈MD 0.10、95%CI −0.80〜1.00、1試験40名〉、ほとんど、または全く効果がないかもしれない。ただしエビデンスは非常に不確実である。)
  • 全体の確実性(逐語)=”It is important to note that we have very low certainty in the evidence for all comparisons and outcomes assessed.”/Authors’ conclusions の1文目(逐語)=”This review included 57 RCTs with 2846 participants, but the final results are inconclusive, so the research questions remain unanswered.”(当サイトによる訳:評価したすべての比較とアウトカムについて、エビデンスの確実性は非常に低いことに留意することが重要である。/本レビューは57の RCT、2,846名を含んだが、最終的な結果は決定的ではなく、研究課題は答えられないままである。)
  • 🛑 評釈:①「差があるとは言えない」は「同等」ではありません。②この1試験は、条件(40名・筋性 TMD・鍼とスプリント)から Grillo 2015(ボックス⑨)である可能性が高いものの、当サイトは本文で同定していません。③顎関節症への鍼を主題としたコクランレビューについて:当サイトは PubMed で、鍼・ドライニードリング・電気鍼と顎関節症・顎顔面痛の語を組み合わせて Cochrane Database Syst Rev に限った式(4件)と、顎関節症・顔面痛の語だけで同誌に限った式(53件の表題をすべて確認)で検索しました(2026-09-26)。鍼を主題とするレビューもプロトコルも見つかりませんでした。コクラン・ライブラリ本体での検索はしていません(到達できないため)。当サイトは「コクランが鍼を否定した」とも「コクランは鍼を評価していない」とも書きません。
  • Wu JY 2017(ボックス③)のスプリント比較=MD −0.09(95%CI −0.69〜0.50)・有意差なし。
  • List T, Helkimo M, Andersson S, Carlsson GE. Acupuncture and occlusal splint therapy in the treatment of craniomandibular disorders. Part I. A comparative study. Swed Dent J. 1992;16(4):125-141.(PMID 1455324)110名・6か月以上の痛み・鍼/スプリント/対照の3群。抄録の逐語(該当部分)=”In this short-term study, acupuncture gave better subjective results (p < 0.001) than the occlusal splint therapy."(当サイトによる訳:この短期の研究では、鍼はスプリント療法より良い自覚的な結果をもたらした。)⚠️ 第3群の「対照」が何を受けたかは抄録に書かれておらず、当サイトは「無治療と比べて」とは書きません。
  • List T, Helkimo M. Acupuncture and occlusal splint therapy in the treatment of craniomandibular disorders. II. A 1-year follow-up study. Acta Odontol Scand. 1992;50(6):375-385.(PMID 1476055)同じ試験の1年追跡(80名)。抄録の逐語(該当部分)=”The result showed that 57% of the patients who received acupuncture and 68% of the patients treated with occlusal splint therapy benefited subjectively (p < 0.01) and clinically (p < 0.001) from the treatment over a 12-month period."/"No statistically significant difference was found between the two groups as to the assessment variables."(当サイトによる訳:12か月の期間にわたって、鍼を受けた患者の57%、スプリント療法を受けた患者の68%が、治療から自覚的に〈p<0.01〉、また臨床的に〈p<0.001〉利益を得た。/評価項目について、2群のあいだに統計的に有意な差は認められなかった。)🛑 評釈:Part I と Part II は同じ試験で、2本の試験として数えません。短期(自覚的な評価で鍼群が良好)と1年(差なし)を片方だけ書きません。

日本顎関節学会のガイドラインに、鍼の記載は見当たらない——「推奨しない」とは違う

日本には、日本顎関節学会の2つの文書があります。

『顎関節症初期治療診療ガイドライン2023改訂版』と、『顎関節症治療の指針2025』です。

2つとも全ページを確認しましたが、鍼の記載は見当たりませんでした。

ここで言葉を選ぶ必要があります。「日本の学会は鍼を推奨しなかった」「否定した」ではありません。

2023年のガイドラインが扱う治療は、一般開業医や総合病院の口腔外科の歯科医師が行う保存的な治療と、患者さん自身が行うセルフケアです(逐語はボックス⑦)。

そして、検討した治療法の一覧に、鍼は入っていません。検討して推奨しなかったのではなく、検討の対象に入っていないのです。

そもそも、日本の文書とBMJでは対象の段階が違う

日本のガイドラインが扱うのは「初期治療」です。

提案されたのは、自己開口訓練とスタビリゼーション型の口腔内装置(条件つきで低出力レーザーも)で、いずれも弱い推奨・エビデンスの確実性は「非常に低」でした。

指針2025は、学会のガイドラインは基本治療に対するもので、慢性痛に対するものではない、と自ら書いています。

いっぽう BMJ は、3か月以上の慢性痛が対象です。

ですから「日本は推奨せず、海外は推奨」という対立の図式では読めません。

段階が違う文書を、並べて見ているのです。

スプリントと低出力レーザーは、日本とBMJで評価が逆

もう1つ、知っておくと説明で迷わない事実があります。

スプリントも低出力レーザーも、日本のガイドラインは弱く推奨し、BMJ は条件付きで反対しています。

顎関節症は、鍼に限らず、治療全体の根拠が弱い領域です。

ガイドライン同士が割れているのは、鍼だけではありません。

エビデンスボックス⑦ 日本顎関節学会の2文書と、他のガイドラインの確認状況(飛ばしてOK)
  • 一般社団法人日本顎関節学会 編. 顎関節症初期治療診療ガイドライン2023改訂版. 日本顎関節学会; 2023.(学会公開 PDF=https://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/clinicalGL_TMJ_2023_RevisedVer.pdf )確認の範囲=全33ページをページ画像で確認し、編集長がテキスト抽出で「鍼」「acupunct」「鍼灸」「東洋」「代替」「補完」を検索して0件を確認(同じ抽出で「顎関節」は92件ヒットするため、テキスト層は読めています)。
  • 扱う治療の範囲(セッティングの項・逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「本診療ガイドラインで扱う治療は、顎関節症の専門医でない一般開業医歯科医師または総合病院口腔外科歯科医師が行う保存的・可逆的または非観血的治療、あるいは患者自身が行うホームケア(セルフマネージメント)である。」
  • 推奨文(逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「成人の顎関節症(筋痛または関節痛)に対する、初期治療(保存的治療・可逆的治療・非観血的治療)として、自己開口訓練およびスタビリゼーション口腔内装置装着を提案する(弱い推奨・エビデンスの確実性「非常に低」)。なお、保険適応外である低出力レーザー照射も、治療費が高額ではない場合は提案する(弱い推奨・エビデンスの確実性「非常に低」)。」
  • 検討対象(表3「想定した治療法一覧」・当サイトによる要約)=口腔内装置2種、鎮痛剤、筋弛緩薬、医療者が行う運動療法、患者自身が行う運動療法・マッサージ、低出力レーザー、TENS、冷温罨法、認知療法、天然歯の咬合調整、プラセボ治療(未治療を含む)。鍼・鍼灸は含まれていません。🛑 評釈:当サイトは「日本顎関節学会は鍼を推奨していない」「否定した」とは書きません。検討の対象に入っていない、が正確な言い方です。逆に「日本の学会の文書にも鍼の記載がある」とも書けません(見つかっていません)。著作権は学会が保有すると明記されているため、表は再現せず要約しています。
  • 一般社団法人日本顎関節学会 編. 顎関節症治療の指針2025. 日本顎関節学会; 2026年2月5日掲載.(学会公開 PDF=https://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2025.pdf )確認の範囲=全56ページをページ画像で確認し、上と同じ語で0件をテキスト抽出で確認。射程の文(逐語)=「なお、日本顎関節学会の診療ガイドラインは基本治療に対するものであり、慢性痛に対するものではない」。理学療法の項目はマッサージ・温罨法・マイオモニター等・TENS・低出力レーザー・運動療法です。薬物療法の表には、漢方薬(葛根湯,芍薬甘草湯など)が挙がっています(当サイトによる要約)。🛑 評釈:指針の序文には米国歯科研究学会(AADR)の基本声明の訳が載っていますが、その訳文には当サイトの禁止語を含む文があるため、逐語で引用していません。
  • GL 同士の食い違い(当サイトの整理):スタビリゼーション型の口腔内装置=日本は弱い推奨/BMJ は「取り外し可能な口腔内装置」に条件付きで反対。低出力レーザー=日本は(治療費が高額でない場合に)弱い推奨・保険適用外/BMJ は条件付きで反対。🛑 どちらの評価が正しいかを当サイトは判断しません。
  • 韓国の韓医学の診療ガイドライン:Kim H, Shim JW, Shin WC, Lee YJ, Ha IH, Kim KW, ほか. Korean Medicine Clinical Practice Guideline Update for Temporomandibular Disorders: An Evidence-Based Approach. Healthcare (Basel). 2023;11(16):2364.(PMID 37628561・CC BY 4.0)抄録の Conclusions(逐語)=”Acupuncture, pharmacopuncture, and Chuna manual therapy are recommended for TMD patients in clinical practice.”(当サイトによる訳:鍼、薬鍼、推拿〈チュナ〉手技療法は、臨床において TMD 患者に推奨される。)🛑 評釈:韓国の韓医師向けの文書で、日本の鍼灸師の制度とは異なります。日本顎関節学会の2023年のガイドラインは、韓国の(先行する)ガイドラインについて「推奨の強さは独自の基準であるため GRADE アプローチとは言えない」と評価しています(当サイトは、評価の対象が2023年の更新版と同じ文書かどうかを確認していません)。当サイトは「海外のガイドラインは鍼を強く推奨」とまとめません。
  • 確認できていないもの:英国 NICE の Clinical Knowledge Summaries(顎関節症)には到達できていません(2回とも 403)。米国口腔顔面痛学会(AAOP)のガイドライン(書籍)は取得していません。🛑 当サイトは「NICE は鍼に触れていない」「推奨していない」とは書きません。

現場で押さえること——病態の型、経過、受診をすすめる目安、歯科との連携

図解:日本顎関節学会の病態分類による顎関節症の4つの型(咀嚼筋痛障害・顎関節痛障害・顎関節円板障害・変形性顎関節症)と、型が重なりうること、鍼の試験の多くが筋肉の痛みの型を対象にしていることを示した図

病態の型

「顎関節症」は4つの型をまとめた名前

試験がどの型を対象にしていたかで、読み方が変わります。

Ⅰ型|咀嚼筋痛障害

顎を動かす筋肉の痛み

Ⅱ型|顎関節痛障害

顎の関節そのものの痛み

Ⅲ型|顎関節円板障害

a 復位性・b 非復位性

Ⅳ型|変形性顎関節症

関節の骨の変化をともなうもの

重複した診断が認められている(指針2025)/型を判断するのは歯科医師。鍼灸師は「どの型と言われているか」を聞く
この記事で扱う鍼の研究の対象(当サイトの整理)

筋肉の痛みの型を対象にした試験・統合が多い
2017年の統合:筋性では有意差、
筋性に限定しない群では有意差なし

模式図で、面積や割合を表すものではありません。分類は日本顎関節学会『顎関節症治療の指針2025』の病態分類(2013)にもとづいて当サイトが図にしたもので、原典にこの図はありません。各型の短い説明は当サイトによる言い換えです。下のカードは当サイトが本記事で扱う研究を並べたもので、指針の記述ではありません。2017年の統合の病型のサブグループ名は原文では単に「TMD」で、筋性以外に限った群かどうかは確定できません。診断は歯科医師が行うもので、この図は患者さんの型を判断するためのものではありません。出所=指針2025(日本顎関節学会)/Wu JY 2017(PMID 28248862)。

顎関節症は「4つの型」をまとめた診断名

指針2025は、顎関節症を、顎関節や咀嚼筋の痛み・関節の音・開口障害や顎の動きの異常を主な症状とする障害の「包括的診断名」としています。

中身は4つの型です。咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、関節円板の障害、変形性顎関節症。

型は重なることがあり、指針も重複した診断を認めています。

型を判断するのは歯科医師の役割です。鍼灸師の側では「どの型と言われているか」を聞いておく、くらいがちょうどいい距離です。

そのうえで知っておきたいのは、鍼の研究の多くが筋肉の痛みの型(筋性)を対象にしていることです。

「顎関節症に効く」ではなく「筋肉の痛みの型を対象にした試験では」と読むのが正確です。

円板の型については、日本の症例報告が1つあります。

関節円板がずれた型の1例で、症状は軽くなったものの、MRI で見た円板の位置は変わらなかったと報告されています。1例なので、効果の根拠にはなりません。

時間とともに改善することが多い病気——だから前後比較は読みにくい

指針2025は、顎関節症は時間の経過とともに改善することが多い疾患だと書いています。

患者さんへの説明でも、多くの症状は一時的であること、ただし慢性化する可能性もあることを伝えるよう書かれています。

BMJ のガイドラインも、急性の顎関節症の最大30%が慢性化しうると書いています。

5年間追いかけた研究では、約半数が「寛解」に分類されていました(追跡できなかった人が約3分の1いる点に注意が要ります。この割合は BMJ のガイドラインの引用によります)。

ここが、臨床でいちばん大事な話です。

「鍼をしたら良くなった」だけでは、時間の経過や偽の処置でも起きる改善と区別できません。前後比較の報告や自院の経験を読むときは、この点を差し引いてください。

施術より先に、歯科・医科の受診をすすめる場面

指針2025が「他の病気の可能性を考えるべき」として挙げている徴候を、鍼灸院での行動に置き換えました。

病名を推定するためのものではありません。各項目に対応する指針の記載は、ボックス⑧にあります。

  • 顎やこめかみが腫れている/熱がある/じっとしていても痛む → 施術せず、歯科・医科へ
  • 口がほとんど開かず、開けようとすると硬く止まる(指針の目安は開口25mm未満) → 歯科(顎関節を専門とする歯科医師)へ
  • しびれや麻痺など神経の症状がある/ほかの関節にも異常がある → 医科へ
  • こめかみの痛みに、噛むと顎が痛む・口が開きにくいが重なる → 施術せず、医科へ
  • 胸やみぞおちの痛みをともなう顎の痛み → 施術せず、救急へ
  • 1〜2日のうちに、急に口が開かなくなってきた → 施術せず、すぐに医科へ
  • 顎を打った・ぶつけたあとの痛みや開口障害 → 歯科・医科へ

そして最後に、大事な1点です。

ここに当てはまらないことは、他の病気がないことを意味しません。指針も、改善しない場合や途中で悪化した場合は、診断の見直しを含めて専門医による治療を推奨しています。経過が思わしくなければ、歯科に戻ってもらってください。

歯科と、どうつながるか

指針2025は、歯科の基本治療で2週間から1か月程度、長くとも3か月程度で改善しない場合は、専門医による治療を推奨しています。

2023年のガイドラインにも、3か月程度で改善しなければ専門施設・専門医に紹介することが望ましい、とあります。

これは歯科の側の目安ですが、鍼灸院にとっても「いつ歯科に戻ってもらうか」の手がかりになります。

歯科で指導されている開口訓練や口腔内装置は、自己判断でやめず、歯科医師に相談するよう伝えてください。

① 顎の痛みの相談を受けて、施術の前に確認するとき
「顎が痛いんですね。施術の前に、いくつか確認させてください。顎やこめかみが腫れていたり、熱があったりしませんか。」
(答えを待ってから)「口は、指が何本くらい入るくらい開きますか。ここ1〜2日で急に開かなくなった、ということはありませんか。」
(しびれ・胸やみぞおちの痛み・最近顎を打ったかどうかも、同じように1つずつ確認します)
「顎の痛みの陰に、別の病気が隠れていることもあります。それを見分けるのは歯医者さんやお医者さんの仕事なので、当てはまるものがあれば、先にそちらで相談してください。」
(当てはまらなかったとき)「今うかがった中には、先に受診をおすすめするサインは当てはまりませんでした。ただ、それで他の病気がないと分かるわけではないので、途中で変わったことがあれば、すぐ教えてくださいね。」

エビデンスボックス⑧ 病態分類・自然経過・受診の目安の一次資料(飛ばしてOK)
  • 定義(指針2025 p.7・逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「顎関節症は,顎関節や咀嚼筋の疼痛,顎関節雑音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症である。」/病態分類(指針2025 表1・当サイトによる要約)=咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)/顎関節痛障害(Ⅱ型)/顎関節円板障害(Ⅲ型:a 復位性・b 非復位性)/変形性顎関節症(Ⅳ型)。註に「重複診断を承認する。」
  • 国際的な診断基準 DC/TMD:Schiffman E, Ohrbach R, Truelove E, Look J, Anderson G, Goulet JP, ほか. J Oral Facial Pain Headache. 2014;28(1):6-27.(PMID 24482784)抄録の逐語(該当部分)=”Diagnostic criteria for other common intra-articular disorders lack adequate validity for clinical diagnoses but can be used for screening purposes.”(当サイトによる訳:他のよくある関節内障害の診断基準は、臨床診断には十分な妥当性を欠くが、スクリーニングの目的には使える。)同じ抄録は、痛みに関連する最も一般的な TMD の診断基準は感度 0.86 以上・特異度 0.98 以上と書いています。🛑 DC/TMD は診断の文書で、治療の推奨を出す文書ではありません。当サイトは「DC/TMD は鍼に触れていない」という書き方をしません。
  • 日本の症例報告:皆川陽一, 伊藤和憲, 今井賢治, 大藪秀昭, 北小路博司. 顎関節症IIIa型に鍼治療を試みた1症例 転位した関節円板と随伴症状に対する効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 2010;60(5):837-845.(DOI 10.3777/jjsam.60.837)MRI で復位性の円板転位(Ⅲa 型)とされた19歳女性の1例。当サイトによる要約=考察は、鍼治療で関節円板の位置は整わなかったものの、転位した円板に随伴する症状を改善させる効果が示唆された、と書いています。🛑 評釈:症例1例で、効果の根拠にはしません。「円板は戻らなかった」と「症状は軽くなった」を片方だけで引きません。図解にも載せていません。
  • 自然経過(指針2025 p.33-34・逐語)=「疫学的には多くの顎関節症の徴候と症状は一時的で,基本的に self-limiting であることを説明する。」「ただし,併存疾患や難治の背景としての持続因子,悪化因子の存在により慢性化する可能性についても説明しておく。」
  • BMJ ガイドライン本文 p.3(逐語)=”Up to 30% of acute TMD may become chronic (≥3 months in duration), and women are more likely to be affected than men.”(当サイトによる訳:急性の顎関節症の最大30%が慢性〈3か月以上〉になりうる。また、女性は男性より罹患しやすい。)
  • 5年の経過:Ohrbach R, Dworkin SF. Five-year outcomes in TMD: relationship of changes in pain to changes in physical and psychological variables. Pain. 1998;74(2-3):315-326.(PMID 9520246)抄録の逐語(該当部分)=”The cases were assigned to one of five pain pattern groups based on changes in average TMD pain from baseline to 5-year follow-up: (i) remitted (49% of the sample), (ii) high-improvement (14%), (iii) low-improvement (9%), (iv) same (13%), and (v) worse (16%).”(当サイトによる訳:症例は、ベースラインから5年後の追跡までの平均的な TMD の痛みの変化にもとづき、5つの痛みのパターン群のいずれかに割り付けられた――〈i〉寛解〈標本の49%〉、〈ii〉大きな改善〈14%〉、〈iii〉小さな改善〈9%〉、〈iv〉不変〈13%〉、〈v〉悪化〈16%〉。)🛑 評釈:BMJ ガイドライン本文はこの研究を「234/368名」で引いており、ここから計算すると追跡できなかった人は約36%です。原典の抄録には分母が書かれていないため、本文では「BMJ のガイドラインの引用による」と添えています。また同本文は小さな改善を「8%」と書いており、原典の抄録(9%)と食い違います。当サイトは原典の値を使っています。同じ抄録の結論は、5年後の痛みの経過は、診察で分かる所見の変化とはほぼ無関係だった、という趣旨です。
  • 受診の目安(指針2025 p.12・逐語)=「特に,炎症・感染徴候として顎関節・咀嚼筋の腫脹や,発熱,安静時痛があるような場合,器質的異常として 25 ㎜未満の強い抵抗のある(ハードエンドフィール)開口障害がある場合,全身・神経症状として神経脱落症状や他関節の異常がある場合は,鑑別すべき他疾患の可能性が高いので注意が必要である。」/巨細胞性動脈炎(p.14)=「臨床症状として頭痛,発熱,貧血などがあり,特に側頭部痛,痛みによる顎運動障害,硬性の開口障害を伴う。」/急性心筋梗塞(p.15)=「急性心筋梗塞の痛みは,胸部または上腹部の中心部に感じられ,狭心症よりも強く長く続き,腹部,背部,下顎,頸部に放散することがある。」/破傷風(p.15)=「開口障害が初発症状であり,1,2日のうちに筋緊張の増強とともに,開口障害が発現し,」(文の途中まで)/骨折・脱臼(p.16)の記述あり。/専門医への紹介(p.41)=「2週間から1か月程度,長くとも3か月間程度の治療で改善しない場合や治療途中で悪化した場合は,共存疾患の有無を含めた鑑別診断見直しの可能性を含め,専門医による専門治療を推奨する。」/2023年のガイドラインの付帯事項3=「3か月程度同じ治療を続けたにもかかわらず、症状改善が認められない場合は、早急に専門施設または専門医に紹介することが望ましい。」(いずれも原文が日本語で、当サイトの訳ではありません)
  • 🛑 評釈(受診の目安の扱い):①これらは歯科医師が他の病気を考えるための記述で、鍼灸師が病名を推定するための道具ではありません。本文では各項目を「受診をすすめる」という行動で閉じています。②指針に記載のある項目だけを挙げ、裏づけのない項目や語は入れていません(巨細胞性動脈炎の項に「新しく出現した」という限定、急性心筋梗塞の項に「圧迫感」の語は無いため、本文でも使っていません)。巨細胞性動脈炎について年齢の条件も指針に書かれていないため、書いていません。③開口の目安は、指針の数値(25 ㎜未満)のまま示し、指の本数などには置き換えていません(指針に横指での記載は無いため)。④「2週間から3か月」は歯科の基本治療の話です。⑤「当てはまらないことは他の病気がないことを意味しない」は、当サイトの注意書きです。この一文そのものに対応する指針の文は見つけていませんが、指針は改善しない場合・悪化した場合の見直しを求めています。⑥「標準的な警告徴候の一覧」が存在するかのようには書きません。本記事が扱うのは指針2025の記述だけです。⑦『鍼灸安全対策ガイドライン2025』も、発熱のある患者には施術を控えて医療機関への受診を勧めることが望ましい、としています(当サイトによる要約)。

顎関節症の鍼で使われた経穴——経穴でない点と比べた試験から言えること

「顎関節症に効くツボは?」と聞かれることもありますよね。

ここは、言えることと言えないことを分けて答えます。

言えるのは、研究でよく使われた経穴です。

2024年の統合(52研究)は、顎関節症では主に合谷(LI4)・頬車(ST6)・下関(ST7)が使われていたと報告しています。電気鍼の統合や北京の60名の試験でも、同じ経穴が使われていました。

ただし同じ統合は、52研究のうち45研究でバイアスのリスクが高く、すべてのアウトカムで確実性が「非常に低い」と書いています。

「この経穴が効く」という根拠にはなりません。

選穴を正面から試した試験もあります。

2020年のドイツの試験(49名)は、経穴に刺す群と経穴でない点に刺す群を比べました。痛みはどちらも約3割下がり、群間差はありませんでした。

著者は、効果を特定の経穴の選択に帰すことはできない、と書いています。

ただし対象は慢性化していない顎関節症で、鍼をしない群もありません。「ツボは関係ない」とまでは言えません。

証(東洋医学の診断)で対象を選んだ試験

2015年のブラジルの試験は、脈診で「肝陽上亢」と判定された筋性の女性40名を、鍼と咬合板に分けました。4週後、痛みも開口の幅も、両群で同じように改善していました。

証を使わずに選んだ群との比較はないため、「証を立てると効果が上がる」とは言えない設計です。なお、日本顎関節学会の指針に出てくる東洋医学系のものは漢方薬で、鍼ではありません。

エビデンスボックス⑨ 経穴と証に関わる研究の原文(飛ばしてOK)
  • Mohamad N, de Oliveira-Souza AIS, de Castro-Carletti EM, Müggenborg F, Dennett L, McNeely ML, ほか. The effectiveness of different types of acupuncture to reduce symptoms and disability for patients with orofacial pain. A systematic review and meta-analysis. Disabil Rehabil. 2024;46(24):5700-5716.(PMID 38357796)2023年6月15日までの52研究。確認の範囲=抄録まで(逐語)。抄録の逐語(該当部分)=”Among 52 studies, 86.5% (n = 45) exhibited high risk of bias.”/”Common acupoints, including Hegu LI 4, Jiache ST 6, and Xiaguan ST 7, were used primarily for patients with temporomandibular disorder [TMDs].”(当サイトによる訳:52研究のうち86.5%〈45研究〉が高いバイアスリスクを示した。/合谷〈LI4〉、頬車〈ST6〉、下関〈ST7〉などのよく使われる経穴が、主に顎関節症の患者に用いられた。)
  • 同じ抄録は、この2文のあとに、筋性の顎関節症の痛みなどが偽鍼/無治療と比べて有意に下がったというメタ解析の結果を書き、続けて次の文を置いています(逐語)=”However, the overall certainty of the evidence was very low for all outcomes as evaluated by GRADE.”(当サイトによる訳:しかし、GRADE で評価したエビデンスの全体の確実性は、すべてのアウトカムで非常に低かった。)🛑 評釈:効果量の数値は引用しません(信頼区間が示されていない/p=0.05 を有意と記述している/対照が偽鍼と無治療の合算)。肯定側の結果(有意に下がった)と否定側(確実性は非常に低い)が同じ抄録にあることは、両方残して書いています。経穴は「試験でよく使われた」という事実として紹介し、「効く経穴」とは書きません。
  • 電気鍼の統合:Sung SH, Kim D, Park M, Hwang SI, Yoon YJ, Park JK, ほか. Healthcare (Basel). 2021;9(11):1497.(PMID 34828543)逐語=”Eleven RCTs with 667 patients that used three acupuncture points (ST6, ST7, and LI4) were included.”(当サイトによる訳:3つの経穴〈ST6、ST7、LI4〉を用いた11の RCT、667名を含めた。)🛑 比較は電気鍼に他の治療を足すなどの上乗せ型で、偽鍼との比較ではありません。
  • 北京の60名の試験(ボックス③)の鍼群の経穴=両側の合谷(LI4)・陽陵泉(GB34)、患側の聴宮(SI19)・頬車(ST6)・下関(ST7)(本文1パス)。
  • Şen S, Orhan G, Sertel S, Schmitter M, Schindler HJ, Lux CJ, ほか. Comparison of acupuncture on specific and non-specific points for the treatment of painful temporomandibular disorders: A randomised controlled trial. J Oral Rehabil. 2020;47(7):783-795.(PMID 32077514)ドイツ・ハイデルベルク大学の単施設・二重盲検。49名(完了41名)。慢性化していない(GCPS の grade が3未満の)痛みのある TMD。週1回×4週・歯科医師が施術。抄録の逐語(該当部分)=”The two groups did not differ significantly at any time in terms of age and CPI.”/”However, CPI was significantly (P < .05) lower at T5 than at T0 for both groups (29.66 and 30.35% lower in group A and group B, respectively)."/Conclusions(逐語・2文)="Acupuncture on both specific and non-specific points reduces the non-dysfunctional pain of TMD patients."/"The effect of acupuncture on painful TMD cannot be attributed to the specific point selection."(当サイトによる訳:2群は、年齢と特徴的な痛みの強さ〈CPI〉について、どの時点でも有意に違わなかった。/ただし CPI は、両群とも T5 で T0 より有意に低かった〈A群で29.66%、B群で30.35%の低下〉。/特定の点・非特定の点のどちらへの鍼も、TMD 患者の機能障害をともなわない痛みを減らす。/痛みのある TMD に対する鍼の効果は、特定の点の選択に帰すことはできない。)🛑 評釈:①無治療群がないため、「どちらも効いた」とは言えません(時間の経過や文脈の効果と分けられません)。②対象は慢性化していない痛みで、BMJ ガイドラインの対象(慢性)とは違います。③当サイトは「選穴は無意味」とも書きません。
  • Grillo CM, Canales Gde L, Wada RS, Alves MC, Barbosa CM, Berzin F, ほか. Could Acupuncture Be Useful in the Treatment of Temporomandibular Dysfunction? J Acupunct Meridian Stud. 2015;8(4):192-199.(PMID 26276455)ブラジル・筋性 TMD の女性40名。脈診で「肝陽上亢」と判定された人を選び、鍼と平面咬合板に分けた4週の試験。抄録の逐語(該当部分)=”Visual analog scale score was reduced equally in the two groups (p < 0001), and the increase in range of mouth opening was significant in both groups."/"Both treatments reduced the pain intensity of myogenic TMD in the short term and may be considered strategies for control of chronic pain related to TMD."(当サイトによる訳:VAS の点数は2群で同じように低下し、開口域の増加も両群で有意だった。/どちらの治療も短期的に筋性 TMD の痛みの強さを減らし、TMD に関連する慢性痛のコントロールの方策として考慮されうる。)🛑 評釈:`p < 0001` は原文の表記のままです(小数点の脱落とみられます)。無治療群がなく、証を使わない群との比較もありません。
  • 指針2025 の漢方薬:薬物療法の表に、漢方薬(葛根湯,芍薬甘草湯など)が挙がっています(ボックス⑦・当サイトによる要約)。

施術の頻度は?——週1・2・3回を比べた小さな試験から言えること

「週に何回来ればいいですか」という質問にも触れておきます。

顎関節症では、週1回・2回・3回を無作為に比べた中国の小さな試験(各群14名)があります。

報告では、週3回の群の成績がほかの2群より良好でした。

ただし総回数も違い、鍼をしない群はなく、中国語の論文で本文は読めていません。しかも、先ほどの北京の60名の試験と研究者が重なります。

ですから「週3回が良い」とは言えません。

頻度の研究の読み方は肩こりへの鍼の頻度|「週何回」の根拠を一次資料までたどるでまとめています。

エビデンスボックス⑩ 頻度を比べた試験(飛ばしてOK)
  • Li S, Fu Y, Liu L, Wang W, Lin Y, Li B.〔中国語〕Clinical efficacy comparison of different acupuncture frequencies for pain of temporomandibular disorders: a randomized controlled trial. Zhongguo Zhen Jiu. 2025;45(4):453-459.(PMID 40229155/DOI 10.13703/j.0255-2930.20241204-k0004)各群14名の3群(週1回・週2回・週3回)・4週の治療+終了後4週の追跡。確認の範囲=英文抄録まで(編集長が機械照合)。当サイトによる要約=治療後・追跡時とも、週3回群が GCPS・JFLS-20・VAS で他の2群より低い値でした。
  • 🛑 評釈:①小規模です。②頻度と総回数が分離できていません。③鍼をしない対照群がありません。④中国語誌で、当サイトは本文を読んでいません。⑤北京の60名の偽鍼対照試験(Liu L 2024)と同じ研究グループ(Li S・Wang W・Lin Y・Li B)で、週3回の2本を独立した証拠として並べません。⑥当サイトは顎関節症の頻度の試験を系統的に検索していないため、「頻度を比べた試験は○本」とは書きません。この試験は当サイトの肩こりの頻度の記事でも同じ読み方で扱っています。

顎関節症の鍼治療は保険適用になるのか——療養費の6疾病と「6疾病以外の類症疾患」

鍼灸の療養費で名前が挙がっている6つの疾病(神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症)に、顎関節症は入っていません。

ただ、厚生労働省の留意事項通知には、慢性的な疼痛を主症とする6疾病以外の類症疾患について診断書が提出された場合、記載内容などから「医師による適当な治療手段のないもの」であるかを個別に判断して支給の適否を決める、という条項があります。顎関節症には歯科での治療手段もあるため、この要件との関係がどう判断されるかは保険者しだいです。

顎関節症がこの類症疾患に当たるかを判断した資料は、当サイトでは確認できていません。「当たる」とも「当たらない」とも書けません。

もう1つ、同じ通知には、同じ病気について保険の治療(療養の給付)と療養費を併用することは認められないという決まりがあります(診察・検査と同意書の交付は除かれます)。

歯科での保険の治療がこれに当たるかは確認できていないので、保険者に確かめてください。

療養費についての注記:この節の整理は、厚生労働省が公開している通知にもとづく二次情報としての整理で、通知番号は記載していません。支給の可否や算定の取扱いを判断するのは、保険者および地方厚生局です。本記事の記載は法的・行政的な助言ではありません。個別の取扱いは、加入されている保険者・所管の地方厚生局へご確認ください。手続きの全体像は鍼灸の療養費(保険)完全ガイド|6疾患・同意書・受領委任の実務【鍼灸師向け】で整理しています。

エビデンスボックス⑪ 療養費の支給対象と併用の条項(飛ばしてOK)
  • 厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」(最終改正 令和7年12月3日)別添1(改正反映版 PDF=https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/251208_07.pdf )確認の範囲=第2章1〜3と、第5章 施術料 の2・第6章 訪問施術料 の2を、編集長がテキスト抽出で確認。
  • 第2章3(逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症以外の疾病による同意書又は慢性的な疼痛を主症とする6疾病以外の類症疾患について診断書が提出された場合は、記載内容等から医師による適当な治療手段のないものであるか支給要件を個別に判断し、支給の適否を決定する必要があること。」
  • 第5章 施術料 の2(逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「療養費は、同一疾病にかかる療養の給付(診察・検査及び療養費同意書交付を除く。)との併用は認められないこと。」(第6章 訪問施術料 の2 にも同じ文があります)
  • 🛑 評釈:①顎関節症は6疾病の名前に含まれません。②第2章3があるため、当サイトは「顎関節症は療養費の対象外」と断定しません。③「慢性的な疼痛を主症とする」という限定を外して書きません。④顎関節症がこの類症疾患に当たるかを判断した一次資料は、当サイトでは確認していません。⑤同一疾病の療養の給付との併用を認めない条項はあります。顎関節症で歯科の保険診療を受けている期間がこれに当たるか(当てはめ)は、当サイトでは確認していません。⑥当サイトが読んだのは令和7年12月3日最終改正の PDF 版で、その後の改正反映版で文言が変わっていないかは未確認です。

顎関節症と頭痛——緊張型頭痛と重なりやすいという報告

顎関節症の患者さんには、頭痛を抱えている方も多いですよね。

2024年の統合(横断研究13本)は、緊張型頭痛のある人は、顎関節症をあわせ持つオッズが高いと報告しています(オッズ比 4.45)。

関連していたのは、痛みのある筋性(または筋性と関節性の混合)の顎関節症でした。

関節性だけの型や、痛みのない顎関節症とは関連がみられていません。

ただし横断研究なので、どちらが原因かは分かりません。

研究間のばらつきも大きく、当サイトは「併存が多い」までにとどめます。

国際的な診断基準(DC/TMD)には「顎関節症による頭痛」という診断もあります。

指針2025 の区別すべき疾患の説明にも、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛を含む頭痛の項があります。

緊張型頭痛の鍼の試験の二次解析では、顎の症状も測られていました。

6か月後に通常ケアと比べて顎の症状の改善が有意だったのは、鍼の群だけだったと報告されています。

同じ論文は、歯科的な所見が大きいと、緊張型頭痛への鍼の効果が落ちるようだ、とも書いています。

偽鍼のない非盲検の試験の二次解析なので、「鍼が顎関節症に特異的に効く」根拠にはなりません。

頭痛の側は、次の2本で扱っています。

頭痛への鍼|タイプ別エビデンスと受診をすすめる判断の総合ガイド/緊張型頭痛に鍼は効くのか|NICEの回数目安と偽鍼問題を整理

エビデンスボックス⑫ 頭痛との併存と、緊張型頭痛の試験の二次解析(飛ばしてOK)
  • Bizzarri P, Manfredini D, Koutris M, Bartolini M, Buzzatti L, Bagnoli C, ほか. Temporomandibular disorders in migraine and tension-type headache patients: a systematic review with meta-analysis. J Oral Facial Pain Headache. 2024;38(2):11-24.(PMID 39801093/PMC11810655)横断研究13本のメタ解析。確認の範囲=抄録まで(逐語)。Results の逐語(該当部分)=”Overall Risk of TMDs was statistically significantly higher than control groups in both Migraine (SDC: 11 studies; OR: 3.79 (2.43, 5.90); I² = 99%), with higher values in chronic migraine (OR: 24.27; (95% Confidence interval (CI): 5.84, 100.82); I² = 0%) and TTH populations (SDC: 8 studies; OR: 4.45 (2.63, 7.53); I² = 86%).”/”Headache patients didn’t show the risk of arthrogenous TMDs (4 studies; OR: 0.96 (0.54, 1.71); I² = 33%) or nonpainful TMDs (2 studies; OR: 1.10 (0.28, 4.26); I² = 84%).”(当サイトによる訳:TMD の全体のリスクは、片頭痛〈11研究、OR 3.79〈2.43〜5.90〉、I² 99%〉――慢性片頭痛ではさらに高い値〈OR 24.27、95%CI 5.84〜100.82、I² 0%〉――と緊張型頭痛の集団〈8研究、OR 4.45〈2.63〜7.53〉、I² 86%〉の両方で、対照群より統計的に有意に高かった。/頭痛の患者では、関節性の TMD〈4研究、OR 0.96〈0.54〜1.71〉〉や痛みのない TMD〈2研究、OR 1.10〈0.28〜4.26〉〉のリスクはみられなかった。)結論(逐語)=”Migraine and TTH appear to increase the risk of painful, myogenous or combined arthrogenous and myogenous TMDs.”(当サイトによる訳:片頭痛と緊張型頭痛は、痛みのある、筋性の、または関節性と筋性の混合の TMD のリスクを高めるようだ。)
  • 🛑 評釈:①横断研究なので、因果の向きは分かりません。結論の `increase the risk` は横断研究には強い表現で、当サイトは「併存が多い」と書きます。②I² が86〜99%と高く、慢性片頭痛の OR は信頼区間が非常に広いため、数値の大きさを強調しません。③本文の「関節性だけの型とは関連がみられていない」は、Results の関節性の TMD〈OR 0.96〉の文にもとづきます。
  • 指針2025 との接点:付図(DC/TMD の診察用紙の日本語版)の診断欄に「顎関節症による頭痛」の選択肢があります。また指針2025 本文の、区別すべき疾患の説明には「頭痛」の項があり、片頭痛・緊張型頭痛・三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛を含む)を説明しています(当サイトによる要約)。
  • Schiller J, Büttner A, Niederer D, Bökel A, Korallus C, Sturm C, ほか. Effects on temporomandibular disorder in the treatment of tension-type headache with acupuncture and therapeutic exercises. A secondary analysis from a randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2024;38(5):623-635.(PMID 38304940/PMC11005303)ドイツ・ハノーファー医科大学の外来。緊張型頭痛の96名を鍼・運動療法・併用・通常ケアの4群に分けた非盲検 RCT の、事前に計画された二次解析。確認の範囲=抄録まで(逐語)。Results の該当文(逐語・数値は「…」で省略)=”After 6 months, only acupuncture (…) showed a significant improvement compared to the usual care group (…).”(当サイトによる訳:6か月後、通常ケア群と比べて有意な改善を示したのは鍼だけだった。)Conclusions(逐語・2文)=”Only acupuncture had long-lasting positive effects on the symptoms of temporomandibular dysfunction.”/”Significant dental findings seem to inhibit the efficacy of acupuncture for tension-type headache.”(当サイトによる訳:顎関節の機能障害の症状に長く続く好ましい効果をもったのは鍼だけだった。/大きな歯科的所見は、緊張型頭痛に対する鍼の有効性を妨げるようだ。)🛑 評釈:①偽鍼のない非盲検の試験の二次解析で、対照は通常ケアです。②抄録の数値は、表記に不整合があり(平均か中央値かも不明)、当サイトは引用していません。③2文目の `seem to`(ようだ)を落としません。

顔・顎に刺すときの安全性——報告されているもの、記録されていないもの

顎関節症の鍼は、顔や顎のまわりに刺すことが前提です。

報告されているものから見ておきます。

北京の60名の試験では、鍼群30名のうち2名に、皮下の血腫と施術後の刺鍼の痛みがありました。偽鍼群では0名でした。

BMJ のガイドラインも、保存的な治療の害は軽いものにとどまるだろうというパネルの合意の中で、例として「鍼のあとの内出血」を挙げています。

ただし、これは「安全が確認された」という意味ではありません。

土台になった統合は、有害事象の根拠はすべて確実性が低い〜非常に低いと書いています。電気鍼の統合では、組み入れた試験のどれも有害事象を報告していませんでした。「報告がない」は「起きなかった」ではありません。

『鍼灸安全対策ガイドライン2025』は、易感染性患者(糖尿病患者、ステロイド服用者など)への施術後に感染症を発症した例が報告されている、と書いています。

顔に刺す前に、こうした背景がないかを確かめておきたいところです。

顎関節まわりの刺鍼の深さや避けるべき構造は、一次資料で確認できていないため書いていません。

ご自身が依拠している資料でご確認ください。

エビデンスボックス⑬ 安全性の一次資料と、有害事象の記録のされ方(飛ばしてOK)
  • Liu L 2024(ボックス③)の本文(逐語・1パス)=”Two in the acupuncture group reported AEs (subcutaneous hematoma and needling pain after treatment). No AEs occurred in the sham acupuncture group.”(当サイトによる訳:鍼群の2名が有害事象〈皮下血腫と施術後の刺鍼痛〉を報告した。偽鍼群では有害事象は起きなかった。)
  • BMJ ガイドライン本文 p.4(逐語・文の途中まで)=”The resulting consensus was that conservative therapies were likely associated with minor harms only (such as temporary stiffness after exercise, bruising after acupuncture), and most pharmacotherapy and supplements assessed were also likely associated with minor harms, …”(当サイトによる訳:その結果の合意は、保存的な治療はおそらく軽微な害〈運動後の一時的なこわばり、鍼のあとの内出血など〉にしか関連せず、評価した薬物療法とサプリメントの大半もおそらく軽微な害に関連する、というものだった。…)🛑 評釈:これはパネルの合意で、鍼の試験で測った有害事象の頻度ではありません。⚠️ ガイドライン本文は、試験での害の報告が不十分だったためにパネルの専門家に調査したという趣旨を述べていますが、当サイトはこの一文の逐語を取り直していないため、ここでは引用していません。
  • Yao 2023(ボックス②)=有害事象の根拠はすべて確実性が低い〜非常に低い。
  • Sung SH 2021(ボックス⑨)の逐語=”All RCTs did not report adverse events.”(当サイトによる訳:すべての RCT が有害事象を報告していなかった。)🛑 評釈:「報告がなかった」は「起きなかった」ではありません。当サイトは「顎関節症への鍼は安全」「副作用はない」と書きません。
  • Sung JY, Kim JM, Lee JU, Lee YH, Lee SB. Multiple facial candidal abscesses after self-administered acupuncture in a patient with undiagnosed diabetes mellitus: a case report. BMC Complement Med Ther. 2021;21(1):170.(PMID 34112168/PMC8193879)抄録の逐語(該当部分)=”To our knowledge, this is the first case of multiple facial candidal abscesses caused by self-administered acupuncture in an undiagnosed diabetes mellitus patient.”(当サイトによる訳:我々の知る限り、これは未診断の糖尿病患者における、自己施術の鍼による顔面の多発性カンジダ膿瘍の最初の症例である。)🛑 評釈:自己施術で、鍼灸師の施術ではありません。著者自身が「最初の症例」と書いており、まれな報告です。本文では名前を出さず、易感染性への注意は下の安全対策ガイドラインの記載で示しています。
  • 鍼灸安全対策ガイドライン2025年版(改訂第2版)(全日本鍼灸学会 臨床情報部 安全性委員会 編・発行/https://safety.jsam.jp/img/file1.pdf )「注意すべき場合」項4(逐語・原文が日本語のため当サイトの訳ではありません)=「易感染性患者(糖尿病患者、ステロイド服用者など)への施術後に感染症を発症した例が報告されている。」⚠️ このガイドラインの「注意すべき部位」に、顔面・側頭部・耳の前(顎関節の周囲)の項目があるかどうかは、当サイトでは確認できていません。「記載がない」という意味ではありません。
  • ⚠️ 名前を出していない報告:顔面の刺鍼による側頭下窩の膿瘍の症例報告(中国語)の存在を書誌で確認していますが、表題しか取得していないため、中身は書いていません。

患者さんにどう話すか——効果を約束しない説明の例

ここまでの内容を、患者さんとの会話に落とします。

ポイントは3つです。慢性か急性か、歯科の治療をやめないこと、そして「分かっていること」と「分かっていないこと」を分けて伝えることです。

② 「顎関節症に鍼って効くんですか?」と聞かれたとき
「海外の医学誌に出た診療ガイドラインでは、3か月以上続く顎の痛みに、鍼は『条件付き』の推奨、つまり患者さんの考え方や好みに合わせて選ぶかどうかを決める選択肢の1つとして挙がっています。ただ、それより先に勧められているのは、顎の運動や、痛みとのつき合い方を学ぶ方法です。
研究を見ると、全身の健康状態を尋ねる質問票の、体の面の点数では、中くらいの確かさの報告があります。痛みそのものについては、確かさが高いと言える報告はまだありません。
感じ方や変化の出方は人によって違います。歯医者さんの治療と併用して、変化を一緒に確かめていきましょう。」

③ 「マウスピースをやめて、鍼だけにしてもいいですか?」と聞かれたとき
「マウスピースをやめるかどうかは、作ってくれた歯医者さんに相談してくださいね。私が決めることではないんです。
鍼とマウスピースを比べた研究はありますが、はっきりした差があるとは言えない、という結果です。どちらが上ということは言えません。
顎の痛みは、時間とともに軽くなっていく方も多い病気です。2〜3か月たっても変わらないときは、歯医者さんにもそう伝えてください。」

トーク例の使い方について:これらは会話の例で、施術の効果を約束するものではありません。自院のウェブサイトやチラシにこの文を転記するときは、そのまま使わず、最新の原典と、関係法令にくわしい専門家への確認を経てください。とくにチラシなどの広告は、あはき法7条で広告できる事項が限られており、症状名や施術の効果を書くことはできません。ウェブサイトにも、景品表示法などの法令が及びます。

この記事で書かなかったこと・書けなかったこと

正直コーナーです。とくに大事な3つを先に挙げます。

  1. BMJ のガイドラインの土台になった統合の本文は読めていません。鍼の痛みの効果量、鍼の試験数、偽鍼の型は分かっていません。
  2. 選穴・手技・刺鍼深度の処方と、歯科の治療の選び方は書いていません。後者は鍼灸師が語る範囲ではありません。
  3. 顎関節症への鍼を主題としたコクランレビューは、当サイトの検索範囲では見つかりませんでした。英国 NICE の要約と米国口腔顔面痛学会のガイドラインは確認できていません。確認していない文書について「鍼を推奨していない」とは書いていません。
このほかに書かなかったこと(4項目・飛ばしてOK)
  • 数値の整合が取れない統合、比較の相手が混在する統合、順位だけのネットワークメタ解析は、数値を引用していません。2026年の統合も、対照が混在しているため数値を出していません。
  • ドライニードリングとレーザー鍼は、鍼と別の手技として扱いました。いずれも数値を鍼の根拠にしていません。
  • 日本の有病率の数値は出していません。学会の指針が引く調査の分母に食い違いがあり、原典を確認できていないためです。
  • 自院ホームページの表現例とFAQは、この版では設けていません。

まとめ|顎関節症への鍼について、言えること・言えないこと

  • 言える:BMJ のガイドラインは、3か月以上の顎関節症の痛みに、偽の処置などと比べて鍼を「条件付き推奨」にしている/言えない:強い推奨と同じ扱い(痛みへの根拠は低い〜非常に低い)
  • 言える:刺さない偽鍼と比べた試験や統合では差が出ている/言えない:「偽鍼より効く」の一般化(刺す偽鍼や経穴でない点とは差が出ていない研究がある)
  • 言える:スプリントと比べて、差があるとは言えない/言えない:「スプリントと同等」も「スプリントより上」も
  • 言える:日本顎関節学会のガイドラインと指針に、鍼の記載は見当たらない/言えない:「日本の学会は鍼を否定した」(検討の対象外)
  • 言える:時間とともに改善することが多く、偽の処置でも痛みは下がる/言えない:「鍼をしたら良くなった」だけで鍼の効果と言うこと
  • 言える:腫れ・発熱・強い開口制限・胸の痛みなどがあれば、施術より先に受診をすすめる/言えない:「当てはまらないから大丈夫」
  • 言える:療養費の6疾病に顎関節症の名前はない/言えない:「一切使えない」(6疾病以外の類症疾患の個別判断の条項がある。ただし同じ病気の保険診療との併用はできない決まりもある)

関連記事

更新履歴:本記事は初版です。BMJ のガイドラインや日本顎関節学会の文書が改訂された場合、顎関節症への鍼を扱うコクランレビューが出た場合、本文を確認できていない統合やガイドラインの本文を確認できた場合、療養費の通知が改正された場合に追記・修正します。

引用について:本記事の引用は著作権法32条にもとづく引用です。英語の文献の日本語は、すべて当サイトによる訳です(他者の公式訳は用いていません)。日本顎関節学会の文書・厚生労働省の通知・鍼灸安全対策ガイドラインの引用は、日本語で書かれた原文をそのまま引いたもので、当サイトの訳ではありません。表・図・インフォグラフィックは再現せず、要約で紹介しています。日本語の論文は逐語では引かず、言い換えで紹介しています。文の途中を省いた引用には「…」を付けています。

参考文献

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  2. Yao L, Sadeghirad B, Li M, Li J, Wang Q, Crandon HN, et al. Management of chronic pain secondary to temporomandibular disorders: a systematic review and network meta-analysis of randomised trials. *BMJ*. 2023;383:e076226. PMID: 38101924. DOI: 10.1136/bmj-2023-076226 ※抄録まで。本文未取得
  3. Singh BP, Singh N, Jayaraman S, Kirubakaran R, Joseph S, Muthu MS, et al. Occlusal interventions for managing temporomandibular disorders. *Cochrane Database Syst Rev*. 2024;9(9):CD012850. PMID: 39282765. DOI: 10.1002/14651858.CD012850.pub2 ※スプリント vs 鍼の1比較のみ使用
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  6. Liu L, Chen Q, Lyu T, Zhao L, Miao Q, Liu Y, et al. Effect of acupuncture for temporomandibular disorders: a randomized clinical trial. *QJM*. 2024;117(9):647-656. PMID: 38710498. DOI: 10.1093/qjmed/hcae094 ※非刺入の偽鍼。文献19と同じ研究グループ
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  8. La Touche R, Goddard G, De-la-Hoz JL, Wang K, Paris-Alemany A, Angulo-Díaz-Parreño S, et al. Acupuncture in the treatment of pain in temporomandibular disorders: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. *Clin J Pain*. 2010;26(6):541-550. PMID: 20551730. DOI: 10.1097/AJP.0b013e3181e2697e
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  12. 浅井紗世, 伊藤和憲, 浅井福太郎, 今井賢治, 北小路博司. 大学生の顎関節症被験者に対する鍼治療の試み 顎機能に関するアンケート調査と鍼治療の効果に関する臨床試験. *全日本鍼灸学会雑誌*. 2010;60(4):728-736. DOI: 10.3777/jjsam.60.728 ※言い換えで紹介
  13. Kuzdzal A, Ernst E, Posadzki P, Wronski Z. Dry needling for orofacial pain: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. *Pain Rep*. 2024;9(6):e1208. PMID: 39574485. DOI: 10.1097/PR9.0000000000001208 ※ドライニードリング。鍼の根拠には不使用
  14. Porporatti AL, Costa YM, Réus JC, Stuginski-Barbosa J, Conti PCR, Velly AM, et al. Placebo and nocebo response magnitude on temporomandibular disorder-related pain: A systematic review and meta-analysis. *J Oral Rehabil*. 2019;46(9):862-882. PMID: 31155735. DOI: 10.1111/joor.12827 ※プラセボ群の群内変化の統合
  15. List T, Helkimo M, Andersson S, Carlsson GE. Acupuncture and occlusal splint therapy in the treatment of craniomandibular disorders. Part I. A comparative study. *Swed Dent J*. 1992;16(4):125-141. PMID: 1455324
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  18. 一般社団法人日本顎関節学会 編. 顎関節症治療の指針2025. 日本顎関節学会; 2026年2月5日掲載. https://kokuhoken.net/jstmj/publication/file/guideline/guideline_treatment_tmj_2025.pdf ※全ページ確認
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  28. 厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」(最終改正 令和7年12月3日)改正反映版 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/251208_07.pdf ※第2章1〜3、第5章の2・第6章の2を確認。通知番号は本文に記載していません
  29. Bizzarri P, Manfredini D, Koutris M, Bartolini M, Buzzatti L, Bagnoli C, et al. Temporomandibular disorders in migraine and tension-type headache patients: a systematic review with meta-analysis. *J Oral Facial Pain Headache*. 2024;38(2):11-24. PMID: 39801093. DOI: 10.22514/jofph.2024.011
  30. Schiller J, Büttner A, Niederer D, Bökel A, Korallus C, Sturm C, et al. Effects on temporomandibular disorder in the treatment of tension-type headache with acupuncture and therapeutic exercises. A secondary analysis from a randomized controlled trial. *Clin Rehabil*. 2024;38(5):623-635. PMID: 38304940. DOI: 10.1177/02692155241229282 ※数値は引用していません
  31. Sung JY, Kim JM, Lee JU, Lee YH, Lee SB. Multiple facial candidal abscesses after self-administered acupuncture in a patient with undiagnosed diabetes mellitus: a case report. *BMC Complement Med Ther*. 2021;21(1):170. PMID: 34112168. DOI: 10.1186/s12906-021-03343-w ※自己施術の症例
  32. 坂本歩 監修/公益社団法人全日本鍼灸学会 臨床情報部 安全性委員会 編・発行. 鍼灸安全対策ガイドライン2025年版(改訂第2版). 2025. https://safety.jsam.jp/img/file1.pdf

本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。顎関節症の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

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