片頭痛の予防に鍼は効く?Cochrane22試験が示す3つの比較

片頭痛の予防に鍼は効く?Cochrane22試験が示す3つの比較 頭痛

「頭痛の薬、飲み続けるのがちょっと怖くて……鍼で予防できませんか?」

こう相談されて、返す言葉に迷ったことはありませんか。効くと言い切るのは怖い。でも「わかりません」では、その人は次に来てくれません。

この記事を読むと、片頭痛の発作予防について、盛らずに・逃げずに答えるための材料がそろいます。

【結論】片頭痛予防への鍼、エビデンスの現在地

片頭痛予防への鍼は、通常ケアだけの場合と比べれば頭痛の頻度が減ると報告されています(Cochrane 2016・確実性は中等度)。ただし偽鍼と比べた差は「小さい」と原著が明記。予防薬との比較でも、6か月時点では有効性の差が消えます。
ざっくりしたスケール感は「月6日の頭痛が3.5日くらいになる」。劇的ではないが、月に1日以上減るなら意味はある ― これが等身大です。
はっきり差がつくのは、副作用と、副作用による脱落の少なさ。ここが実務で正確に伝えられるポイントです(Cochrane 2016・確実性中等度)。
日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』についても、解説論文(菊池ら2022・全日本鍼灸学会雑誌)によれば、予防の非薬物療法の選択肢として記載されているとされます(弱い推奨/確実性B。ただしこのBは鍼灸を含む非薬物療法のまとまりに付されたもので、同論文の総括は「確実性C」)。当編集部はガイドライン本文を直接確認していません。
※この記事は発作の「予防」が対象です。起きてしまった発作を止める急性期治療は扱いません。

本記事は、医療機関で頭痛の型が確認されている/二次性頭痛を疑う所見がないケースを前提にしています。
なお「偏頭痛」と書かれることもありますが、国際頭痛分類(ICHD-3)日本語版の正式表記は「片頭痛」です。本記事では片頭痛で統一します。対象は反復性片頭痛(月の頭痛日数が15日未満)で、慢性片頭痛のデータは混ぜていません。
受診を優先すべきサインの整理は頭痛のタイプ別エビデンスと受診の判断に、緊張型頭痛は緊張型頭痛への鍼のエビデンスにまとめています。

「効くの?」の答えが3つに分かれる理由|Cochrane 22試験

片頭痛予防の鍼をいちばんていねいに整理したのが、Lindeらのコクランレビュー(複数の研究を厳密にまとめて分析したもの)です。22件のランダム化比較試験、合計約5,000人分のデータをまとめています。

「偽鍼(シャム鍼)」は1種類ではありません。本物の鍼に似せた比較用の鍼のことですが、刺す場所・深さ・そもそも刺すかどうかで、少なくとも4つのタイプに分かれます。どのタイプを対照にしたかで「偽鍼と差がなかった」という一文の意味が変わります。→ 偽鍼(シャム鍼)とは何か

図解:コクラン2016における比較対象別の結果(無治療・偽鍼・予防薬)

Cochrane 2016

「何と比べたか」で結論が変わる

発作が半分以下に減った人の割合を、3つの比較で並べました(22 RCT・4,985名)。

無治療・通常ケア比
41%SMD −0.56/NNTB 4
対照無治療・通常ケア
17%GRADE 中等度
偽鍼比
50%SMD −0.18/NNTB 11
偽鍼偽鍼比
41%GRADE 中等度
予防薬比(3か月)
57%RR 1.24
予防薬予防薬比(3か月)
46%GRADE 中等度
コクランの平易要約による換算(ベースライン月6日)
月6日 → 3.5日

通常ケアのみ5日/偽鍼・予防薬4日/真の鍼3.5日程度。差は1日〜1.5日くらいです。

数値はCochrane CD001218(22 RCT・4,985名、反復性片頭痛)。SMDは模式的な効果量指標です。無治療比較は盲検が不可能で、期待や接触といった文脈効果を排除できません。偽鍼比について原著は「効果はあるが小さい(this effect is small)」と明記しています。

このレビューの読みどころは、結論がひとつではないこと。「何と比べたか」で答えが3通りに分かれるのです。

① 無治療・通常ケアと比べた場合。 発作が半分以下に減った人は、鍼41%に対して対照17%。かなりの差がついています。

② 偽鍼(比較用に効きにくくした鍼)と比べた場合。 50%対41%まで縮みます。原著は「偽鍼を上回る効果はあるが、その効果は小さい」とはっきり書いています。

③ 予防薬と比べた場合。 3か月時点では鍼57%対薬46%。ただしこの差は、6か月時点で消えます(次の章で詳しく)。

冒頭に書いた「月6日の頭痛が3.5日くらい」は、コクラン自身が出している平易な換算です。通常ケアのみなら5日、偽鍼や予防薬なら4日、本物の鍼で3.5日程度。差は1日〜1.5日くらい、というスケール感ですね。

劇的ではありません。でも、毎月1日以上の頭痛が減るなら、その人の生活にとっては小さくない話です。

エビデンスボックス① Cochrane 2016の詳細(飛ばして読んでもOK)
  • 書誌: Linde K, Allais G, Brinkhaus B, Fei Y, Mehring M, Vertosick EA, Vickers A, White AR. Acupuncture for the prevention of episodic migraine. Cochrane Database Syst Rev. 2016, Issue 6. Art. No.: CD001218. PMID:27351677 / DOI:10.1002/14651858.CD001218.pub3
  • デザイン: コクラン・システマティックレビュー/メタ解析(レベル1、2009年版の更新)。22 RCT・計4,985名(試験規模の中央値71名、範囲30〜1,715名)。対象は反復性片頭痛。
  • 無治療/通常ケア比: 頭痛頻度 SMD −0.56(95%CI −0.65〜−0.48)。レスポンダー率 RR 2.40(2.08〜2.76)/鍼41% vs 対照17%/NNTB 4(3〜6)。12か月追跡(1試験)RR 2.16(1.35〜3.45)、NNTB 7。GRADE=治療終了時 中等度、追跡時 低。
  • 偽鍼比: 治療終了時の頭痛頻度 SMD −0.18(−0.28〜−0.08)/追跡時 SMD −0.19(−0.30〜−0.09)。レスポンダー率 RR 1.23(1.11〜1.36)/50% vs 41%/NNTB 11(7〜20)。追跡時 RR 1.25(1.13〜1.39)/53% vs 42%/NNTB 10(6〜18)。有害事象は両群で有意差なし。GRADE 中等度。
  • 予防薬比: 3か月の頭痛頻度 SMD −0.25(−0.39〜−0.10)/6か月 SMD −0.13(−0.28〜0.01)=有意差なし。レスポンダー率3か月 RR 1.24(1.08〜1.44)/57% vs 46%、6か月 RR 1.11(0.97〜1.26)=有意差なし。GRADE 中等度。比較薬はフルナリジン・メトプロロール・バルプロ酸。
  • NNTB(何人に施術すれば1人が上乗せで恩恵を受けるかの目安): 無治療比 4(3〜6)/偽鍼比 11(7〜20)。同じ介入でも比較対象によって10倍近く変わる点が、この領域の読み方の核心です。
  • プレーンランゲージ要約の換算: ベースライン月6日の片頭痛日数 → 通常ケアのみ5日/偽鍼または予防薬4日/真の鍼3.5日程度。
  • 著者結論(逐語): “there is an effect over sham, but this effect is small” / “acupuncture may be at least similarly effective as treatment with prophylactic drugs” / “Acupuncture can be considered a treatment option for patients willing to undergo this treatment.”
  • 限界(著者明記): 無治療対照は盲検不可能で実施・検出バイアスのリスク。偽鍼比の効果が小さいため今後の試験で結論が動きうる。試験デザインと鍼プロトコルが不均一。12か月を超える長期データが乏しい。

薬と比べると、どうなの?|6か月で有効性の差は消える、でも脱落は鍼が少ない

ここが片頭痛という領域のいちばん面白いところです。有効性と安全性で、結論の向きが違うのです。

図解:予防薬と比べた鍼の有効性と安全性の非対称性

予防薬との比較

「有効性」と「安全性」で向きが違う

同じ比較なのに、見る指標によって結論の向きが変わります。

有効性

6か月で有効性の差は消える

発作が半分以下に減った人の割合

3か月:鍼57% vs 薬46%(RR 1.24, 1.08–1.44)。6か月:RR 1.11(0.97–1.26)=有意差なし。

安全性

鍼のほうが少ない(薬の約4分の1)

有害事象と、副作用による脱落

有害事象 OR 0.25(0.10–0.62)/副作用による脱落 OR 0.27(0.08–0.86)。

Cochrane著者の結論は「予防薬と少なくとも同程度に有効な可能性がある」までで、優れているとは述べていません。6か月の「有意差なし」は差がないことの証明ではなく、どちらが上とも言えなくなったという意味です。「鍼の効果が消えた」という意味でもありません。比較薬はフルナリジン・メトプロロール・バルプロ酸で、個別の薬剤の適否や服薬の継続可否は本記事の範囲外です。

まず有効性から。3か月時点では鍼のほうがやや良い(57%対46%)。ところが6か月時点では、統計的な差が消えます。長い目で見れば「同じくらい」というのが正直な整理です。

注意したいのは、これは「鍼の効果が消えた」という意味ではないこと。どちらが動いたかまでは、この比較からは読み取れません。言えるのは「半年たった時点では、どちらが上とは言えなくなる」までです。

コクラン著者の表現も、あくまで「予防薬と少なくとも同程度に有効である可能性がある」止まり。「優れている」とは言っていません。ここは盛らないでおきましょう。

では安全性はどうでしょう。副作用で研究をやめてしまった人は、薬のグループの4分の1くらい。副作用そのものも、鍼のほうが明らかに少なかったと報告されています。

つまりこういうことです。「よく効く」ではなく、「同じくらい効いて、続けやすい」

だから鍼の出番は「薬より効くから」ではなく、「薬が副作用で続けられなかった人の、次の選択肢になれるから」という位置づけになります。

厚生労働省のeJIM(海外の統合医療情報を紹介する公的サイト)も同じ整理をしています。「鍼治療の方がわずかに効果が高く、副作用のために研究を脱落する可能性がはるかに低い」という記述です。ただし同サイトは海外情報の紹介であり、国内での有効性を保証するものではありません。

なお、後発のメタ解析も方向は同じ。ただし発作回数については「有意差なし」という報告もあり、そこは正直に押さえておきたいところです。

エビデンスボックス② 予防薬との比較・後発のメタ解析(飛ばして読んでもOK)
  • Cochrane 2016(CD001218)予防薬比: レスポンダー率3か月 RR 1.24(1.08〜1.44)/57% vs 46%。6か月 RR 1.11(0.97〜1.26)=有意差なし。頭痛頻度3か月 SMD −0.25(−0.39〜−0.10)/6か月 SMD −0.13(−0.28〜0.01)=有意差なし。有害事象 OR 0.25(95%CI 0.10〜0.62)、有害事象による脱落 OR 0.27(0.08〜0.86)=いずれも鍼群で少ない。本文の「4分の1くらい」はこのオッズ比を平易に言い換えたものです。GRADE 中等度。
  • 「6か月で有意差なし」は差が存在しないことの証明ではありません。信頼区間が0をまたいだ(=どちらが上とも言えない)という意味です。
  • Fan SQ, Jin S, Tang TC, Chen M, Zheng H. Efficacy of acupuncture for migraine prophylaxis: a trial sequential meta-analysis. J Neurol. 2021;268(11):4128-4137. PMID:32839839 / DOI:10.1007/s00415-020-10178-x / 20試験・3,380名。発作回数:偽鍼比 SMD −0.29(−0.47〜−0.11, P=0.002)/予防薬比 SMD −0.21(−0.42〜0.00, P=0.06)=有意差なし。レスポンダー率:偽鍼比 RR 1.30(1.09〜1.55)/薬比 RR 1.24(1.04〜1.48)。有害事象は予防薬比 RR 0.34(0.14〜0.81)=鍼で少ない。試験逐次解析では発作回数について両比較とも必要情報量に未到達=さらなるRCTが必要と結論。
  • Liu AR, Zhu Q, Li J, et al. Efficacy of Acupuncture and Pharmacotherapy for Migraine Prophylaxis: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Pain Res. 2025;18:2521-2540. DOI:10.2147/JPR.S519846 / 19 RCT・2,296名。片頭痛日数 MD −1.50(−2.52〜−0.48)、VAS MD −1.48(−2.51〜−0.46)、50%以上改善 RR 2.08(1.22〜3.55)。有害事象は鍼群で刺入部痛・知覚異常・抜針後出血、脱落はゼロ。薬物群は傾眠・体重増加・倦怠感で減量/中止例あり。
  • Liu 2025の限界(著者明記): GRADE 中〜低。異質性大(I² 59〜85%)。ファンネルプロット非対称=出版バイアスの示唆。19件中14件が中国、欧州は2件のみ。ランダム化・割付隠蔽・盲検の報告が不十分。追跡期間が短い。
  • 厚生労働省eJIM「鍼治療(各種施術・療法 – 医療者)」最終更新2024年5月28日 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c02/01.html / 同サイトは海外の情報の紹介であり、国内での有効性を保証するものではありません。
  • 注記: 本記事は個別の薬剤の適否・継続可否には踏み込みません。服薬の判断は主治医の領域です。

個々の大規模RCTは何を示した?|GERAC・ART・Sun 2025・Zhao 2017

ここから逃げずに書きます。

図解:片頭痛予防の主要RCT5本の結果一覧

主要RCT

主要RCT5本を「差が出た/出なかった」で並べる

否定側3本と肯定側2本を、そのまま並べて置きました。

GERAC / Diener 2006
n=960

差が出なかった

26週の片頭痛日数減少:真鍼2.3日/偽鍼1.5日/標準薬2.1日=3群に差なし。

ART / Linde 2005
n=302

差が出なかった

鍼 vs 偽鍼 差0.0日(P=.96)。偽鍼群のレスポンダー率は53%。

Sun 2025
n=198

差が出なかった

主要評価は差 −0.6回(P=0.069)=有意差なし。副次評価では差あり。

Zhao 2017
n=245(解析)

差が出た

対偽鍼 差1.1回(95%CI 0.4–1.9)。抄録の結論は控えめな表現です。

Xu 2020
n=147(解析)

差が出た

対偽鍼 −2.1日(95%CI −2.9〜−1.2)。重篤な有害事象の報告なし。

「有意差なし」は差がないことの証明ではありません。逆に、主要評価で差が出なかった試験の副次評価だけを取り上げるのも適切ではありません。Zhao 2017の「3.2回」は真鍼群の減少幅であり、偽鍼との差は1.1回です。GERAC・ARTでは偽鍼群のレスポンダー率も39〜53%あり、偽鍼を不活性な対照とは見なせません。

大規模な試験で「偽鍼と差がつかなかった」ものは、はっきり存在します。960人規模の試験でも、300人規模の試験でも、本物と偽鍼の差はほぼゼロでした。一方で差がついた試験もありますが、その差は「月に1回、発作が少ない」程度です。

ここで両方に共通しているのが、偽鍼を受けた側も半分前後が良くなっているという事実。「差が小さい」と「効いていない」は、別の話です。

名前を挙げておくと、否定側はGERAC(Diener 2006)・ART(Linde 2005)・Sun 2025。肯定側はZhao 2017とXu 2020です。それぞれの数字は、下の図解とエビデンスボックスに置きました。

これらの試験の多くは、偽鍼群とは別に「待機群」も置いています。ART(Linde 2005)もSun 2025も、待機群との差は偽鍼との差より大きく出ました。ただし待機比がいつも大きくなるわけではなく、そうならない試験もあります。待機群との差を鍼の実力の数字として読む前に、その型が何を測っているのかを確認してください。 → 待機リスト対照とは|鍼の効果が大きく出る5つの仕組み

読み方をひとつだけ。「有意差なし」は「差がないことの証明」ではありません。同時に、主要評価で差が出なかった試験の副次評価だけを拾って「効いた」と言うのもフェアではない。両方をそのまま置いておく、というのがこの記事の立場です。

エビデンスボックス③ 差が出なかったRCT3本の詳細(飛ばして読んでもOK)
  • Diener HC, Kronfeld K, Boewing G, et al.; GERAC Migraine Study Group. Efficacy of acupuncture for the prophylaxis of migraine: a multicentre randomised controlled clinical trial. Lancet Neurol. 2006;5(4):310-316. PMID:16545747 / DOI:10.1016/S1474-4422(06)70382-9 / n=960(真鍼/偽鍼/標準予防薬)。26週の片頭痛日数減少:真鍼2.3日・偽鍼1.5日・標準薬2.1日。レスポンダー率 47%/39%/40%。結論(逐語)”Treatment outcomes for migraine do not differ between patients treated with sham acupuncture, verum acupuncture, or standard therapy.” 限界:偽鍼が非経穴への浅刺で、生理学的に不活性とは言えない。
  • Linde K, Streng A, Jürgens S, et al. Acupuncture for patients with migraine: a randomized controlled trial. JAMA. 2005;293(17):2118-2125. DOI:10.1001/jama.293.17.2118 / n=302(鍼145/偽鍼81/待機76)、8週で12回。9〜12週の中等度以上の頭痛日数減少:鍼 −2.2日・偽鍼 −2.2日・待機 −0.8日。鍼vs偽鍼 差0.0日(P=.96)、鍼vs待機 差1.4日(P<.001)。レスポンダー率 51%/53%/15%。
  • Sun M, Xie C, Wang Y, et al. The Prophylactic Effect of Acupuncture for Migraine Without Aura: A Randomized, Sham-Controlled, Clinical Trial. J Evid Based Med. 2025;18(3):e70059. PMID:40841679 / DOI:10.1111/jebm.70059 / n=198(各群99名、平均35.6歳、女性75.8%)、中国4施設・単盲検。刺入手技鍼 vs 非刺入偽鍼。主要評価(16週の発作頻度変化)MPA −2.6回 vs NPA −1.9回、差 −0.6(95%CI −1.5〜0.05、P=0.069)=有意差なし。副次:レスポンダー率68.7% vs 48.5%(P<0.001)、片頭痛日数1.8 vs 2.7(P=0.001)、VAS 2.7 vs 3.6(P=0.003)。限界(著者明記):軽〜中等度の痛みの患者に限定(平均VAS 5.25)、患者報告中心、偽鍼群で盲検が一部破綻。
エビデンスボックス④ 差が出たRCTと効果の持続性(飛ばして読んでもOK)
  • Zhao L, Chen J, Li Y, et al. The Long-term Effect of Acupuncture for Migraine Prophylaxis: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2017;177(4):508-515. PMID:28241154 / DOI:10.1001/jamainternmed.2016.9378 / 249名登録・245名ITT(前兆のない片頭痛、18〜65歳、女性77.1%)。24週間(治療4週+追跡20週)、真鍼/偽鍼/待機の3群。主要アウトカム=ベースラインから16週までの発作頻度変化。減少:真鍼3.2回・偽鍼2.1回・待機1.4回。真鍼vs偽鍼 差1.1回(95%CI 0.4〜1.9、P=0.002)、真鍼vs待機 差1.8回(1.1〜2.5、P<0.001)。抄録の結論は “may be associated with” という控えめな表現。限界:中国単一文化圏、治療期間4週と短い、患者報告アウトカム中心。経穴・通電条件は本記事では原著未確認。
  • Xu S, Yu L, Luo X, et al. Manual acupuncture versus sham acupuncture and usual care for prophylaxis of episodic migraine without aura: multicentre, randomised clinical trial. BMJ. 2020;368:m697. PMID:32213509 / DOI:10.1136/bmj.m697 / 150名無作為化・147名解析(平均36.5歳、女性82%)。手技鍼+通常ケア20回/偽鍼+通常ケア20回/通常ケアのみ。17〜20週の片頭痛日数減少:鍼3.9日 vs 偽鍼2.2日(差 −2.1日、95%CI −2.9〜−1.2、P<0.001)。発作回数:2.3回 vs 1.6回(差 −1.0、−1.5〜−0.5)。重篤な有害事象の報告なし。限界:鍼未経験者に限定、単一国、n=150と中規模。経穴・手技は本記事では原著未確認。
  • Shi H, Miao R, Gao S, Zhu L, Fang J, Liu Z. The durable effect of acupuncture for episodic migraine: a systematic review and meta-analysis. Front Neurosci. 2023;17:1211438. DOI:10.3389/fnins.2023.1211438 / 15 RCT・3,035名。施術終了3か月後:vs偽鍼 発作回数 MD −0.66(−0.96〜−0.37)、片頭痛日数 MD −0.78(−1.16〜−0.40)、VAS MD −1.08(−1.46〜−0.71)※著者はVAS差がMCID未満と明記。vs待機 発作回数 MD −1.74(−2.15〜−1.33)。vsフルナリジン 日数 MD −1.04(−1.60〜−0.47)※VASはMCID未満。限界(著者明記):3か月を超える持続効果は評価不能、12か月追跡は1試験50名のみ、偽鍼の方法と薬用量が不均一、15件中5件がバイアスリスク高〜相当、正式なGRADE評価は未実施。

世界のガイドラインは、なぜここまで割れるのか

同じデータを見ているのに、国によって扱いが違います。

図解:世界25の頭痛ガイドラインにおける鍼の推奨状況

WHO Bulletin 2025

世界25ガイドラインの評価分布

1998〜2024年、12の国・組織の25ガイドラインを横断した系統的レビューです。

推奨10件
40%
条件付き推奨8件
32%
エビデンス不十分5件
20%
非推奨2件
8%
推奨・条件付き推奨の18ガイドライン(10+8)のうち
77.8%

が施術手順の詳細を記載していません。

施術頻度を明記
22.2%

刺鍼手技(毫鍼か電気鍼か)を明記しているのは16.7%だけでした。

出典はBull World Health Organ. 2025;103(11):685-695B(1998〜2024年、12の国・組織、25ガイドライン)。18件は「推奨10件+条件付き推奨8件」の合計です。割合はガイドラインの本数比であり、患者数や効果の大きさを表すものではありません。NICEはこのレビューで「条件付き」に分類されており、片頭痛予防では予防薬3種が無効・不耐・不適の場合の選択肢という位置づけです。

英国NICE(CG150)。 片頭痛予防の推奨1.3.21で、プロプラノロール・トピラマート・アミトリプチリンが「効かない/忍容できない/安全性の懸念で不適」な場合に、5〜8週で最大10回の鍼を「考慮する(consider)」としています。一次選択ではなく、条件付きの三次選択です。「NICEも認めている」と単純化しないでおきましょう。

米国VA/DoD(2023)。 こちらは「頭痛の治療および/または予防に対する鍼について、推奨するにも反対するにも証拠が不十分」。賛成でも反対でもない、判断保留の立場です。

そしてWHO Bulletin 2025。 1998〜2024年の世界25ガイドラインを横断した系統的レビューが出ています。結果は、推奨40%(10件)/条件付き推奨32%(8件)/エビデンス不十分20%/非推奨8%。推奨しているのは4割、というのが世界の現在地です。

さらに鍼灸師として見逃せない数字がここに。推奨または条件付き推奨に分類された18ガイドラインのうち、77.8%が施術手順の詳細を書いていない。施術頻度を明記しているのは22.2%、刺鍼手技(毫鍼か電気鍼か)を明記しているのは16.7%だけでした。

「推奨されているのに、やり方が書かれていない」。この空白を埋めるのは、私たち現場の側の仕事かもしれませんね。

日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』は、片頭痛の鍼をどう扱っているか

では、日本はどうでしょう。

ここは出典の扱いに注意が必要です。当編集部はガイドライン本文を直接確認できていません。
代わりに使うのが、全日本鍼灸学会雑誌に掲載された解説論文(菊池ら2022)です。ガイドライン作成に関わった研究者を含む著者が、鍼灸に関わるCQ(クリニカルクエスチョン=診療上の疑問と、それへの回答の単位)を整理したものです。

同論文によれば、本記事で扱う(片頭痛を主題とする)CQは3つです。

CQ 何を扱うCQか 菊池ら2022が報告する鍼灸の位置づけ
Ⅱ-3-3 片頭痛予防療法のゴール設定と実施(=本記事の主題 ニューロモデュレーション・認知行動療法・有酸素運動とともに非薬物療法として記載(弱い推奨/確実性B
Ⅱ-2-11 片頭痛の急性期治療の「その他」 補完代替医療として鍼灸(弱い推奨/確実性B)。副作用や使用中の薬剤との相互作用の考慮が必要(弱い推奨/確実性C)
Ⅰ-15 薬物療法以外にどのような治療があるか 有酸素運動・カイロプラクティックと並び理学療法の一つとして記載(推奨:該当なし)。理学療法全体としてエビデンスのさらなる集積が必要とされ、推奨度の該当に至っていない

押さえておきたいのは、3点です。

① 予防のCQには確実性B。ただし緊張型頭痛のCと単純には比べられません。
一般にエビデンスの確実性はA(高い)〜D(非常に低い)で示され、Cは「低い」、Bは「中程度」に相当するとされます。
ただし片頭痛側のBは、鍼灸を含む非薬物療法(または補完代替医療)のまとまりに付された確実性として報告されているものです。一方、緊張型頭痛のCは鍼灸について個別に述べられた確実性です。付与の単位が違うため、「片頭痛の鍼のほうが評価が高い」と読み替えることはできません。

ただし、ここで盛らないでおきましょう。
同論文の小括は、鍼灸のCQ全体についてエビデンスの確実性はCであり、今後よりエビデンスレベルの高い臨床試験が必要という趣旨を述べています。
個別のCQにBと記載されている箇所があっても、全体像はC。この二段構えのまま覚えておくのが正確です。

② 「誰に考慮するか」が明記されている。
菊池らによれば、非薬物療法は薬物不応例・不耐例・禁忌例・患者の嗜好・妊娠中・授乳中の患者などで考慮されるとされます。

思い出してください。NICEの位置づけも「予防薬3種が効かない・使えない・安全性の懸念で不適なとき」でした。
「薬が使いにくい人の選択肢」という点で、英国と日本は同じ方向を向いているわけです。三次選択という枠は、日本のガイドラインの建て方とも矛盾しません。

③ 組み合わせが前提になっている。
同論文は、非薬物療法は薬物療法や複数の非薬物療法との組み合わせにより、単独治療に比べて一層効果が期待できると記載されていると述べています。

「鍼だけで完結」ではなく「組み合わせの一つ」。
この記事が繰り返してきた「回数と期間を決めて、記録しながら一緒に評価する」という進め方と、相性のよい建て方ですよね。

なお本記事は予防が対象ですが、急性期治療のCQ(Ⅱ-2-11)にも鍼灸は入っています
ただしそこで引用されているのは「急性期の鍼は偽鍼や自然経過より有効だが、トリプタンよりは効果が少ない」という報告だとされ、副作用・薬剤相互作用への配慮が確実性Cで添えられています。
急性期を扱うのであれば、予防とは別に根拠を確認する必要があります。本記事では踏み込みません。

補足を3つ。
①コクランの更新版(CD015528, 2025, PMID:39932102)はプロトコル=研究計画の段階で、結果は出ていません。2026年時点でも参照すべき「結果」は2016年版のままです。
②上記の日本のCQに関する記述は、すべて菊池ら2022(全日本鍼灸学会雑誌 72(1):4-13・オープンアクセス)の記載に基づきます。当編集部は『頭痛の診療ガイドライン2021』本文を直接確認していません(公開ページに転載・AI利用の制限があるため)。したがって「ガイドラインにこう書かれている」ではなく「解説論文がこう報告している」という形で記載し、本文の逐語引用は行っていません。
推奨の強さと確実性は、鍼灸単独に付されたものとは限りません。Ⅱ-3-3・Ⅱ-2-11では、鍼灸を含む非薬物療法(または補完代替医療)のまとまりに対して「弱い推奨/確実性B」と記載されている、と同論文は報告しています。「鍼だけがBの評価を得た」と読み替えないでください。推奨や確実性は改訂により変わりうるため、引用時は最新版をご確認ください。

エビデンスボックス⑤ ガイドラインの出典(飛ばして読んでもOK)
  • NICE. Headaches in over 12s: diagnosis and management. Clinical guideline CG150. 推奨1.3.21(逐語): “If propranolol, topiramate and amitriptyline have not worked or are not tolerated or are unsuitable because of safety concerns, consider a course of up to 10 sessions of acupuncture over 5 to 8 weeks according to the person’s preference, comorbidities and risk of adverse events.” / 確認はNCBI Bookshelf収載版 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK553317/ (Bookshelf上の版情報:2025年6月3日更新)。なおNICEは慢性緊張型頭痛(推奨1.3.9)にも同様の考慮を示しており、片頭痛の1.3.21とは別の推奨です。
  • U.S. Department of Veterans Affairs / Department of Defense. VA/DoD Clinical Practice Guideline for the Management of Headache. 2023. 推奨(逐語): “There is insufficient evidence to recommend for or against acupuncture, dry needling, or yoga for the treatment and/or prevention of headache.” 区分=Neither for nor against。確認はGuideline Central収載版 https://www.guidelinecentral.com/guideline/308835/ (一次PDFはテキスト抽出不可のため要約版で確認)。
  • Cui S, Wang X, Luo Z, et al. Acupuncture recommendations for migraine in headache treatment guidelines: a systematic review. Bull World Health Organ. 2025;103(11):685-695B. PMID:41180283 / DOI:10.2471/BLT.25.293420 / 1998〜2024年、12の国・組織、25ガイドラインをAGREE II/RIGHT/AGREE-REXで評価。推奨40%(10/25)/条件付き推奨32%(8/25)/エビデンス不十分20%(5/25)/非推奨8%(2/25)。推奨または条件付き推奨に分類された18ガイドライン(10+8)のうち77.8%が施術手順の詳細を欠く(頻度明記22.2%、刺鍼手技明記16.7%)。AGREE II最低ドメインは適用可能性20.3%、高品質な推奨を提示できていたのは4%(2/25)。著者結論:現行の世界の頭痛ガイドラインにおける鍼の推奨は限定的で詳細に欠け、方法論的品質の低さに制約されている。
  • 菊池友和, 山口智, 久保亜抄子, 松浦悠人, 荒木信夫「頭痛の診療ガイドライン2021の出版にあたり Clinical question の鍼灸治療推奨からみる今後の展望」全日本鍼灸学会雑誌. 2022;72(1):4-13.(DOI:10.3777/jjsam.72.4/J-STAGE・オープンアクセス)種別は解説(commentary)で、SRやRCTではありません。著者所属=日本鍼灸理療専門学校/東洋医学研究所/埼玉医科大学東洋医学科/東京有明医療大学/よみうりランド慶友病院。本記事における『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQ・推奨・確実性の記述は、すべてこの論文に基づきます。
    同論文の記載(片頭痛関連):CQ Ⅱ-3-3=予防の非薬物療法としてニューロモデュレーション・認知行動療法・有酸素運動とともに記載(弱い推奨/確実性B)。薬物不応例・不耐例・禁忌例・患者の嗜好・妊娠中・授乳中の女性などで考慮され、薬物療法や複数の非薬物療法との組み合わせにより単独治療に比べ一層効果が期待できるとされる。根拠として英国・ドイツのガイドラインでの位置づけが挙げられている。/CQ Ⅱ-2-11=補完代替医療として鍼灸・ナツシロギク・カフェイン等(弱い推奨/確実性B)、副作用や使用中の薬剤との相互作用の考慮が必要(弱い推奨/確実性C)。引用文献は Melchart D, et al. J Intern Med. 2003;253(2):181-188(急性期の鍼は偽鍼や自然経過より有効だがトリプタンより効果は少ない)と菊池ら(脳神経内科. 2020;92(4):465-470/トリプタンが使えない例・薬物療法を希望しない例の治療オプションになりうる)。/CQ Ⅰ-15=非薬物療法として行動療法・理学療法・ニューロモデュレーション・健康食品(推奨:該当なし)。鍼灸は有酸素運動・カイロプラクティックと並び理学療法の一つとして記載。引用は Allais G, et al. Headache. 2002;42(9):855-861(前兆のない片頭痛の女性160人でフルナリジンと鍼を比較したRCT)と Melchart D, et al. Cephalalgia. 1999;19(9):779-786(片頭痛・緊張型頭痛1,042例、鍼の有効性を支持する傾向)。理学療法全体はエビデンスのさらなる集積が必要で推奨度の該当に至っていない。/CQ Ⅰ-22(頭痛診療のチーム医療、弱い推奨/確実性B)=多職種のメンバーに鍼灸師が含まれる。ここで引用された片頭痛のSR(Linde 2016, CD001218)について、同論文は「標準治療単独より鍼併用のほうが効果は高い、予防薬より副作用が少なく効果もやや高いが、シャム鍼と比較すると効果に差がない」と紹介しています。
    小括(重要):同論文は、鍼灸のCQ全体について「エビデンスの確実性はCであることから、今後はよりエビデンスレベルの高い臨床試験によりエビデンスの確実性を上げていく必要がある」と総括しています。個別CQにBと記載された箇所があっても、全体の総括はCです。また薬剤の使用過多による頭痛(MOH)のCQ Ⅵ-3については、鍼灸に関する推奨やエビデンスの確実性についての記述はないと明記されています。
    限界:①ガイドライン本文の一次確認は当編集部では行えていません(本論文を通じた間接的な把握です)。②解説論文であり、推奨の強さや確実性の判定そのものを検証したものではありません。③推奨・確実性は鍼灸を含む非薬物療法のまとまりに付されている箇所があり、鍼灸単独の評価とは限りません。④同論文の抄録は「9つのCQで推奨された」「MOHでも推奨された」と要約していますが、本文で個別に解説されているのは8つのCQで、MOHについては上記のとおり推奨・確実性の記述はないとされています。本記事は本文の記述を採用しています。⑤鍼灸専門誌に掲載された鍼灸領域の著者による解説であり、記述の重点の置き方には立場の影響がありうる点も踏まえてお読みください。
  • 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修『頭痛の診療ガイドライン2021』医学書院, 2021. Minds要約 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00689/ / 当編集部は本文を直接確認していません(公開ページに転載・AI利用の制限があるため)。Minds掲載の目次で、片頭痛の予防療法のCQ群に「その他の予防療法」を扱うCQが存在することまでを確認しています。本記事のCQ・推奨・確実性の記述は上記の解説論文に基づき、ガイドライン本文の逐語引用は行っていません。
  • Xia R, Linde K, Freilinger T, et al. Acupuncture for the prevention of episodic migraine. Cochrane Database Syst Rev. 2025. Art. No.: CD015528. PMID:39932102 / プロトコル(研究計画)であり結果は未発表。

片頭痛予防の鍼は何回・どの頻度・どの経穴?標準プロトコルはまだありません

いちばん聞かれるのが「じゃあ何回やればいいの?」ですよね。正直に言うと、確立された標準はありません。

コクランがまとめた範囲では、採用基準が最低6回・週1回以上。実際の試験は6〜12回が13件、16回以上が9件。置鍼時間は多くが20〜30分でした。個別の試験を見ても、8週で12回、4週で12回、20回とバラバラです。

用量反応をメタ回帰(回数や頻度と効果の関係を統計的にモデル化する手法)で調べた研究もあります。Yang 2024は「16回・週3回・1.5〜2か月」が最適域で、それ以上増やすと頭打ち〜減衰と報告しました。ただしこれは観察的な解析であって、RCTで直接検証された話ではありません。

経穴についても同じです。コクランの集計では、固定5試験・半固定7試験・個別化10試験。「これを打てばいい」というレシピは共有されていないのが実情です。

本記事のリサーチで原著の経穴まで確認できたのは、Sun 2025だけでした。GV20(百会)・GB20(風池)・GB8(率谷)に個別2穴を加え、手技鍼(通電なし)で4週12回。ただしこの試験は主要評価項目で有意差が出ていません。「標準」として紹介できるものではない、という点を添えておきます。

先ほどのWHO Bulletinの「推奨18ガイドラインの77.8%が手順を書いていない」という数字と、きれいにつながる話ですね。なお、なぜ効くのかという生理学的な背景は鍼の鎮痛メカニズムで扱っています。

エビデンスボックス⑥ プロトコルに関する数値(飛ばして読んでもOK)
  • Cochrane 2016(CD001218)の集計: 採用基準は最低6回・週1回以上。実際の施術回数は6〜12回が13試験、16回以上が9試験。置鍼時間は多くが20〜30分。経穴選択は固定5試験/半固定7試験/個別化10試験。経穴名・通電条件はこの集計レベルでは特定できない。
  • 個別試験の施術量: Linde 2005=8週で12回/Sun 2025=4週で12回/Xu 2020=20回/Zhao 2017=治療期間4週(回数は原著未確認)。
  • Yang C, Wu M, Luo Q, et al. Acupuncture for migraine: A systematic review and meta-regression of randomized controlled trials. Complement Ther Med. 2024;86:103076. PMID:39243985 / 32 RCT。施術回数・頻度・期間と発作頻度に非線形の用量反応関係。著者推奨は16回・週3回・1.5〜2か月。16回時点の発作頻度減少3.95回(95%CI 3.13〜4.77)、週3回で4.04回(2.49〜5.58)、2か月間で4.05回(3.61〜4.49)。それ以上は頭打ち〜減衰。限界(著者明記):報告の質が不十分で、低バイアスリスクは32件中7件のみ。注意:これらは単群の減少量であり対照との差ではない。「鍼で発作が月4回減る」と単独で読むと誇張になる。
  • Sun 2025(J Evid Based Med)のプロトコル: 4週間で12回。両群とも同一経穴=GV20(百会)・GB20(風池)・GB8(率谷)+個別2穴。刺入群は得気あり、通電なしの手技鍼。※本記事で経穴を原著確認できた唯一の試験。Zhao 2017・Xu 2020・Diener 2006・Linde 2005の経穴名・通電条件は原著未確認のため記載していない。

安全性はどう説明する?「稀」であって「ゼロ」ではない

コクランでは、偽鍼との比較で有害事象に有意差なし。予防薬との比較では鍼群が有意に少ないという結果でした。Xu 2020では重篤な有害事象の報告はありません。

一方でSun 2025では、刺入群99名中5名(5.1%)に有害事象。気分が悪くなる(迷走神経反射)が2名、皮下出血1名、局所痛1名、めまい1名です。いずれも中等度で、医学的処置は不要でした。

頭痛に限らない一般の鍼灸患者を対象とした大規模観察研究では、229,230人・平均10.2回の施術で、何らかの有害事象8.6%、処置を要したもの2.2%。最多は出血・血腫でした。重篤なものとして気胸2件、下肢の神経損傷1件の報告があります。

だから説明はこうなります。軽い副作用は一定割合で起こる。重篤なものは極めて稀だが、報告例はある。「副作用はありません」とは言わない。ここが信頼のつくりどころです。

エビデンスボックス⑦ 安全性の出典(飛ばして読んでもOK)
  • Cochrane 2016(CD001218): 偽鍼比較で有害事象に有意差なし。予防薬比較では鍼群が有意に少ない(OR 0.25、95%CI 0.10〜0.62)、有害事象による脱落も少ない(OR 0.27、0.08〜0.86)。
  • Xu 2020(BMJ 368:m697): 重篤な有害事象の報告なし。
  • Sun 2025(J Evid Based Med 18(3):e70059): 刺入手技鍼群99名中5名(5.1%)=原著表記で「脳貧血」2・皮下出血1・局所痛1・めまい1(1名脱落)。すべて中等度で医学的処置は不要。
  • Witt CM, Pach D, Brinkhaus B, et al. Safety of Acupuncture: Results of a Prospective Observational Study with 229,230 Patients and Introduction of a Medical Information and Consent Form. Forsch Komplementmed. 2009;16(2):91-97. PMID:19420954 / DOI:10.1159/000209315 / 片頭痛患者ではなく、頭痛に限らない一般の鍼灸受療者を対象とした前向き観察研究。229,230名・平均10.2±3.0回。何らかの有害事象19,726名(8.6%)、処置を要した4,963名(2.2%)。最多は出血・血腫(患者の6.1%、全有害事象の58%)、疼痛1.7%、自律神経症状0.7%。重篤:気胸2件(1件入院)、下肢の神経損傷1件(最長180日持続)。
  • 厚生労働省eJIM: 「合併症は比較的少ない。しかし、殺菌していない鍼の使用や不適切な治療が実施されると合併症がおこっています」

明日から使える:患者説明トークと頭痛ダイアリー、HPの表現

患者への説明トーク例

パターンA(初回・standardな説明)
「片頭痛と診断されている場合、予防として鍼を続けると、何もしない場合と比べて発作の回数が減ったという報告があります。ただ、劇的というより『月に1日か1日半、頭痛の日が減る』くらいのスケール感です。感じ方には個人差がありますので、回数を決めて一緒に確認していきましょう。」

パターンB(「薬をやめたい」と言われたとき)
「お薬と鍼、半年くらいで見ると効き目は同じくらい、という研究があります。はっきり違うのは、副作用の少なさのほうです。ただ、お薬をやめるかどうかは処方した先生の判断なので、次の受診で相談してみてください。」

パターンC(「本当に効くの?」と正面から聞かれたとき)
「正直にお話しすると、評価は分かれています。比較用の『効きにくくした鍼』と比べると差は小さい、という研究もあります。イギリスのガイドラインでは、予防薬が合わない方の選択肢として5〜8週で最大10回を考慮する、という位置づけです。ですので、まずは期間を区切って試して、変化がなければ別の方法をご提案します。」

パターンD(「日本のガイドラインにも書いてあるの?」と聞かれたとき)
「日本の頭痛のガイドラインでも、片頭痛の予防では、お薬以外の方法のひとつとして鍼灸が挙げられているという解説が出ています。
お薬が効きにくい方、副作用で続けられない方、妊娠中や授乳中の方などで考えられる選択肢、という書き方です。
また、お薬や他の方法と組み合わせたほうが期待できるとも書かれているので、受診と並行して、回数と期間を決めて進めていきましょう。」

頭痛ダイアリーは、この5つだけでいい

トーク例に何度も出てくる「一緒に記録しましょう」。では何を書いてもらうか、決めていますか。

記録するのはこの5つだけです。

  1. 日付
  2. 強さ(10段階)
  3. 何時間続いたか
  4. 薬を飲んだか
  5. 思い当たるきっかけ

A4に1か月分の表を作って渡せば、それで足ります。項目を増やすほど続きません。これを1か月分持って受診してもらうと、医師にも伝わりやすくなります。

施術側にとっても、「月6日が3.5日くらい」という等身大のスケール感を、その人自身の数字で確認できる材料になります。

なお、この記録は頭痛の型を判断するためのものではありません。経過を一緒に確認し、受診の際に医師へ伝えるための材料としてお使いください。型の判断や診断は医療機関の役割です。

自院ホームページでの表現:リスクの低い書き方/避けたい書き方

以下は「これなら適法だと保証できる」という整理ではなく、相対的にリスクが低い/高い書き方の目安です。実際の記載は、最新の「あはき・柔整広告ガイドライン」本文と、所管の保健所の指導をご確認ください。

  • リスクが低い:「英国NICEのガイドラインでは、予防薬が合わない場合の選択肢として位置づけられています(出典明記)」/ 避けたい:「もう片頭痛に悩まない鍼灸院」
  • リスクが低い:「効果の感じ方には個人差があります」/ 避けたい:「予防薬より効果的です」
  • リスクが低い:「回数と期間を決めて、記録をつけながら一緒に評価します」/ 避けたい:「薬をやめられます」

押さえどころは4つ。①出典を示す ②断定・保証をしない ③服薬の中止・変更に踏み込まない ④体験談で効果を保証しない。

よくある誤引用:Zhao 2017の「3.2回」問題

最後に、引用する側として知っておきたい話を1つだけ。

ネット上に「Zhao 2017で月3.2日改善(95%CI 2.1〜4.3)」という記述が見られます。これは3群それぞれの減少幅(真鍼3.2/偽鍼2.1/待機1.4)を取り違えた可能性が高い数値です。

原著で示された偽鍼との差は1.1回(95%CI 0.4〜1.9)。3倍近く大きい数値が、そのまま孫引きされているようです。引用の際はご注意ください。

FAQ|片頭痛予防の鍼で鍼灸師によくある質問

Q. 片頭痛予防の鍼は何回くらいで判断できますか?
A. 確立した標準はありません。試験の下限は週1回×6回、NICEの示す目安は5〜8週で最大10回、メタ回帰の示唆は週3回×16回です。実務的には「回数と期間を先に決めて評価する」形が現実的です。

Q. 片頭痛予防の鍼の効果はどのくらい続きますか?
A. 施術終了3か月後までは差が残ったという報告があります(Shi 2023)。ただし著者自身が3か月を超える持続は評価できないと明記しています。12か月のデータはごく限られます。

Q. 片頭痛の予防では電気鍼のほうがよいのですか?
A. 本記事で扱った試験のうち、原著で通電条件を確認できたものはSun 2025(通電なしの手技鍼)のみです。電気鍼が優れるかを判断できる材料はここにありません。

Q. 片頭痛で「偽鍼と差が小さいなら意味がないのでは」と聞かれたら?
A. 偽鍼も皮膚に触れ、浅くとも刺激が入ります。生理学的に不活性な対照とは言い切れません。だから「差が小さい=効いていない」とも「偽鍼が効いている」とも一方向には読めない、というのが誠実な説明です。偽鍼が「効いてしまう」構造そのものは、緊張型頭痛への鍼のエビデンスでZheng 2022を軸に詳しく扱っています。

Q. 日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』では、片頭痛への鍼灸はどう扱われていますか?
A. 全日本鍼灸学会雑誌の解説論文(菊池ら2022)によれば、予防療法のCQ(Ⅱ-3-3)で非薬物療法の選択肢として記載され、弱い推奨/エビデンスの確実性Bとされています。急性期治療の「その他」(Ⅱ-2-11)にも補完代替医療として入っており、薬物療法以外を扱うCQ(Ⅰ-15)では理学療法の一つとして記載(推奨:該当なし)とのことです。考慮される対象として、薬物不応例・不耐例・禁忌例・患者の嗜好・妊娠中・授乳中が挙げられており、NICEの位置づけと方向は同じです。ただし同論文の総括は「エビデンスの確実性はC」であり、当編集部はガイドライン本文を直接確認していません。

Q. 片頭痛の発作中に鍼を打ってもよいですか?
A. 本記事は予防が対象で、急性期の頓挫を支持するデータは扱っていません。急に強くなった頭痛や、いつもと様子が違う頭痛は医療機関の受診を優先してください。どんなサインで受診をすすめるかの具体的な項目は、頭痛のタイプ別エビデンスと受診の判断にレッドフラグの一覧としてまとめています。

まとめ:片頭痛予防の鍼を、盛らずに語るために

  • コクラン(22 RCT・4,985名)は「無治療比・偽鍼比・予防薬比」で結論が変わることを示した
  • 無治療比は41%対17%と差が大きい。偽鍼比は50%対41%まで縮み、著者自身が「効果は小さい」と明記
  • スケール感は「月6日の頭痛が3.5日くらい」。差は1日〜1.5日程度
  • 予防薬比は3か月で鍼がやや優るが、6か月では有効性の差が消える。著者の表現は「少なくとも同程度に有効な可能性」まで
  • 明確に差がつくのは、副作用と副作用による脱落の少なさ。ここが実務での位置づけを決める
  • 差がつかなかった大規模試験も存在する(GERAC 2006・ART 2005・Sun 2025)
  • 世界25ガイドラインで鍼を推奨は40%。推奨・条件付き推奨の18本のうち77.8%が施術手順を書いていない(WHO Bulletin 2025)
  • 日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』では、予防のCQ(Ⅱ-3-3)で非薬物療法の選択肢として記載され確実性はB(ただしこのBは鍼灸を含む非薬物療法のまとまりに付されたもので、緊張型頭痛のCと単純比較はできない)。考慮の対象は薬物不応例・不耐例・禁忌例・妊娠中・授乳中などで、NICEの三次選択と方向は同じ。ただし同じ解説論文の総括は「確実性C」(菊池ら2022)
  • コクラン更新版は2026年時点でプロトコル段階。参照すべき「結果」は2016年版のまま

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参考文献

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  14. Cui S, Wang X, Luo Z, et al. Acupuncture recommendations for migraine in headache treatment guidelines: a systematic review. Bull World Health Organ. 2025;103(11):685-695B. PMID:41180283 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12578527/
  15. 菊池友和, 山口智, 久保亜抄子, 松浦悠人, 荒木信夫「頭痛の診療ガイドライン2021の出版にあたり Clinical question の鍼灸治療推奨からみる今後の展望」全日本鍼灸学会雑誌. 2022;72(1):4-13. DOI:10.3777/jjsam.72.4 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/72/1/72_4/_article/-char/ja ※本記事における『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQ・推奨・エビデンスの確実性に関する記述は、すべてこの解説論文に基づきます(オープンアクセス)
  16. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会 編『頭痛の診療ガイドライン2021』医学書院, 2021.(Minds要約 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00689/ )※当編集部は本文を直接確認していません。参照はMinds掲載の目次までで、CQ・推奨・確実性の記述は文献15に基づきます
  17. Witt CM, Pach D, Brinkhaus B, et al. Safety of Acupuncture. Forsch Komplementmed. 2009;16(2):91-97. PMID:19420954 https://karger.com/fok/article/16/2/91/356159/
  18. 厚生労働省eJIM「鍼治療[各種施術・療法 – 医療者]」最終更新2024年5月28日 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c02/01.html

本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。頭痛の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、突然の激しい頭痛、発熱・神経症状を伴う頭痛、これまでと様子の異なる頭痛など、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。処方薬の中止・変更については、施術者が判断する事項ではありません。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

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