コクランの腰痛レビューは1本あります。ただしこの1本は、3つの違う答えを出しています。
比べた相手が3種類あり、表も3枚に分かれているからです。どこがどう分かれたのかを、原著の記述に沿って追いかけます。
■ この記事が扱う論文
Mu J, et al.(著者6名). Acupuncture for chronic nonspecific low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Dec 11;12(12):CD013814
PMID 33306198/DOI 10.1002/14651858.CD013814/PMC PMC8095030
デザイン:システマティックレビュー+メタ解析(無作為化比較試験のみ。準無作為化試験は除外)
組み入れ:33研究(37本の論文)・8,270名
対象:18歳以上/3か月を超えて続く、特異的な病因のない腰痛
文献検索の期限:2019年8月29日
成り立ち:原著は、以前のコクランレビューからの「分割(a split from)」と書いています
日本語版:平易な要約の日本語版があります(本文と表は英語のままです)。訳=季律、杉山伸子。当サイトの訳ではありません(→ コクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所)
※ 当サイトの確認範囲は、後半の「当サイトがどこまで原著を確認したか」に。
この論文が示したこと。結論は1つではありません。比べた相手ごとに3枚の表に分かれ、答えが違います。そして著者は「臨床的に重要な差」の目安を先に決めており、表の Comments 列に「届いたかどうか」を自分で書き込んでいます。
施術直後の疼痛(0〜100の尺度)で見ると——偽鍼と比べて −9.22。通常ケアと比べて −10.26。この2つの行には「事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった」と書かれています。そして何もしないのと比べて −20.32。疼痛の3行で、その但し書きが付いていないのはここだけです。(信頼区間・試験数・確実性の等級は、このあとの各節と図に置きました)
この論文が示していないこと。急性腰痛のレビューではありません(3か月を超えるものが対象)。原因の特定できる腰痛と、妊娠中・産後の腰痛も除外(次の見出しで詳しく)。文献検索は2019年8月29日まで。そして表に載っている追跡時点は「直後」と「短期」だけです。
人に説明するときの言い方は、後半の「このレビューを同業者に引くときの引き方」に。
この記事は「数字の出どころ」を確かめる場所です。腰痛に鍼を使うかどうかの臨床判断は腰痛への鍼のエビデンス|ACP推奨・NICE非推奨をどう説明するかに。本記事はそちらを置き換えるものではありません。
(目次:WordPressのプラグインで自動生成)
このレビューが対象にしたのは、どこまでの腰痛か
最初に、いちばん外しやすいところを潰します。このレビューの対象は、鍼灸院に来る腰痛の全部ではありません。
「慢性」は3か月を超えたところから数えている
対象は18歳以上の成人で、特異的な病因のない、3か月を超えて続く痛みと定義されています。
もう1つ、落としやすい条件。急性と慢性が混ざった集団の研究も、条件つきで入っています。参加者の過半数(原文の表記で「50%超」)が慢性である場合か、慢性の群だけ結果を取り出せる場合です。
言い換えると、半数近く(50%未満)まで急性の症例が混ざった試験が含まれうるということです。
「非特異的」から外れるもの——下肢へ放散する痛みと妊娠・産後
除外されたものが、鍼灸師にとってはむしろ重要です。原著が挙げているのは、感染、転移性疾患、腫瘍、変形性関節症、関節リウマチ、脊椎骨折、椎間板の突出、そして膝より下へ放散する坐骨神経痛のような神経根症状。さらに、妊娠中と産後に生じる腰痛も除外されています。
下肢症状のある腰痛が外れている点は押さえておきたいところです。日常臨床で出会う腰痛のうち、このレビューが答えている範囲は思ったより狭い、ということです。
入った試験と、入らなかった試験
組み入れられたのは33研究(論文としては37本)、合計8,270名です。
ただ、この総数を「多様な蓄積がある」と読むと、少しずれます。ドイツで実施された7研究だけで5,572名、参加者の67%を占めています。総数の3分の2が、少数の巨大な試験から来ているわけです。⚠️ その7研究がどれかは、組み入れ試験の一覧に到達できておらず、当サイトでは確認できていません。
そしてもう1つ、数が合わない箇所があります。
抄録には「16試験が、鍼を偽鍼・通常ケア・無治療と比較した」とあります。ところが結果の本文では、偽鍼と比べた試験が9件、無治療が5件、通常ケアが8件。足すと22件で、16と合いません。理由はいくつも考えられますが、当サイトは一次確認できていません。(各試験の参加者数はエビデンスボックス①に)
コクランCD013814で、鍼が比較された3種類の相手ごとの施術直後の疼痛の差と、レビュー著者が事前に定めた臨床的に重要な差の目安を並べた図
施術直後(7日未満)の疼痛(0〜100の尺度)を、比べた相手ごとに並べました。いちばん上の棒は、著者が結果を見る前に決めていた「臨床的に重要な差」の目安です。棒の長さは、符号を外した値の大きさを表しています(原著はマイナス表記)。
3つは別々の解析で、足し算も直接比較もできません。
・試験数と参加者数は解析ごとに違います(順に7試験1,403名/5試験1,054名/4試験366名)。母数と格下げの理由はエビデンスボックス①に。
・「線に届いた/届かない」は著者が表の Comments 列に書いた評価で、当サイトの判定ではありません。
・信頼区間が0をまたがないことは、臨床的に意味のある差があることと同じではありません。
・参加者を盲検することを意図した対照は偽鍼だけです。無治療・通常ケアと比べた試験では、参加者は自分がどちらの群かを知っています。
・確実性(GRADE)は効果の大きさではなく、推定値の確からしさに付けられる等級です。
この分かれ方そのものは鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比に。ここでは CD013814 の表の中身だけを見ていきます。
偽鍼と比べたとき
偽鍼(シャム鍼=本物に似せた対照用の刺激。→ 偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題)と比べた表は、1枚目です。
疼痛は −9.22(95%CI −13.82〜−4.61)、7試験1,403名、確実性 LOW。信頼区間は0をまたいでいません。ところが同じ行の Comments 列に、著者はこう書いています。「その差は、事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった」。
著者が事前に決めていた目安は、疼痛で0〜100の尺度で15点、または30%の変化。9.22は、そこに届いていません。
ここで、物差しが2本走っていることに注意してください。1本目は「差があると言えるか」(信頼区間が0をまたぐかどうか)。2本目は「その差が、臨床的に意味のある大きさか」(著者が先に引いた線に届くかどうか)。この行は、1本目を通って2本目で止まっています。
機能(HFAQ・0〜100で高いほど良い)は 3.33(−1.25〜7.90)、5試験1,481名、確実性 VERY LOW。信頼区間が0をまたいでいます。差の向きすら定まっていません。
生活の質(SF-12)は 2.33(0.29〜4.37)、3試験1,068名、確実性 LOW。信頼区間は0をまたいでいませんが、Comments 列には疼痛と同じ「達しなかった」。
有害事象は RR 0.68(95%CI 0.46〜1.01)、4試験465名、確実性 LOW。表には「1,000人あたり」の数値も並んでいますが、鍼群の側は相対効果から算出した値であって、観測された発生率ではありません(列の見出しと逐語はエビデンスボックス①に)。
⚠️ これを「鍼のほうが有害事象が少なかった」と読むことはできません。95%信頼区間の上限が 1.01 まで伸びており、著者自身は「同程度の発生率」と評価しています。
表に挙がっている事象は、刺入部の痛み・血腫・出血・腰痛の悪化・腰痛以外の痛みです。
ただし、33研究のうち、有害事象の数値が表に載っているのは偽鍼比で4試験465名、通常ケア比で1試験74名だけ。無治療と比べた表には行そのものがありません。有害事象を報告した試験が少ないことは、安全性が確かめられたことを意味しません。
「何もしない」と比べたとき
2枚目の表は、無治療(no treatment)と比べたものです。
疼痛は −20.32(95%CI −24.50〜−16.14)、4試験366名、確実性 MODERATE。3枚の表の疼痛の行では、確実性がいちばん高い結果です。そしてこの行の Comments 列には「達しなかった」の但し書きが付いていません。著者が引いた15点の線を超えています。抄録も、この緩和を greater and clinically important pain relief(より大きく、臨床的に重要な疼痛の緩和)と書いています。
機能(HFAQ)は 11.50(7.38〜15.84)、5試験2,960名、確実性 MODERATE。信頼区間は0をまたいでいません。
ところが——この行の Comments 列には「事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった」と書かれています。著者の目安は原文の表記で「HFAQ(0〜100)で12%」、推定値は「11.50点」。単位が違うので、当サイトは換算していません。届いたかどうかを判断しているのは著者です。
ここが、この記事でいちばん見ていただきたいところです。抄録は、同じ結果について背部機能が改善した(improved back function)と書き、表の Comments 列は「達しなかった」。同じ著者が、同じ数字を、置き場所によって違う印象で書いているわけです。どちらかが間違っている、という話ではありません。
もう1つ。同じ「無治療と比べたとき」でも、疼痛は366名、機能は2,960名。8倍以上違います。「この比較は◯◯名」と一括りにはできません。
そして、この表では生活の質も有害事象も「報告なし」です。データが無いので、「何もしない場合と比べて安全だった」とは書けません。
無治療群を置いた試験で効果が大きく出やすい仕組みは、待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組みに。ただし CD013814 の「無治療」群が待機リストの設計だったかは、当サイトは確認できていません。原著の語は “no treatment” です。
通常ケアと比べたとき
3枚目の表は、通常ケア(usual care)と比べたものです。
コクランCD013814の通常ケア対照の表に並んだ5つのアウトカムと、レビュー著者が各行に書いた評価の違いを比較した図
通常ケアと比べた表の5行を、そのまま並べました。各カードの一文は、著者が Comments 列に書いた評価です(当サイトの判定ではありません)。
0〜100の尺度で −10.26(95%CI −17.11〜−3.40)。信頼区間は0をまたいでいません。著者が先に引いた線は15点。表の評価=「事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった」
9.78(95%CI 3.54〜16.02)。著者が先に引いた線は、原文の表記で「HFAQ(0〜100)で12%」(推定値は点で示されています。当サイトは換算していません)。表の評価=同じく「達しなかった」
SF-12で 4.20(95%CI 2.82〜5.58)。著者が先に引いた線は3.29。この表の5行で、「達しなかった」が付いていないのはこの行だけです。表の評価には、元の研究がSF-12の合計を報告していないことだけが書かれています
SF-12で 1.90(95%CI 0.25〜3.55)。信頼区間は0をまたいでいません。それでも表の評価は「達しなかった」。著者が先に引いた線は3.77だからです。この行の通常ケア側は平均48.6点(SD 11.6)。48.6点の集団で1.90の差、という縮尺です
RR 3.34(95%CI 0.36〜30.68)。通常ケア群の想定リスク26/1,000に対し、そこから算出した鍼群の対応するリスクは86/1,000(9〜787)。実際に報告された件数として表には「鍼群で3件(痛み2件・循環の問題1件)、通常ケア群で1件(続く痛み)」と書かれています。信頼区間が0.36から30.68まで伸びており、「3.3倍多い」と読むことはできません
5行は同じ1枚の表の行ですが、母数も追跡時点もばらばらです。
・③④は1試験731名だけ、⑤は1試験74名だけから来ています。
・「達しなかった」は著者が表に書いた評価で、当サイトの判定ではありません。
・信頼区間が0をまたがないことと、臨床的に意味のある差があることは別です(④がその実例)。
・⑤の「1,000人あたり」は例示的な比較リスクで、鍼群の側は算出値です。観測された発生率ではありません。
・通常ケアと比べた試験では参加者を盲検できません。参加者は自分がどちらの群かを知っています。
・確実性(GRADE)は効果の大きさではなく、推定値の確からしさに付けられる等級です。
・⑤について、信頼区間の広さを「差がない証明」と読むこともできません。
この5行のうち、引っかかるのは④です。信頼区間は0をまたいでいないのに、評価は「達しなかった」。さきほどの2本目の物差し(著者が引いた3.77の線)に届いていないからです。
「統計的に差がある」と「臨床的に意味がある」が、1つの表の隣り合う2行で分かれている。③(4.20/線は3.29)と④(1.90/線は3.77)を並べると、そのまま見えます。
通常ケアに何かを足す設計については上乗せ試験(add-onデザイン)は何を測るか|通常ケア+鍼に。ただし CD013814 のこの比較がその設計だったかは、当サイトは確認できていません。原著の語は “usual care” です。
このレビューの限界として、原文から確認できたこと
🛑 当サイトは、このレビューの Discussion(考察)の本文に到達できていません。以下は抄録・表の脚注・平易な要約から取れた記述だけで、「著者が挙げた限界のすべて」ではありません。また、著者自身が限界として述べていることを確認できたのは1つめと2つめまでです。3つめ以降は表と抄録から当サイトが読み取ったもので、著者がこれを限界として挙げたかどうかは確認できていません。経路と理由は次の節に。
1つめ。盲検化ができないことによるバイアスです。多くの試験で、術者や参加者を隠せないことによるリスクが高いと書かれています(→ 鍼で二重盲検が難しい理由|盲検化の4層を分けて読む)。
2つめ。格下げの理由が、表ごとに違います。使われているのはバイアスのリスク・非一貫性・不精確の3つですが、中身は表ごとに別もの。引くときは「表◯の脚注a」まで書かないと、別の内容を指します(内訳はエビデンスボックス①に)。
- 3つめ|ドイツの7研究:参加者の67%がここから来ています。
- 4つめ|1試験だけで出ている行:通常ケアと比べた生活の質と有害事象。
- 5つめ|無治療と比べた表に無い行:生活の質も有害事象も「報告なし」とだけ。
- 6つめ|急性の混入:半数近く(50%未満)まで混ざりうる組み入れ規則です。
- 7つめ|追跡の時点:2つしかありません。
コクランCD013814の表に掲載されている追跡時点が、施術直後と短期の2つだけであることを示した図
3枚の表に出てくる追跡時点は、この2つです。「鍼の効果が何か月続くのか」を、この表から読み取ることはできません。
疼痛・背部機能・有害事象は、ほぼすべてこの時点です。3枚の表の大半がここに集まっています
生活の質だけが、この時点で報告されています。偽鍼と比べた表(3試験1,068名)と、通常ケアと比べた表(1試験731名)の2か所です
表に載っていない、というところまでが当サイトの確認範囲です。本文(Effects of interventions)に記載がある可能性は残ります。当サイトは本文の後半に到達できていません
この表に無いことは、CD013814 に記載が無いことと同じではありません。コクランの表に載るアウトカムは選ばれたものです(→ コクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所)。この図は、CD013814 の表に何が載っていたかだけを示しています。
よくある誤読
誤読1|「コクランが腰痛の鍼を否定した/支持した」と引く
著者結論は5つの文でできています。1文目が否定的、2文目が肯定的、3文目が条件付き。最後の文は「利用可能性・費用・患者の希望によって決まるかもしれない」。どの1文を切り出すかで、記事の色は変わります。
誤読2|3つの答えを1つに丸める
別々の表です。足し算も、直接の比較もできません。
誤読3|「統計的に差がある」を「臨床的に意味がある」と読む
物差しは2本あります(→「通常ケアと比べたとき」の④)。
誤読4|抄録だけ、または平易な要約だけを読む
平易な要約・抄録・表の3か所で書き方が違います(通常ケアと比べた生活の質、無治療と比べた機能)。
誤読5|「16試験」と「9+5+8」を同じ数として引く
抄録は16、結果本文は9・5・8。当サイトは差の理由を確認できていません。人に引くときは、両方をそのまま言うのが安全です。
誤読6|「CD001351(Furlan 2005)の更新版」と書く
原著の語は “a split from”(分割)です。「更新版」「置き換え」とは書かれていません。
誤読7|膝・股のコクランを、腰痛の根拠として引く
CD001977(Manheimer 2010)は末梢関節のレビューで、腰痛は入っていません(→ コクランが示した変形性関節症の鍼|偽鍼比は「小」【論文解説】)。逆に本レビューは、変形性関節症による腰痛を除外しています。
このレビューを同業者に引くときの引き方
この論文を引くときに、省かない5点
① 比べた相手:偽鍼か、無治療か、通常ケアか。落とすと、同じ論文から反対向きの主張が作れます。
② どのアウトカムか:疼痛か、背部機能か、生活の質か。
③ 時点:直後(7日未満)か、短期(8日〜3か月)か。
④ 確実性の等級と母数:VERY LOW から MODERATE、母数は366名から2,960名まで。
⑤ 出典:著者名・年と PMID または DOI を。当サイトの記述をそのまま使う場合も、必要な範囲で原典をご確認ください。
※ ここで示しているのは同業者・医療者への説明のしかたです。患者向けの広告や自院サイトの表現は別の規律(あはき法7条・薬機法・景品表示法等)が関わります(→ 鍼灸院のホームページは広告規制の対象?|原則対象外と4つの例外)。
引きやすい形:「2020年のコクラン(CD013814)は、比べた相手を3つに分けています。施術直後の疼痛では、偽鍼と比べた差も通常ケアと比べた差も、著者が事前に定めた目安には達しませんでした。無治療と比べた差だけが、その目安を超えています。表に載っている追跡時点は直後と短期だけで、文献検索は2019年8月までです。」
避けたい形:「コクランで有効性が示されています。」——比べた相手も、アウトカムも、時点も抜けており、同じ論文の別の行と食い違います。
同じく避けたい形:「コクランで否定されています。」——無治療と比べた疼痛の行は、著者の目安を超えています(ただし、参加者を盲検できない比較です)。そして著者結論の最後の文は、効果の有無ではなく「利用可能性・費用・患者の希望」で終わっています。
臨床判断としての位置づけは、腰痛への鍼のエビデンス|ACP推奨・NICE非推奨をどう説明するかに。
当サイトがどこまで原著を確認したか
材料は、PMCの全文(PMC8095030)、PubMed の E-utilities、コクランの平易な要約(英語版・日本語版)。取得できたもの=3枚の表の全数値・脚注・Comments 列(表ごとの個別URLから2パス以上で照合)/抄録/著者結論/方法(Methods)の「臨床的に重要な差」の目安。
原著は PMCで全文を無料で読めます。ただし閲覧が無料という意味であり、転載・再配布が自由という意味ではありません。本記事の英文は著作権法32条にもとづく引用です。
そのうえで、確認できなかったもの。
- 未取得のもの:Discussion(考察)の本文と小見出し(7経路すべてが塞がっていました。内訳はエビデンスボックス②に)/What’s new / History(版の履歴)/33研究の一覧(Characteristics of included studies)。だから本記事には「著者が考察で述べたこと」を1行も書いていません。「初版である」とも、ドイツの7研究がどれかも書いていません。
- 取得が1回にとどまったもの:抄録の本文/対象者の条件(Types of participants)/著者結論の第4文。そのため原則として逐語を引用していません。ただし本文に出した2つの断片(
greater and clinically important pain reliefとimproved back function)だけは、別の経路で取り直して一致を確認したうえで使いました。なお有害事象の一覧は抄録と表で少し違い(抄録側には「あざ(bruising)」が入っています)、本記事は表の側から引いています。
そして、当サイトの取得作業そのもので起きたことを1つ書いておきます。1回の取得で、実際には本文に存在しない節の一覧が、もっともらしい形(節の番号つき)で返ってきました。別の経路で取り直したところ再現せず、3回目には「見当たらない」と返ってきたため、採用していません。もし1回目だけを信じていれば、本記事には「このレビューの考察はこういう構成だった」という、確かめようのない記述が入っていたことになります。
①論文解説の信頼は「何を確認したか」ではなく「どう確かめたか」で立ちます。だから、書けなかったことのほうを長めに書いています。
なお、方法論そのもの(表がどう作られるか、日本語版をどう探すか、更新や取り下げの扱い)はコクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所に。本記事はその実例にあたります。
エビデンスボックス① CD013814 の3枚の表・著者結論・目安の完全版(飛ばして読んでもOK)
- 書誌:Mu J, Furlan AD, Lam WY, Hsu MY, Ning Z, Lao L. Acupuncture for chronic nonspecific low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Dec 11;12(12):CD013814. PMID:33306198 / DOI:10.1002/14651858.CD013814 / PMC8095030。DOIに版数(.pubN)は付いていません。ただし当サイトは What’s new / History を確認していないため、「初版」とは書いていません。巻号は PubMed の表記に揃えました(コクラン側は「2020, Issue 12」方式で表記します)。
- 組み入れ(出所=CD013814 抄録 Main results 冒頭・逐語):
We included 33 studies (37 articles) with 8270 participants. The majority of studies were carried out in Europe, Asia, North and South America. Seven studies (5572 participants) conducted in Germany accounted for 67% of the participants.
(当サイトによる訳)「33件の研究(37本の論文)、8,270名を組み入れた。研究の大半はヨーロッパ、アジア、北アメリカ、南アメリカで実施された。ドイツで実施された7件(5,572名)が参加者の67%を占めた。」
(当サイトの評釈)総数8,270名の3分の2が、7つの研究から来ています。「8,270名」だけを引くと、この偏りは見えません。その7件がどの試験かは、当サイトでは確認できていません(組み入れ試験の一覧に到達していないため)。 - 🛑 抄録と結果本文で、試験数が合いません(出所=CD013814 抄録 Main results / 結果本文 Included studies・両方とも逐語)。抄録側=
Sixteen trials compared acupuncture with sham intervention, usual care, or no treatment.
/結果本文側=Nine trials, involving 1483 participants, examined the effect of acupuncture compared to sham intervention
/Five trials, involving 2960 participants, examined the effect of acupuncture compared with no treatment
/Eight trials, involving 1633 participants, examined the effect of acupuncture compared with usual care
(当サイトによる訳)「16件の試験が、鍼を偽鍼・通常ケア・無治療と比較した。」/「9件の試験(1,483名)が、偽鍼と比べた鍼の効果を検討した」/「5件の試験(2,960名)が、無治療と比べた鍼の効果を検討した」/「8件の試験(1,633名)が、通常ケアと比べた鍼の効果を検討した」
(当サイトの評釈)9+5+8=22 で、抄録の16と合いません。説明として考えられることは複数ありますが(多群試験の重複計上、数え方の違いなど)、当サイトはどれも一次確認していないため、推測を書いていません。書けるのは「抄録はこう書き、結果本文はこう書いている」までです。 - 研究デザインの選択基準(出所=CD013814 本文 Methods・逐語):
We included only randomized controlled trials (RCTs) that examined the effects of acupuncture on chronic nonspecific LBP; we excluded quasi‐randomized trials.
(当サイトによる訳)「慢性非特異的腰痛への鍼の効果を検討した無作為化比較試験(RCT)のみを組み入れ、準無作為化試験は除外した。」(当サイトの評釈)割り付けの方法で線が引かれています。対象者の条件(3か月超・混在集団の扱い・除外する病因)の原文は、当サイトの取得が1回にとどまるため、本記事では日本語の記述にとどめ、逐語を引用していません。本文の「半数近く(50%未満)まで急性の症例が混ざりうる」も、原文の表記は「参加者の過半数(50%超)が慢性であること」で、そこから当サイトが言い換えたものです。原文に「49%」という数字はありません。 - アウトカムの選択基準(出所=CD013814 抄録 Selection criteria・逐語):
The primary outcomes were pain, back‐specific functional status, and quality of life; the secondary outcomes were pain‐related disability, global assessment, or adverse events.
/We included trials comparing acupuncture with sham intervention, no treatment, and usual care.
(当サイトによる訳)「主要アウトカムは疼痛、背部特異的機能状態、生活の質。二次アウトカムは疼痛関連の能力低下、全般的評価、または有害事象であった。」/「鍼を偽鍼・無治療・通常ケアと比較した試験を組み入れた。」
(当サイトの評釈)抄録が挙げる対照は3種類です。なお本文 Methods は、これより広い範囲(その他の治療との比較、上乗せの比較、鍼の術式どうしの比較)を挙げていますが、その部分は当サイトの取得が1回にとどまるため、逐語を引用していません。また、この差が「33件と22件の差」を説明するかどうかも確認していません。 - ★ 著者が事前に定めた「臨床的に重要な差」の目安(出所=CD013814 本文 Methods・逐語):疼痛=
a clinically important difference of 15 points on a 0 to 100 scale, 2 points on a 0 to 10 scale, or 30% change of the scores between two comparison groups
/背部特異的機能状態=3.7 points on the RMDQ scale (0 to 24), 4.2 points on the ODI scale (0 to 50), and 12% on the HFAQ scale (0 to 100)
/生活の質=4 points on the SF‐36 scale, 3.29 on the physical component summary and 3.77 on the mental component summary of SF‐12
(当サイトによる訳)「2つの比較群間で、0〜100の尺度で15点、0〜10の尺度で2点、またはスコアの30%の変化という、臨床的に重要な差」/「RMDQ(0〜24)で3.7点、ODI(0〜50)で4.2点、HFAQ(0〜100)で12%」/「SF-36で4点、SF-12の身体的サマリーで3.29、精神的サマリーで3.77」
(当サイトの評釈)この目安は、結果を見る前に方法の章で決められています。表の Comments 列に出てくる「達しなかった」は、この線との照合の結果です。本記事に載せた「線に届いた/届かない」の対照は、著者が定めた目安と著者が出した推定値を並べたもので、当サイトが新たに有意性の判定をしたものではありません。🛑 単位に注意してください。HFAQ の目安は原文で「12%」、推定値は「11.50点」「9.78点」と点で書かれています。原文はこの2つを書き分けており、当サイトは換算していません。「あと何点で届く」という書き方をしていないのはそのためです。この種の目安がどこから来るのか、妥当なのかという議論は本記事では扱っていません。 - 表1(偽鍼と比べたとき)の全数値(出所=CD013814 表1):疼痛VAS(0〜100)・直後=MD −9.22(95%CI −13.82〜−4.61)/1,403名(7RCT)/確実性 LOW、対照側の平均51.0点(SD 18.7)。Comments列(逐語)=
The difference did not meet predefined clinically relevant change.
(当サイトによる訳)「その差は、事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった。」/背部特異的機能状態HFAQ(0〜100・高いほど良い)・直後=MD 3.33(−1.25〜7.90)/1,481名(5RCT)/VERY LOW、対照側61.3点(SD 20.8)、Comments列は標準化平均差 −0.16(95%CI −0.38〜0.06)を併記/生活の質SF-12・短期=MD 2.33(0.29〜4.37)/1,068名(3RCT)/LOW、対照側39.2点(SD 9.7)、Comments列(逐語)=The corresponding risk estimated using SMD was 0.24 (95% CI 0.03 to 0.45). The difference did not meet predefined clinically relevant change.
(当サイトによる訳)「標準化平均差で推定した対応する値は0.24(95%CI 0.03〜0.45)であった。その差は、事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった。」/有害事象(自己申告)・直後=RR 0.68(0.46〜1.01)/465名(4RCT)/LOW。
(当サイトの評釈)1枚の表の中に、信頼区間が0をまたぐ行(機能)と、またがないが目安に届かない行(疼痛・生活の質)が並んでいます。1行だけを切り出すと、印象が変わります。 - 🛑 有害事象の「1,000人あたり」の列は、観測された発生率ではありません(出所=CD013814 表1の列見出しとアスタリスク注・逐語):列見出し=
Illustrative comparative risks* (95% CI)
、下位列=Assumed risk with sham intervention
/Corresponding risk with acupuncture
、注=*The risk in the acupuncture group (and its 95% CI) was based on the assumed risk in the sham intervention group and the relative effect of the acupuncture (and its 95% CI).
(当サイトによる訳)「例示的な比較リスク(95%信頼区間)」/「偽鍼における想定リスク」/「鍼における対応するリスク」/「鍼群のリスク(およびその95%信頼区間)は、偽鍼群の想定リスクと、鍼の相対効果(およびその95%信頼区間)にもとづいて算出した。」
(当サイトの評釈)この欄に並ぶ数値は、偽鍼と比べた表で「想定リスク159/1,000 → 算出された対応するリスク108/1,000(73〜161)」、通常ケアと比べた表で「26/1,000 → 86/1,000(9〜787)」です。鍼群側はいずれも相対効果から計算した値であって、実際に数えた発生率ではありません。「鍼群では1,000人あたり108人に有害事象が起きた」とは書けません。とくに通常ケアと比べた表では、この算出値と実件数(鍼群3件・通常ケア群1件)が同じ表に並んでいます。どちらが算出値でどちらが実件数かを分けずに引くと、出所が二重に見えます。 - 表1の脚注(出所=CD013814 表1の脚注・逐語):
Downgraded one level for risk of bias (performance and attrition bias).
/Downgraded one level for inconsistency (I² ≥ 50%).
/Downgraded one level for imprecision (CI included the null effect).
(当サイトによる訳)「バイアスのリスク(実施バイアスと脱落バイアス)のため1段階格下げ。」/「非一貫性(I² が50%以上)のため1段階格下げ。」/「不精確さ(信頼区間が効果ゼロを含む)のため1段階格下げ。」(当サイトの評釈)同じ記号でも、表が違えば中身が違います。表2の同じ記号aは「実施・検出・脱落」、表3のbは「I² が75%以上で、その一部しか説明できない」です。脚注を引くときは「表◯の脚注a」と書かないと、別の内容になります。本文の限界2つめは、この3枚の脚注の対照から書いています。 - 表2(無治療と比べたとき)の全数値(出所=CD013814 表2):疼痛VAS・直後=MD −20.32(95%CI −24.50〜−16.14)/366名(4RCT)/確実性 MODERATE、対照側50.86点(SD 20.51)。Comments列(逐語)=
Acupuncture reduced pain more than no treatment in the immediate term.
(当サイトによる訳)「鍼は直後の時点で、無治療より疼痛を減少させた。」この行の格下げは、バイアスのリスク1段だけです。/背部特異的機能状態HFAQ・直後=MD 11.50(7.38〜15.84)/2,960名(5RCT)/MODERATE、対照側65.5点(SD 21.7)。Comments列(逐語)=The corresponding risk estimated using SMD was ‐0.53 (95% CI ‐0.73 to ‐0.34). The difference did not meet predefined clinically relevant change.
(当サイトによる訳)「標準化平均差で推定した対応する値は −0.53(95%CI −0.73〜−0.34)であった。その差は、事前に定めた臨床的に意味のある変化には達しなかった。」/生活の質・有害事象はいずれも「報告なし」。脚注(逐語)=Downgraded one level for risk of bias (performance, detection, and attrition bias).
(当サイトによる訳)「バイアスのリスク(実施・検出・脱落バイアス)のため1段階格下げ。」
(当サイトの評釈)★ここが本記事の目玉です。疼痛の行には「達しなかった」が付いておらず、機能の行には付いています(HFAQの目安は原文で「12%」、推定値は「11.50点」。単位が違うため、当サイトは換算していません)。ところが抄録は、機能についてimproved back function
(背部機能が改善した)と書いています。この抄録の断片は、2026-08-19 に別経路で取り直して一致を確認しました。同じ著者が、同じ結果を、置き場所によって違う印象で書いている実例です。また疼痛は366名、機能は2,960名で、同じ比較でもアウトカムごとに母数が8倍違います。有害事象は報告した試験が無いため、「無治療と比べて安全だった」とは書けません。 - 表3(通常ケアと比べたとき)の全数値(出所=CD013814 表3):疼痛VAS・直後=MD −10.26(95%CI −17.11〜−3.40)/1,054名(5RCT)/LOW、対照側57.1点(SD 16.5)、Comments列=
The difference did not meet the predefined clinically relevant change.
/機能HFAQ・直後=MD 9.78(3.54〜16.02)/1,381名(5RCT)/LOW、対照側56.3点(SD 20.8)、Comments列は標準化平均差 −0.47(95%CI −0.77〜−0.17)+同じ「達しなかった」/生活の質・身体面SF-12・短期=MD 4.20(2.82〜5.58)/731名(1RCT)/MODERATE、対照側36.1点(SD 8.9)、Comments列(逐語)=The authors of this study did not provide the total results of the SF‐12, only the subgroups.
(当サイトによる訳)「この研究の著者は、SF-12の合計の結果を示さず、下位尺度のみを示していた。」——この行の Comments には「達しなかった」の一文がありません。/生活の質・精神面SF-12・短期=MD 1.90(0.25〜3.55)/731名(1RCT)/MODERATE、対照側48.6点(SD 11.6)、Comments列(逐語)=The difference did not meet the predefined clinically relevant change. The authors of this study did not provide the total results of the SF‐12, only the subgroups.
/有害事象=RR 3.34(0.36〜30.68)/74名(1RCT)/LOW。
(当サイトの評釈)★表3の5行で、「達しなかった」が付いていないのは身体面の生活の質だけです(4.20に対し、著者の目安は3.29)。そして精神面は、信頼区間が0をまたいでいないのに「達しなかった」(1.90に対し、目安は3.77)。「統計的に差がある」と「臨床的に意味がある」の分離が、隣り合う2行に出ています。⚠️ なおこの2行は、当サイトの1回目の取得で隣の行の文が混ざって返ってきた箇所です。行ごとに分割して取り直し、上記で確定しました。「身体面も目安に届かなかった」と書いてはいけません。原文にその記載はありません。 - 有害事象について表に書かれていること(出所=表1 Comments列・逐語):
The most common adverse events were pain at insertion points, hematoma, bleeding, worsening of LBP, pain other than LBP (pain in leg and shoulder).
(当サイトによる訳)「最も多かった有害事象は、刺入部の痛み、血腫、出血、腰痛の悪化、腰痛以外の痛み(脚と肩の痛み)であった。」/表3 Comments列(逐語)=One study reported three adverse events (2 pain and 1 circulation problem) in the acupuncture group and one in the usual care group (persisting pain).
(当サイトによる訳)「1件の研究が、鍼群で3件の有害事象(痛み2件、循環の問題1件)、通常ケア群で1件(続く痛み)を報告した。」
(当サイトの評釈)🛑 分母を落とさないでください。このレビューには33研究が入っていますが、有害事象の数値が表に載っているのは、偽鍼と比べた表で4試験465名分、通常ケアと比べた表で1試験74名分だけです。無治療と比べた表には、有害事象の行そのものがありません。そのうえで——偽鍼と比べた RR 0.68 の95%信頼区間の上限は1.01です。「鍼のほうが少ない」とは書けません。通常ケアと比べた RR 3.34 も、信頼区間が0.36〜30.68(1試験74名)で、「3.3倍多い」とも「差がない」とも読めません。有害事象を報告した試験が少ないことは、安全性が確かめられたことを意味しません。⚠️ 抄録側の一覧には「あざ(bruising)」が入っていますが、表の一覧には入っていません。本記事は表の側から引いています。 - 著者結論(全5文のうち、当サイトが2パス以上で確認できた4文)(出所=CD013814 抄録 Authors’ conclusions・逐語):
We found that acupuncture may not play a more clinically meaningful role than sham in relieving pain immediately after treatment or in improving quality of life in the short term, and acupuncture possibly did not improve back function compared to sham in the immediate term.
/However, acupuncture was more effective than no treatment in improving pain and function in the immediate term.
/Trials with usual care as the control showed acupuncture may not reduce pain clinically, but the therapy may improve function immediately after sessions as well as physical but not mental quality of life in the short term.
/The decision to use acupuncture to treat chronic low back pain might depend on the availability, cost and patient’s preferences.
(当サイトによる訳)「私たちは、治療直後の疼痛緩和や短期的な生活の質の改善において、鍼が偽鍼より臨床的に意味のある役割を果たすとは言えない可能性があり、また鍼は直後の時点で偽鍼と比べて背部機能を改善しなかった可能性があると考える。」/「しかし、鍼は直後の時点で疼痛と機能を改善する点において、無治療より効果的だった。」/「通常ケアを対照とした試験では、鍼は疼痛を臨床的に減少させないかもしれないが、施術直後の機能と、短期における身体的(ただし精神的ではない)生活の質は改善しうることが示された。」/「慢性の腰痛の治療に鍼を用いるかどうかの判断は、利用可能性、費用、患者の希望によって決まるかもしれない。」
(当サイトの評釈)1文目が否定的、2文目が肯定的、3文目が条件付き、そして最後の文は効果の有無を語っていません。助動詞にも注目してください——”may not play”、”possibly did not improve”、”may not reduce”。当サイトの訳でも「〜ない可能性」「〜しなかった可能性」を維持しています。二次情報が「コクランは鍼を支持した/否定した」と書くとき、この5文のどれを使ったのかを見に行けば、たいてい説明がつきます。⚠️ 第4文(確実性を格下げした理由に触れた文)は、当サイトの取得が1回にとどまるため、逐語も訳も出していません。 - 成り立ち(出所=CD013814 抄録 Background 最終文・逐語):
This review is a split from an earlier Cochrane review and it focuses on chronic LBP.
(当サイトによる訳)「本レビューは、以前のコクランレビューから分割されたものであり、慢性の腰痛に焦点を当てている。」(当サイトの評釈)使われている語は「分割(split)」であって「更新(update)」ではありません。本文では、この文に Furlan 2005 という参照が付いています。「CD001351 の更新版である」「CD001351 は古い」「急性期は別のレビューにある」とは書かれておらず、当サイトも確認していません。⚠️ Furlan 2005 には同じ年の同名の別出版物(Spine誌)があり、どちらを指すかを当サイトは確定できていません(参照文献リスト本体が未取得のため)。 - 文献検索の期限(出所=平易な要約・逐語):
The evidence is current to 29 August 2019.
(当サイトによる訳)「本エビデンスは2019年8月29日現在のものである。」(当サイトの評釈)それ以降に発表された試験は含まれていません。
エビデンスボックス② 平易な要約(英語版・公式日本語版)と、この記事の限界(飛ばして読んでもOK)
- 平易な要約・主な結果(出所=CD013814 Plain language summary・逐語)。本文で「平易な要約・抄録・表の3か所で書き方が違う」と書いた根拠がこの全文です。一部だけを引くと、その比較ができません。
Compared with sham, acupuncture may not be more effective in reducing pain immediately after treatment. Acupuncture perhaps did not appear to improve back‐specific function immediately after treatment, or may not enhance quality of life in the short term. Acupuncture was better than no treatment for pain relief and functional improvement immediately after treatment. Compared with usual care, acupuncture did not appear to significantly clinically reduce pain, but seemed more effective in improving function immediately after treatment. Acupuncture did not improve quality of life in the short‐term. The incidence of adverse events may be similar between acupuncture and sham, and between acupuncture and usual care. Adverse effects related to acupuncture were considered minor or moderate.
(当サイトによる訳)「偽鍼と比べて、鍼は治療直後の疼痛軽減においてより効果的ではない可能性がある。鍼は治療直後に背部特異的機能を改善するようには見えなかったか、短期的に生活の質を高めない可能性がある。鍼は、治療直後の疼痛緩和と機能改善について無治療より優れていた。通常ケアと比べて、鍼は臨床的に有意に疼痛を減少させるようには見えなかったが、治療直後の機能改善にはより効果的であるように見えた。鍼は短期的に生活の質を改善しなかった。有害事象の発生率は、鍼と偽鍼の間、および鍼と通常ケアの間で同程度である可能性がある。鍼に関連する有害作用は、軽度または中等度と見なされた。」
(当サイトの評釈)★平易な要約には、数値が1つも出てきません。33試験・8,270名という規模だけです。信頼区間も確実性の等級もありません。しかも通常ケアと比べた生活の質は、ここでは「改善しなかった」と一言で書かれています。抄録は「身体面は改善、精神面は改善せず」、表は身体面4.20・精神面1.90にそれぞれの評価。3か所で書き方が違います。⚠️ 「矛盾している」と断定はできません。平易な要約は「臨床的に意味のある改善はしなかった」を圧縮したものである可能性があります。書けるのは「3か所で書き方が違うので、1か所だけ読むと像がずれる」までです。 - 平易な要約・確実性の説明(出所=CD013814 Plain language summary・逐語):
The certainty of the evidence ranged from very low to moderate. Many trials showed a high risk of bias due to problems with masking the acupuncturists or participants.
(当サイトによる訳)「エビデンスの確実性は、非常に低いから中程度までの幅があった。多くの試験は、鍼灸師や参加者のマスキングの問題により、バイアスのリスクが高いことを示した。」(当サイトの評釈)本文の「1つめの限界」は、この2文から書いています。術者だけでなく参加者も挙げられている点に注意してください。この記述は、当サイトが到達できなかった考察の章ではなく、平易な要約から取ったものです。 - 🛑 公式の日本語版があります(当サイトの訳ではありません)。URL=https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD013814_acupuncture-chronic-non-specific-low-back-pain-lbp。見出しは「非特異的慢性腰痛(LBP)に対する鍼治療」。訳注の表記は「《実施組織》 季律、杉山伸子 翻訳[2021.01.11]」で、記号・スペース・日付は原文のまま転記しています。訳注はこの後も続き、「最新版(英語版)の内容をご確認ください」という一文と、連絡先として「コクランジャパン」が書かれています。この訳注が示すとおり、CD013814 の日本語版は個人の翻訳者によるものです。コクランの日本語版に複数の実施主体がある件は、コクランレビューの使い方|鍼灸師が結論より先に見る3か所にまとめてあります。
有害事象について、この日本語版(訳=季律、杉山伸子)は鍼治療に関連する副作用は軽度または中等度と見なされた
と書いています(英語原文=上記Adverse effects related to acupuncture were considered minor or moderate.
)。
(当サイトの評釈)この一文は、数値も分母も伴わずに読まれる位置にあります。実際には、有害事象の数値が表に載っているのは偽鍼比で4試験465名、通常ケア比で1試験74名だけです。「軽度または中等度」だけを引くと、この分母が消えます。またこの日本語版には、訳者の補足が入っています。研究の特徴の項に「シャム鍼(プラセボ、経穴でない部位への鍼治療を指す)」とあり、英語原文は “sham (placebo)” までです。偽鍼は非経穴への刺鍼だけではありません(→ 偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題)。訳者を責める話ではなく、公式訳にも訳し手の判断が入る、という実例です。この記事では、英語原文と並べて確認しました。⚠️ 日本語版からの引用は、当サイトの取得が1回にとどまっています。 - この記事の限界:① Discussion(考察)の本文と小見出しに到達できていません。試した経路は7つです——PMC8095030 の本文(結果の途中で切れる)/印刷用表示(同じ位置で切れる)/Europe PMC のフルテキストXML(オープンアクセス対象外のため404)/europepmc.org の記事ページ(ナビのみ)/efetch の
db=pmc(出版社が全文XMLの取得を許可していない)/cochranelibrary.com(403)/web.archive.org(当環境から取得不可)。したがって「著者が考察で述べたこと」を1行も書いていません。「考察が無い」という意味ではありません。② What’s new / History が未取得のため、「初版である」「更新されていない」と書いていません。③ 33研究の一覧が未取得のため、試験名・刺激内容・ドイツの7研究の同定を書いていません。④ 対象者の条件、方法の対照の範囲、著者結論の第4文は、当サイトの取得が1回にとどまるため、逐語を引用していません(抄録 Main results は 2026-08-19 に別経路で取り直し、複数回の一致を確認できたため、2つの断片のみ本文で使用しています)。⑤ 3枚の表の数値は別々の解析から取ったもので、足し算も直接比較もできません。⑥ 確実性(GRADE)は推定値の確からしさの評価で、効果の大きさの評価ではありません。⑦ 信頼区間が0をまたがないことは、臨床的に意味のある差があることの証明ではありません(通常ケアと比べた精神面の生活の質がその実例です)。⑧ 有害事象について「鍼のほうが少ない」「安全である」と書いていません。33研究のうち、数値が表に載っているのは偽鍼比で4試験465名、通常ケア比で1試験74名、無治療比は行そのものがありません。⑨ 「1,000人あたり」の数値は例示的な比較リスクで、鍼群側は算出値です。観測された発生率として書いていません。⑩ 本記事は、著者が定めた目安と著者が出した推定値を並べただけで、当サイトが新たに有意性の判定をしたものではありません。単位が違う組み合わせ(HFAQ の「12%」と「11.50点」)は換算していません。⑪ 1回の取得で、本文に存在しない節の一覧がもっともらしい形で返ってきた事例があります(再取得で再現せず、採用していません)。この記事の内容は、2パス以上で一致した記述を中心に構成しています。⑫ 本レビューは NIH の資金支援を受けた研究として登録されていますが、利益相反の申告(Declarations of interest)の節は未取得のため、その内容には踏み込んでいません。⑬ 原文の中に表記の不統一があります。表1の略号一覧は SF–36 と書いているのに、表の行は SF-12 を使っています(表3の略号一覧は SF-12)。この観測は当サイトの取得が1回のため、本文には書いていません。
腰痛の臨床判断を扱っている記事
この論文の読み方に関わる記事
参考文献
- Mu J, Furlan AD, Lam WY, Hsu MY, Ning Z, Lao L. Acupuncture for chronic nonspecific low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2020 Dec 11;12(12):CD013814. PMID:33306198 / DOI:10.1002/14651858.CD013814 / PMC8095030(全文)
- 同上・偽鍼と比べた表:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8095030/table/CD013814-tbl-0001/
- 同上・無治療と比べた表:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8095030/table/CD013814-tbl-0002/
- 同上・通常ケアと比べた表:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8095030/table/CD013814-tbl-0003/
- コクラン平易な要約(英語版):https://www.cochrane.org/evidence/CD013814_acupuncture-chronic-non-specific-low-back-pain-lbp
- コクラン平易な要約(日本語版):https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD013814_acupuncture-chronic-non-specific-low-back-pain-lbp(訳=季律、杉山伸子[2021.01.11]。当サイトの訳ではありません)
- Furlan AD, van Tulder MW, Cherkin DC, Tsukayama H, Lao L, Koes BW, Berman BM. Acupuncture and dry-needling for low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Jan 25;2005(1):CD001351. PMID:15674876 / DOI:10.1002/14651858.CD001351.pub2(本レビューが「分割元」として参照している Furlan 2005 の候補。同年に同名の別出版物〔Spine誌・PMID 15834340〕があり、どちらを指すかを当サイトは確定していません)
本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。腰痛の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。
【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。
更新履歴
本記事は初版です。次のいずれかが起きた時点で、内容を見直してこの欄に追記します。
① CD013814 の改訂・版の変更・取り下げ(当サイトは cochranelibrary.com 本体を取得できておらず、版の履歴を一次確認していません。取得できた時点で版の状態を明記します)/② 当サイトの一次確認の範囲が広がったとき(考察の本文、33研究の一覧、対象者の条件の逐語、著者結論の第4文、バイアスのリスクの詳細、利益相反の申告)/③ 分割元とされる Furlan 2005 の同定と、その現在の状態が確認できたとき/④ 慢性の腰痛への鍼について、新しいコクランレビューが公開されたとき。
