「鼻炎なんですけど、鍼でどうにかなりますか」。
春先になると増える、この質問。
答えに詰まったまま、とりあえず顔まわりに刺した経験はありませんか。
調べてみると、「よく効いた」という報告と「偽鍼と変わらない」という報告が並んでいます。
どちらを信じればいいのか、読むほど分からなくなりますよね。
実はこの食い違いには、はっきりした理由があります。
「何と比べたか」と「どの型の鼻炎か」です。
この記事を読むと、アレルギー性鼻炎への鍼を、この2つの軸で整理して患者さんに説明できるようになります。
結論(1分でわかる全体像)
アレルギー性鼻炎への鍼は、何もしない群と比べると鼻症状と生活の質の改善が報告されています。ただし偽鍼と比べると差は小さく、抗ヒスタミン薬より良いという結果は安定して出ていません。
季節性(花粉症)では、2009年のレビュー時点で偽鍼に勝てなかった試験が3本、通年性では小規模ながら差が示唆されています。多くのレビューはこの2つを混ぜて解析しているので、数字を見たら「どの型か」を先に見ます。
ガイドラインの扱いは三者三様です。米国は「提供してもよい」、国際ARIAは2010年に使わないことを提案する立場(趣旨)、日本は目次に鍼の項目がありません。
そして片側だけの鼻づまりや、止まりにくい鼻血は、鍼の話をする前に耳鼻咽喉科へ。これが鍼灸師の最初の仕事です。
【まず押さえる4つ】鍼の話より受診を先にするサイン(全項目は本文の一覧へ)
1. 片側だけの鼻づまりが、数週間以上続いている
2. 血の混じった鼻水・止まりにくい鼻血がある(とくに片側)
3. 頬の腫れ・顔の痛み・上の歯のぐらつき・物が二重に見える
4. 小児で、片側から悪臭のある膿のような鼻水が続いている
これらに当てはまらなくても、下の一覧に該当があれば受診を優先します。
- 季節性(花粉症)・通年性・持続性は同じ意味ではない|研究を読む前の分類
- アレルギー性鼻炎への鍼のエビデンス|無治療比・偽鍼比・薬のみ比で言えることが変わる
- 鍼が主役にならない鼻炎・鼻の病気と受診をすすめるサイン|片側の鼻づまり・鼻血・副鼻腔炎・小児の異物
- 【判断表】来院者の状況別|鍼の話をしてよいか・受診をすすめるか
- 日本と海外のガイドラインは鍼をどう位置づけているか|鼻アレルギー診療ガイドライン・AAO-HNSF・ARIA
- 患者に先に伝えること|薬との線引きと顔面刺鍼の注意
- 明日から使える患者トークと自院HPの表現|「体質改善」「自律神経を整える」をどう扱うか
- 正直に言うと|この記事で書かなかったこと
- FAQ|アレルギー性鼻炎への鍼で鍼灸師によくある質問
- まとめ|アレルギー性鼻炎への鍼を鍼灸師としてどう扱うか
- 関連記事
- 参考文献
季節性(花粉症)・通年性・持続性は同じ意味ではない|研究を読む前の分類
腰痛で来ている患者さんが、実は鼻炎持ちだった。珍しくありませんよね。
ある全国調査ではアレルギー性鼻炎が約2人に1人、スギ花粉症は調査のやり方で2割から4割まで数字が動きます(詳細はボックス①)。
主訴でなくても問診票に書かれている。だから「鍼で何が言えて、何が言えないか」の地図が要るわけです。
図解:アレルギー性鼻炎の分類。日本の季節性・通年性と、ARIAの間欠性・持続性は別の軸
左は「原因」で分ける日本の軸、右は「症状が出る日数の多さ」で分けるARIAの軸です。別の軸なので、訳語を重ねると読み違えます。
出典:『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―』の題名
“persistent(持続性)” は「通年性」の訳語ではありません。花粉の季節が長い地域では、季節性でも持続性に入ることがあります。
型を分けて解析したSR 2009年の1本のみ:季節性=3試験とも偽鍼より良い結果が出なかった/通年性=小規模ながら示唆的(n=152)
模式図です。分類は医療機関が診断に用いるもので、本図は論文を読むための整理です。ARIAの日数の定義は省いており、30試験の内訳は He 2022(検索日2018年2月)によるもので、季節性・通年性のサブグループ解析は行われていません。バーの長さは30試験に占める件数の割合で、差の大きさではありません。
その地図の背骨が、ここで扱う分類です。
鼻炎の論文は、分類を押さえずに読むと、ほぼ確実に迷子になります。
本記事では、花粉が原因の季節性アレルギー性鼻炎を「花粉症」と同じ意味で使います。
日本の分け方:原因で分ける
日本のガイドラインの正式名は『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―』。
題名のとおり、季節性(花粉が原因)と通年性(ダニ・ハウスダストなどが原因)に分けるのが日本の基本です。
海外(ARIA)の分け方:症状の出方で分ける
一方、国際的なARIA(鼻炎と喘息を一体で扱う枠組み)は、原因ではなく症状の出方で分けます。
「間欠性」と「持続性」で、症状が出る日数の多さで区切る分け方です。
海外の試験で “persistent(持続性)” と書かれていても、それは「通年性」と同じ意味ではありません。
花粉の季節が長い地域では、季節性でも持続性に分類されることがあるからです。
なぜ分類が結論を左右するのか
季節性では、3本の試験とも偽鍼より良い結果が出ませんでした。通年性では、小規模ながら差が示唆されています。
これが、2009年のシステマティックレビュー(複数の研究を系統的に集めて評価したもの)の結果です。
著者の結論は「エビデンスは混在している」でした。
ところが、その後の大きなメタ解析(複数の研究のデータを統合して解析したもの)の多くは、季節性と通年性を混ぜて統合しています。
たとえば2022年発表(文献検索は2018年2月まで)の30試験のレビューでは、季節性5本・通年性9本・型が不明か混在のもの16本がひとつの数字にまとめられています。
つまり、「鍼は鼻炎に差の大きさいくつ」という数字を見たら、その数字がどの型の患者から出たものかを先に見る。
これが、このクラスターで一貫して使う読み方です。
エビデンスボックス① 疫学データの出典と限界(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- 松原篤, 坂下雅文, 後藤穣, ほか. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年, 2008年との比較):速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(6):485-490.(DOI 10.3950/jibiinkoka.123.485/J-STAGE 無料公開)
- デザイン:郵送アンケートによる横断調査。全国の耳鼻咽喉科医10,984名に送付、4,749通回答(回収率43.2%)。本人・配偶者・両親・子について記載のあった19,859名を解析。
- 結果:アレルギー性鼻炎全体 49.2%(1998年29.8%→2008年39.4%→2019年49.2%)/スギ花粉症 38.8%(16.2%→26.5%→38.8%)/通年性アレルギー性鼻炎 24.5%(18.7%→23.4%→24.5%)/花粉症全体 42.5%。スギ花粉症は5〜9歳で約30%、10歳代で49.5%。
- 限界:対象が耳鼻咽喉科医とその家族であり、国民の代表サンプルではありません。回収率43.2%、自己申告。医療関係者の家族は症状への感度が高く、過大推定の可能性があります。
- Okuda M. Epidemiology of Japanese cedar pollinosis throughout Japan. Ann Allergy Asthma Immunol. 2003;91(3):288-296.(PMID 14533662)全国12地域・390地点から無作為抽出した10,920名への郵送調査(回答率53.7%)。スギ花粉症の年齢調整有病率19.4%、回答バイアス等を補正した推定値13.1%。
- ※2つの調査は時期(2001年と2019年)も対象の選び方も違うため、差のすべてが「増加」とは言えません。本文の「2割から4割」は、この2調査のスギ花粉症の値(19.4%と38.8%)を指しています。
エビデンスボックス② 分類と研究結果の関係を示す出典(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2024年版(改訂第10版)』金原出版, 2024.(ISBN 978-4-307-37140-7)※本記事では書誌と目次のみ参照。本文は未確認です(詳細は「日本と海外のガイドライン」の節)。
- Bousquet J, Khaltaev N, Cruz AA, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) 2008 update. Allergy. 2008;63 Suppl 86:8-160.(PMID 18331513)鼻炎と喘息を一体として扱う枠組みの出典として参照。※間欠性・持続性の具体的な定義(日数の閾値)は本記事では引用していません。
- Lee MS, Pittler MH, Shin BC, Kim JI, Ernst E. Acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review. Ann Allergy Asthma Immunol. 2009;102(4):269-279.(PMID 19441597/DOI 10.1016/S1081-1206(10)60330-4)RCT 12件(高品質7件)。季節性:3試験とも偽鍼に優越せず/通年性:鼻症状 SMD 0.45(95%CI 0.13〜0.78)、n=152、I²=0%。結論 “Evidence … is mixed”。本ノートで確認した範囲で、季節性と通年性を分けて解析した唯一のSR。限界:2009年時点の文献であり、その後の大規模試験(ACUSAR 2013 等)を含みません。通年性の統合は n=152 と小規模です。
- He M, Qin W, Qin Z, Zhao C. Acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Eur J Med Res. 2022;27(1):58.(PMID 35462555/PMC9036742)RCT 30件 4,413名。組入れは「validated diagnostic criteria による AR」で型を限定せず、季節性5/通年性9/不明・混在16。季節性・通年性のサブグループ解析は行われていません(サブグループは国と測定時点のみ)。数値は次の節のボックス③に記載。
- 主要RCTの型:ACUSAR(Brinkhaus 2013)=季節性(草花粉)/Xue 2015=季節性/Xue 2007・McDonald 2016=通年性(持続性)/Choi 2013=抄録では型の記載なし(試験プロトコル〔Kim 2009, PMID 19602250〕では持続性アレルギー性鼻炎)/Brinkhaus 2008(ARC)=季節性・通年性を含む。
アレルギー性鼻炎への鍼のエビデンス|無治療比・偽鍼比・薬のみ比で言えることが変わる
図解:アレルギー性鼻炎への鍼の効果量を比較対照別に並べた棒グラフ
同じ「鍼」でも、比べる相手が変わると差の大きさが変わります。上2本は生活の質(RQLQ)の差を研究をまたいで比べられる形(SMD)にしたものです。
鍼は薬の1.1倍前後。ただし数字の幅が「1倍=差なし」を含むので、差があるともないとも言えない状態です。
鍼+レスキュー薬/偽鍼+レスキュー薬/レスキュー薬のみの3群。著者自身が “may not be clinically significant”(臨床的に意味のある大きさではないかもしれない)と留保。詳細は本文のACUSARの段落と、上乗せ試験の記事へ。
バーは季節性と通年性を混ぜたレビュー(He 2022・検索日2018年2月)の推定値で、花粉症の患者に限った数字ではありません。バーの長さはSMDの大きさ(符号を除いた値)を模式的に示したもので、信頼区間と人数はボックス③に置いています。「有意差なし」は「差がない証明」ではなく、「薬と同等」とも言えません。薬との比較試験は質が低く、結論は安定していません。
ここからが本題です。
型で分けた結果を先に1行で。季節性は2009年のレビューでは偽鍼に勝てなかった試験が3本、通年性は小規模ながら差の示唆、でした。
ここから先の数字は、この2つを混ぜたレビューのものだと思って読んでください。
3つの比較で、答えが3つある
アレルギー性鼻炎への鍼の研究は、何と比べたかで結果の見え方が変わります。
偽鍼とは、見た目は鍼でも刺さらないなどの、比較用の処置のことです。
何もしない群と比べると、大きな差が出ます。
鼻炎専用の「生活のしやすさ」の質問票(RQLQ)で、差の大きさを研究をまたいで比べられる形(SMD)にすると、およそ−1。
マイナスは鍼のほうが良い向きで、目安として0.2が小・0.5が中・0.8以上が大です。
偽鍼と比べると、同じ指標で0.3前後。
「小さい」とされる水準まで縮みます。
抗ヒスタミン薬(セチリジン・ロラタジン)と比べると、「効いたと判定された人の割合」で、鍼は薬の1.1倍前後。
ただし数字の幅が「1倍=差なし」を含んでいるので、「差がある」とも「ない」とも言えない状態です。
薬に対する差を報告した別のレビューもありますが、薬との比較試験はいずれも質が低いとされ、結論は安定していません。
「薬より効く」と書ける根拠はありません。
この「無治療比は大きく、偽鍼比は小さい」という構図は、腰痛・膝OA・頭痛と同じ構図です。
鼻炎だけが特別なのではありません。
なぜ対照で結果が変わるのか
何もしない群との差には、鍼そのものの作用に加えて、通院や施術者との関わりなどの効果が丸ごと含まれます。
偽鍼との差は、そこから「鍼らしい手続き」の分を差し引いた残りです。
この読み分けは比較対照の記事に、待機リスト群で差が大きく出る理由は待機リスト対照の記事にまとめています。
同じ試験のなかで対照を変えた例:ACUSAR
この構図を1本の試験で見せてくれるのが、季節性では最大規模のドイツのACUSAR試験(2013年)です。422名を、鍼+レスキュー薬(症状が強いときだけ使う薬)/偽鍼+レスキュー薬/レスキュー薬のみの3群に分けました。
生活の質の差は、偽鍼と比べて0.5、薬のみと比べて0.7(質問票の点数そのもので、上のSMDとは別のものさしです)。
ただし著者自身が「この改善は臨床的に意味のある大きさではないかもしれない」と留保を付けており、「大規模試験で偽鍼に勝った」とだけ伝えるのは盛りすぎです。
追跡でも、1年目の16週時点(施術は最初の8週)には差がなく、2年目に偽鍼に対する小さな改善が見られた、という両方の経過がありました。
レスキュー薬に鍼を足す「上乗せ」設計の読み方は上乗せ試験の記事で、偽鍼のタイプは偽鍼の記事で扱っています。
否定的なレビューもあります。
既存レビューの質を採点した2020年の評価では、20本中18本が「きわめて低い」でした。
中身は記事末尾の「正直に言うと」にまとめています。
エビデンスボックス③ 中核のシステマティックレビューとACUSARの数値(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- He M, Qin W, Qin Z, Zhao C. Acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Eur J Med Res. 2022;27(1):58.(PMID 35462555/DOI 10.1186/s40001-022-00682-3/PMC9036742 全文確認)RCT 30件 4,413名。型の内訳=季節性5/通年性9/不明・混在16。季節性・通年性のサブグループ解析なし。文献検索日は2018年2月18日(2022年発表ですが、2018年以降の試験を含みません)。対照別の内訳=偽鍼4件/無介入・待機3件/セチリジン6件/ロラタジン6件/その他薬3件/鍼+薬 vs 薬4件。
vs 無介入:RQLQ/Mini-RQLQ SMD −0.95(95%CI −1.17〜−0.73)n=1,112/vs 偽鍼:RQLQ SMD −0.26(−0.44〜−0.07)n=436、TNSS(日次)MD −1.09(−2.15〜−0.03)n=188、RQLQ鼻症状サブスケール MD −0.60(−1.16〜−0.04)n=489/vs セチリジン:奏効 RR 1.10(0.96〜1.26)n=588/vs ロラタジン:RR 1.15(0.98〜1.37)n=333。本文の「1.1倍前後」はこの2値を丸めたものです。
限界(著者記載を含む):逐次解析(TSA)で「頑健でない」。30件中22件(73%)が中国。参加者・施術者の盲検は67%が高リスク、評価者盲検の報告は17%。研究数が少なく漏斗図を作成せず出版バイアスは不明。手技・経穴・頻度・期間(7日〜12週)の臨床的異質性が大きい。薬との比較試験はすべて中国で深刻なバイアスリスク。vs 偽鍼 TNSS の I² は本記事では取得できていません。 - Du SH, Guo W, Yang C, et al. Filiform needle acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. J Integr Med. 2022;20(6):497-513.(PMID 36068161/DOI 10.1016/j.joim.2022.08.004)30研究。vs 偽鍼:症状 SMD −0.29(−0.43〜−0.15)/QOL SMD −0.23(−0.37〜−0.08)/薬剤スコア SMD −0.30(−0.49〜−0.11)。vs 無治療:症状 SMD −0.80(−1.20〜−0.39)/QOL SMD −0.82(−1.13〜−0.52)。vs 薬:症状 SMD −0.48(−0.85〜−0.10)。本文の「偽鍼比0.3前後」は He 2022 の −0.26 と本レビューの −0.29 をまとめた表現です。限界:抄録のみ確認。GRADE(確実性の等級)は未確認のため本記事では書いていません。
- Brinkhaus B, Ortiz M, Witt CM, et al. Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013;158(4):225-234.(PMID 23420231/DOI 10.7326/0003-4819-158-4-201302190-00002)ACUSAR。季節性(草花粉)422名=鍼+レスキュー薬212/偽鍼+レスキュー薬102/レスキュー薬のみ108。1年目は8週で12回(抄録逐語:”Twelve treatments were provided over 8 weeks in the first year.”)。RQLQの群間差:vs 偽鍼 0.5(97.5%CI 0.2〜0.8)/vs 薬のみ 0.7(97.5%CI 0.4〜1.0)。RQLQ は質問票の点数であり、SMD ではありません。
抄録の結論(逐語):”Acupuncture led to statistically significant improvements in disease-specific quality of life and antihistamine use measures after 8 weeks of treatment compared with sham acupuncture and with RM alone, but the improvements may not be clinically significant.”(当サイトによる訳:鍼は8週の治療後、偽鍼およびレスキュー薬単独と比べて疾患特異的QOLと抗ヒスタミン薬使用の指標を統計的に有意に改善したが、その改善は臨床的に意味のあるものではないかもしれない。)
追跡の結果(逐語・両方をセットで読む):”There were no differences after 16 weeks in the first year. After the 8-week follow-up phase in the second year, small improvements favoring real acupuncture over the sham procedure were noted.”(当サイトによる訳:1年目の16週時点では差がなかった。2年目の8週の追跡期の後には、偽鍼に対して実鍼を支持する小さな改善が認められた。)※片方だけを引くと印象が逆になります。
※信頼区間が97.5%なのは3群比較の多重性補正によるもので、95%CIではありません。
※以上は PubMed(E-utilities)で取得した抄録に基づきます。本文(Results の表)は未読です。レスキュー薬の使用量・抗ヒスタミン薬の使用日数(二次解析)・経済評価は、季節性の子記事で扱います。
※経穴・通電・置鍼時間の詳細は原著未確認(介入の記述論文=Ortiz M, et al. BMC Complement Altern Med. 2014;14:128、PMID 24708643 が一次資料の候補)。 - Choi SM, Park JE, Li SS, et al. A multicenter, randomized, controlled trial testing the effects of acupuncture on allergic rhinitis. Allergy. 2013;68(3):365-374.(PMID 23253122)実鍼97/偽鍼94/待機47の3群、4週。TNSS:vs 偽鍼 −1.03(−1.96〜−0.09)/vs 待機 −2.49(−3.68〜−1.29)。ACUSARと同じく、同一試験内で対照を変えると差が変わる2例目。対象の型は抄録に記載なし(試験プロトコル〔Kim 2009, PMID 19602250〕では持続性アレルギー性鼻炎)。留保:非鼻症状スコア(TNNSS)は偽鍼比 0.15(95%CI −0.21〜0.5)で差なし。偽鍼比の差は鼻症状に限られ、実鍼・偽鍼とも基線からは改善しています。
- Brinkhaus B, Witt CM, Jena S, et al. Acupuncture in patients with allergic rhinitis: a pragmatic randomized trial. Ann Allergy Asthma Immunol. 2008;101(5):535-543.(PMID 19055209)無作為化981名(鍼487/通常ケア494)+非無作為化4,256名。3か月後のRQLQ改善 1.48 vs 0.50、差 0.98(SE 0.08)。最大15回/3か月。偽鍼なし・非盲検=通常ケアに鍼を足した上乗せ・待機型の設計。季節性・通年性を含む。
- Roberts J, Huissoon A, Dretzke J, Wang D, Hyde C. A systematic review of clinical effectiveness of acupuncture for allergic rhinitis. BMC Complement Altern Med. 2008;8:13.(PMID 18430229)RCT 7件。”failed to show any summary benefits”/”Insufficient evidence to support or refute”。否定的エビデンスの代表。
- Zhang J, et al. Different Acupuncture Therapies for Allergic Rhinitis: Overview of Systematic Reviews and Network Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2020;2020:8363027.(PMID 32382307)SR 20件(RCT 33件 3,769名)。AMSTAR(SRの方法論的な質の尺度):low 2件/very low 18件、high・moderate はゼロ。
- Cochrane:当サイトが検索できた範囲(PubMed に収載された Cochrane Database of Systematic Reviews の範囲、2026年8月21日)では、鍼×アレルギー性鼻炎の完了レビューは0件。Cochrane Library 本体は当サイトからは検索できていません(接続不可)。「存在しない」と断定はしていません。
限界・留保:上の数字は季節性と通年性を混ぜたレビューのものです。「花粉症の患者での差」とは言い換えられません。また「有意差なし」は「差がないことの証明」ではなく、「薬と同等」とも言えません。効果の大きさの指標(SMD・リスク比)は、ひとつの試験の結果ではなく複数の試験を統合した推定値です。
鍼が主役にならない鼻炎・鼻の病気と受診をすすめるサイン|片側の鼻づまり・鼻血・副鼻腔炎・小児の異物
図解:緊急度で分けた、アレルギー性鼻炎の施術より受診をすすめる鼻症状のサイン一覧
7項目を3つの層に整理しました。「|」の左が鍼灸院で聴取・観察できるサイン、右が医療機関で調べられる主な病気(例)です。
稀です(Br J Gen Pract 2018)。「片側=がん」ではありません
だから「片側」が鍵になります(Br J Gen Pract 2018・当サイトによる訳)
耳鼻咽喉科学会の一般向け解説と英国GP向け総説を鍼灸院の実務に読み替えたもので、3層分けは検証された分類ではなく、右列は鍼灸院で判定するものではありません。「片側=がん」ではなく、稀はゼロではない、という両方を同時に持ってください。該当がゼロでも、アレルギー性鼻炎以外の病気を除外したことにはなりません。
「鼻炎です」と言って来院する人の全員が、アレルギー性鼻炎とは限りません。
非アレルギー性(血管運動性)鼻炎や薬剤性鼻炎もありますが、一次資料を確認できた範囲に主題とするものが無く、本記事では扱っていません。
鍼灸師にも、「これは鍼の話をする前に受診をすすめる」と判断できるサインはあります。
ここは、この記事のなかで安全にかかわる核です。
鍵は「片側だけ」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の一般向けページには、こう書かれています。
片側だけに鼻づまりが強い場合は、鼻中隔が曲がっていたり、ときには腫瘍が見つかることもある、と。
鼻血についても、上顎がんなどの腫瘍があると鼻血を出すことがあるとして、続くときは耳鼻咽喉科の受診を勧めています。
英国の総説も同じ点を指摘しています。
副鼻腔炎のような良性の病気は、通常、片側だけには現れない。だから「片側」が鍵になるわけです。
ただし、不安を煽る話ではありません。
鼻副鼻腔の悪性腫瘍は年間10万人に1人程度と稀です。
「片側=がん」ではなく、「片側なら、鍼の前に一度診てもらう」という運用です。
【一覧】受診をすすめるサインと、施術前に確認すること
鍼灸院で聴取・観察できる項目だけに絞り、3つの層に分けました。
A:すぐに耳鼻咽喉科(または小児科)の受診をすすめる
- 小児で、片側から悪臭のある膿のような鼻水が続いている(鼻の異物。ボタン電池は短時間で組織を傷める)
B:早めに耳鼻咽喉科の受診をすすめる
- 片側だけの鼻づまりが、数週〜数か月続いている
- 血の混じった鼻水・なかなか止まらずじわじわ出る鼻血(とくに片側)
- 頬の腫れ・顔面の痛み・上の歯のぐらつき・入れ歯が合わなくなった・目の突出や物が二重に見える
- ドロッとした黄色い鼻水や悪臭が続いている(慢性副鼻腔炎が疑われる症状)
- においが分からない状態が続いている
C:鍼の前に、確認しておくこと
- 喘鳴・夜間の咳・喘息の既往がある(鼻炎と喘息は「一つの気道、一つの病気」と扱われます。主治医の治療が続いていることを確認してから)
この一覧の限界:耳鼻咽喉科学会の一般向け解説と英国のGP向け総説を鍼灸院の実務に読み替えたもので、3層分けは本サイトの整理であり、検証された分類ではありません。該当がゼロでも、アレルギー性鼻炎以外の病気を除外したことにはなりません。
エビデンスボックス④ 受診をすすめるサインの出典(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の症状」(一般向け・最終更新2022年12月14日) https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16 /逐語:「片側だけに鼻づまりが強い場合は鼻の左右を分ける鼻中隔が曲がっていたり(鼻中隔弯曲症)、ときには腫瘍が見つかることもあります。」「上顎がんなどの腫瘍があると鼻血を出すことがあります。」「幼児では鼻に異物を入れ膿性鼻漏が続くことがあります。」ドロッとした鼻水=「いわゆる慢性副鼻腔炎が疑われる症状です。」
- 同学会「鼻の病気Q&A」 https://www.jibika.or.jp/modules/nose/index.php?content_id=1 (回答は一覧ページ内)/Q7:「なかなか止まらず、じわじわ出る鼻血では、がん(癌)のことがあります…」として耳鼻咽喉科の受診を勧めています(「…」は当サイトによる省略)。片側鼻閉の原因として鼻中隔弯曲・慢性副鼻腔炎・鼻ポリープ・真菌性副鼻腔炎を列挙。Q6:鼻血の原因として鼻の腫瘍や血管異常、抗凝固薬・高血圧の影響に言及。Q14:「一つの気道、一つの病気」。
※学会の原文には受診勧奨の強い表現が含まれますが、本記事では地の文で「受診を勧めています」と言い換えています。 - Slinger CA, McGarry GW. Nose and sinus tumours: red flags and referral. Br J Gen Pract. 2018;68(670):247-248.(PMID 29700039/PMC5916075)GP向け総説。レッドフラグ=”Unilateral nasal blockage,” “unilateral bloody nasal rhinorrhoea,” “ill-fitting dentures or loose teeth,” “swelling at medial canthus,” “facial pain,” “visual disturbances; diplopia and proptosis (late).” 頻度=”around 1/100 000 per annum.” 鍵となる一文=“Benign conditions such as rhinosinusitis do not usually present in a unilateral fashion”(当サイトによる訳:副鼻腔炎のような良性の病態は、通常、片側性では現れない)。
- 補強:NHS Kernow(Royal Cornwall)紹介基準 “Nasal Malignancy”(2026年2月6日更新)https://rms.cornwall.nhs.uk/primary_care_clinical_referral_criteria/ent/nose/nasal_and_sinus_red_flags /片側の顔面痛・腫れ、片側の血性膿性鼻漏、片側の眼球突出・視覚障害・複視、上歯の動揺。英国の地域NHSの運用文書であり、日本の制度の話ではありません。
- Baranowski K, Al Aaraj MS, Sinha V. Nasal Foreign Body. In: StatPearls. NCBI Bookshelf. 最終更新2023年7月3日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459279/ /”foul-smelling purulent nasal discharge that is usually unilateral.” ボタン電池は短時間で潰瘍・壊死を起こし鼻中隔穿孔に至りうる。好発2〜5歳。
- AAO-HNSF ガイドライン(Seidman 2015)Statement 5:鼻炎患者で喘息・アトピー性皮膚炎・睡眠呼吸障害・結膜炎・副鼻腔炎・中耳炎などの併存を評価し記録することを Recommendation としています(書誌はボックス⑤)。本記事は「鍼が喘息に作用する」とは書いていません。
【判断表】来院者の状況別|鍼の話をしてよいか・受診をすすめるか
前提を先に置きます。鍼灸師は診断できません。
この表は診断表ではなく、「施術を続けるか、受診をすすめるか」の目安です。
図解:アレルギー性鼻炎で鍼の施術を続けるか受診をすすめるかの判断フロー
上から順に確認します。該当したら、その時点で受診や確認が先です。
- 1
片側性の鼻づまり・血性鼻漏・顔面の腫れなど、受診をすすめるサイン(A・B)はあるか?
あれば、施術より受診を優先します。鍼の話はそのあとです。 - 2
喘息の併存・喘息様の症状はあるか?
あれば、主治医の治療が続いていることを確認してから。鼻炎と喘息は一体で扱われます。 - 3
医療機関でアレルギー性鼻炎と言われているか? 薬は使っているか?
答えの組み合わせで、下の3つに分かれます。診断済み・薬あり薬は続けてもらい、並行して回数と期間を決めて施術
診断済み・薬なし市販薬のみ/通院をやめた人薬の再開や選択は医師へ相談してもらい、回数と期間を決めて施術
未受診・型が不明受診をすすめたうえで、期限を区切って施術(目安:4〜8週・12回前後)
このフローは診断のためのものではありません。鼻炎の型の判断は医師が行います。鍼灸師は診断を行う立場になく、「施術を続けるか、受診をすすめるか」を決めるための目安です。該当項目がゼロでもアレルギー性鼻炎以外の病気を除外したことにはなりません。経過中に片側性の症状や鼻血が出たら、その時点で受診をすすめてください。
| 来院者の状況 | 鍼灸院での基本スタンス | 根拠の状態(ひとこと) |
|---|---|---|
| 医療機関で季節性(花粉による)アレルギー性鼻炎と言われている | 鍼の話をしてよい(標準治療と並行で) | 無治療比では改善の報告。偽鍼比の差は小さく、季節性では2009年時点で偽鍼に勝てなかった試験が3本ある |
| 医療機関で通年性(ダニ等による)アレルギー性鼻炎と言われている | 鍼の話をしてよい(標準治療と並行で) | 2009年のレビューでは「示唆的」。ただし試験の規模は小さい |
| 未受診・型が分からない | 受診をすすめたうえで、期限を決めて施術(目安:試験の施術量=4〜8週・12回前後をひと区切り) | 型が分からないと、どの研究が当てはまるか決められない。併存疾患(喘息等)の評価も受診で分かる |
| 片側性の鼻づまり・血性鼻漏・顔面の腫れなど一覧のA・Bに該当 | 送る(鍼の話はそのあと) | 良性の病気は通常、片側だけには現れない。稀だが腫瘍を含む精査対象 |
| 喘息を併存している/喘息様の症状がある | 主治医の治療継続を確認してから | 鼻炎と喘息は一体で扱われる。鍼が喘息に作用するという根拠は本記事では扱わない |
| 小児 | 慎重に(本記事の対象外) | 小児のレビューでは鍼単独は薬との差が示されていない。質は低い。小児の安全性の一次資料は本記事では確認していない |
回数と開始時期は、どう伝えるか(結論だけ)
主要な試験の施術量は、おおむね4〜8週間で12回前後、実用試験(日常診療に近い条件で行う試験)では3か月で最大15回でした。
ただし「何回で何が起きるか」を直接比べた試験は、本記事の文献の範囲では挙げられません。
シーズン前に始めるべきかどうかも同様で、「回数と期間を先に決めて、一緒に評価する」が現時点で最も正直な伝え方です。
日本と海外のガイドラインは鍼をどう位置づけているか|鼻アレルギー診療ガイドライン・AAO-HNSF・ARIA
「ガイドラインにも鍼は書いてあるんですよね?」
この質問への答えは、どのガイドラインかで変わります。三者三様です。
表にあるCQは、ガイドラインが答える問いの単位のことです。
| ガイドライン | 鍼の位置づけ | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 日本『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』 | 目次に、鍼を主題とする章・CQは無い(漢方薬はCQ&A 5にある) | 「記載が無い」とも「推奨していない」とも言えない(確認範囲は下の注記) |
| 米国 AAO-HNSF 2015 | Option(提供してもよい)=患者が非薬物療法を希望する場合 | 「提供してもよい」だけを切り出さない。根拠への確信度は低い、試験に方法論的欠陥とセット |
| 国際 ARIA 2010年改訂 | 鍼を使わないことを提案(条件付き・エビデンスの質はきわめて低い)という趣旨 | 原文は未取得。趣旨として読む |
米国のガイドラインは「Option」
米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)の2015年ガイドラインは、14のステートメントのひとつで鍼を取り上げています。
原文はこうです。
“Clinicians may offer acupuncture, or refer to a clinician who can offer acupuncture, for patients with allergic rhinitis who are interested in nonpharmacologic therapy.”
— Seidman MD, et al. 2015, Statement 13. ACUPUNCTURE(強さ:Option)
(当サイトによる訳:臨床医は、非薬物療法に関心のあるアレルギー性鼻炎の患者に対し、鍼を提供してもよいし、鍼を提供できる臨床医に紹介してもよい。)
ここで3つをセットで覚えてください。
強さはOption(推奨=Recommendation ではなく、提供してもよい)。
根拠への確信度は低いで、理由は「試験が標準的な薬物治療との比較を示しておらず、方法論的な欠陥があった」ことです。
同じガイドラインで、鼻噴霧ステロイドと第2世代抗ヒスタミン薬は強い推奨です。
鍼のOptionとは、重みが2段階違います。
さらに委員会は「委員の鍼への先入観は賛否に割れていた」とも書き残しました。
「米国のガイドラインが鍼を認めた」と要約するのは、この3点を落としています。
国際ARIAは2010年に「使わないことを提案」
ARIAの2010年改訂は、鍼については使わないことを提案する立場(条件付き・エビデンスの質はきわめて低い)をとった、とされています。
鍼の合併症を避けることに相対的に高い価値を置き、不確実な症状軽減には低い価値を置いた、という趣旨です。
2016年改訂は薬物療法の相対比較に絞った改訂で、2019年の次世代版とあわせて、抄録に鍼の言及はありません。
日本のガイドラインは「目次に項目が無い」まで
日本の『鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版』は書籍として出版されており、当編集部は本文を確認できていません。
言えるのは「出版社が公開している目次に、鍼・鍼灸・補完代替医療を主題とする章やCQは無い」という事実までです。
ですから「日本のガイドラインには鍼の記載が無い」とも、「推奨している」とも、本記事では書きません。
出典の扱いについて:AAO-HNSF は要約版(executive summary)の全文でステートメントと Action Statement Profile を確認しました。本体(S1-S43)の支持テキストは未読です。ARIA 2010 は抄録のみ確認し、鍼の推奨文は逐語未取得のため、本文では引用符を付けず趣旨として書いています。日本のガイドラインは書誌と目次のみで、本文は未確認です。推奨文・推奨度・エビデンスレベルは、日本のガイドラインについては一切記載していません。
エビデンスボックス⑤ 3つのガイドラインの書誌と確認範囲(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, et al. Clinical practice guideline: Allergic rhinitis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(1 Suppl):S1-S43.(PMID 25644617/DOI 10.1177/0194599814561600)/要約版:Seidman MD, et al. Clinical practice guideline: allergic rhinitis executive summary. 同誌 2015;152(2):197-206.(PMID 25645524/DOI 10.1177/0194599814562166) https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0194599814562166
Statement 13 の Action Statement Profile(逐語):Strength=Option/Aggregate evidence quality=”Grade B, based on randomized controlled trials with limitations, observational studies with consistent effects”/Level of confidence in evidence=“Low; the randomized trials did not show comparison to traditional medical therapy for allergic rhinitis and had methodological flaws”/Benefit-harm assessment=”Equilibrium of benefit and harm”/Value judgments=”Panel members varied in their preconceived bias for or against acupuncture”/Risks, harms, costs=”Logistics of multiple treatments, need for multiple needle sticks, cost of treatment, rare infections”/Role of patient preferences=”Limited—potential for shared decision making”。※本文では「Grade B」を出していません。総合的な質の等級(B)と確信度(Low)は別の評価軸で、Bだけを切り出すと誤要約になるためです。
比較のための他ステートメント:St.6 鼻噴霧ステロイド=Strong recommendation/St.7 経口第2世代抗ヒスタミン薬=Strong recommendation/St.11 免疫療法(SLIT/SCIT)=Recommendation(薬物療法で不十分な患者に)/St.5 併存疾患の評価=Recommendation/St.14 ハーブ療法=No recommendation。14ステートメントのうち当サイトが確認したのはこれらで、全14の内訳は確認していません。
限界:要約版の範囲で確認。本体の Supporting Text(鍼の試験の個別評価)は未読。2015年の文書であり、その後の試験は反映されていません。 - Brozek JL, Bousquet J, Baena-Cagnani CE, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) guidelines: 2010 revision. J Allergy Clin Immunol. 2010;126(3):466-476.(PMID 20816182/DOI 10.1016/j.jaci.2010.06.047)抄録は「補完療法を扱った」と述べるのみ。本文は取得できず、鍼の推奨文・推奨番号・GRADE評定は逐語未確認。本文の記述は二次的な要旨に基づく趣旨であり、引用ではありません。/Brożek JL, et al. ARIA guidelines—2016 revision. 同誌 2017;140(4):950-958.(PMID 28602936)薬物療法の相対比較に限定した改訂。/Bousquet J, et al. Next-generation ARIA guidelines. 同誌 2020;145(1):70-80.e3.(PMID 31627910)いずれも抄録に鍼の言及なし。
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2024年版(改訂第10版)』金原出版, 2024年3月31日. ISBN 978-4-307-37140-7. 確認元=金原出版・医書.jp の書誌・目次ページ。本文未確認・無料PDFなし・学会公式サイトは接続できず。目次に鍼・鍼灸・補完代替医療を主題とする章・CQは無く、「漢方薬」は第5章治療の小項目と CQ&A 5 にあります。参考:山田武千代. 鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版 鼻炎の分類と重症アレルギー性鼻炎の治療. アレルギー. 2024;73(2):155-159.(DOI 10.15036/arerugi.73.155)抄録に鍼・代替療法への言及なし。
患者に先に伝えること|薬との線引きと顔面刺鍼の注意
薬との線引き:鍼は薬の代わりではない
鼻炎の患者さんの多くは、すでに何らかの薬を使っています。
だから線引きは、ここがいちばん大事です。
研究が示しているのは、鍼が抗ヒスタミン薬より良いという結果は安定して出ていないということまでです(小児のレビューでも鍼単独は薬との差が示されていません)。
米国のガイドラインでは、鼻噴霧ステロイドと第2世代抗ヒスタミン薬が「強い推奨」、鍼は「提供してもよい」。
舌下免疫療法と鍼を併用した研究は、本記事の文献の範囲では確認できませんでした。
つまり、鍼は薬の代わりではなく、薬と並行して置くものです。
「鍼をやるから薬をやめましょう」という指導は、鍼灸師の役割ではありません。薬の増減は処方した医師に相談してもらいます。
「一度の注射でシーズン中楽になる薬はないか」と聞かれることがありますが、薬の選択は鍼灸師が答える範囲ではありません。
耳鼻咽喉科で相談してもらってください。
この節の範囲について:抗ヒスタミン薬・鼻噴霧ステロイド・舌下免疫療法それぞれの仕組みや使い分けは、本記事では扱いません。将来、薬の基礎を扱う横断記事で整理する予定です。ACUSARの二次解析で鍼群の抗ヒスタミン薬使用日数が少なかったという報告がありますが(Adam 2018・参考文献22)、事前に指定された主要評価ではないため、「鍼で薬を減らせる」という根拠として本記事では使っていません。数値は季節性の子記事で扱います。
エビデンスボックス⑥ 薬との比較に関する出典(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- He 2022(ボックス③):vs セチリジン RR 1.10(0.96〜1.26)/vs ロラタジン RR 1.15(0.98〜1.37)。薬との比較試験はすべて中国で深刻なバイアスリスクと著者が記載。
- Du 2022(ボックス③):vs 薬 症状 SMD −0.48(−0.85〜−0.10)。抄録のみ確認。
- Xiao Q, Ni Z, Wang R, Jiang W, Yuan J. Efficacy of acupuncture for allergic rhinitis in children: systematic review and meta-analysis with trial sequential analysis. Int Forum Allergy Rhinol. 2024;14(9):1488-1500.(PMID 39017391)13研究1,186名(小児)。鍼単独 vs 薬:RR 1.10(0.97〜1.24)p=0.13=有意差なし、TSAで検出力不足。鍼+薬 vs 薬:RR 1.29(1.17〜1.42)。著者「エビデンスの質は総じて低い」。
- Ma J, Peng M, Song YG, Xu XJ. Efficacy and safety of acupuncture-related therapies in the treatment of allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Front Med (Lausanne). 2026;13:1835311.(PMID 42245938)RCT 38件3,349名。対照は通常薬のみ。鍼単独 vs 薬:TNSS SMD −0.65(−1.17〜−0.14)。著者 “the quality of evidence remains low”。※最新ですが対照が薬のみで、偽鍼比・無治療比の分解はありません。He 2022 の薬比「差なし」とは方向が違います。アウトカムの種類(TNSS と奏効率)や組み入れた試験も異なりますが、両論文は互いに言及しておらず、違いの理由を当サイトが特定することはできません。本記事では「薬との比較は結論が安定していない」と読んでいます。
- 標準治療の位置づけ:AAO-HNSF 2015 St.6/St.7=Strong recommendation、St.11 免疫療法=Recommendation(ボックス⑤)。厚生労働省の患者向け冊子『的確な花粉症の治療のために(第2版)』(平成22年度厚生労働科学研究・大久保公裕 監修)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf では、治療を対症療法と根治療法に2分類し、鍼・民間療法の記載はありません。※2010年度の資料で、舌下免疫療法の保険適用(2014年)前のものです。
顔面刺鍼の注意:「稀」は「ゼロ」ではない
鼻炎の施術では、迎香・印堂など顔面に刺すことが多いですよね。
顔は、あざや出血が目立つ部位です。
重篤な有害事象は稀と報告されていますが、「稀」は「ゼロ」ではありません。
ドイツの約23万人の前向き観察研究では、何らかの有害事象が報告されたのは8.6%。
その多くは軽い出血やあざで、処置が必要だったのは2.2%でした。
これは全疾患を横断した数字で、鼻炎の施術だけの数字ではありません。
鼻炎のレビューでも、報告された有害事象は軽微で一過性とされています。
米国のガイドラインが鍼のリスクとして挙げているのは、複数回通う負担・複数の刺鍼・費用・稀な感染です。
施術前に伝えるのは、次の3つで足ります。
顔にあざが出ることがあること。
まれに出血があること。
使い捨ての鍼を使っていること。
エビデンスボックス⑦ 安全性の出典(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Witt CM, Pach D, Brinkhaus B, et al. Safety of acupuncture: results of a prospective observational study with 229,230 patients and introduction of a medical information and consent form. Forsch Komplementmed. 2009;16(2):91-97.(PMID 19420954/DOI 10.1159/000209315)前向き観察研究、229,230名。有害事象の報告 8.6%/処置を要したもの 2.2%/出血・血腫が全有害事象の58%/重篤=気胸2件・下肢神経損傷1件。全疾患横断のデータであり、アレルギー性鼻炎に限定した数字ではありません。観察研究のため因果は確定しません。
- 鼻炎のレビューにおける有害事象:He 2022(ボックス③)・Ma 2026(ボックス⑥)とも、報告された有害事象は軽微・一過性と記載。Du 2022 は vs 薬で鍼の有害事象が少ないと記載(抄録のみ)。
- AAO-HNSF 2015 Statement 13 の Risks, harms, costs=”Logistics of multiple treatments, need for multiple needle sticks, cost of treatment, rare infections”(ボックス⑤)。ARIA 2010 は鍼を選ぶ患者には使い捨て鍼のみを用いる趣旨を述べたとされます(逐語未取得)。
- ※顔面・眼周囲の刺鍼に固有の有害事象率を示す一次資料は、本記事の文献の範囲にはありません。本文の「あざ・出血」は一般的な留意事項です。
明日から使える患者トークと自院HPの表現|「体質改善」「自律神経を整える」をどう扱うか
判断はできても、言葉が出てこない。
そのまま使える言い回しを4つ置いておきます。
①「鍼で鼻炎はどうにかなりますか」と聞かれたとき
「研究では、何もしない場合と比べると鼻の症状や生活のしやすさが良くなったという報告があります。
ただ、お薬より良いとはっきり言える結果は出ていません。
なので、お薬は続けながら、回数を決めて試して、一緒に変化を見ていく形をおすすめしています。」(花粉症の方には)「花粉症については、比較のしっかりした研究ほど差が小さく出ています。期待を大きくしすぎず、まず1シーズン分を区切って見ましょう。」
(通年性の方には)「ダニなどの通年性では、規模は小さいですが差が出た研究があります。こちらも回数を決めて評価します。」
② 薬を使っている患者さんに
「お薬は、処方された先生の指示どおり続けてください。
鍼はお薬の代わりではなく、並行して使うものと考えています。
減らせそうかどうかは、症状の記録を持って先生にご相談いただくのがいちばん確実です。」
③「送る」と伝えるとき(片側の鼻づまり・鼻血など)
「片側だけの鼻づまりや、止まりにくい鼻血は、鼻炎以外の原因が隠れていることがあります。
多くは心配のないものですが、鍼で様子を見るより先に、一度耳鼻咽喉科で診てもらってください。
施術は、そのあとで組み立てましょう。」
④「体質改善できますか」と聞かれたとき
「体質が変わる、免疫が正常になる、といったことを示した研究は、私が知る範囲ではありません。
研究で分かっているのは、施術を続けている期間の症状と生活の質の変化までです。
その範囲で、正直にお伝えしながら進めたいと思っています。」
自院ホームページでの表現:リスクの低い書き方/避けたい書き方
以下は「この書き方なら適法」と保証するものではなく、相対的にリスクが低い/高い書き方の整理です。実際の記載は最新の「あはき・柔整広告ガイドライン」本文と、所管保健所の指導をご確認ください。施術所のウェブサイトは、あはき師法・柔整師法の広告規制については原則として対象外とされていますが、医療法・薬機法・景品表示法などの他法令は及びます。詳しくは鍼灸院のホームページと広告規制の記事へ。
先に前提です。
あはき師法7条の広告可能事項は限定列挙で、効能・効果や学術的根拠の記載はそもそも含まれていません。
バナー広告等からリンクされるなどしてウェブサイトが広告に該当する場合は、この制限がかかります(指針Ⅵ-1)。
それでも鼻炎に触れるなら、相対的にリスクが低い形は次の3つです。
記載をおすすめするものではありません。
- リスクが低い:「アレルギー性鼻炎については、何もしない場合と比べた鼻症状・生活の質の改善が報告されています(海外のレビュー・2022年)。偽鍼との差は小さいとされています」のように、出典と比較対象と留保を添えて書く
- リスクが低い:「片側だけの鼻づまりや止まりにくい鼻血がある場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめしています」と、受診優先の姿勢を明記する
- リスクが低い:「米国の耳鼻咽喉科のガイドライン(2015年)では、非薬物療法を希望する患者に提供してもよい選択肢(Option)として挙げられています(根拠への確信度は低いとされています)」のように、強さの区分と確信度まで含めて書く
- 注意:とくに「ガイドラインで推奨されています」への短縮は避けてください(Optionは推奨ではありません)
- 避けたい:「体質改善」「免疫を正常化」「自律神経を整えて鼻炎を根本から」といった、研究で示されていない機序を効果として書く表現
- 避けたい:「改善率93%」「1回で実感」「鼻炎が治る」「お薬がいらなくなる」といった、効果を保証する・薬の中止を誘導する表現
- 避けたい:「鼻炎のタイプを見極めます」のような、型の判定をうたう表現
正直に言うと|この記事で書かなかったこと
このページは「見取り図」です。
書かなかったこと、書けなかったことを、理由つきで開示しておきます。
- 日本のガイドライン本文は未確認です。書けたのは「目次に鍼の項目が無い」までで、本文中の言及の有無は分かりません。膝OAのガイドラインで「独立したCQは無いが、物理療法のCQ内に記載があった」前例があるため、「記載が無い」とは書いていません。書籍を確認できた時点で更新します。
- 耳鍼・耳穴圧迫、鼻の中に刺す鍼、蝶口蓋神経節や星状神経節への刺鍼は扱っていません。耳鍼は2010年のレビューが「質の低さにより有益性は不明」とし、2014年の通年性RCT(245名)は刺鍼ではなく耳穴圧迫の研究でした。鼻内刺鍼・神経節刺鍼はメタ解析が存在しますが、日本の一般的な鍼灸院で行う体表の鍼の根拠として流用できないためです。
- 鼻炎の作用機序はほぼ書いていません。ダニ特異的IgEの低下を報告した試験は実鍼群内の前後比較で、サイトカインを調べた小規模試験は「Th1/Th2の不均衡には作用していないように見える」と述べています。「免疫を正常化する」と書く根拠はありません。
- 日本国内の鍼の無作為化比較試験は見つかりませんでした。全日本鍼灸学会雑誌の範囲で確認できたのは、症例集積(189名・対照なし)と単一事例研究が中心です。「見つからなかった」であって「存在しない」ではありません。
- 「薬より効く」「薬の代わりになる」とも、「効かない」とも書いていません。どちらの断定にも、根拠が足りないからです。
- 否定的なレビューもあります。2008年のシステマティックレビューは「支持も否定もするには根拠不十分」と結論しました。既存レビュー20本の質を採点した2020年の評価では、18本が「きわめて低い」、2本が「低い」で、「高い」「中程度」はゼロでした。中核のレビュー(He 2022)でも、試験の7割以上が中国で行われ、盲検化が不十分なものが多く、出版バイアスは評価できていません。なお、当サイトが検索できた範囲(PubMed に収載された Cochrane Database of Systematic Reviews の範囲、2026年8月時点)では、アレルギー性鼻炎に対する鍼の完了レビューは見つかりませんでした。Cochrane Library 本体は当サイトからは検索できていません。
エビデンスボックス⑧ 「書かなかったこと」の根拠と、本文で扱わなかった論点(深く知りたい方向け・飛ばしてOK)
- Zhang CS, Yang AW, Zhang AL, et al. Ear-acupressure for allergic rhinitis: a systematic review. Clin Otolaryngol. 2010;35(1):6-12.(PMID 20447156)5研究。”benefit … is unknown due to poor quality of included studies”。/Zhang CS, Xia J, Zhang AL, et al. Ear acupressure for perennial allergic rhinitis: a multicenter randomized controlled trial. Am J Rhinol Allergy. 2014;28(4):e152-e157.(PMID 25197908)n=245、耳穴圧迫 vs 偽耳穴圧、8週+12週追跡。効果量は抄録になし。
- 鼻内刺鍼・神経節刺鍼:Li Y, et al. Medicine (Baltimore). 2024;103(45):e40305(PMID 39533599・鼻内刺鍼14報1,009名・鼻のかゆみは改善なし・質は低い)/Zhang YL, et al. Zhen Ci Yan Jiu. 2025;50(12):1482-1494(PMID 41443923・中国語)/Zhang J 2020 のNMAで蝶口蓋神経節刺鍼 OR 1.31(1.07〜1.61)/安藤文紀, ほか. 鼻アレルギーに対する星状神経節刺鍼の効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 1988;38(3):281-287(5例)。いずれも一般の鍼灸院の体表刺鍼の根拠には用いていません。
- 機序:McDonald JL, Smith PK, Smith CA, et al. Effect of acupuncture on house dust mite specific IgE, substance P, and symptoms in persistent allergic rhinitis. Ann Allergy Asthma Immunol. 2016;116(6):497-505.(PMID 27156748)n=151、3群。ダニ特異IgE 18.87→17.82 kU/L(p=0.04)は実鍼群内の前後比較で、群間差ではありません。/Gellrich D, Pfab F, Ortiz M, et al. Acupuncture and its effect on cytokine and chemokine profiles in seasonal allergic rhinitis: a preliminary three-armed RCT. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2022;279(10):4985-4995.(PMID 35301577)n=29。「Th1/Th2不均衡には免疫学的に作用していないように見える」。極小規模。
- 日本語文献:井島晴彦, 石神龍代, 中村覚, ほか. 黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による花粉症症状・QOLの改善効果―日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用いた5年間の症例集積―. 全日本鍼灸学会雑誌. 2016;66(4):290-299.(DOI 10.3777/jjsam.66.290)189名・対照なし・スギ花粉飛散期5年分。飛散量の年変動と平均への回帰を分離できず、著者も「有用である可能性が示唆された」止まり。※同論文の緒言はAAO-HNSF 2015を「米国でも鍼治療効果が認識」と紹介していますが、本記事では Option である点をそのまま書いています。/高浪景子, 仲西宏元, 矢野忠. 通年性アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の影響. 同誌 2013;63(1):33-42.(DOI 10.3777/jjsam.63.33)単一事例実験(ABA)3名。
- 小児は本記事の対象外です。小児のレビューは Xiao 2024(ボックス⑥)の1本で、鍼単独は薬と差がなく、質も低いとされています。小児の安全性の一次資料は本記事では確認していません。
- 喘息に鍼が作用するとは書いていません。併存の確認(AAO-HNSF St.5・ボックス④)は書きましたが、喘息そのものは本記事の範囲外です。
- 舌下免疫療法と鍼の併用研究は確認できませんでした。「確認できない」であって「存在しない」ではありません。
- ACUSARの経穴・通電・置鍼時間の詳細は書いていません。原著本文を確認できていないためです。介入の記述論文(Ortiz 2014・参考文献20)が一次資料の候補で、季節性の子記事で扱います。
- 費用対効果(FAQで言及):Witt CM, Reinhold T, Jena S, Brinkhaus B, Willich SN. Cost-effectiveness of acupuncture in women and men with allergic rhinitis. Am J Epidemiol. 2009;169(5):562-571.(PMID 19126587)通常ケア対照の実用試験にもとづく経済評価。著者 “remains unclear whether effects are acupuncture specific”。/Reinhold T, Roll S, Willich SN, Ortiz M, Witt CM, Brinkhaus B. Cost-effectiveness for acupuncture in seasonal allergic rhinitis: economic results of the ACUSAR trial. Ann Allergy Asthma Immunol. 2013;111(1):56-63.(PMID 23806461)偽鍼対照のACUSARにもとづく経済評価。著者 “acupuncture for AR may not be a cost-effective intervention”。2本で結論が逆=対照が通常ケアか偽鍼かの違い。ICER の数値は費用対効果の記事への加筆と季節性の子記事で扱います。
FAQ|アレルギー性鼻炎への鍼で鍼灸師によくある質問
Q. アレルギー性鼻炎の患者に、鍼は薬の代わりになると説明してよいですか?
A. 避けてください。抗ヒスタミン薬との比較では、鍼のほうが良いという結果は安定して出ておらず、「同等」とも「代わりになる」とも言えない状態です。米国のガイドラインでも、薬は「強い推奨」、鍼は「提供してもよい」と重みが違います。薬の増減は処方した医師に相談してもらい、鍼は並行して置く形で説明するのが正確です。
Q. アレルギー性鼻炎への鍼は何回くらい必要で、花粉症の患者にはいつから始めると伝えればよいですか?
A. 回数を直接比べた試験は本記事の文献にはなく、「回数と期間を先に決めて一緒に評価する」が現実的です。主要な試験の施術量は本文の判断表の節にまとめました。開始時期も、シーズン前とシーズン中を直接比べた研究は挙げられないため、「何週間前から」という数字は出せません。試験の多くは、症状のある時期に施術を行っています。
Q. アレルギー性鼻炎の鍼灸に療養費(保険)は使えますか?
A. 通知で支給対象として挙げられているのは6疾患(神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症)で、アレルギー性鼻炎はこの列挙に含まれていません。6疾患以外で保険者が個別に判断するとされているのは「慢性的な疼痛を主症とする類症疾患」であり、アレルギー性鼻炎はこの枠にも当てはまりにくいと考えられます。ただし支給の可否を施術所側で断定せず、加入保険者または所管の地方厚生局へご確認ください。この回答は公開情報にもとづく整理で、法的・行政的な助言ではありません。範囲と手続きの詳細は鍼灸の療養費(保険)の実務ガイドで整理しています。
Q. アレルギー性鼻炎に鍼が作用するしくみは説明できますか?
A. 確立した機序はありません。IgEの低下を報告した試験は実鍼群内の前後比較にとどまり、サイトカインを調べた小規模試験はTh1/Th2の不均衡には作用していないように見えると述べています。なお当サイトの作用機序の記事は痛み(鎮痛)の機序を整理したもので、鼻炎の機序は扱っていません。
Q. アレルギー性鼻炎への鍼は費用対効果の面ではどうですか?
A. ドイツの2本で結論が逆です。通常ケアに鍼を足した試験では費用対効果ありと評価され、偽鍼を対照にしたACUSARでは「費用対効果はないかもしれない」とされました。対照の違いで答えが変わる典型例で、日本の料金設定の根拠には使えません。海外の数字の読み方は費用対効果の記事で整理しています。
まとめ|アレルギー性鼻炎への鍼を鍼灸師としてどう扱うか
- アレルギー性鼻炎への鍼は、何もしない群と比べると改善の報告があり、偽鍼と比べると差は小さく、抗ヒスタミン薬より効くとは言えません。腰痛・膝OA・頭痛と同じ構図です
- 季節性と通年性で研究結果が割れています。季節性は2009年のレビューでは偽鍼に勝てなかった試験が3本、通年性は小規模ながら差の示唆。多くのメタ解析は2つを混ぜて統合しているので、数字を見たら「どの型の患者か」を先に見ます
- 最大規模の季節性試験(ACUSAR)でも、著者自身が「臨床的に意味のある大きさではないかもしれない」と留保しています
- ガイドラインは三者三様。米国=Option、ARIA 2010=使わないことを提案、日本=目次に項目なし
- 片側だけの鼻づまり・止まりにくい鼻血・顔面の腫れは、鍼の前に耳鼻咽喉科へ。稀ですが腫瘍を含む精査対象です
- 鍼は薬の代わりではなく、並行して置くもの。薬の増減は医師へ。顔面刺鍼では、あざ・出血が起こりうることを先に伝えます
関連記事
更新履歴:本記事は初版です。日本の『鼻アレルギー診療ガイドライン』本文の確認、アレルギー性鼻炎に対する鍼の新しい系統的レビュー・コクランレビュー、AAO-HNSF ガイドラインの改訂に応じて追記します。
本記事の引用(英文・日本語とも)は著作権法32条にもとづく引用です。英文の日本語訳はすべて当サイトによるもので、他者の公式訳は用いていません。
参考文献
- Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, et al. Clinical practice guideline: Allergic rhinitis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(1 Suppl):S1-S43. PMID: 25644617. DOI: 10.1177/0194599814561600
- Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, et al. Clinical practice guideline: allergic rhinitis executive summary. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(2):197-206. PMID: 25645524. DOI: 10.1177/0194599814562166 https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0194599814562166 ※本記事のStatement 13の逐語はこの要約版に基づきます
- Brozek JL, Bousquet J, Baena-Cagnani CE, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) guidelines: 2010 revision. J Allergy Clin Immunol. 2010;126(3):466-476. PMID: 20816182. DOI: 10.1016/j.jaci.2010.06.047 ※抄録のみ確認。鍼の推奨文は逐語未取得
- Brożek JL, Bousquet J, Agache I, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) guidelines—2016 revision. J Allergy Clin Immunol. 2017;140(4):950-958. PMID: 28602936
- Bousquet J, et al. Next-generation Allergic Rhinitis and Its Impact on Asthma (ARIA) guidelines for allergic rhinitis based on Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE) and real-world evidence. J Allergy Clin Immunol. 2020;145(1):70-80.e3. PMID: 31627910
- Bousquet J, Khaltaev N, Cruz AA, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) 2008 update. Allergy. 2008;63 Suppl 86:8-160. PMID: 18331513
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編『鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2024年版(改訂第10版)』金原出版, 2024. ISBN 978-4-307-37140-7 https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307371407 ※当編集部は本文を直接確認していません。本記事は書誌と目次のみを参照しています
- 山田武千代. 鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版 鼻炎の分類と重症アレルギー性鼻炎の治療. アレルギー. 2024;73(2):155-159. DOI: 10.15036/arerugi.73.155
- Roberts J, Huissoon A, Dretzke J, Wang D, Hyde C. A systematic review of clinical effectiveness of acupuncture for allergic rhinitis. BMC Complement Altern Med. 2008;8:13. PMID: 18430229. DOI: 10.1186/1472-6882-8-13
- Lee MS, Pittler MH, Shin BC, Kim JI, Ernst E. Acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review. Ann Allergy Asthma Immunol. 2009;102(4):269-279. PMID: 19441597. DOI: 10.1016/S1081-1206(10)60330-4
- Zhang CS, Yang AW, Zhang AL, et al. Ear-acupressure for allergic rhinitis: a systematic review. Clin Otolaryngol. 2010;35(1):6-12. PMID: 20447156
- Zhang J, et al. Different Acupuncture Therapies for Allergic Rhinitis: Overview of Systematic Reviews and Network Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2020;2020:8363027. PMID: 32382307. DOI: 10.1155/2020/8363027
- He M, Qin W, Qin Z, Zhao C. Acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Eur J Med Res. 2022;27(1):58. PMID: 35462555. DOI: 10.1186/s40001-022-00682-3 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9036742/
- Du SH, Guo W, Yang C, et al. Filiform needle acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. J Integr Med. 2022;20(6):497-513. PMID: 36068161. DOI: 10.1016/j.joim.2022.08.004
- Xiao Q, Ni Z, Wang R, Jiang W, Yuan J. Efficacy of acupuncture for allergic rhinitis in children: Systematic review and meta-analysis with trial sequential analysis. Int Forum Allergy Rhinol. 2024;14(9):1488-1500. PMID: 39017391. DOI: 10.1002/alr.23414
- Li Y, Wang Y, Liang Y, Si X, Li Z, Wang Y. Intranasal acupuncture for allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2024;103(45):e40305. PMID: 39533599
- Zhang YL, et al. Zhen Ci Yan Jiu. 2025;50(12):1482-1494. PMID: 41443923
- Ma J, Peng M, Song YG, Xu XJ. Efficacy and safety of acupuncture-related therapies in the treatment of allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Front Med (Lausanne). 2026;13:1835311. PMID: 42245938. DOI: 10.3389/fmed.2026.1835311
- Brinkhaus B, Ortiz M, Witt CM, et al. Acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013;158(4):225-234. PMID: 23420231. DOI: 10.7326/0003-4819-158-4-201302190-00002
- Ortiz M, Witt CM, Binting S, et al. A randomised multicentre trial of acupuncture in patients with seasonal allergic rhinitis—trial intervention including physician and treatment characteristics. BMC Complement Altern Med. 2014;14:128. PMID: 24708643
- Reinhold T, Roll S, Willich SN, Ortiz M, Witt CM, Brinkhaus B. Cost-effectiveness for acupuncture in seasonal allergic rhinitis: economic results of the ACUSAR trial. Ann Allergy Asthma Immunol. 2013;111(1):56-63. PMID: 23806461. DOI: 10.1016/j.anai.2013.04.008
- Adam D, Grabenhenrich L, Ortiz M, Binting S, Reinhold T, Brinkhaus B. Impact of acupuncture on antihistamine use in patients suffering seasonal allergic rhinitis: secondary analysis of results from a randomised controlled trial. Acupunct Med. 2018;36(3):139-145. PMID: 29440045
- Brinkhaus B, Witt CM, Jena S, Liecker B, Wegscheider K, Willich SN. Acupuncture in patients with allergic rhinitis: a pragmatic randomized trial. Ann Allergy Asthma Immunol. 2008;101(5):535-543. PMID: 19055209. DOI: 10.1016/S1081-1206(10)60294-3
- Witt CM, Reinhold T, Jena S, Brinkhaus B, Willich SN. Cost-effectiveness of acupuncture in women and men with allergic rhinitis: a randomized controlled study in usual care. Am J Epidemiol. 2009;169(5):562-571. PMID: 19126587. DOI: 10.1093/aje/kwn370
- Choi SM, Park JE, Li SS, et al. A multicenter, randomized, controlled trial testing the effects of acupuncture on allergic rhinitis. Allergy. 2013;68(3):365-374. PMID: 23253122. DOI: 10.1111/all.12053
- Xue CC, Zhang AL, Zhang CS, et al. Acupuncture for seasonal allergic rhinitis: a randomized controlled trial. Ann Allergy Asthma Immunol. 2015;115(4):317-324.e1. PMID: 26073163
- Xue CC, An X, Cheung TP, et al. Acupuncture for persistent allergic rhinitis: a randomised, sham-controlled trial. Med J Aust. 2007;187(6):337-341. PMID: 17874980
- McDonald JL, Smith PK, Smith CA, Changli Xue C, Golianu B, Cripps AW. Effect of acupuncture on house dust mite specific IgE, substance P, and symptoms in persistent allergic rhinitis. Ann Allergy Asthma Immunol. 2016;116(6):497-505. PMID: 27156748
- Zhang CS, Xia J, Zhang AL, et al. Ear acupressure for perennial allergic rhinitis: A multicenter randomized controlled trial. Am J Rhinol Allergy. 2014;28(4):e152-e157. PMID: 25197908
- Gellrich D, Pfab F, Ortiz M, et al. Acupuncture and its effect on cytokine and chemokine profiles in seasonal allergic rhinitis: a preliminary three-armed randomized controlled trial. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2022;279(10):4985-4995. PMID: 35301577
- Witt CM, Pach D, Brinkhaus B, et al. Safety of acupuncture: results of a prospective observational study with 229,230 patients and introduction of a medical information and consent form. Forsch Komplementmed. 2009;16(2):91-97. PMID: 19420954. DOI: 10.1159/000209315
- 松原篤, 坂下雅文, 後藤穣, ほか. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年, 2008年との比較):速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(6):485-490. DOI: 10.3950/jibiinkoka.123.485 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/6/123_485/_article/-char/ja/
- Okuda M. Epidemiology of Japanese cedar pollinosis throughout Japan. Ann Allergy Asthma Immunol. 2003;91(3):288-296. PMID: 14533662
- 井島晴彦, 石神龍代, 中村覚, ほか. 黒野式全身調整基本穴への鍼治療(筋膜上圧刺激)による花粉症症状・QOLの改善効果―日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用いた5年間の症例集積―. 全日本鍼灸学会雑誌. 2016;66(4):290-299. DOI: 10.3777/jjsam.66.290
- 高浪景子, 仲西宏元, 矢野忠. 通年性アレルギー性鼻炎に対する鍼治療の影響. 全日本鍼灸学会雑誌. 2013;63(1):33-42. DOI: 10.3777/jjsam.63.33
- 安藤文紀, 中村辰三, 神谷勝久, 竹中洋, 水越治. 鼻アレルギーに対する星状神経節刺鍼の効果. 全日本鍼灸学会雑誌. 1988;38(3):281-287. DOI: 10.3777/jjsam.38.281
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の症状」(一般向け・最終更新2022年12月14日) https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の病気Q&A」 https://www.jibika.or.jp/modules/nose/index.php?content_id=1
- Slinger CA, McGarry GW. Nose and sinus tumours: red flags and referral. Br J Gen Pract. 2018;68(670):247-248. PMID: 29700039. DOI: 10.3399/bjgp18X696137 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5916075/
- NHS Kernow (Royal Cornwall Hospitals). Primary care clinical referral criteria: Nasal and sinus red flags(2026年2月6日更新) https://rms.cornwall.nhs.uk/primary_care_clinical_referral_criteria/ent/nose/nasal_and_sinus_red_flags
- Baranowski K, Al Aaraj MS, Sinha V. Nasal Foreign Body. In: StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf. Updated 2023-07-03. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459279/
- 大久保公裕 監修『的確な花粉症の治療のために(第2版)』平成22年度厚生労働科学研究補助金 免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。アレルギー性鼻炎の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。
【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。
