39試験2万人の慢性疼痛と鍼灸|「1年後も持続」の出どころ【論文解説】

39試験2万人の慢性疼痛と鍼灸|「1年後も持続」の出どころ【論文解説】 論文解説

鍼のエビデンスの話になると、たいてい名前が出てくる論文があります。39試験・約2万人。慢性疼痛と鍼灸をめぐる解析のなかで、規模の大きなものです。

ただ、よく引用される論文ほど、よく誤読されます。この論文でいちばん誤読されるのは「1年後も効果が続く」のところです。原文がどう書いているかを、順番に見ていきます。

■ この記事が扱う論文
Vickers AJ, et al.(Acupuncture Trialists’ Collaboration). Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis. The Journal of Pain. 2018;19(5):455-474(PMCは出版版を J Pain. 2017 Dec 2;19(5):455–474 と表示
PMID 29198932/DOI 10.1016/j.jpain.2017.11.005/PMC PMC5927830
デザイン個々の患者データ(IPD)を集めたメタ解析(2012年版の更新)
組み入れ:39試験・20,827名
対象:非特異的筋骨格痛/変形性関節症/慢性頭痛/肩の痛み の4領域
組み入れ条件割り付けの隠蔽が「明確に適切」と判断できた試験のみ
主要アウトカム:痛みと機能
🛑 どの版から引いているか:本記事の英文は、PMCで公開されている著者最終稿(PMC5927830/NIHMS935739)から引用しています。PMCの全文は出版社の校正を経る前の版で、出版版とは字句が異なる箇所があります。たとえばPMCの superior to both sham and no acupuncture control は、出版版では superior to sham as well as no acupuncture control です。内容は同じですが、原典を引くときは、どちらの版から引いたかを添えてください。
※ 当サイトの確認範囲は、後半の「当サイトがどこまで原著を確認したか」に。

この論文が示したこと。4つの症状のいずれについても、鍼は偽鍼を上回ったと報告されています。鍼を行わない対照との比較でも、試験のある3領域で上回りました。差の大きさは、鍼を行わない対照と比べて約0.5SD、偽鍼と比べて約0.2SD(SD=標準偏差。点数のばらけ具合を1とみなして、差がその何割ぶんかを表す言い方です)。そして著者自身が、ばらつきの主な原因は「鍼のやり方の違い」ではなく「対照群の違い」だと書いています。
この論文が示していないこと。⚠️ 抄録は「いずれの疼痛の病態でも」と書いていますが、肩の痛みには、鍼を行わない対照を置いた試験が1本もありません。
🛑 そして、抄録にある「1年後の減衰は約15%」は、統計的に確認された減衰ではありません。正しくは「減衰は統計的に確認されなかった」です(数値は本文で)。
また、鎮痛薬との直接比較の試験ではありません。灸だけを取り出した解析でもなく、対象は上の4領域に限られます。
引くときの言い方は、後半の「慢性疼痛と鍼灸の論文として、同業者にどう引くか」に。

この記事は「数字の出どころ」を確かめる場所です。臨床判断のほうは腰痛への鍼のエビデンス|ACP推奨・NICE非推奨をどう説明するか変形性膝関節症の鍼のエビデンス|ACR推奨とNICE非推奨が分かれる理由に。

この論文は何を集めたのか|39試験2万人の内訳

論文の平均値ではなく、参加者ひとりひとりのデータを集めている

ふつうのメタ解析は、公表された論文に載っている平均値を集めて統合します。この論文は違います。参加者ひとりひとりの生データを各試験から集めて統合しています。これを個々の患者データ(IPD)のメタ解析と呼びます。「対照群がどんな型だと結果が変わるか」を、後から共通の方法で計算し直せるのが、この作り方の強みです。

入口の条件が厳しく、試験数には2つの数字が出てくる

組み入れられたのは、割り付けの隠蔽が「明確に適切」と判断できた試験だけです(逐語はエビデンスボックス①に)。だから39試験という数は、「慢性疼痛の鍼の試験が39本しかない」という意味ではありません。条件を満たさなかった試験は、この39本の中に入っていません。

⚠️ もう1つ注意が要ります。抄録は「新たに13試験が同定された」、考察は「10研究(約3,000名)が追加された」と書いています。論文は、この差の理由を明記していません。だから「13試験が追加された」とは書けません。書けるのは「新たに13試験が同定され、うち10試験が組み入れられた(差の理由は本文に明記なし)」までです。

Vickers 2018 が組み入れた試験数・参加者数・対象とした4領域・組み入れ条件をまとめた数値カードの図

この論文の骨格

39試験・20,827名。ただし「全部の試験」ではありません

組み入れの入口で条件がかかっています。数の大きさだけを引くと、この条件が見えなくなります。

組み入れられた試験
39

2012年版の更新版です。新たに13試験が同定され、うち10試験(約3,000名)が組み入れられたと書かれています。差の理由は本文に明記がありません

参加者
20,827

名。公表された平均値ではなく、参加者ひとりひとりのデータを各試験から集めて統合しています

対象とした領域
4

非特異的筋骨格痛/変形性関節症/慢性頭痛/肩の痛み。この4つ以外の症状は対象外です

入口の条件
原文=allocation concealment was unambiguously determined to be adequate

割り付けの隠蔽=「次に入ってくる人がどちらの群に入るか」を、登録の時点で誰にも分からないようにしておく手続き。それが「明確に適切」と判断できた試験だけを組み入れています

この図は組み入れの枠を示したもので、効果の大きさを示すものではありません。
・主要アウトカムは痛みと機能です。それ以外の項目は、この枠の外にあります。
この論文が扱っているのは鍼です。試験特性の集計では灸を用いた試験が6件(15%)ありますが、灸だけを取り出した解析ではありません。
・「13」と「10」の差の理由は原文に書かれていません。どちらか一方だけを引かないでください。
・出所=抄録・本文・Table 4。組み入れの流れ図(PRISMAフロー)は当サイトが取得していません。

数字はどう並んでいるのか|4つの症状と2種類の比べ方

いちばん引用される一文は、抄録の結果です。

Acupuncture was superior to both sham and no acupuncture control for each pain condition (all p<0.001) with differences between groups close to 0.5 standard deviations (SD) for comparison with no acupuncture control and close to 0.2 SDs in comparison with sham.

(当サイトによる訳)「鍼は、いずれの疼痛の病態においても、偽鍼と鍼を行わない対照の両方に対して上回っていた(いずれも p<0.001)。群間の差は、鍼を行わない対照との比較で0.5標準偏差(SD)近く、偽鍼との比較では0.2SD近くであった。」

(当サイトの評釈)1つの文に2つの答えが入っています。約0.5と約0.2。同じ鍼、同じ患者集団で、比べた相手が違うだけです(→ 鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比)。⚠️ この0.5や0.2が「大きいのか小さいのか」という評価に、本記事は踏み込みません。

症状ごとの内訳が次の表です。

出所=原著の主要解析の記述。表は当サイトが症状×比べた相手の形に組み直したもので、原著の図表を複製したものではありません。
統合のしかたが2通りあり、両方が示されています。固定効果=試験ごとの違いを誤差とみなす計算、変量効果=試験ごとに効果そのものが違うとみなす計算で、後者は幅が広く出ます。(数字が苦手な方は、次の図だけでも大丈夫です)
症状 偽鍼と比べて
試験数/固定効果(95%CI)/変量効果(95%CI)
鍼を行わない対照と比べて
試験数/固定効果(95%CI)/変量効果(95%CI)
非特異的筋骨格痛 10試験/0.30(0.21〜0.38)/0.49(0.16〜0.81) 12試験/0.54(0.50〜0.57)/0.50(0.38〜0.63)
変形性関節症 9試験/0.24(0.17〜0.31)/0.45(0.15〜0.75) 10試験/0.63(0.56〜0.69)/0.74(0.46〜1.01)
慢性頭痛 5試験/0.16(0.08〜0.25)/0.16(0.08〜0.25) 7試験/0.44(0.39〜0.48)/0.56(0.35〜0.76)
肩の痛み 4試験/0.57(0.44〜0.69)/0.57(0.44〜0.69) 試験なし(0件)

肩の痛みには、鍼を行わない対照を置いた試験が1本もありません。原文の表記は「試験なし」です。

Vickers 2018 の症状別の効果量を、偽鍼と比べた場合と鍼を行わない対照と比べた場合に分けて並べた比較バーの図

同じ論文の中で

比べた相手を変えると、数字はここまで動きます

いずれも固定効果による統合値です。単位はSD(標準偏差)で、向きは鍼の側に有利な向きです。棒の長さは値の大きさを表しています(0.70を最大とした目安の縮尺です)。

非特異的筋骨格痛偽鍼と比べて/10試験
0.3095%CI 0.21〜0.38
変形性関節症偽鍼と比べて/9試験
0.2495%CI 0.17〜0.31
慢性頭痛偽鍼と比べて/5試験
0.1695%CI 0.08〜0.25
肩の痛み偽鍼と比べて/4試験
0.5795%CI 0.44〜0.69
ここから下は、比べた相手が違います
非特異的筋骨格痛鍼を行わない対照と比べて/12試験
0.5495%CI 0.50〜0.57
変形性関節症鍼を行わない対照と比べて/10試験
0.6395%CI 0.56〜0.69
慢性頭痛鍼を行わない対照と比べて/7試験
0.4495%CI 0.39〜0.48
肩の痛み鍼を行わない対照と比べて
試験なし原文の表記=0 No trials

出所=原著の主要解析の記述。当サイトが症状×比べた相手の形に組み直したものです。
上の4本と下の4本は別々の解析です。足し算も、直接の比較もできません。
・数値は固定効果による統合値です。変量効果では値が動く行があります(非特異的筋骨格痛の偽鍼比は0.49、変形性関節症の偽鍼比は0.45)。
非特異的筋骨格痛と変形性関節症は、試験間のばらつき(異質性)が大きい(p<0.001)と報告されています。慢性頭痛と肩の痛みは p=0.4 で、2つの統合値が一致しています。
肩の痛みには、鍼を行わない対照を置いた試験がありません。棒が無いのは「効果が無い」という意味ではなく、データが無いという意味です。
・SDは差の表し方の単位です。この図は大きさの評価をしていません。

「1年後も持続」はどこまで確かめられたのか

この論文を引く記事の多くが「効果は1年後もほぼ続く。減衰は約15%」と書きます。出どころは抄録で、「1年時点での治療効果の低下はわずか約15%にとどまるという明確な証拠(clear evidence)を見出した」(当サイトによる訳)という一文です。

強い書き方です。ところが、その15%の元になった推定値を本文で見ると、印象が変わります。

The fixed-effects estimate for the between-group comparison of acupuncture vs no acupuncture controls showed a decrease in the effect size of acupuncture of 0.019 SD per 3 months (95% CI −0.041, 0.003, p=0.096, p=0.011 for heterogeneity, Figure 4a).

(当サイトによる訳)「鍼と、鍼を行わない対照との群間比較についての固定効果の推定値は、3か月あたり0.019SDの効果量の低下を示した(95%信頼区間 −0.041〜0.003、p=0.096、異質性についてはp=0.011、図4a)。」

95%信頼区間の −0.041〜0.003 が、0をまたいでいます。

ここが分かれ目なので、言葉を足します。95%信頼区間とは、「本当の値はだいたいこの範囲にありそう」という幅のことです。その幅の中に「差はゼロ」が入っているとき、下がったとも下がらなかったとも決められません。

つまり「3か月ごとに0.019SDずつ下がる」という推定そのものが、統計的に確認されたものではありません。

では「約15%」はどこから出た数字か。🛑 当サイトが計算すると、3か月あたり0.019SDは1年で4回分=約0.076SD。約0.5SDという効果量に対して、およそ15%にあたります。ただし、この換算の過程は原文に書かれていません。著者がどのように15%を導いたかを、当サイトは確認できていません。いずれにせよ、測って出た数字ではなく、推定の真ん中の値(点推定値)を伸ばして作った数字です。

🛑 だから「1年で15%しか落ちないことが確かめられた」とは書けません。書けるのは「減衰は統計的に確認されなかった」までです。

⚠️ ここでもう一段の注意が要ります。「減衰が確認されなかった」は「持続が証明された」でもありません。差が検出されなかった、というだけです。

実際、考察での書き方は抄録より慎重で、「少なくとも12か月にわたって持続するように見える」(原文 appear to persist)となっています。断定していません。

Vickers 2018 の持続についての記述が、抄録と本文の推定値とで書き方が異なることを対比した図

同じ結果、3つの書き方

抄録・本文・考察で、強さが違います

どの1か所を読むかで、受ける印象が変わります。3つとも同じ論文の中にあります。

① 抄録|いちばん強い
原文=clear evidence … only a small decrease, approximately 15%(省略あり・全文はエビデンスボックス①に)

「1年時点の低下はわずか約15%にとどまるという明確な証拠」。引用されるのは、ほぼこの一文です

② 本文の推定値|0をまたいでいる
14試験4,124名/鍼と、鍼を行わない対照との比較

3か月あたり 0.019SD の低下(95%CI −0.041〜0.003、p=0.096)。異質性については p=0.011。信頼区間が0をまたいでおり、この低下は統計的に確認されていません

③ 考察|断定していない
原文=Effects of acupuncture appear to persist over at least a 12 month period.

「少なくとも12か月にわたって持続するように見える」。appear to=断定を避けた書き方です

「減衰が統計的に確認されなかった」と「持続が証明された」は別のことです。
・信頼区間が0をまたぐことは、差が無いことの証明ではありません。検出できなかった、というところまでです。
「約15%」の換算の過程は原文に書かれていません。当サイトが計算すると、0.019SD×4回=約0.076SDで、約0.5SDに対しておよそ15%にあたります。観測された減衰率ではありません。
・この解析は鍼と、鍼を行わない対照との比較で行われています。偽鍼との比較ではありません。
・⚠️ 抄録の結論の第1文は、`persisting over time`(時間を超えて持続する)と断定しています。この図の②を同じ視野に置いて読んでください。
・当サイトは図4a(時間経過のプロット)そのものを取得していません。上の数値は本文の記述から取りました。

ばらつきの原因を、著者は何だと書いているのか

症状によってばらつきの大きさが違うことを、さきほどの表で見ました。では、そのばらつきはどこから来るのか。著者は考察ではっきり書いています。

We have presented data that heterogeneity is predominately driven by differences between control groups rather than by differences between acupuncture treatment characteristics.

(当サイトによる訳)「私たちは、異質性が、鍼の治療特性の違いによってではなく、主として対照群どうしの違いによって生じているというデータを示した。」

(当サイトの評釈)「試験の結果がばらつくのは、鍼のやり方が違うからではなく、比べた相手が違うからだ」と、著者自身が書いているわけです(この見方の全体像は鍼のエビデンスは比較対照で変わる|無治療比・偽鍼比・実薬比に)。しかも同じ趣旨の文が、抄録の結論にも置かれています(次の見出しで扱います)。

具体的な記述もあります。鍼+理学療法と理学療法単独を比べた試験のように、対照群の患者が高い強度のケアを受けた試験(これは鍼を行わない対照の試験に限った話です)と、偽鍼に「実際に皮膚を貫通する鍼」を使った試験では、効果量がより小さかったという二次解析の結果です(偽鍼の型ごとの違いは偽鍼(シャム鍼)とは何か|4つのタイプと「不活性でない」問題に)。足す先がすでに充実しているほど、上積みは小さく見えます(→ 上乗せ試験(add-onデザイン)は何を測るか|通常ケア+鍼)。

一方、鍼の流派・1回の施術時間・鍼灸師の訓練歴による、試験結果の明らかな違いは見出されなかったとも書かれています。⚠️ これを「流派や施術時間は関係ない」と読むことはできません。書かれているのは「試験間の比較では検出できなかった」ということで、しかも二次解析です。

もう1点。効果量の大きい外れ値の試験群も、ばらつきの原因になっていたと著者は明記し、外れ値を含む解析と除いた解析の両方を示したと書いています。引用時は、どちらの解析かを添えてください。(この節の逐語4本は、いずれもエビデンスボックス①に原文で置いてあります)

Vickers 2018 が二次解析で報告した、対照群の型と効果量の関係および外れ値の扱いをまとめた図

著者自身の説明

著者は「ばらつきの主な原因は対照群の違い」だと書いています

いずれも考察と二次解析の記述です。あらかじめ決めておいた主要な解析の結果ではありません。

① 対照群の型が効果量と関連していた
二次解析/原文=type of control group

偽鍼に貫通する鍼を使った試験と、対照群の介入の強度が高かった試験では、効果量がより小さかったと報告されています

② 挙げられている例
原文=a trial of acupuncture plus physical therapy vs. physical therapy alone

鍼+理学療法と、理学療法単独の比較。足す先が充実しているほど、上積みは小さく見えます

③ 鍼の治療特性との関連は「検出できなかった」
流派/1回の施術時間/鍼灸師の訓練歴

明らかな違いは見出されなかったと書かれています。「関係がない」ではなく「試験間の比較では検出できなかった」です

④ 効果量の大きい外れ値の試験がある
原文=a set of outlying trials with large effect sizes

著者は外れ値を含む解析と除いた解析の両方を提示したと明記しています。引くときは、どちらの解析かを添えてください

①〜④はすべて二次解析・考察の記述で、主要な解析の結果ではありません。
・二次解析は、あらかじめ決めた主要な解析より、偶然の影響を受けやすい位置にあります。
・③を「鍼のやり方は何でも同じ」と読むことはできません。検出できなかった、というところまでです。
・①の「対照群の介入の強度が高かった試験」は、鍼を行わない対照の試験に限った記述です。
・この図は模式的な整理で、各項目の数値の大小を比べたものではありません。
・当サイトはSupplementary(補足資料)を取得していません。二次解析の全体像は本記事の範囲外です。

この論文は鍼を支持しているのか、していないのか

論文の冒頭には、要点が4つ掲げられています(原文と訳はエビデンスボックス①に)。そのうち、2つめと3つめを並べて読んでください。「鍼の効果は、プラセボ効果だけでは説明できない」と「刺鍼の特異的効果以外の要素も、治療効果に効いている」が、隣り合っています。

著者は、経穴に刺すこと以外の要素が効いていると認めたうえで、それでもプラセボだけでは説明がつかないと書いているわけです。片方だけを切り出せば、この論文からは正反対の主張が作れてしまいます。

そして、抄録の結論も3つの文でできています。

1文目は、鍼が慢性疼痛の治療に有効であり、その治療効果は時間を超えて持続すると結論した文。2文目が、いま見た「プラセボだけでは説明できない」。3文目は、ばらつきは、鍼のやり方の違いではなく、対照群が受けた治療の違いによって生じているという文です(3文の原文と訳はエビデンスボックス①に)。

⚠️ 1文目は、この記事の見せ場と正面から衝突します。その持続の元になった推定値は p=0.096 で、信頼区間は0をまたいでいました。同じ論文の中で、抄録の結論と本文の推定値の強さがここまで違う——これがこの論文の読み方の要点です。

3文目にも触れておきます。さきほど「ばらつきの主因は対照群」を考察から引きました。同じ趣旨の文が、抄録の結論にも置かれています。論文のいちばん目立つ場所にも、その主張はある、ということです。

刺鍼そのもの以外の要素が結果をどう動かすかは、鍼のプラセボ効果と文脈効果|偽鍼群も4〜5割が反応する理由に。

この論文の限界として、原文から確認できたこと

⚠️ 当サイトは考察の本文を取得していますが、Supplementary(補足資料)・Table 5・図4a・感度分析の全体像は取得していません。したがって以下は「著者が挙げた限界のすべて」ではありません。①②④⑤は著者自身の記述として確認できたもの、③⑥は当サイトが表と本文から読み取ったものです。

①抄録と本文で、持続の書き方の強さが違います。抄録の結論は「有効であり、効果は持続する」と断定、抄録の結果は「明確な証拠」、本文の推定値は p=0.096、考察は「持続するように見える」。

②ばらつきの主な原因は、対照群の違いだと著者が書いています。言い換えると、この論文の統合値は「どんな相手と比べた試験を集めたか」に左右されます。

③ばらつきの大きさが、症状によって違います。非特異的筋骨格痛と変形性関節症は p<0.001 で、2つの統合値も離れています。

④効果量の大きい外れ値の試験があります。著者は含む解析と除いた解析の両方を示しています。

⑤鍼の治療特性との関連は、検出できませんでした。⚠️ 二次解析であり、「関連が無い」という結論ではありません。

⑥データそのものの穴が3つ。肩の痛みには鍼を行わない対照の試験がないこと、試験数に2つの数字(13と10)があり差の理由が書かれていないこと、対象が4領域に限られ、扱っているのが鍼であること(灸を用いた試験は集計上6件・15%ですが、灸だけの解析ではありません)。

よくある誤読

誤読1|「1年で15%しか落ちないと確かめられた」と引く

元の推定は p=0.096 で、95%信頼区間が0をまたいでいます。書けるのは「減衰は統計的に確認されなかった」までです。

誤読2|約0.5と約0.2を、比べた相手を書かずに引く

別々の比較です。「鍼の効果量は0.5」とだけ書くと、比べた相手が消えます。

誤読3|抄録の「いずれの疼痛の病態でも」を、2つの比べ方の両方に当てはめる

抄録は全称で書いていますが、肩の痛みには鍼を行わない対照を置いた試験が1本もありません(原文の表記は「試験なし」)。⚠️ 抄録の書き方と表が食い違っている箇所です。全称のまま引くと、当サイトも引用先も誤りの供給源になります。

誤読4|「鍼のやり方は結果に関係ない」と読む

「試験間の比較では検出できなかった」が原文の内容で、しかも二次解析です。

誤読5|「鍼は鎮痛薬と同等」と言う

著者は考察で、鎮痛薬の効果量を物差しとして並べています(数値はエビデンスボックス①に)。⚠️ 直接比べた試験ではなく、その数値もこの解析が計算したものではありません。

誤読6|試験設計の話を、臨床の施術回数の話として引く

考察には、偽鍼対照を置かない試験では施術回数を多くするほうが妥当だ、という趣旨の記述があります。⚠️ 今後の試験設計についての示唆であって、臨床で回数を増やすべきだという推奨ではありません。

誤読7|灸のエビデンスとして引く

扱っているのは鍼です。灸を用いた試験は集計上6件(15%)ですが、灸だけの解析はありません。

慢性疼痛と鍼灸の論文として、同業者にどう引くか

この論文を引くときに、省かない5点
① 比べた相手:偽鍼か、鍼を行わない対照か。落とすと、同じ論文から反対向きの主張が作れます。
② どの症状か:4領域で値が違います。肩には鍼を行わない対照の試験がありません。
③ 統合のしかた:固定効果か変量効果か。外れ値を含む解析か、除いた解析か。
④ 持続の扱い:「減衰は統計的に確認されなかった」と言う。「15%減衰が確かめられた」とは言わない。
⑤ 出典と版:著者名・年と PMID または DOI を。🛑 PMCの全文は著者最終稿です。英文をそのまま引くときは、出版版と字句が違う場合があります。

20秒で言える短い版:「2万人ぶんの個票を統合した2018年の解析です。何もしない場合と比べて約0.5SD、偽鍼と比べて約0.2SD。比べた相手で数字が変わる、というのがこの論文の要点です。

もう少し正確に言うとき:「39試験・20,827名の個票を統合しています。4つの症状のいずれでも、鍼は偽鍼を上回りました。鍼を行わない対照との比較でも、試験のある3領域で上回っています(肩にはその比較の試験がありません)。著者自身が、ばらつきの主な原因は対照群の違いだと書いています。」

持続について引くとき:「1年時点まで追った解析はありますが、減衰は統計的に確認されていません(3か月あたり0.019SD、95%CI −0.041〜0.003、p=0.096)。抄録の『約15%』は換算値で、その換算の過程は原文に書かれていません。

避けたい形:「2万人のデータで効果が証明されています。」——比べた相手も、症状も、統合のしかたも抜けています。逆に「偽鍼と比べると0.2しかないので、ほとんどプラセボです」も同じです。著者は「プラセボ効果だけでは説明できない」と書き、同時に「刺鍼の特異的効果以外の要素も効いている」とも書いています。

※ ここで示しているのは同業者・医療者への説明のしかたです。患者向けの広告や自院サイトの表現には、別の規律(あはき法7条・薬機法・景品表示法等)が関わります。

当サイトがどこまで原著を確認したか

材料は2つです。PMCの全文(PMC5927830)と、PubMedに掲載されている出版版の抄録(PMID 29198932)。本記事に出した英文は、すべて前者=著者最終稿から引いています。

本記事が引用した英文のすべてが、PMCの2つの表示形式の両方に存在することを照合しました。⚠️ これは、同じ文書の中での再現性を確かめたものです。版による字句の異同のほうは、PubMedの出版版の抄録と突き合わせて確認しました(例はエビデンスボックス②に)。🛑 ただし出版版について当サイトが取得したのは抄録だけで、本文(全文)は取得していません。

症状別の統合値の表は、原著の主要解析の記述から取り、当サイトが症状×比べた相手の形に組み直したものです。原著はPMCで無料で読めますが、閲覧が無料という意味ではあっても、転載・再配布が自由という意味ではありません。本記事の英文は著作権法32条にもとづく引用で、訳はすべて当サイトによるものです。

確認できなかったものは、Supplementary(補足資料)・Table 5・図4a・感度分析の全体像・文献検索の期限・組み入れの流れ図です(一覧と理由はエビデンスボックス②に)。「この時期以降の試験は入っていない」とも書いていません。

そして、当サイトの過去の記録に誤りが2件ありました。公開記事で訂正しておきます。1つめは「この論文の全文は入手できない」という記録(誤りでした。PMCに全文があります)。2つめは、この論文由来とされる数値のメモ(全文を検索しても見当たらず、当サイトはこの数値を使いません)。内部記録にあった数値のうち、全文を読んでも確認できなかったものは使わない——それがこの記事の方針です。経緯はどちらもエビデンスボックス②に書きました。

①論文解説の信頼は「何を確認したか」ではなく「どう確かめたか」で立ちます。だから、書けなかったことのほうを長めに書いています。

エビデンスボックス① Vickers 2018 の全数値・逐語・試験特性(飛ばして読んでもOK)
  • 🛑 このボックスの英文はすべて、PMCで公開されている著者最終稿(PMC5927830/NIHMS935739)からの引用です。PMCの全文は出版社の校正を経る前の版で、出版版とは字句が異なる箇所があります(例=PMC superior to both sham and no acupuncture control/出版版 superior to sham as well as no acupuncture control、PMC (all p<0.001)/出版版 (all P < .001))。異同の一覧はエビデンスボックス②に。内容は同じですが、原典を引くときは版を添えてください。
  • 書誌:Vickers AJ, Vertosick EA, Lewith G, MacPherson H, Foster NE, Sherman KJ, Irnich D, Witt CM, Linde K; Acupuncture Trialists’ Collaboration. Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis. The Journal of Pain. 2018;19(5):455-474. PMID:29198932 / DOI:10.1016/j.jpain.2017.11.005 / PMC5927830PMCは出版版を J Pain. 2017 Dec 2;19(5):455–474 と表示しています。2012年に公表された同じ共同研究による解析の更新版です。
  • 組み入れ試験数と参加者数(出所=抄録・逐語):An additional 13 trials were identified, with data received for a total of 20,827 patients from 39 trials.
    (当サイトによる訳)「新たに13件の試験が同定され、39試験・合計20,827名分のデータを受領した。」
    (当サイトの評釈)🛑 考察には別の数字がありますAn additional 10 studies were included with nearly 3,000 patients(当サイトによる訳:新たに10件の研究、約3,000名が組み入れられた)。「13が同定され、10が組み入れられた」と読むのが自然ですが、論文はその差の理由を明示していません。当サイトも確認できていません。「13試験が追加された」とだけ書かないでください。※この一文は出版版でも同じ表記であることを確認しています。
  • 組み入れの条件(出所=本文・逐語):Trials were only included if allocation concealment was unambiguously determined to be adequate.(当サイトによる訳)「割り付けの隠蔽が、明確に適切であると判断できた試験のみを組み入れた。」(当サイトの評釈)入口でかなり絞られています。39という数を「慢性疼痛の鍼の試験の総数」と読まないでください。主要アウトカムは痛みと機能です。⚠️ 組み入れの流れ図(PRISMAフロー)は当サイトが取得していないため、何件が除外されたかは書いていません。
  • ★ 中核の効果量(出所=抄録・逐語):Acupuncture was superior to both sham and no acupuncture control for each pain condition (all p<0.001) with differences between groups close to 0.5 standard deviations (SD) for comparison with no acupuncture control and close to 0.2 SDs in comparison with sham.
    (当サイトによる訳)「鍼は、いずれの疼痛の病態においても、偽鍼と鍼を行わない対照の両方に対して上回っていた(いずれも p<0.001)。群間の差は、鍼を行わない対照との比較で0.5標準偏差(SD)近く、偽鍼との比較では0.2SD近くであった。」
    (当サイトの評釈)1つの文に2つの答えがあります。比べた相手が違うだけで、鍼も患者集団も同じです。🛑 ただし、この全称表現(`for each pain condition`)と下の表は食い違っています。肩の痛みには、鍼を行わない対照を置いた試験が1本もありません。本記事が結論ボックスと引き方の文例で「試験のある3領域で」と書いているのは、そのためです。この記事は、0.5と0.2という数値が「大きいか小さいか」の評価をしていません。
  • ★ 症状別の統合値(固定効果FE/変量効果RE)(出所=原著の主要解析の記述。当サイトが症状×比べた相手の形に組み直したもの):
    偽鍼と比べて——非特異的筋骨格痛=10試験/FE 0.30(95%CI 0.21〜0.38)/RE 0.49(0.16〜0.81)|変形性関節症=9試験/FE 0.24(0.17〜0.31)/RE 0.45(0.15〜0.75)|慢性頭痛=5試験/FE 0.16(0.08〜0.25)/RE 0.16(0.08〜0.25)|肩の痛み=4試験/FE 0.57(0.44〜0.69)/RE 0.57(0.44〜0.69)
    鍼を行わない対照と比べて——非特異的筋骨格痛=12試験/FE 0.54(0.50〜0.57)/RE 0.50(0.38〜0.63)|変形性関節症=10試験/FE 0.63(0.56〜0.69)/RE 0.74(0.46〜1.01)|慢性頭痛=7試験/FE 0.44(0.39〜0.48)/RE 0.56(0.35〜0.76)|肩の痛み=試験なし(原文の表記=0 No trials)
    異質性(試験間のばらつき):非特異的筋骨格痛と変形性関節症は p<0.001(大きい)。慢性頭痛と肩の痛みは p=0.4(小さく、FEとREが一致)。
    (当サイトの評釈)FEとREで値が動く行があります(非特異的筋骨格痛の偽鍼比=0.30と0.49、変形性関節症の偽鍼比=0.24と0.45)。どちらを引くかで印象が変わるため、統合のしかたを添えてください。また肩の痛みには、鍼を行わない対照を置いた試験が1本もありません。「肩について、何もしない場合と比べて」という数字は、この論文からは引けません。
  • 🛑 持続についての推定値(出所=本文・逐語):A total of 14 trials and 4,124 patients were included in the analysis of acupuncture vs no acupuncture control.The fixed-effects estimate for the between-group comparison of acupuncture vs no acupuncture controls showed a decrease in the effect size of acupuncture of 0.019 SD per 3 months (95% CI −0.041, 0.003, p=0.096, p=0.011 for heterogeneity, Figure 4a).
    (当サイトによる訳)「鍼と、鍼を行わない対照との比較の解析には、合計14試験・4,124名が含まれた。」/「鍼と、鍼を行わない対照との群間比較についての固定効果の推定値は、3か月あたり0.019SDの効果量の低下を示した(95%信頼区間 −0.041〜0.003、p=0.096、異質性についてはp=0.011、図4a)。」
    (当サイトの評釈)🛑 95%信頼区間は −0.041〜0.003 で0をまたいでいます。この低下は統計的に確認されていません。ところが抄録は We also found clear evidence that the effects of acupuncture persist over time with only a small decrease, approximately 15%, in treatment effect at one year.(当サイトによる訳:私たちはまた、鍼の効果が時間を超えて持続し、1年時点での治療効果の低下はわずか約15%にとどまるという明確な証拠を見出した)と書いています。🛑 「約15%」がどう導かれたかは、原文に書かれていません。当サイトが計算すると、3か月あたり0.019SDは1年で4回分=約0.076SDで、約0.5SDに対しておよそ15%にあたります。ただしこれは当サイトの計算であって、著者の手続きを確認したものではありません。一方、考察の表現は Effects of acupuncture appear to persist over at least a 12 month period.(当サイトによる訳:鍼の効果は、少なくとも12か月にわたって持続するように見える)。同じ論文の3か所で、強さが違います(抄録の結論の第1文を入れれば4か所です。下の項目に)。⚠️ なお当サイトは図4aそのものを取得していません。上の数値は本文の記述から取りました。
  • ★ 二次解析——治療特性との関連と、対照群の型との関連(出所=抄録・逐語):In secondary analyses, we found no obvious association between trial outcome and characteristics of acupuncture treatmentbut effect sizes of acupuncture were associated with the type of control group, with smaller effects sizes for sham controlled trials that used a penetrating needle for sham, and for trials that had high intensity of intervention in the control arm.
    (当サイトによる訳)「二次解析において、試験の結果と、鍼の治療特性との間に明らかな関連は見出されなかった」/「しかし鍼の効果量は対照群の型と関連しており、偽鍼に貫通する鍼を用いた対照試験と、対照群の介入強度が高かった試験では、効果量がより小さかった。」
    (当サイトの評釈)⚠️ 前半を「鍼のやり方は何でもよい」と読むことはできません。「試験間の比較では検出できなかった」であり、かつ二次解析です。※この2文は、出版版でも同じ表記であることを確認しています(原文の smaller effects sizes という表記ゆれを含む)。
  • ★ 考察——ばらつきの主因は対照群の違い(出所=考察・逐語):We have presented data that heterogeneity is predominately driven by differences between control groups rather than by differences between acupuncture treatment characteristics.We did not find any obvious differences between the results of trials depending on treatment characteristics such as style of acupuncture, duration of treatment sessions or training of acupuncturists.we found evidence that effect sizes of acupuncture were smaller for sham-controlled trials with penetrating needles and for no acupuncture control trials where patients received high intensity care (e.g. a trial of acupuncture plus physical therapy vs. physical therapy alone).In some cases, heterogeneity was also driven by a set of outlying trials with large effect sizes.
    (当サイトによる訳)「私たちは、異質性が、鍼の治療特性の違いによってではなく、主として対照群どうしの違いによって生じているというデータを示した。」/「鍼の流派、1回の施術時間、鍼灸師の訓練歴といった治療特性による、試験結果の明らかな違いは見出されなかった。」/「私たちは、偽鍼に貫通する鍼を用いた対照試験、および対照群の患者が高い強度のケアを受けた(鍼を行わない対照の)試験では、鍼の効果量がより小さかったという証拠を見出した。例として、鍼+理学療法と理学療法単独を比較した試験がある。」/「場合によっては、効果量の大きい外れ値の試験群も異質性の原因となっていた。」
    (当サイトの評釈)🛑 「比べた相手で結論が変わる」という見方に対する、著者本人による直接的な記述です。3つめは鍼を行わない対照の試験に限った記述で、括弧内の例(鍼+理学療法 vs 理学療法単独)は、通常のケアに何かを足す設計そのものです。4つめについて、著者は外れ値を含む解析と除いた解析の両方を提示したと書いています(原文=with and without the outlying trials)。引用時は、どちらの解析かを添えてください。⚠️ 1つめの predominately は著者最終稿の表記です(出版版では predominantly)。原文に手を入れていません。
  • ★ 論文の要点(Highlights・4項目)(出所=論文冒頭・逐語):Acupuncture has a clinically relevant effect on chronic pain that persists over timeThe effect of acupuncture cannot be explained only by placebo effectsFactors in addition to the specific effects of needling are important contributorsReferral for acupuncture treatment is a reasonable option for chronic pain patients
    (当サイトによる訳)「鍼は、慢性疼痛に対して臨床的に意味のある効果を持ち、それは時間を超えて持続する」/「鍼の効果は、プラセボ効果だけでは説明できない」/「刺鍼の特異的効果に加わる要素が、重要な寄与者である」/「鍼への紹介は、慢性疼痛の患者にとって妥当な選択肢である」
    (当サイトの評釈)2つめと3つめが隣り合っています。片方だけを引けば、同じ論文から正反対の主張が作れます。⚠️ 1つめの「持続する」は、上の持続の推定値(3か月あたり0.019SD・p=0.096・信頼区間が0をまたぐ)を踏まえて読む必要があります。4つめは本記事が扱う数少ない「推奨」型の記述で、著者が論文の要点として掲げた評価であり、当サイトが施術の効果を保証するものではありません。なお3つめの important contributors(重要な寄与者)は、本文では「治療効果に効いている要素」と開いて書いています。
  • ★ 抄録の結論(3文)(出所=抄録 Conclusions・逐語)。3文そろえて置きます。1文だけを引くと、印象が変わるからです。
    【第1文】We conclude that acupuncture is effective for the treatment of chronic pain, with treatment effects persisting over time.(当サイトによる訳)「私たちは、鍼が慢性疼痛の治療に有効であり、その治療効果は時間を超えて持続すると結論する。」
    🛑 (当サイトの評釈・この文と切り離さない留保)persisting over time は断定形です。ところが、その持続の元になった推定値は3か月あたり0.019SDの低下で、95%信頼区間は −0.041〜0.003、p=0.096。区間が0をまたいでおり、減衰は統計的に確認されていません(上の「持続についての推定値」の項目を参照)。考察での同じ論点の表現は appear to persist(持続するように見える)で、断定を避けています。第1文を引くときは、この留保を同じ視野に置いてください。また、この文は本記事が扱う数少ない「有効である」という断定型の記述であり、著者が論文の結論として書いた評価であって、当サイトが施術の効果を保証するものではありません。
    【第2文】While factors in addition to the specific effects of needling at correct acupuncture point locations are important contributors to the treatment effect, decreases in pain following acupuncture cannot be explained solely in terms of placebo effects.(当サイトによる訳)「正しい経穴の位置への刺鍼がもつ特異的効果に加わる要素が、治療効果への重要な寄与者である一方で、鍼のあとの疼痛の減少を、プラセボ効果だけで説明することはできない。」(当サイトの評釈)肯定と留保が、1つの文の中に同居しています。「経穴に刺すこと以外の要素も効いている」と認めたうえで、「それでもプラセボだけでは説明がつかない」と書いているわけです。片方だけを切り出せば、正反対の主張が作れます。
    【第3文】Variations in the effect size of acupuncture in different trials are driven predominately by differences in treatments received by the control group rather than by differences in the characteristics of acupuncture treatment.(当サイトによる訳)「異なる試験における鍼の効果量のばらつきは、鍼治療の特性の違いではなく、主として対照群が受けた治療の違いによって生じている。」(当サイトの評釈)本記事が考察から引いた「ばらつきの主因は対照群の違い」と同じ趣旨の文が、抄録の結論にも置かれています。考察だけの記述ではなく、論文の最も目立つ場所にも同じ主張があるということです。⚠️ predominately は著者最終稿の表記のままです(出版版では predominantly に校正されています)。原文に手を入れていません。
  • 効果量の物差しとして著者が並べているもの(出所=考察・逐語):for osteoarthritis of the knee, the effect size for NSAIDs vs placebo for trials that did not preselect NSAID responders was 0.23for chronic low back pain, the effect size for NSAIDs is < 0.20
    (当サイトによる訳)「膝の変形性関節症について、NSAIDの反応者をあらかじめ選別しなかった試験における、NSAIDとプラセボの効果量は0.23であった」/「慢性腰痛について、NSAIDの効果量は0.20未満である」
    (当サイトの評釈)🛑 鍼とNSAIDを直接比較した試験ではありません。そのうえこの0.23・0.20未満は、著者が他の文献から引いてきた値であって、この解析が計算したものではありません。著者がこう対置している、というところまでが書ける範囲です。「同等」と断定しないでください。
  • 研究への含意(今後の試験設計について)(出所=考察・逐語):the balance of evidence is to give a higher dose of acupuncture in terms of a greater number of treatments in trials without sham control(当サイトによる訳)「エビデンスの均衡としては、偽鍼対照を置かない試験においては、施術回数をより多くするという形で、鍼の用量を高くすることが支持される。」(当サイトの評釈)🛑 これは試験設計の話です。臨床での施術回数の推奨として読み替えないでください。
  • 試験特性の集計(試験レベル・N=39)(出所=Table 4):流派=中医と西洋の併用 9件(23%)/Traditional Chinese techniques 23 (59%)/西洋 7件(18%)|経穴処方=固定処方 9件(23%)/柔軟な処方 18件(45%)/個別化 13件(33%)刺鍼部位=局所+遠隔 37件(95%)/遠隔のみ 2件(5.1%)|電気刺激Electrical stimulation allowed 11 (28%)(11件・28%)|手技刺激=36件(92%)|=6件(15%)
    (当サイトの評釈)⚠️ 経穴処方の合計が40になるのは、1試験が2つの鍼群を持ち、それぞれ別の処方だったためです。この集計から言えるのは分布までで、個々の経穴は分かりません。また灸を用いた試験が6件ありますが、灸だけを取り出した解析ではありません。この論文を灸のエビデンスとして引かないでください。
エビデンスボックス② この記事の確認範囲と限界(飛ばして読んでもOK)
  • 🛑 版について(最重要):本記事の英文はすべて、PMCで公開されている著者最終稿(PMC5927830/NIHMS935739)から引用しています。PMCページ自身が Author manuscript; available in PMC: 2019 May 1. Published in final edited form as: J Pain. 2017 Dec 2;19(5):455–474. と表示しており、出版社の校正を経る前の版であることが明記されています。当サイトが確認した字句の異同は7対です(左=著者最終稿/右=出版版):
    both sham and no acupuncture controlsham as well as no acupuncture control
    (all p<0.001)(all P < .001)
    close to 0.5 standard deviations (SD) for comparison withclose to .5 SDs compared with
    at one yearat 1 year
    While factorsAlthough factors
    following acupunctureafter acupuncture
    driven predominately bydriven predominantly byこれだけは体裁の統一ではなく、変則的な綴りが校正で直った例です
    内容は同じですが、原典を引くときは版を添えてください。③は本記事が2か所で引いている一文なので、コピーして使う方はとくにご注意ください。
  • 取得の方法:材料はPMCの全文(PMC5927830)と、PubMedに掲載されている出版版の抄録(PMID 29198932)の2つです。本記事が引用した英文のすべてが、PMCの2つの表示形式の両方に存在することを照合しました。⚠️ これは、同じ文書(著者最終稿)の中での再現性を確かめたものです。版による字句の異同のほうは、PubMedの出版版の抄録と突き合わせて確認しました。上に挙げた7対の異同、および「抄録の結論が3文であること」は、この抄録との突き合わせで確認しています(逐語そのものは、本記事の他の英文と同じく著者最終稿から引いています)。🛑 出版版について当サイトが取得したのは抄録だけで、本文(全文)は取得していません。症状別の統合値の表は、原著の主要解析の記述から取り、当サイトが症状×比べた相手の形に組み直したもので、原著の図表を複製したものではありません。原著はPMCで無料で読めますが、閲覧が無料という意味であり、転載・再配布が自由という意味ではありません。本記事の英文は著作権法32条にもとづく引用で、訳はすべて当サイトによるものです。公式の日本語版の有無は確認していません。
  • 未取得のもの:① Supplementary material(補足資料)/② Table 5(患者レベルの特性)の中身/③ 図4a(時間経過のプロット)/④ 感度分析の全体像/⑤ 文献検索の期限/⑥ 組み入れの流れ図(PRISMAフロー)/⑦ 出版版の本文(全文)。したがって本記事は、二次解析の全体像にも、患者側の特性(年齢・性別・重症度など)による違いにも踏み込んでいません。「この時期以降の試験は入っていない」とも「何件が除外された」とも書いていません。⚠️ 「取得できなかった」ことは「原著に書かれていない」ことと同じではありません。
  • 数値はあるが、本記事に出していないもの:ある試験を除いた感度分析の値を一部取得していますが、どの比較(偽鍼か、鍼を行わない対照か)の値かを当サイトが確定できていないため、本記事には出していません。比べた相手の分からない効果量を載せることは、この記事の主張と矛盾するからです。
  • 🛑 当サイトの過去の記録の訂正(1件目):この論文について、当サイトの内部記録には長らく「全文は入手できない」と書かれていました。誤りでした。出版社サイトが403を返したことだけを見て結論していたためです。PMCに全文があり、9万字を超える本文(方法・結果・考察まで)が読めます。⚠️ ただし機械的なAPI経路(Europe PMC のフルテキストXML)では現在も取得できません(オープンアクセスの対象外のため)。誤っていたのは経路ごとの記録ではなく、「どこにも全文がない」という結論のほうです。
  • 🛑 当サイトの過去の記録の訂正(2件目・使わなかった数値):内部記録には、この論文由来とされる数値がもう1つメモされていました(対照群の強度の差に関する値)。全文を検索しても、その値は見当たりませんでした。近い数字はすべて信頼区間の上限で、文脈も異なりました。補足資料を確認していないこと、また取得の方法によっては表の一部が取り切れない可能性もあるため「存在しない」とは書きませんが、当サイトはこの数値を使いません。公開記事に出していないことも確認済みです。内部記録にあった数値のうち、全文を読んでも確認できなかったものは使わない——本記事の方針です。
  • この記事の限界:① 本記事は、著者が書いた数値と記述を並べたもので、当サイトが新たに統計的な判定をしたものではありません。唯一の計算は「約15%」の換算の検算で、その旨を本文に明記しています。効果量の大きさの評価(0.5や0.2をどう受け取るか)には踏み込んでいません。症状別の値は別々の解析から取ったもので、足し算も直接比較もできません。二次解析と考察の記述は、あらかじめ決めた主要な解析より偶然の影響を受けやすい位置にあります。本記事の「対照群の型との関連」「治療特性との関連」は、いずれも二次解析です。⑤ 信頼区間が0をまたぐことは、差が無いことの証明ではありません(持続の解析がその実例です)。⑥ この論文は有害事象を主題としていません。本記事は安全性について何も書いていません。⑦ 対象は4領域に限られ、扱っているのは鍼です。著者が挙げた限界のすべてを網羅したものではありません(Supplementary・Table 5・感度分析の全体像が未取得のため)。⑨ 出版版について取得したのは抄録だけです。したがって、抄録以外の箇所の字句が出版版でどうなっているかを、当サイトは確認していません。

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この論文の読み方に関わる記事

参考文献

  • Vickers AJ, Vertosick EA, Lewith G, MacPherson H, Foster NE, Sherman KJ, Irnich D, Witt CM, Linde K; Acupuncture Trialists’ Collaboration. Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis. The Journal of Pain. 2018;19(5):455-474. PMID:29198932DOI:10.1016/j.jpain.2017.11.005PMC5927830(著者最終稿の全文)
    本記事の英文はすべてPMCの著者最終稿から引用しています。PMCは出版版を J Pain. 2017 Dec 2;19(5):455–474 と表示しています。

本記事は鍼灸師向けの学術情報の提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。鍼灸師は疾病の診断を行う立場にはありません。症状の型の判断や併存疾患の評価は医療機関の役割です。個別の患者への対応にあたっては、受診を優先すべきサインがないかを確認し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめしてください。

【AI作成・編集責任について】本記事はAI(人工知能)が作成し、株式会社addwisteria の加藤タカシが編集責任者として内容を確認しています。引用した論文・ガイドラインの数値や推奨は改訂により変わることがあるため、実際の臨床判断では各原典の最新版をご確認ください。

更新履歴

本記事は初版です。次のいずれかが起きた時点で、内容を見直してこの欄に追記します。
当サイトの一次確認の範囲が広がったとき(Supplementary material、Table 5、図4a、感度分析の全体像、文献検索の期限、組み入れの流れ図、出版版の本文)/② この解析のさらなる更新版が公表されたとき/③ 本記事が「使わない」と判断した数値の出所が確定したとき/④ 公式の日本語版の有無が確認できたとき。

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